あしたへと続く道

■ショートシナリオ


担当:紺野ふずき

対応レベル:フリーlv

難易度:易しい

成功報酬:0 G 72 C

参加人数:6人

サポート参加人数:-人

冒険期間:01月06日〜01月15日

リプレイ公開日:2006年02月01日

●オープニング

 娘に、初めての子供が生まれた。待ちに待っていた初孫の誕生である。宿屋の主夫婦は喜び、一週間ほど仕事を休んで、娘を訪ねることにした。
 ところが、それまでただの一日だって、家を空けたこともなければ、仕事を休んだこともない。出かけている間の留守が、大きな不安となった。
「なぁ、お前。もしも、留守中にここが盗賊に襲われて、暖炉の中の灰以外、全て持ち出されてしまったらどうするね?」
「まぁ、怖い。そうだわ、あなた。誰か、私達の留守を守ってくれる人を雇いましょう。そうすれば、安心して出かけられますよ」
 そうして、ギルドに持ち込まれた話が、今年の最後を飾る依頼の一つとなった。

「客室や台所は自由に使って良いそうですよ。ひとの気配を絶やさないようにしてくれれば、問題はないそうですので、骨休みをするつもりで気楽に、と言っていました。宿は小高い丘の上にあって、直ぐ後ろが町になってますから、買い物や不便があれば、そちらで用を足すことができます。僕も一度、行ったことのある町ですが、至ってのどかな良いところでした」
 係員はそう説明したあと、幸せそうに目を細める。
 あれはそう、夏の始まりのこと。緑のそよぐ美しい丘で、『二人』は出会った。『彼女』は大きな荷物を抱え、真っ直ぐに延びる道の真ん中で途方に暮れていたのだ。
 ――お手伝いできることはありませんか? あぁ、僕は冒険者ギルドで働いているもので、キャメロットへ戻る途中なんです。
 あの時の妻の、心底、ホッとしたような顔は忘れない。
 ――良かった。私、旅は初めてで心細くて、引き返そうかと思っていたんです。この荷物を、キャメロットにいる叔母のところまで届けなければいけないのですけれど、私には重すぎて‥‥。
 ――そう言うことでしたら、僕が運びましょう。
 ――でも、通りすがりの、見ず知らずの方にお願いするなんて、なんだか申し訳ないわ‥‥。
 ――いいえ。困っているひとを無視するようでは、冒険者ギルドの職員は務まりません。それに、行き先も同じですし、一人で退屈していたところなんです。よろしければ、話し相手にでもなってください。
 そこから全てが始まったのだ。
「本当に、良いところでした」
 係員の吐きだした溜息は、桃色に染まっていた。

●今回の参加者

 ea2806 光月 羽澄(32歳・♀・忍者・人間・ジャパン)
 ea7725 シーナ・ガイラルディア(34歳・♂・神聖騎士・人間・イギリス王国)
 ea9012 アイル・ベルハルン(29歳・♀・ウィザード・人間・イギリス王国)
 eb2287 ソウェイル・オシラ(22歳・♂・ウィザード・エルフ・ロシア王国)
 eb3838 ソード・エアシールド(45歳・♂・神聖騎士・人間・ビザンチン帝国)
 eb3839 イシュカ・エアシールド(45歳・♂・クレリック・人間・神聖ローマ帝国)

●リプレイ本文

「ローストチキンに、それから、ロシア風のシチューも良いわよね。いつか食べた兎肉の煮込みも美味しかったけど‥‥」
 光月羽澄(ea2806)の口から出る料理の名に、ソウェイル・オシラ(eb2287)はキラキラと目を輝かせた。
 ひとしきり掃除を済ませたあとである。ソウェイルは空腹であた。
「はーちゃん、甘いお菓子もね♪」
「はいはい。じゃあ、おやつはプディングとアップルパイで良い?」
「うわーい、はーちゃん、大好きー☆」
「それと、お昼ご飯はキッシュかミートパイにして、朝食は野菜スープでどう?」
 異存はないと言うように、ソウェイルはこくこくと頷く。
 暖炉前に敷かれた毛皮の上に寝そべり、パタパタと足を揺らす。頬杖をついたソウェイルは、暖かな火と食べ物の話に上機嫌だ。
「ここに腰を下ろすと、買い物へ出たくなくなっちゃうわね」
 毛皮の手触りを楽しむアイル・ベルハルン(ea9012)に、羽澄は言った。この敷物はアイルの小さな希望だった。それが叶い、アイルはご満悦のようだ。
「本当、幸せよね。でも、お腹を満たせばもっと幸せになれるかしら?」
 意味ありげな問いかけの真意を読みとって、羽澄は立ち上がる。
「さぁ、出かけましょう」
「うん! 上着を持ってくるね!」
 ソウェイルの部屋は向かいにある。持参したウイニングイースターも飾り、自分の部屋だと言うアピールも忘れていない。
 だが、期間中は、こうして二人の部屋に入り浸っている時間の方が長いだろう。
「最後には、ここにソウ君の枕があるかもしれないわね」
「『かも』じゃなくなりそうだけど」
 アイルの冗談に、羽澄は笑い、頷いた。

「随分と冷えますね。雪にでもなるのでしょうか」
 羽澄たちと入れ違いで戻った、イシュカ・エアシールド(eb3839)は、食事の材料となる荷物を抱え直し、空を見上げた。
 空っ風の舞う空が、ひゅうひゅうと鳴いているが、地上はいたって穏やかである。
 ソード・エアシールド(eb3838)は馬の世話の手を休め、腰を起こして言った。
「どうだろうな」
 その横顔の僅かな憂いを、イシュカは見逃さなかった。
「また、考えていましたね?」
 ソードは答えず、遠くを見つめている。
 少し前まで、二人は『三人』であった。ソードとイシュカと、その間にはいつも『娘』がいた。
 血のつながりはない。だが、絆はあった。死んでしまった仲間の忘れ形見を、二人は育ててきたのである。
 その娘が、自らの意志で未来を決められるまでに成長した。彼女は冒険者を辞め、依頼で出会った子供の所に住み込みで働くことになったのだ。
「全ては、あの子のためです」
 寂しげなソードに、イシュカは言った。
 この依頼をソードが選んだのも、娘に逢いに行くと言う依頼人に、心が動いたためだ。
 忘れようとしても、忘れられないのだろう。
 それはイシュカも良くわかっていた。
「私たちと一緒にいては、彼女まで」
「わかっている‥‥」
 覆い被せて吐いたソードの言葉は、やはり寂しさが匂う。
「ソード‥‥」
 抱え直した荷からこぼれる甘いリンゴの香りが、イシュカの鼻腔をくすぐった。
 イシュカは、ソードの横顔を見つめた。
「良い材料が揃ったんです。せっかく台所が使えるのですし、腕をふるいますよ」
 そして、ポツリと漏らした。
「あの子が、料理の腕を上げていたのには驚きましたっけ‥‥」
「イシュカ」
「あ‥‥」
 ソードの視線を受けて、イシュカはばつが悪そうな微苦笑を浮かべた。
 

 玄関前を掃き出していた、シーナ・ガイラルディア(ea7725)の頭上で、ぴちぴちと賑やかな声がした。
 宿は休みを取っているが、それでも来客は訪れるようだ。シーナは屋根でさえずる小鳥たちに、微笑を浮かべた。
 六羽ほどの小さな群だ。冬の寒さに負けぬよう、羽を膨らませている。この時期は、食事の確保も大変だろう。
「少し待っていてください」
 ホウキを壁に預け、シーナは自分の部屋へ戻った。手にしたのは保存食である。中には塩漬け肉や豆のほか、木の実が入っている。
 かけた言葉は通じていないだろう。時間はかからなかったはずだが、それでも足が急いだ。
 玄関を出たシーナは、屋根を見上げてホッとした。
「良かった。去らずにいてくれましたね‥‥」
 小鳥たちはシーナの胸中も知らず、丸々とした羽毛を寄せ合っている。
 保存食の中から木の実だけを選んで取り出し、小鳥が食べやすいように小さく砕いたものを、ポーチに撒いた。しばらくして、一羽の小鳥が舞い降りた。
 シーナから一番遠い木の実をついばみ、横目で動向を窺いながら、ピョンと飛び跳ね前進する。拾い上げる動作は一瞬だ。それを繰り返して、次々と木の実を口にした。
 仲間の姿で安全を確認したのだろう。二羽、三羽と、シーナの足下に降りてくる。
 小さな小さな親睦会である。
 なにげない幸せを、シーナは神に感謝した。


「指輪やブローチはどうかしら。スカーフも良いと思うけれど」
「そうね。ジャパンではみかけないような色使いや形だし、きっと喜ぶと思うわ」
「薔薇の意匠がほどこされたものはどう? あちらでは珍しい花でしょう?」
 雑貨屋の一角を陣取って、アイルと羽澄はお土産選びに真剣である。
「直ぐ戻るね」
 当分、続きそうなことを確認して、ソウェイルはこっそりとその場を離れた。
 買い物の途中に目をつけて置いた二軒の店を回る。
 そして、大量に買いこんだお菓子を、ソウェイルは二人に見つからないように、ブルーの背中に積み込んだ。
「これも一緒に預けておくね? 皆に渡さなきゃいけないの」
 ポケットから取り出した小さな三つの袋を、お菓子の下へ潜り込ませる。ソウェイルが迷いに迷って選んだ、首飾りが入っていた。
 今はまだ使わない。
 キャメロットへ帰れば訪れるであろう、大切な友との別れの刻に渡すのだ。
 揃いのものを持てば、寂しさは薄れるだろうか。
 忘れないでいてくれるだろうか。
 羽澄の顔が心に浮かんだ。
「大丈夫だよね‥‥」
 ソウェイルは、ブルーのまだ柔らかなたてがみを撫でてやった。ブルーは首をかしげ、ソウェイルにじゃれついてくる。
「袖を引っ張っちゃ駄目だよ、ブルー」
 ソウェイルは笑った。無邪気な瞳を見下ろしていても、寂しさはやはりつきまとう。
 溜め息が漏れた。

 
 夜明けの訪れは、神聖な儀式のようだ。
 昇りくる太陽が、空の色を変えてゆく。蒼に紅が浸食し、紫に変わる。
 丘の上に吹く風は冷たい。吐く息が白く凍る。ホウキの柄を握る指先がかじかみ、感覚が鈍りかけていた。だが、それすらも忘れて、シーナは刻一刻と様変わりする色を見つめた。
 心奪われる、と言うのはこういうことを言うのだろう。
 ただ、美しいと思う。
 冬の早朝は、シーナが四季の中で最も好きな時間であった。
「掃除をしなくてはいけませんね‥‥」
 いつまでも見とれている自分に苦笑し、シーナは朝焼けに背を向けた。屋根の上にいる来客を見上げる。翼を持つ彼らの、心地よい囀りが聞こえてくる。
 いらっしゃいと声をかけ、ポーチに木の実を砕いて撒いた。舞い降りてきた小さな客人たちを見下ろし、シーナは微笑する。
 今日も、穏やかな良い一日になりそうだ。

 
 午後になり、天候が崩れてきた。厚い雲に空が覆われ初め、空気が冷たさを増す。
 風を通すため開け放っていた窓を、イシュカは閉じて回った。
 最後の窓に手をかける。どこからか聞こえてきたリュートの音色に、イシュカは微笑を浮かべた。
「やってますね」
 窓をしっかりしめて、その場を離れる。
 音を辿ると、自分の部屋の前に辿り着いた。予想通りであった。
 ソードは窓枠に腰掛け、クレセントリュートを抱いていた。
「良いところだな‥‥」
 ソードが言った。
 イシュカは頷き、ウァードネの竪琴を持ち出して、ソードの傍らへ腰掛ける。どちらも、娘から貰ったものだ。
「同じような宿に滞在したことがあったな。あの娘を引き取ることになった直後に‥‥」
「ええ、あの宿のご夫婦には、いろいろ助けられましたよね‥‥」
 落ち込んでばかりもいられないのだが、出てくるのは、やはり、過去の記憶ばかりだ。
「駄目ですよ、ソード。もっと元気を出さなければ。悪いことがあったわけではないのですから」
 ただ、寂しいだけだ。
「そうだな」
 ぽろり、弦を弾く。ソードの顔は微苦笑を浮かべている。イシュカは黙って、竪琴を掻き鳴らし始めた。
 そのメロディに、ソードは目を閉じる。
 娘を寝かせるために唄った、懐かしい子守歌の調べだ。
 思い出が溢れてくる。


 翌日は、一面の銀世界となった。
 屋根の上の来客も、さすがに来ないようだ。
 シーナが白い息を吐いていると、ソウェイルが馬小屋の方からやってきた。
「早いですね」
「うん、ブルーにご飯をあげたあと、散歩してきたの」
 見れば、あちこちにソウェイルの足跡がついている。八の字を描き、直角に折れ、とりとめもなく続くそれに、シーナは微笑した。
「先を越されてしまいましたね」
「楽しかったよ、雪遊び♪ シーナさんもどう?」
「そうですね」
 丘を見下ろしていたシーナは思わぬ浮かんだ名案に、口元を綻ばせる。
「それでは子供達も呼んで、丘の麓からここまでの道沿いを、小さな雪だるまで飾ってみましょうか」
「うわぁ、楽しそう!」
「あとで、お誘いしますから、ソウェイルさんもご一緒にいかがですか?」
「うん♪」
「では、町へ行って、子供達を誘ってまいりますね」
 外へは出ないと言う皆の言葉に甘え、シーナは一人、教会へと赴いた。
 雪の日でも子供たちは元気である。雪上で転げ回る彼らに、シーナは声をかけた。
「雪だるま?」
「ええ、小さいものをたくさん。それを道の両脇に置くんです」
 話を聞いた子供達の顔が、ぱっと明るくなる。
「僕つくれるよ! あのね、お耳もつけるの!」
「えー、雪だるまに耳なんてないよ!」
 わいわいと騒ぎを始めた子供達を鎮めることは難しい。
「思い思い好きな形で良いですよ」
 シーナは十数人の騒がしい一団を引き連れて、宿へ帰った。
「おかえりなさい☆」
 ソウェイルに迎えられ、一同は早速、雪だるま作りにとりかかる。合間に雪合戦が混じるのは、ご愛敬だろう。
「元気が良くていいですね」
「なんの騒ぎなの?」
 喧噪を聞きつけた羽澄とアイルが、窓から顔を出す。
「まぁ、雪だるまね」
「ええ、老夫婦と娘さん夫婦を模してみました」
 出入り口の傍らに、大きさの違う四つの雪だるまが立っている。そして、添えられたスノーマン人形が一つ。
「これは、お孫さんです」
「きっと、喜ぶわよ」
 アイルが目を細めて言った。
 子供達から一際高い歓声があがる。
 シーナが振り返ると、ソウェイルが転んで雪にまみれていた。それを見た子供達が、同じように雪の中に倒れて笑っている。
「どこも笑顔ですね」
 言ったシーナの顔も笑っていた。


 最後の夜だ。この旅が終われば、羽澄は故郷へ帰ってしまう。
 笑ってもはしゃいでも、寂しさを忘れきれないのだろう。ソウェイルに元気はなかった。
「お手紙書くね?」
 声が微かに震えている。羽澄が見ている前で、ソウェイルの目に涙がふくれあがってきた。
「ソウくん‥‥」
「はーちゃんと会えなくなっちゃう‥‥」
 羽澄はソウェイルの肩に手を置き、優しく抱き寄せた。泣く子をあやすように、背中をそっと撫でる。
「別れって、何度、経験しても嫌ね」
 アイルは苦い顔で言った。
 俯いたソウェイルの顎を伝い、涙がこぼれる。つられまいとして、伏せた目頭が熱い。
「あたしは、学校に戻って自己研鑽に励むつもりなの。それまでの生活に戻るわ。ハズミちゃんも、それだけのことなのよね‥‥」
 泣きじゃくるソウェイルを、羽澄は見つめている。上手い言葉は浮かばなかった。
「私も、手紙を書くわ‥‥」
 過ごした年月が楽しかった分だけ、別れには寂しさがつきまとう。
 アイルはテーブルの上に目をやった。
 料理や酒が散乱している。笑い合う自分たちの幻が、無人のイスに腰掛けていた。
 三つ並べた枕の一つに、アイルは身を横たえた。
「忘れないわ」
 ポツリと言って、目を閉じる。
「ねぇ、はーちゃん。出立前に聞いた、係員さんのことば覚えてる?」
 ソウェイルの涙は止まらない。
 肩に預けられた白髪を撫でながら、羽澄は小さく頷いた。
「幸せになる道を歩いたよ。だから、不幸にならないよね。はーちゃん、これで、サヨナラじゃないよね? ずっと、友達だよね‥‥?」
「ええ、サヨナラじゃないわ‥‥」
「良かった」
 酔いも手伝い、うとうととし始めたソウェイルの髪を撫でる。
 羽澄が顔を起こすと、アイルも眠っているようだった。
 二人の寝顔を見るのも、今日が最後だ。
 様々な思いを胸に、羽澄は目を細めた。
「この国のことも、あなた達のことも、決して忘れないわ‥‥」
 過去は思い出となり、記憶となって心のうちに留まる。
 例え、遠く離れても、絆は消えも別れもしない。
 どこにいても、どんな時でも、未来へと向かう同じ道を歩いてゆくのだ。

   *   *   *

「お仕事は休めないのかな。休めるんだったら、おにーさんも一緒にいこう☆」
「奥様も誘って、皆で行きません?」
 ソウェイルと羽澄の申し出に係員は笑って、だが、残念そうに肩をすくめた。
「楽しそうですが、お気持ちだけ。僕はここで、皆さんのお土産話を待ってます」
「そう、残念ね」
 ある老人に振り回された同士の顔を、アイルはしみじみと見つめて言った。
 冒険の数だけギルドの職員と関わってきたが、彼はその中でも特別の存在と言えるだろう。ある時は慰め、ある時は励まし、誰もが皆、出立前に、同情と労りの言葉をかけてきたのだ。
 それは、互いに労する存在を抱えた仲間の意識に近かったのかもしれない。
「そう言えば、貴方のところにはまだ、『コウノトリ』はこないのかしら」
 アイルが、素朴な疑問を投げかけた。
「貴方のことだから、お子さんにも新米ママの奥様にも、メロメロになりそうだけど」
 係員は目尻を下げ、そして、天井を見上げる。
「‥‥もしかして、おにーさん?」
 ソウェイルが首を傾げて言った。
「パパになるの?」
 その頬と耳に、うっすらと赤みがさした。
「先日、妻から話を聞いたばかりなんですけどね」
 思わぬ告白に、アイルは驚きを隠さずに言った。
「そうだったのね。おめでとう。貴方ならきっと良いパパになるわ」
「おめでとう、係員さん」
「おめでとう、おにーさん♪」
 羽澄とソウェイルから暖かい眼差しを向けられ、係員は嬉しそうだ。 
 アイル、羽澄、ソウェイル、シーナ、ソード、そして、イシュカ。一人一人の顔を見回すと、係員は言った。
「あそこは僕にとって、幸運と出逢いを運んでくれた道です。それでは、気をつけて。行ってらっしゃい」
 皆さんにも、良い未来と幸せが訪れますよう――