お届け物を取り戻せ

■ショートシナリオ


担当:初瀬川梟

対応レベル:1〜3lv

難易度:やや難

成功報酬:0 G 65 C

参加人数:8人

サポート参加人数:-人

冒険期間:09月01日〜09月06日

リプレイ公開日:2004年09月07日

●オープニング

●ルルーの話
冒険者さんたち、はじめまして。ルルーと申します。
ルルーは、見てのとおりシフール飛脚なのです。
はるばるイギリスからお手紙を運んできたんですけど‥‥ここに来る途中で、大変な目にあってしまったのです。
たまたまとおりかかった森が、ふるさとの森になんとなく似てるな〜と思って、ちょっとだけより道したのです。あ、より道って言っても、ほんとにちょっとだけですよ?
でも、その森の中で、ものすごーく大きなカラスさんに襲われてしまったのです!
そりゃもう、ほんとにおっきかったのですよ。ルルーの倍くらいあったのです。ルルーはとても怖かったけど、全速力で飛んで、なんとか逃げ切ることができたのです。大事なお手紙も必死に守って、なんとか無事だったのですが‥‥
お届け物として預かってたペンダントを、落っことしちゃったのです。
きれいな青い石のついたペンダントです。
もちろん、ルルーは森の中をいっしょうけんめい探しましたが、どうしても見つからなかったのです。おまけに、そのうちにまたカラスさんに追いかけられてしまって、泣きながら戻ってきてしまいました‥‥。
冒険者さんたち、おねがいします。
どうかルルーのかわりに、ペンダントを探してくれないでしょうか?
そのペンダントは、故郷で待ってる妹さんへの大切な贈り物なのだと、お手紙を預けてくれた人が言ってました。だから、ルルーもどうしても妹さんのところに届けてあげたいのです。
おねがいします!


●受付係の話
またカラスの被害ですか。あの辺、カラスの巣窟になってるらしくて、前にも駆除してくれって近隣の住人から依頼が来たんですよ。
カラスはきらきらしたものを集めるのが好きと言いますから‥‥もしかしたら、そのお届け物もカラスが持ってっちゃったのかもしれませんね。巣に色々溜め込んでる可能性もありますよ。
でも普通のカラスはともかくとして、大ガラスには充分に気を付けて下さいね。
何しろ、本当にでかいですから。人間の子供くらいの大きさがありますよ。

●今回の参加者

 ea0284 四十寺 紀(31歳・♂・忍者・人間・ジャパン)
 ea0957 リュカ・リィズ(27歳・♀・レンジャー・シフール・イギリス王国)
 ea1289 緋室 叡璽(30歳・♂・志士・人間・ジャパン)
 ea3115 リュミエール・ヴィラ(20歳・♀・レンジャー・シフール・モンゴル王国)
 ea4233 蒼月 惠(24歳・♀・忍者・人間・ジャパン)
 ea4475 ジュディス・ティラナ(21歳・♀・ジプシー・パラ・イスパニア王国)
 ea5480 水葉 さくら(25歳・♀・神聖騎士・人間・ジャパン)
 ea6429 レジーナ・レジール(19歳・♀・ウィザード・シフール・イスパニア王国)

●リプレイ本文

●カラスの巣さがし
 カラスたちが頻繁に飛び去る方角を目指して歩き、時折ジュディス・ティラナ(ea4475)のサンワードで距離を確認‥‥という地道な方法で、一行は少しずつ巣へと近づいていた。
 カラスたちは無闇やたらに襲ってくることはないが、頭上からの糞攻撃はなかなかに凶悪だ。
「きゃあっ‥‥また、降ってきました‥‥」
 着物の裾を汚されてしまい、水葉さくら(ea5480)は少し泣きそうな表情になる。対照的に、用意周到に笠をかぶってきた蒼月惠(ea4233)と、ちゃっかり緋室叡璽(ea1289)の頭に乗っているリュミエール・ヴィラ(ea3115)は、余裕の表情だ。
「ほらほら、ちゃんと避けてね〜」
「‥‥人の頭に乗っておいて、どうしてそんなに偉そうなんです?」
「気にしない♪ 気にしない♪」
 楽しいやり取り(?)を交わすリュミエールと緋室の脇で、四十寺紀(ea0284)がジュディスに向けてするりと巻物を広げた。
『そろそろまた距離を確認したほうが良いのではござらぬか?』
「そうねっ。おてんとさんおてんとさん、あおくてきれいないしはどこにあるのかしらっ☆」
 すると、ジュディスが首から掛けている金のペンダントは、目的地がもうすぐそこであることを告げた。
「ねぇねぇ、あれじゃない?」
 レジーナ・レジール(ea6429)が指す方向には鳥の巣と、何羽かのカラスの姿。どうやらカラスの巣に間違いないようだが、巣はひとつだけではないので、探し物がどこにあるのかは実際見て確かめなければならない。
「ひとつひとつ見て回るのは時間がかかるけど、仕方ないですね」
「私がちゃんと見張ってるしぃ、囮の人たちもいるしぃ、大丈夫だと思いますっ」
 巣を調べる役を担当するリュカ・リィズ(ea0957)は少し心配そうだが、惠が明るくフォローする。
 こうして一行は囮班と回収班の二手に分かれ、作戦開始した。

●囮作戦
 囮班は3人。ジュディスと四十寺が巣から少し離れた川辺で待機し、レジーナがそこまでカラスをおびき寄せる手はずになっている。
 レジーナはリュミエールから借りた銅鏡と、手近にあった木の枝を抱えて、カラスたちの視界を飛び回った。上手く太陽の光を反射するよう、ちらちらと銅鏡を動かしながら羽ばたいているうちに、数羽のカラスが巣を離れてレジーナを追いかけ始める。銅鏡が反射する光が目当てなのか、はたまたレジーナを餌と勘違いしているのかは分からないが、とにかくカラスを巣から引き離すことには成功したようだ。その間クリエイトファイアーで作った炎を木の枝に移しつつ、レジーナは合流地点までカラスたちを誘導していった。
「2人とも〜、つれてきたよ☆」
「ようやくあたしたちのでばんねっ☆」
 レジーナの声を聞きつけて、意気揚々と飛び出したジュディスだが‥‥レジーナの後ろから迫ってくる巨大な影を目にして、思わず大声を上げてしまった。
「きゃああぁ〜〜〜〜っ! なんでそんなにおおきいのよっ?!」
 大ガラスはレジーナを追うカラスたちにつられて、いつの間にか追撃に加わっていたらしい。話には聞いていたものの、実際に見てみるとその迫力は半端ではない。何しろジュディスとほぼ同じ大きさなのだ。
 しかし四十寺は動じることなく弓を構え、2本の矢をつがえる。放たれた矢は2羽のカラスを同時に射抜いたが、仕留めるには至らなかった。大ガラスも含めてカラスは全部で7羽。1羽ずつ相手をしていたのではきりがない。
『矢にも限りがあるでござる。レジーナ殿の魔法で何とかならぬか?』
 四十寺が広げた巻物を読んで、レジーナも頷いた。
「わかったわ、2人ともちょっと下がっててネ☆」
 レジーナの言葉通り、ジュディスと四十寺がじりじりと後退する。それを追って接近しようとするカラスに向けて、ジュディスは思い切り手を突き出した。
「おとめのてきはゆるさないんだからっ!」
 突然ジュディスの掌から放たれた光にカラスたちが怯んだ隙に、レジーナがファイアーボムの魔法を撃つ。派手な音と共に巻き起こった爆発は、容赦なくカラスたちを飲み込んでゆく。その衝撃に耐えかねて、四十寺に射られた2羽のカラスが力なく川岸に落下。他の4羽のカラスもかなりの傷を負い、よろけながら飛び去ってしまった。しかし大ガラスだけはまったくの無傷で爆煙の中から飛び出し、そのまま四十寺に襲い掛かった。まずは嘴の一撃、これは俊敏に身を引いてかわす。次に鋭い爪の攻撃が続けざまに2回。最後の一撃だけはかわしきれず、服の右袖を切り裂かれてしまったが、幸いかすり傷にしかならなかった。
 これで3対1、一気に形勢逆転だ。
 レジーナの魔法と四十寺の弓が着実に大ガラスの体力を奪い、ジュディスのライトが逃亡を阻む。逃げ場を失った大ガラスはジュディスに攻撃を仕掛けるものの、手傷を負っているせいで動きが鈍り、大した傷を与えることはできない。最後に、四十寺が放った2本の矢に次々に貫かれ、大ガラスは川の中へと墜落してしまった。
「やったわねっ☆」
「作戦成功〜♪」
 レジーナはくるくるとジュディスの周りを飛び回り、四十寺も2人と目を合わせて、ほんの少し微笑んで見せたのだった。

●奪還作戦
 リュカとリュミエールは地道に巣を調べて回ったが、巣の中にあるのはほとんどガラクタばかりだ。
「お宝ないなぁ‥‥つまんない〜」
「お宝もいいけど、今はお届けものを探すのが先ですよ」
 わいわいやりながら飛び回るうち、2人はひときわ大きな巣にたどり着いた。恐らくこれが大ガラスの巣だろう。相変わらずガラクタが多いが、そうでないものもちらほら見受けられる。その中にきらりと光る青い石を発見し、リュカは入念にそれを観察した。シンプルな銀のチェーンに、淡い青色の石。ルルーから聞いたペンダントの特徴とぴったり合うし、他に同じようなものも見当たらない。リュカは嬉しそうに微笑んで、ペンダントをマントにくるんだ。一方、リュミエールも別の意味で嬉しそうだ。
「お宝ゲット〜♪」
 小声で呟いて、傷のない装飾品をこっそり服の中に隠す。本当はもっと物色したかったのだが、あまり欲張ると重量超過になってしまうので、とりあえずは我慢だ。
「まだ使えそうなものもあるし、下に落として拾ってもらいましょうか」
「そうだね〜、じゃあ2人で持ち上げよっか」
 2人が協力して巣を持ち上げようとしたその時、バサバサと羽音が響き、上空から巨大なカラスが飛来した。その周りには3羽ほど普通のカラスもいる。大ガラスは巣を荒らす不届き者を排除しようと、容赦なく攻撃を仕掛けてきた。
「うにょおおおおおお」
 慌てて逃げ回るリュミエールの横で、リュカが素早く銅鏡を取り出してカラスたちの視界に投げつける。
「あなたたちの大好きな光り物ですよ!」
 カラスたちがそちらに気を取られた隙に、リュカはリュミエールの手を引いて急いで木陰に逃げ込んだ。そして、銅鏡を追って降下してきたカラスを、下で待機していた3人が迎え撃つ。
「俺が大ガラスの相手をしますから、2人は他の奴らを‥‥」
「はい‥‥頑張ります‥‥!」
「任せといてって感じぃ?」
 緋室が大ガラスを引き付けるようにして走り出し、惠とさくらは残ったカラスたちの相手に回った。
 頭上からの嘴攻撃は鬱陶しいことこの上ないが、多少つつかれた程度ではかすり傷にしかならない。それに凶暴ではあるものの、所詮はただの鳥。さくらの刀と惠の手裏剣が相手では大した脅威にもならず、3羽のカラスは呆気なく撃退されてしまった。
 一方、緋室は大ガラスと1対1の勝負を繰り広げていた。さすがに体が大きいだけあって、普通のカラスに比べて嘴も爪もかなりの威力だが、緋室の素早さは大ガラスのそれよりもさらに上。軽い身のこなしで次々に攻撃をかわすだけでなく、毎回確実に反撃を決め、一気に相手を追い詰めてゆく。やがて大ガラスが力尽きて地面に落ちてしまうまでには、それほど時間はかからなかった。

●作戦成功
 緋室の一存で、巣から回収した品々はギルドに預けられたのだが、盗難届けが出されているものはほとんどなかった。特別高価なものでない限り、落とし主も「まあいいか」と諦めてしまうことが多いようだ。それらの品々はまとめて売り払われ、その代金は8人全員に均等に配られることとなった。
 そして奪還したペンダントを依頼人のルルーに渡して、今回の依頼は無事終了だ。
「みなさん、本当にありがとうなのです! なんとお礼を言ったらよいのか‥‥」
「私たちは当然のことをしただけですよ。それに、ルルーとはどこかで会った気がするの。私もイギリスから来たのよ」
 リュカの言葉に、ルルーは少し驚いたようだったが、すぐにまたにこっと微笑んだ。
「もしかしたら、故郷の森ですれ違ったことがあるのかも‥‥それって、とても素敵なことなのです」
 お届けものと笑顔を無事に取り戻した小さな配達人は、お届けものを大事そうに鞄にしまって、礼儀正しく一礼した。
「それでは、配達に行ってくるのです」
「今度は寄り道しないように‥‥」
「は〜い」
 緋室に釘を刺されつつ、ルルーは遠い祖国の言葉で冒険者たちに別れを告げ、元気よく羽ばたいていった。