【原点回帰】ドラ息子英雄戦記

■ショートシナリオ


担当:えりあす

対応レベル:1〜3lv

難易度:普通

成功報酬:0 G 65 C

参加人数:8人

サポート参加人数:-人

冒険期間:08月17日〜08月22日

リプレイ公開日:2004年08月24日

●オープニング

『一緒にゴブリン退治に行ってくれる英雄求む!』

 ゴブリン退治は定番中の定番な依頼である。
 繁殖力が高いのか、ギルドからゴブリン退治の依頼が無くなる事は殆ど無い。
 今回のゴブリン退治はある貴族の依頼で、息子と共にゴブリンを倒してきてほしいというものだ。
 将来、立派に後を継いでもらう為、強くなってほしいと願う親からの依頼である。
「英雄の道への第一歩はゴブリン退治から! 昔からそう決まっているんだ!」
 と、叫んでいるのが依頼主の息子。しかも、ロングソードにプレートアーマー、プレートヘルム、ミドルシールド、マントと重装備でハァハァ息をつきながら歩いている。この状態で戦うのは‥‥無理だろう。
「僕は未来の英雄! この剣に誓ってゴブリンを成敗する!」
 どうやら、この息子さん。本気でこの状態でゴブリン退治に行くつもりだ。

 と、いうことで君たちにはこの貴族の息子と共にゴブリンを倒してきていただきたい。
 今回の目的地は、キャメロットから約2日ほど歩いた場所にある村である。
 この村ではゴブリンによる盗難事件が発生しており、君たちにはこの村に出没するゴブリンを退治してきてもらう。
 ‥‥大きな声で言えないが、息子はプライドが高く、人からの指示は全く聞かない。君たちには彼を守りながらゴブリンと戦っていただくことになる。
 くれぐれも息子に被害が出るようなことが無いように十分配慮されたし。

●今回の参加者

 ea0144 カルナック・イクス(37歳・♂・ゴーレムニスト・人間・ノルマン王国)
 ea0753 ラーサ・カーディアル(30歳・♂・ファイター・人間・イギリス王国)
 ea1003 名無野 如月(38歳・♀・浪人・人間・ジャパン)
 ea1911 カイ・ミスト(31歳・♂・ナイト・人間・イギリス王国)
 ea2307 キット・ファゼータ(22歳・♂・ファイター・人間・ノルマン王国)
 ea2366 時雨 桜華(35歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea3179 ユイス・アーヴァイン(40歳・♂・ウィザード・人間・イギリス王国)
 ea5929 スニア・ロランド(35歳・♀・ナイト・人間・イギリス王国)

●リプレイ本文

「おい、息子くん。鎧を脱げ」
 ガチガチの重装備で息を切らしながら歩いているドラ息子の様子を見ながら、時雨桜華(ea2366)がビシッと言い放つ。
「な、何だと! この鎧は我が家に代々伝わる伝説の鎧、誇り高き英雄の証なんだぞ!」
 ドラ息子も即反論。蝶よ花よと随分甘やかされて育ったのか、人に指示されることなんて考えたことも無い。
「ふん、つまらん誇りなど冒険の役には立たん。生死に関わる事なら尚更だ」
「ぬぁんだとぉ〜!」
 桜華の正鵠を射る発言がドラ息子に突き刺さる。どんなに大事で身を守ってくれる鎧でも、重すぎて動けなくては本末転倒。命を守る鎧が、命を奪う足枷にだってなることがあるのだ。
「貴族として、民を脅かす魔物を討伐しようとするのは真に結構な事であります。ですが、その為には自らの力量を見極め、精進する事が肝要かと存じます」
 そんなドラ息子に名無野如月(ea1003)が辞を低くしながら進言した‥‥内心では呆れつつも。
「そう、そうさ! 悪い魔物を倒してみんなの手本にならないといけないんだ!」
 いや、息子くん。重要なのは後半なんですが。どうやら、自分の都合のいい事しか耳に入らないらしい。
「騎士として、貴族として己の意思を貫くことは真にすばらしい事です。でも、声に耳を傾けることも貴族としては重要な事なのですよ」
「そう、僕は鉄の意志を持つ英雄になるんだ!」
 愛馬「ヴィント」を引き連れたカイ・ミスト(ea1911)もドラ息子に苦言を呈するが、やはり重要な後半部分は耳を素通り。
 なお、カイが以前の戦いで受けた傷は村人の手当てと十分な休息で完治している。今回のゴブリン退治での戦闘は問題ないだろう。
「指揮能力も騎士として重要なものです。重要な場面以外は我々にお任せしていただければと思います」
 とりあえず、スニア・ロランド(ea5929)は息子をおだてて機嫌を取ることにした。これ以上、ドラ息子が仲間の邪魔になっては問題である。
「‥‥なぁ。この依頼って子守なのか?」
「そうかもね。わざわざ、自分の足を引っ張っているようなドラ息子を連れてゴブリン退治に行くとなるとね」
 少し離れた場所でラーサ・カーディアル(ea0753)とカルナック・イクス(ea0144)が溜息交じりで会話していた。
 一応、騎士と言えども、こんなわがままなのを連れて行くとなると、世話が大変である。
「ふふふv ゴブリン退治ですね〜。頑張っちゃいますよv」
 約1人、あまりドラ息子も気にせずマイペースを守っている人物がいた。ユイス・アーヴァイン(ea3179)である。
 そんなこんなで、一行のゴブリン退治の旅が始まったのであった。

 *

「遅っせーな! 何やってんだよ!」
 ドラ息子の相手は御免だとばかりに先を歩いているキット・ファゼータ(ea2307)は、彼の移動の遅さにイライラしていた。
 重量超過であるドラ息子の移動力は、一行の半分程度。村まで約2日の予定だったが、ガチガチの重装備のドラ息子のせいで予定は大幅に遅れていた。時はすでに日が沈む頃。
「仕方がありません。今日はここでキャンプを張りましょう」
 カイがヴィントから荷物を降ろし、キャンプの準備を始めた。
「保存食だけでは味気ないからね。哨戒を兼ねて狩りをしようと思う」
 カルナックはキャンプ周辺を警戒しながら狩りを試みた。しかし、残念ながら獲物は姿を現さなかった。仕方ないので野草を採取。近くに林があったので周辺を探すとキノコを発見した。これを調理することにする。味付けはノルマン風。
「あ、おいしいv」
 保存食ばかり食べている冒険者にとって、手料理はまた格別の味。
「知ってますか? スクリーマーっていうキノコのモンスターも食べたら美味しいんですよ」
「え!? まさかこれ‥‥」
 カルナックの一言に一同驚愕。
「違いますよ。スクリーマーはもっと大きくて毒々しい色ですから」
 否定はするが、その言葉に食欲を奪われたようだ。

 2日目の昼頃。
 予定よりかなり遅いペースだと思われていた進軍だが、思わぬ展開となった。
「あ、村が見えてきたぞ」
 先を歩くキットが後列に叫んだ。
「以外だな。あそこが目的の村なのか?」
 思わず如月がギルドでもらった地図を取り出し場所を確認する。
「もしかして、ギルドの人はドラ息子の移動のことも計算に入れていたのでしょうか?」
「そうらしいな。ということは、普通なら半分の時間で着いたってことじゃねえかよ」
 スニアとラーサも予定通りの展開に驚く。
「では、村の状況を確認しなくては」
 カイはゴブリンについて村で聞き込みを開始した。
 ゴブリンは主に村から食料や家畜を奪っていくという。他は簡単な武器などあまり価値の無いものだが、何度も家畜をやられると村の生活にも影響がでてくる。
「大丈夫です。我々にお任せ下さい」
 カイは村人にゴブリン殲滅を誓った。
「大事無く仕事が完遂する事を祈るばかりだ」
 桜華は一息入れつつ、入念に愛刀の手入れをしている。
 その頃、ドラ息子は疲労で寝込んでいた。流石に限界に近い重量の防具を着込んでここまでくると疲れるであろう。その気力だけは認めたいところだが。
「これでゴブリンと戦えるのか?」
 キットはその様子を見て少し不安を感じた。別にドラ息子がどうなろうと知ったことではないが、死んだりでもしたら報酬どころの騒ぎではない。
「まぁ、ゴブリンは夜に襲撃してくるそうです。それまで休んでもらいましょう」
 一行は戦いに不要なものを村に預け、ゴブリンが来るまでしばし休息を取る事にした。

 *

「来たようだな」
 夜。月明かりから逃れるように物陰に身を潜める冒険者達。
 暗闇の中にいくつかの松明の明かりが見えてきた。
「準備は‥‥万端ですよ」
 カルナックは短弓に矢を番え、松明の明かりに照らされた影‥‥ゴブリンを狙う。
「よし、今だ! 行くぞ!」
 復活したドラ息子が宣戦布告。村から借りたランタンに火を灯し、同時にカルナックが矢を放つ。
「チッ!」
 タイミングがずれた。矢はゴブリンに当たらず暗闇の中に吸い込まれていった。
(「お前に指示される筋合いはなんだけどな!」)
 心の中でそう思いつつ、キットが2本ダガーでゴブリンに切りかかる。
「紅月旅団が晦、キット・ファゼータ‥‥いくぞ!」
 右手で振り下ろしたダガーは空を切ったが、左手のダガーは脇腹に突き刺さった。
 ――GHAAA!
 悲痛な声が沈黙の闇の中に響き渡る。
「へっ! ゴブリンごときがっ!」
 続けてラーサがロングソードを振り下ろす。剣はゴブリンの胴を切り裂き、切り口から大量の血が噴出す。そのままゴブリンは倒れ、動かなくなった。
「全部纏めて‥‥散れ、散れ、散れぇぇ!」
 ハンドアックスを持ったゴブリンに桜華が突撃。捨て身の攻撃を試みるが、刀は大きく空振り。左手のナイフはかろうじて命中した。
「胸がガラ空きだよ! チェストォォォッ!」
 如月は持てる力を全て刀に込めてゴブリンの胸に叩きつけた。
 ――グシャ!
 刀はゴブリンの胸を直撃し、そのまま体を吹き飛ばした。
「騎士たる者、匹夫の勇を誇る必要はありません。肝心な場面以外は下々の者に任せておけばよいのです」
 スニアはそうドラ息子に言うと、彼を庇うように構えた。カイも息子を護衛しつつ、オーラショットを打ち込む。
「安全第一ですよ〜v」
 ユイスはゴブリンの多い地点にストームを発動させる。抵抗できなかった2体が後方に吹き飛んだ。
 残った3匹がキット、如月、桜華に襲い掛かるが、全員回避成功。
「今度は外さない!」
 カルナックが冷静にゴブリンを狙う。放たれた矢はゴブリンの右腕に命中した。
「これで‥‥終わりだっ!」
 ラーサが傷ついたゴブリンに狙いを定めた。突き刺したロングソードは胸を貫き、ゴブリンは絶命した。
「頭ってのは使わないと腐るんだよ! お前等みたいにな!」
 キットのダガーは見事ゴブリンの心臓を捕らえた。そして、もう片手のダガーで首筋掻っ切る。キットの容赦ない攻撃に生き残ったゴブリンも怖気を震う。
「外れては意味が無い。真剣に狙うか」
 桜華が振り下ろした刀とナイフは的確にゴブリンの胸に命中した。さらにカイがダガーを3発命中させ、とどめを刺す。
「これでどうだっ!」
 如月がソニックブームを放つ。さらに、ユイスのウインドスラッシュが決まりゴブリンは倒れた。
「残りは1匹です。あなたにおまかせします」
 スニアはドラ息子の護衛を取り止め、ゴブリンに向かわせる。
「僕の剣で‥‥成敗してくれる!」
 ドラ息子は最後のゴブリンに切りかかった。
「ぬぉぉぉ!!」
 しかし、必死にロングソードを振ろうとしているが、まったく攻撃になっていない。そこにゴブリンのクラブが飛んできた。
 ――ばっこ〜ん☆
 クラブはドラ息子の頭に命中。プレートヘルムが吹っ飛んで、ドラ息子失神KO。
「や、やべぇ!」
 慌ててゴブリンを取り囲み、袋叩きにする。カイはドラ息子を応急手当。幸い、意識を失っているだけで問題はなさそうだ。

「‥‥あ、ゴブリンは‥‥そうか! 僕が倒したのか!」
 暫くして意識を取り戻したドラ息子は開口一番、やはり間違った一言。
「お前なぁ‥‥」
「まぁまぁ、このままゴブリンを倒したことにしておきましょう」
 ドラ息子の一言にキレたキットはスニアになだめられた。たしかに、このままゴブリンを倒したことにしておいたほうが楽であろう。
「そうだな‥‥楽しめましたかな、息子君?」
 刀を手入れしながら、桜華が冗談交じりでドラ息子に言った。
「英雄と呼ばれなくても私は一向に構わない。目の前の笑顔が守れるならそれでいい」
 カイは戦いの跡を始末しながら皆を見つめていた。

 こうして、冒険者達の活躍によって依頼は成功した。
 再び、彼らの活躍がキャメロットに響き渡ることを心より願う。