MY DEAR
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■ショートシナリオ
担当:紺野ふずき
対応レベル:1〜5lv
難易度:やや易
成功報酬:0 G 81 C
参加人数:8人
サポート参加人数:5人
冒険期間:06月13日〜06月16日
リプレイ公開日:2005年06月24日
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●オープニング
商人の子になんて、なりたくなかった。パパはいつだって、僕たち家族の気持ちなんておかまいなしで、商売の為に家族を犠牲にする。
僕が八歳の時に、パパは勝手にジャパン行きを決めた。ママはもちろん反対したし、僕だって「うん」って言わなかった。でも、パパは一度言い出したら聞かないんだよ。結局、泣いてる僕を引きずって、月道を越えたんだ。
いつも遊んでる友達や、酒場の裏で寝てる灰色猫のクラウド、それに雑貨屋の店先でいつも大きな欠伸をしてるジョセフさんに、マルタさん、キーン、ルイス、まだまだたくさんいるけど、僕はその中の誰一人とだって別れたくなかった。
ねぇ、僕がどんな気持ちでイギリスを離れたか、分かってくれる?
とても寂しかったし、とても悲しかったよ。だって、知らない国へ連れて行かれて、言葉さえ分からないんだもの。
向こうへ行っても、僕はしばらく泣いてた。クラウドやマルタさんが、夢に出てきたほど、イギリスが恋しかった。
パパは仕事に忙しくて、ママも早く慣れようとして頑張ってた。だから僕は、放っておかれたんだ。家の中でも外でも、僕は本当にずっとずっと泣いてた。
そうしたらね? 『エージ』が声をかけてくれたの。最初は何を言ってるか、全然わかんなかったよ。でも、すごく一生懸命になにかを話してくれた。年は僕と同じ。真っ黒な髪と目をしてて、いつもニコニコ笑ってた。
僕はなんだかエージが好きになったんだ。だって、エドに引っ越して、初めて僕に優しくしてくれたジャパンの子だったから。
それから僕は、エージと毎日遊んだ。言葉は遊んでるうちに、ちょっとずつ覚えたんだ。エージが難しいことを言わなければ、だいたい話はわかったよ。
あのね、エージも商人の子なんだ。だから、僕たちは余計、仲良くなった。
エージと遊ぶようになって、僕は毎日が本当に楽しかった。エドの街にも慣れてきて、カンブツ屋のサヨさんとか、反物屋のキスケさんとか、歩いてると声をかけてくれる知り合いもできたんだよ。
なのにさ。なのに、パパったら、今度はイギリスへ帰るって言うんだ。僕はもちろん反対したよ。ママがイギリスへ帰りたがってたのは知ってたけど、僕はエージといたかったんだ。
でも、パパはイギリスからジャパンへ行った時と同じように、嫌がる僕を引きずって月道を越えた。
少し離れてたら、僕の知ってる街は無くなってた。クラウドもいなくなってたし、ジョセフさんは息子のライアンさんに代わってた。マルタさんは結婚してどこかの村へ行ってしまって、友達も皆、新しい友達ができてたんだよ。
ねぇ、エージ。
毎日、なにしてるの? 僕は僕の国に帰ってきたはずなのに、知らないところに来ちゃったみたいな感じがしてる。
エージのいたジャパンが恋しいよ。
僕はきっといつか、立派な商人になって月道を越えるから、だから、ねぇ、エージ。その日が来るまで、絶対、僕を忘れないで。
僕も忘れないから。
大事な大事な僕の友達。
「おかしな子ね。ここを離れる時はあんなに嫌がったのに、せっかく戻ってきても外に出もしないで、一日中部屋に閉じこもってるなんて」
優しいママの手が僕の額に触れる。心配してくれるのは嬉しいけど、僕はどこも悪くない。それに、帰ってきてから一日に一回は必ず、この台詞を吐くんだから。僕は、もう聞き飽きたよ。
「ねぇ、ママ。コイルさんが『キョウト』へ行くのって、もうすぐだよね?」
僕はベッドの上で膝を抱えて、ママを見上げた。ママはハッとして胸を抑える。少し、ビックリしたみたいだった。
「まぁ、アスレイ。あなた、向こうへ戻りたいだなんて、言うんじゃないでしょうね」
「違うよ‥‥。そうしたいけど。僕、コイルさんに頼み事をしたんだ」
「なにかしら。いくら、パパのお友達とは言え、あまり無理を言っては駄目よ? 遊びに行くんじゃないんだから」
ママはベッドの脇に腰掛けて、僕の髪を撫でる。ママはパパよりもなにかを見つけるのが上手いけど、僕の枕の下に隠した手紙のことは知らない。
見つかったら怒られるだろうな。勝手にパパの紙とインクを持ち出してって。
「無理じゃないよ。コイルさんも良いって言ってくれたし。僕、エージに届けて貰いたいものがあるんだ。僕がこっちへ来るとき、エージもキョウトへ行くって言ってたでしょ? ちゃんとお店の場所も聞いたって言ったら、コイルさんも任せてくれって」
「それなら良いけれど‥‥」
「それでね、ママ。ママにも頼みがあるの」
「私にできること?」
「うん。あのね‥‥」
心配そうなママの顔を見ていると、なんだか少し可哀相な気持ちになってくる。
「あのね、お金を貸して欲しいの。僕、エージに渡す手紙と一緒に、なにか贈り物をしたいんだ。だけど、街は変わっちゃったし知ってるひともいないし、冒険者のひとなら、きっとエージが喜ぶような贈り物を考えてくれたり、色んなこと教えてくれると思うんだ」
僕はママをじっと見つめた。怒られるかと思ったけど、ママは僕を優しく睨んで、ふぅっと溜息をついた。
「‥‥アスレイ。あなた、パパの書斎に入ったのね?」
「あ」
僕がお金を貸してなんて言ったから、困ったのかと思ったけど、気がついたら秘密にしておくはずの秘密を、自分でばらしちゃったみたいだ。
ママは首を振りながら、僕の両手を握りしめた。いつもママが僕を宥めるときに使う手だ。でも、僕は負けなかった。
「お願い。書斎に入ったことはあとで謝るし、お金も絶対に返すから。僕、パパなんかに負けない商人になって、ママを楽させてあげる。だから、お願い。僕、エージに伝えたいことがあるの。僕のこと、忘れないでって。いつまでも友達でいてって」
話しているうちに、僕は悲しくなってきた。目が熱くなって、頭もボーっとのぼせた感じがした。
ママはもう一度、僕の髪を撫でてから、優しい声で言った。
「‥‥分かったわ、アスレイ。あなたの言い出したら聞かないところ、パパに良く似てきたわね。さ、直ぐにギルドへ行ってらっしゃい。のんびりしていて、月道が開いてしまったら大変だわ。冒険者の皆さんの言うことを、良く聞いて、あまり困らせちゃ駄目よ?」
ママはそう言って、少し困ったように微笑んだ。
●リプレイ本文
●材料集め
「わぁ、良い匂いがする!」
アスレイは、花売りの娘から受け取った袋を手に、ご満悦である。中には花の種と干し花が入っていた。
ラウルス・サティウゥス(eb2336)と、談議所五郎丸(ea4764)から事情を聞いた娘が、趣味で作ったものを譲ってくれたのだ。
「すまないな。とんぼ帰りさせてしまって」
「うん。商売の邪魔をしちゃったね」
二人は、往来に店を出しかけていた娘が、そこを引き上げて家へと引き返したことに、詫びと感謝を告げた。だが、以前、冒険者の世話になったことを、娘は恩義に感じているようだ。気にしないでと、二人に言った。
「お役に立てて良かったです」
「うん。すごく助かったの。月道が開くまであまり時間がないから、一から作ってると間に合わないし」
「私も、狩りへ出て手に入れるつもりだったのだが――」
少年は、筒状に丸められた『なめし革』を抱えているが、本来ならラウルスが加工して作るつもりだった。しかし、干し花と同様、『乾燥』と言う日数のかかる工程が入る為、諦めて材料を購入したのだ。
「これで十分だよ! 早く作りたいなぁ、僕」
アスレイは嬉しそうな顔で、ラウルスの手を取る。
一行は娘に礼を言い、アスレイの家を目指して再び往来を歩き始めた。
家を出た頃は、浮かない表情もちらほらと見えたアスレイだが、皆で街を周るうちに明るい笑顔が増え始めた。
「良い兆候ですね。このまま感を取り戻して、新しい絆を作り上げられるようになると良いのですが」
シーナ・ガイラルディア(ea7725)とプリムローズは顔を見合わせて微笑み、動き回るアスレイの姿を見守った。
冒険者について歩いていた彼が、いつの間にか、先頭を切って歩いているのが微笑ましい。
「あそこの階段にね、クラウドがいつも寝てたの」
「灰色の猫、でしたかしら」
「そう。すっごくおっきいんだよ?」
後ろを向いて歩きながら、アスレイはプリムローズに語る。得意気だが、どこか寂しそうだった。
「どこ行っちゃたんだろ‥‥。離れてると、変わっちゃうんだもん、皆‥‥」
ふぅ、と一つ。
ついたため息が、冒険者の耳に届く。
「実は、モノ造りって苦手なのよね‥‥」
「贈り物は贈ろうとする心が大事ですから。出来はこの際気にしてはいけません」
珍しく、アイル・ベルハルン(ea9012)は弱気であった。滋藤御門(eb0050)は諭すように声をかけながらも、悩ましげなアイルに微苦笑を隠さない。
「これが、いつか再会した時の『絆の証』となりますし」
「そうよね。教わりながら、頑張ってみるわ」
そう言って頷くアイルを見守ったが、じつのところ、御門もアイルと同じ心境であった。裁縫はあまり得意ではないのだ。
「そんなに思い詰めなくても、なんとかなるわ。ね? アスレイ君」
光月羽澄(ea2806)に呼びかけられたアスレイは、針穴に糸を通そうと苦戦している。悪戯半分に始めたことだが、いまやすっかり必至であった。家事の得意な羽澄は、一気に三人の生徒を抱え込んだようだ。
「‥‥羽澄殿、私も革袋の縫い方を教えて貰いたいのだが」
ラウルスと言う生徒が増えたが、もはや三人も四人も変わらない。ここは羽澄の腕の見せ所である。
「さ、それじゃあ、早速取りかかりましょう。デザインの方はできているかしら」
テーブルの上にアスレイの古着を並べ終えた羽澄は、アイルから、人形の図案を受け取った。三頭身ほどに縮められた、愛らしい少年の絵が描き込まれている。
「あ、良いわね」
「これ、僕?」
覗き込んだアスレイは、もじもじと恥ずかしそうに体を揺すり、顔を赤らめた。
「可愛すぎるかしら」
アイルが問うと、少年はこっくりと頷いた。幼くても、やはり男の子である。だが、これならエージも自分を忘れないでいてくれるだろうと、アスレイは人形造りに意欲を見せた。
●作業開始
「貨幣は月道を行き来するモノだからよ。二人が将来、そうなれるようにって願掛けになぁ」
二つに切断した銅貨と、細工道具を前にして、ヴァノイ・コテュ(ea8122)は言った。
綺麗に真半分、と言うわけにはいかなかったが、それが手作りの味となっている。覗き込む少年の顔に笑いかけ、ヴァノイは道具と銅貨の片割れを手渡した。
「んで、このギザギザをなくすのを、手伝って欲しいんだけども、手伝ってくれるか?」
「うん。やってみる!」
アスレイは頷き、ヴァノイの傍らの椅子を引いた。説明を受ける顔は真剣そのものだ。
小坂部小源太(ea8445)の手が、忙しなく紙面を滑り始める。
「手まで削らないように気をつけてな?」
それを横目に、ヴァノイは言った。
「うん。上手くできなくても良い?」
「おれっちも、ひとのこと言えるほどの腕はねぇからなぁ。真心と気合いをこめればなんとかならぁな!」
「でも、そうしたってこと、分かってくれるかな‥‥」
アスレイはしょんぼりと項垂れ、手の中のコインに目を落とした。会って伝えられないもどかしさが、ヴァノイにもひしひしと伝わってくる。
「大丈夫です。僕がしっかり描きとめますから」
そう言って、小源太は筆を上げ、紙面をクルリとアスレイ側へ返した。ざっとではあるが、少年の顔の輪郭が浮かび上がっている。
「僕だ!」
「こうすれば、アスレイ君がどれだけ頑張ったのかがわかりますよ」
アスレイは嬉しそうに瞳を輝かせ、腕をまくり上げた。
「じゃあ、たくさん頑張るよ!」
お腹が一杯になると、眠くなるものである。
幸いにして、五郎丸の作業は複雑ではなかった。譲って貰った干し花を袋に入れ、匂い袋を作り終えた。
「あとはどうしようかな」
「ツッ」
眠気覚ましに周囲を見回した五郎丸は、しかめ面のラウルスに目を止めた。
「どうしたの?」
「いや‥‥、ちょっと針を刺してしまってな」
深い傷ではなかったせいか、傷口と言う傷口は見あたらない。傍らのアスレイが、ラウルスと同じ顔で作業しているのが、五郎丸には微笑ましかった。
「私より器用だな」
ラウルスは、アスレイが縫い合わせた袋を見下ろした。縫い目はかなり不揃いだが、初めてにしては良くできている。
「器用ついでに、ペンダントの紐も作ってみない?」
五郎丸は端材となった革を指さした。
「そうだね。せっかく余ってるし!」
編んで強度を増すことができれば良かったが、五郎丸もアスレイもその編み方を知らない。だが、単純に細く切ると言うだけでも、少年には至難の業だ。
「まだ、太いかねぇ」
「じゃあ、もうちょっと細くする‥‥」
ヴァノイが開けた穴と見比べながら、アスレイは少しづつ形を整えてゆく。
「今はまだ、ペンダントとして首に下げられますが、再会する頃には、腕輪となっているかもしれませんね」
遠い未来を思い、シーナは笑み崩れて言った。その手は、少年の瞳と同じ色の花が咲く種を、アスレイの作った革袋に納めている。
「友情が色褪せませんように」
小さな願いをこめて口を閉じたシーナに、羽澄が作業の手を休めて言った。
「私もジャパンに大切なお友達がいるんだけど、心配で、時折、手紙を送ったりしてるの。お友達同士って、そう言うものよね。知らないところでもお互いのことを、考えているんだと思うわ」
人形のアスレイは、ジャパンで着たことのある服をまとい、青い目で羽澄の顔を見上げている。毛糸の手袋を解いて作った髪の色は、アスレイと同じ黄金色であった。
出来上がったものは、どれも不器用さが匂う。だが、気持ちは溢れるほどにこもっている。
「アスレイ君もいつか立派な商人になって、この人形と同じように、月道を越えられると良いですね」
御門の言葉に、父を思いだしたのだろう。アスレイは口をとがらせ、やや不機嫌な声で言った。
「僕は家族思いの商人になるんだ。パパみたいに、子供に寂しい思いなんて絶対にさせないよ」
指先にできた赤い点が、針との格闘のあとである。それを眺めていたアイルだが、今の言葉は聞き流せなかったようだ。
「アスレイ君」
真顔をアスレイに向けた。
「‥‥はい」
アスレイはサッと居住まいを正し、神妙な調子で返事を返す。
「そんなこと言っては駄目よ。貴方のお父様は素晴らしいと思うわ。商いと言う仕事はね、人が好きでないとやっていられないのと思うの」
「でも、僕たちはいつもイヤな思いをするよ?」
「それは、貴方やお母様の為に頑張っているからよ。お母様を見ればわかるでしょう? お父様に愛されているからこそ、お父様を愛して、理解して、異国までついていくのよ?」
アイルは怒ってはいない。ただ、アスレイに分かって欲しいだけである。
アスレイはしばらくの間、目の前に並んだ贈り物の数々を見つめていたが、小さな声でポツリと呟いた。
「わかってるよ‥‥。僕も、お仕事が上手く行ってる時の、パパの笑った顔は好きだもん‥‥」
「それを今度、パパに伝えてあげなさい。きっと、貴方に向けられる笑顔が増えると思うわ」
本当に父が嫌いなら、商人になりたいなどと口にはしないだろう。アスレイは、アイルの言葉に満足げな微笑を浮かべた。
●月道の開く日
「コイル様の旅に、神の御加護がありますよう」
シーナはそう言って十字を切った。
集まった冒険者とアスレイを前に、コイルはニッコリと笑って頷く。
「ありがとう――それじゃあ、アッシュ。これは『エージ』にしっかり届けるよ」
「うん、お願い、コイルさん。僕ね、本当は一緒に行きたいんだけど」
涙ぐむ少年の頭に、ヴァノイは手を置いた。
「ほら、せっかくの贈り物に、悲しい思いがこもっても良いのかぁ?」
アスレイはヴァノイを見上げ首を振った。ヴァノイは頷き、出立するコイルに別れの挨拶を促す。
「帰ってきたら、エージが元気だったかどうか教えてね?」
「もちろんだとも」
コイルの背中が見えなくなるまで、アスレイは名残惜しげに手を振った。
「行ってしまいましたね‥‥」
怒濤のように過ぎ去った三日間を振り返り、小源太は俯くアスレイの肩を優しく叩く。
「さぁ、元気を出してください。僕も京へ向かう予定ですので、彼と逢う機会があれば、今回の話をしてみます」
「本当? 僕もいつか行くからって言って。だから、忘れないでって」
時の流れは抗えない。変わってしまうことを恐れている少年は、そう言って泣き出した。
五郎丸はげんこつ一つ分ほどしか身長差のないアスレイの頭を、よしよしと撫でる。
「大丈夫。そんなに簡単に忘れたりはしないわ」
羽澄もしゃがみこみ、アスレイの顔を覗き込んだ。
美凪のフォーノリッヂが成功していたら、エージの様子を伝えることができたのだが、それにはあまりにも曖昧で、本人と断定もできなかったことを、御門は惜しんだ。
「‥‥あれは――」
そんなアスレイの背後を通り過ぎてゆく、四つの塊が御門の目を奪った。
「どうかした?」
振り返ったアイルの視界に映ったのは、三匹の仔猫を連れた灰色猫だ。
「そう言えば、名前だけでオスだと判断してしまったけど、まさか、メスだったの?」
「見かけなかった理由がわかりましたね」
御門は口元を綻ばせ、アスレイの袖に触れた。余計な声をたてて、逃げられてしまわないように気遣ったのだ。
それに気づいたアスレイは、何事かと問うような怪訝な顔つきで、そろそろと後ろを振り返った。
「変わらぬものがあったな」
こぼれてしまいそうなほど、大きく見開かれたアスレイの目に、ラウルスは微笑する。
そっと知らせた甲斐もなく、少年は歓喜の声を上げて立ち上がった。
「クラウド!」
驚いた仔猫たちが、転がるように逃げていった。
旅路の足が行き交った日の夕刻、奇しくも、アスレイの誕生日にあてたと言う贈り物が、ジャパンより届いた。
去りかけた冒険者たちは足を止め、アスレイが荷を開封するのを見守った。
例え、大海を隔てようとも、通い合った心を断ち切る壁にはならないのだろう。
花や似顔絵、他他他。
示し合わせたわけではないのに、想う気持ちを表したプレゼントは、贈った品々と一緒であった。