【凄腕の剣士】同じ戦場で
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■ショートシナリオ&プロモート
担当:ezaka.
対応レベル:1〜5lv
難易度:やや難
成功報酬:1 G 35 C
参加人数:4人
サポート参加人数:-人
冒険期間:11月09日〜11月14日
リプレイ公開日:2006年11月14日
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●オープニング
――颯爽と森に現れては優麗な剣捌きで人々の窮地を救い、名も告げずに森へ消える凄腕の剣士。
その噂はキャメロットまで広がり囁かれるようになっていた。
どうやらキャメロットから2日程度の広大な森に凄腕の剣士は現れるらしい。
しかし、光輝の噂に彩られる剣士には不穏な噂も流れるものである。
――その人物とは何者だろう?
凄腕剣士の正体を突き止めるべく、数名の騎士が王宮から派遣され、ギルドに姿を見せる事となる――――。
「凄腕の剣士が悪事を働いているらしい。かの噂にあがる剣士と同一人物か悪く見せようと企てた何者かの仕業か‥‥。いずれにしても突き止めなければならないだろう」
様々な噂から、森には多くのモンスターが生息しているらしい。そこで騎士は冒険者の協力を必要とした訳だ。
「その森でしたら、先ほど別件で依頼を貼り出す所でしたが」
捜索のための依頼を持ち寄った騎士に対し、ギルドの受付係はその一帯付近へ向けての依頼があった事を伝えた。
しかもその依頼とは、例の凄腕の剣士に関するものではないかという話だった。
何でも、謎の剣士に窮地を救われた旅人が、その人物に食料の調達を頼まれたと言うのだ。
しかしそこはモンスターの生息する森。護衛が必要だと、旅人はギルドへ依頼を申し込んだのである。
「なぜそれを先に言わない! それが件の剣士であるのなら、願ってもないこと」
騎士はこの依頼に乗じる事にした。あわよくば、大きな手柄ともなりかねない。
「この依頼、私も参加しようぞ」
「しかし、それでは噂の剣士を探す依頼は‥‥」
「こちらでも目的は果たせる。もし本当にその剣士が噂のそれと同じなら、他の冒険者には勝手な行動を取らず私に報告するようにさせればいい」
騎士はそれ以上話すことはないとばかりに、受付係の進言を遮る。
それにしても、不確実な情報とはいえ、同日にこうも都合よく事が運ぶものだろうか。
「‥‥承知しました。では後日、参加する冒険者と落ちあう場所はこちらでお伝えしましょう」
何か腑に落ちないものを感じながら、それでも受付係は職務としてそれを遂行した。
こうして、ギルドの掲示板に新たな依頼が貼り出されるのだった。
●リプレイ本文
●思案
事前の情報通り、森には多数のモンスターが生息していた。
「伏せろ!」
突然、前衛を担う騎士が叫んだ。それと同時に訪れたモンスターの一撃を、同じ前衛であるファイターのクァイ・エーフォメンス(eb7692)が受け止めた。
道中すでに何度目かの戦闘とはいえ、幸い今のところ苦戦を強いられるような事はない。
依頼人を取り囲むような陣形の中、後衛の一人、バードのリア・エンデ(eb7706)が魔法での援護を放つ。
ウィザードのキッシュ・カーラネーミ(eb0606)も、いつでも詠唱に入れる状態を保っていた。
誰もが戦闘に意識を奪われる中、ジプシーのフォルテ・ミルキィ(ea8933)だけは絶えず依頼人から目を離さない。
「‥‥杞憂ならよいですけれど」
フォルテは依頼人を少なからず警戒していた。
実は騎士と依頼人との合流の日、両人にラーンス・ロットの肖像画を見せてそれぞれの反応を窺った。
結果、騎士の態度は探し人がラーンス・ロットであることを示し、依頼人に至っては肖像画の人物が例の剣士なのだと、わざわざフォルテに知らせている。
別段それは不可解な事ではない。ただ、都合良く展開が進み過ぎているような気がした。
だから、ふと罠の可能性を考えてしまう。剣士の真偽がどうのではなく、そもそも事の発端である依頼人自体が罠の一部である可能性を。
「‥‥っは、はあ。ここです。よかった、生きて辿り着けた。この洞窟の中に剣士様がおります‥‥はあ」
何度目の戦闘を終えた頃だろうか、依頼人は何かを指差しその場にへたり込んだ。出発から3日目、息切れしながらも視界が目的地を捉えた瞬間だった。
「あらあら〜お疲れのようですね〜ここで少し休みしょ〜か?」
依頼人を案じて、リアが声をかける。返事は依頼人の疲れた表情が語っていた。
「なら洞窟へは私が代わりに行く。依頼人のことは、冒険者のお前達が見ていればいい」
護衛はここまでだと、暗にそれは告げていた。真っ先に反応したのはクァイだ。
「騎士様、それでは依頼の趣旨を違えます。旅人を護衛することが今回の依頼ではありませんか」
クァイは物怖じずに騎士へ進言する。しかし、それを騎士が聞き届けることはなかった。
「ここからは依頼の範疇ではない。王命を果たす者として、事態は急を要する」
一行から視線を外し、騎士は背を向け歩を進める。冒険者達は決断を迫られた。
「‥‥あたしは騎士さまを追いますわね。リヴィールマジックで、洞窟内の人物が何らかの魔法を使用していないか確かめるつもりですわ」
「では私も〜騎士様が先走りそうになったらメロディーで戦闘意欲を失わせます〜」
フォルテとリアの判断に、クァイは揺れた。それでも、依頼人を置いて行くわけにはいかない。
そんなクァイを横目に見ながら、キッシュも決断の後に続く。
「あたしはここで護衛を続けるわよ。あたしにとって仕事の上での最優先は、依頼人を護ることだもの」
言いつつ、本当は剣士に対して懸念する気持ちもあった。
件の剣士は、噂だけで人を動かす影響力を持った人物だ。それを利用しようとする者がいても不思議ではない。
もっとも、剣士の正体がどうあれキッシュには依頼を受けた義務を放棄するつもりはなかったが。
「‥‥私もここに残ります。仲間内で別行動を取る以上、前衛はこちらにもいた方がいいはずですので」
依頼人へ視線を移し、クァイはそう決断を下した。
神聖暦1001年11月11日―――黄昏。張り巡らされた意図は、その影を冒険者達へ音もなく落とした。
●同じ戦場で
「迂闊だったな、騎士殿。冒険者共よ」
あざ笑う声が、洞窟の外側から届く。騎士とフォルテとリアが洞窟に入ってしばらく、入り口には覆うような網が張られ、三人は閉じ込められてしまった。
見知らぬ男と依頼人が網の向こう側に立ち、キッシュとクァイは別の男達に喉元へ剣先を突き付けられている。
男達は山賊だった。もちろん、あちら側に平然と並ぶ依頼人もその一味だろう。
「貴様、謀ったというのか!」
今にも剣を抜く勢いで騎士は依頼人を睨み付けた。それを制するように、一つの手が前へ出される。手の主は山賊達の頭だった。
「おっと、それ以上動くなよ。仲間の命を見捨てるほど、騎士殿は薄情じゃあねえよな?」
断ればどうなるか、これは脅しではない。
「金品、装備品、食料まで。俺らがありがたーく頂戴してやるよ。特に騎士殿、あんたの持ち物には期待してたんだぜ?」
愉しそうに山賊頭は嗤った。初めから、これが目的だった。今回の依頼は、相次ぐ騎士達の動向を逆手に取った偽の依頼というわけである。
「くっ‥‥!」
怒りに震えながらも、騎士は動かなかった。当然、フォルテやリアも下手に動くことはできない。
「それにしても、こうも旨くいくとはな。慎重さが足りなかったなあ、騎士殿よ。王国の不祥事は、あんたらをそれほど動揺させるもんなのかねえ?」
理解しがたいと、山賊頭は指摘する。もっと騎士の目が冷静だったなら、こんな失態はなかったかもしれない。
冒険者達とて、どこかで違和感を感じながらも剣士の影に踊らされていた。
それがこの結果。かの剣士がもたらした影響力の一つ。湖に投げられた石が波紋を広げるように、何かが、今の王国内を蝕んでいる。
「バッドエンドは嫌ですぅ〜」
これまでの道中柔らかな表情を崩さなかったリアが、初めてそれを悲壮なものにした。
「‥‥‥く、こんなものっ!」
クァイも、何とかこの状況を脱しようともがいた。だが、力量と体格差は簡単に跳ね除けることができない。
「おいおい、暴れんなよ。おめぇ達はこうして手も足も出ねぇって、諦めるんだな」
クァイを拘束する賊が、揶揄するように囁く。しかしその直後、賊の思惑は大きく外れる事となる。
「ならば、これで条件は同じだ」
どこからか空気を切るような音が聞こえた。それと同時にクァイの拘束が解ける。
見れば足元には、すでに数人の賊が倒れていて。
「‥‥‥あ、貴方は‥‥!」
驚いて視線を身震いさせたのは、同じく拘束を解かれたキッシュだった。
場は突如現れたそれに圧倒される。賊と冒険者達の中、彼の周囲にだけは何人も寄せ付けない間合いがあった。
「‥‥ラーンス・ロット!」
騎士がその名を呟く。自分達の窮地に現れたのは、間違いなく円卓の騎士その人だった。
「本当にこの森にいやがったのか‥‥」
山賊頭が苦々しくラーンスを見た。少々派手に動き過ぎたせいで、墓穴を掘ったか―――山賊頭は周囲へ合図を送った。
木々の陰から、円を描くように十数人の仲間が現れる。一角だけ欠けていたそこを目にして、山賊頭はラーンスが現れたルートを察した。
「条件は、まだこっちに有利だぜ?」
ラーンスを睨み付け、山賊頭はせせら嗤った。仲間の数なら冒険者達の数倍は軽い。
そんな戦況を素早く理解し、ラーンスは逡巡することなく冒険者達へ視線を走らせた。
「今この時はお前達に剣を貸そう。不利な状況に怯むな、栄誉ある王国の騎士として共に戦うことを期待する」
ラーンスのその言葉に、クァイの剣を握る手が震えた。これは恐怖? いや、違う。これは―――武者震い。
「なにぃ?!」
賊が上げた驚愕の声。クァイのスマッシュが一人の剣を弾き飛ばす。まるで静止画像のように、それの瞬間、時間が息を潜めたように感じた。
「今の内ですわ!」
ラーンスの登場による乱戦に乗じて、フォルテは罠の網をナイフで切り開く。
「騎士様、まずはこの状況を何とかするのが先決ですよ〜?」
念のため、リアが騎士に釘を刺す。ラーンスよりも、今は状況の打破が優先なのだ。
「分かっている!」
騎士もそれだけ告げると、戦線に飛び込んでゆく。
この後数十分、一行はラーンスの存在に闘志を奮い立たされながら、同じ戦場を駆け抜けた。
神聖暦1001年11月11日―――暮夜。史実に残ることのなかった歴史の一片が、この時確かに刻まれた。
●岐路
戦闘は冒険者達の勝利をもって幕を閉じた。賊の捕縛を済ませた後、去ろうとするラーンスをキッシュが止めた。
「貴方じゃなきゃ、できないことがあるから一人で頑張ってるのよね?」
ラーンスの事情など、冒険者達が知るところではない。だがその意図には、何か理由があるのだと確信している。
しばらく、沈黙がラーンスの答えだった。キッシュはそれを肯定の意と受け取ることにした。
「ではでは騎士様、これをお持ちくださ〜い」
リアは依頼の為に持ち寄った食料と、毛布を一枚差し出した。追われる身のラーンスにとって、物資の補充はありがたい。
ただ、フォルテがラーンスの未来を占うこと、クァイが装備の手入れや修理を申し出たことは、丁重に断った。
同じ場所に、あまり長居をすることは避けたかった為だ。
「厚意に礼を欠くことをして、すまない」
ラーンスは、心持ち表情を和らげて冒険者達を並べ見た。そして黙ったままの騎士へ視線を向ける。
騎士は一瞬眉を顰め、首を振った。
「‥‥お前をここで追うつもりはない。このような失態、栄誉ある王国の騎士としては耐え難いのでな」
先程のラーンスの言葉を引用して、騎士はそっぽを向いた。
「王を頼む」
ラーンスはそれだけを言い残し、今度こそ場を去った。その足を止める者はもう誰もいない。遠ざかる背を、薄闇が覆い隠した。
「今回の探索結果を、騎士様はどのようにお知らせされるつもりでしょうか?」
クァイは騎士に尋ねた。騎士は間を置き、独り言のように答える。
「罪人であるラーンス・ロットを、私は発見することはできなかった。いたのは、噂を悪用する山賊だけだ」
騎士の言葉に、その心境の変化に、冒険者達は密かに顔を見合わせて笑った。
神聖暦1001年11月12日―――未明。噂の剣士と冒険者達は別の道を歩み、離れてゆく。
いつか、また同じ場所に立てる事を願いながら。