【聖ミカエル祭】3つのG ver.馬鹿
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■ショートシナリオ&プロモート
担当:刃葉破
対応レベル:1〜5lv
難易度:普通
成功報酬:1 G 35 C
参加人数:8人
サポート参加人数:7人
冒険期間:09月25日〜09月30日
リプレイ公開日:2006年09月28日
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●オープニング
●悪魔を退治した大天使を称える豊饒の祭り
「今年は聖ミカエル祭を盛大に行おう」
商人ギルドマスターは集まった代表者達に口を開いた。商人達は互いに顔を向け合い、何か言い淀むような表情だ。
「‥‥この時期に聖ミカエル祭を行うのですか?」
この時期に――。言いたい事はギルドマスターにも分かっていた。先の園遊会での噂はキャメロットはおろか、広い範囲に渡っている。
――悪魔の不穏な動きとラーンス・ロット卿のアーサー王への裏切りのような行為。そして円卓の騎士達の不和‥‥。
「9月29日に大天使ミカエルを称える『聖ミカエル祭』を各地で行なうのは慣わしではなかったか?」
――聖ミカエル祭。
秋の訪れたイギリスの商人達にとって一大イベントの一つである。
この祭りに欠かせないものに3つのGというものがあり、『手袋(Glove)』、『ガチョウ(Goose)』、そして『生姜(Ginger)』を指す。
手袋には、本来決闘を申し込むという意味があるが、左手の場合、市場に店を開く許可の印として成り立っていた。普段はきちんとした出店許可証が無ければ露店を開く事ができないが、この祭りに限って名目上は左手の手袋だけで済むのである。要するに、他のギルドに加入している者が出店していないかの簡単な審査はあるという訳だ。ミカエル祭の月に入ると巨大な手袋が街中に溢れ、活気に漲る。
ガチョウは、この時期収穫しやすい鳥で、饗宴などの主食として登場する。一度ローストしたガチョウに丁寧に羽を付け直してあたかも生きているような感じに見立てる料理が酒場でも見られるようになり、この料理を『イリュージョン・フード』と呼ぶ。
生姜は料理の中に添えられる薬の一つとして伝えられているが、何より、偉大な天使に捧げる供物の1つとして成り立っており、聖ミカエル祭では必要不可欠なものだ。
聖ミカエル祭が近づくに連れ、各地から露店を開くべく人々が街を訪れ、広場は活気に満ち溢れたものである――――。
商人ギルドマスターは再び口を開く。
「このように不穏な噂が流れる時だからこそ、人々の活気を向上させねばならない。聖ミカエル祭を大いに盛り上げて、噂など吹き飛ばそうではないか!」
確かに塞ぎ込んでいては、悪魔に付け入る隙を与えかねない。商人達は威勢の良い声を張り上げ、異論がない事を告げた。
「理解して頂き感謝する。しかし、承知していると思うが、祭りがあれば様々なトラブルも出るというものだ。冒険者ギルドにも力を貸して頂けねばならぬだろうな」
こうして各地へ聖ミカエル祭を行う知らせが届けられた。
そして力を貸す冒険者ギルド。
聖ミカエル祭を数日後に控えたある日、聖ミカエル祭を円滑に進めるための依頼が持ち込まれる。
依頼人は一人の商人だ。
「俺は‥‥とんでもないものを知っちまった‥‥!」
「ど、どうしたのです? 詳しくお願いします」
青ざめた表情でぽつぽつと語り始める依頼人。その言葉を一字一句聞き逃さないように耳を傾ける受付係の青年。
「ふむ、こんなもんだな」
そして時は更に遡り、数日前。
依頼人となる商人の男がキャメロットへ向かう山道を歩いている。
聖ミカエル祭で出店をする為の商品集めに奔走していたようで、中々の大荷物を背負っていた。
日もすっかりと沈み、闇に包まれ始める山道。道の両端に広がっている森から何か飛び出てきそうな雰囲気だ。
「早く帰らねぇとな‥‥」
ぶるるっと体を震わせてから足を速める男。
何かに襲われる前に山を出なければ‥‥そう急いでいた男の耳に誰かの声が聞こえたのだ。
「そういえば聖ミカエル祭だとかを行うそうだな」
男の声である。その声は山の森の中から聞こえてくる。
何故そんな所から『聖ミカエル祭』という単語が出てくるのか。男は少し気になって立ち止まってしまう。
「えぇっと、聖ミカエル祭といえば欠かせない3つのGがあるんだったな‥‥なんだっけ?」
「あー‥‥確か、1つは『根性(Gut)』じゃなかったか?」
勿論違う。だが、そんなGも悪くないなと商人が軽く微笑みながら思った直後、そんな微笑を消し飛ばす言葉が飛ぶ。
「2つめは‥‥‥『強欲(Greed)』だっけ?」
「ぶっ!?」
思わず吹き出す商人。聖ミカエルを讃える祭でそんなGが出てくるわけが無い。
だが、それよりももっと凄いGが飛び出てきた。
「で、3つめは‥‥『同性愛(Gayness)』だな」
「ぶほっ!?」
さっきより強く吹き出す商人。それと同時に月の光が森の中に差込み、先ほどからの会話の主を光で照らす。
あぁ―――それはなんて見事な―――変態。
8人の見事な筋肉を持った男達が思い思いの体勢で会話していたのである。
しかも男達は、ある者は素肌に獣の毛皮を軽く巻いているだけだったり。
またある者は木々の枝やら葉っぱやらを裸体に貼り付けているだけだったり、山の幸で構成された変態であった。
「よーし、それじゃあ俺達も聖ミカエル祭に繰り出して、3つのGを堪能しようぜ!」
「根性で動いて欲のままに美味しそうな男達を頂いちゃうって寸法っすね!」
「じゃあ当日はここ集合で。そこの山道通ってキャメロットに行こうぜ」
「山道抜けたら少し歩いてすぐだからな。いい感じだろう」
イケナイ、コノママジャマツリガメチャクチャニナッテシマウ。
せっかくの聖ミカエル祭を変態なんかに荒らさせるわけにはいかない!
商人は震える足を叱咤しながらも、山道を凄まじい速さで駆けていったのだった。
‥‥単純にその場に居たくなかったのもあるだろうが。
「と、そういうわけだ。事情を話して有志の者から金を集めてここに来たってわけだ」
「まぁ、ある意味お約束通りの変態退治ってわけですか‥‥はぁ」
最近変態が増えつつある現状に、ギルドの受付係は溜め息をつく。
「それにしてもあの山付近の変態集団‥‥‥『山々ゾクゾク』でしょうか」
「何、知ってるのか受付!?」
受付係には報告にあった集団に思い当たる節があるのか、知っている事を話す。
「えぇ、最近あの山の近辺にそう名乗る集団が現れてるそうです。何でも‥‥『山の素晴らしさを知ってゾクゾクしようぜ!』みたいな事を言って男性を山の森の中に引きずり込み‥‥」
そこまで言って目を伏せる受付係。
「そ、そんな奴らを放っておくわけにはいかない!」
「えぇ、聖ミカエル祭の為にも何としても退治しなければ」
●リプレイ本文
●祭だからこそ輝く
この日のキャメロットは聖ミカエル祭で大賑わい!
天気も祭に相応しく雲ひとつ無い良い天気。子供も大人も皆笑顔で喜んでいるぞ、良かったね!
―――そして、これはその笑顔を守る為に戦った者達の話である。
「ふふ、いるいる。まさか上から見られてるなんて思ってもないでしょうね」
空を飛んで山道を見下ろすシフール、フィオナ・ファルケナーゲ(eb5522)。
彼女が見下ろした先にいるのは8人の男の集団、『山々ゾクゾク』である。
珍妙な歌を歌いながら山道を歩くその姿は、お祭に行くのが楽しい集団に見えなくもない。
‥‥ただ、まともな服を着てない点から陽気な青年集団では片付けられないだろう。
「どうしてイギリスには男好きの変態さんしかいないのかしら?」
ふと、そんな集団を見ながら首を傾けて考えるフィオナ。
イギリス国民の名誉の為に言わせてもらうと、勿論変態しかいないわけじゃあない。
良いところより悪いところって目立つよね。つまりはそういう事なんです。
「教会は聖ミカエル祭の準備で大忙し! ボクもお手伝いで大忙し! でも変態さんが出たなら話は別! さっそくてんちゅーしに行くのだー!」
ダイモン・ライビー(ea4676)もそんなイギリスの悪い所を直すために頑張る心持ち!
ただ、イギリスの汚点である変態がいなくなって彼女が真っ当な道を歩むかどうかと聞かれたら‥‥微妙なところだろう。
そして何時も通りミミクリーで木に擬態するライビー。美味しいところになるまで見物の態勢だ。
「さて、山賊達を捕まえる為に準備をしましょうか」
「え、えぇ。そうですね。何としても絶対無事に捕まえれるように」
蒼月潮(ea5521)とグラン・ルフェ(eb6596)は、グランの持っていた狩猟セットに含まれていた罠の設置を始める。
かなり動揺しつつ作業しているグランと、それなりに落ち着いて作業をしている潮。
グランはこの依頼を受けるまで、どのような者が相手が知らなかったのだ。
自分の大事なモノが下手をしたら散ってしまう! だから必死なのだ。
一方潮は相手が何者かこの段階でもよく分かっていなかった。
「‥‥どうやら、来たようだのう」
山道の横の木陰で隠れるように木にもたれていた朱鈴麗(eb5463)が体を起こして、山道の先を見る。
そこにはもう山々ゾクゾクが目の前に。
●3つのG、手袋とガチョウと生姜に謝れ
「キャメロットにもHENTAIが増えたわね」
ふぅ、と溜め息をつきながら言うヴェニー・ブリッド(eb5868)。しかし、すぐに笑みを浮かべ。
「まあ、お祭りを騒がす悪党にはおあつらえ向きのお仕置きを用意するのだわ」
ヴェニーが手に持っている壷には一体何が入っているのだろう。
「ききき来ちゃいましたよ!?」
「不安なのはわかるけど、これでも飲んで落ち着きー」
動揺しているグランを落ち着かせる為という名目でシン・オオサカ(ea3562)が酒を勧める。
だがこの状態で勧める酒がまともなものであるわけでもなく、それは『禁断の壷』というアイテムに入れられた酒だったのだ!
その壷に入れられた濃厚な酒を飲んでしまうと脱衣衝動に駆られてしまうのだ。
「お断りします」
「つまらへんの。蒼月さんどうや?」
「あ、ありがたく頂きます」
事前にシンが危ない気配を放っている事を察知していたグランがその誘いを断ると、シンは今度は潮にその酒を勧める。
何も知らない潮はごくごくっと普通に飲んでしまったのだ。
「うん、ええ飲みっぷりや。そちらの人たちも一杯どうや?」
潮にある程度飲ませると、今度は山々ゾクゾクに酒を勧めるシン。元より酒は好物の山々ゾクゾクは嬉々としてその酒を飲み始める。
‥‥‥。
潮達が酒を飲んでからしばらくすると、禁断の壷の効果か飲んだ者は次々と脱ぎ始めたのだ!
そして露出される潮の‥‥桃のように瑞々しいお尻!
そうそれはGrapple(格闘家)Great(偉大な)Hip(尻)!
そんなものを見てしまった変態集団も大興奮、テンションがうなぎ登りだ!
「ふむ、これはおまけじゃ」
鈴麗がスクロールを広げ、幻影を見せる魔法ファンタズムを唱える。
それによって現れた幻影とは―――。
「何やってるんですか、朱さぁぁぁん!!」
グランが叫ぶのも無理はない。その幻影は‥‥やたらと筋肉質なボディで爽やかスマイルを浮かべつつポージングをしているグランの幻影だったからだ!
イギリス人のグランの幻影なのに何故か褌一丁なあたり、業が深い。
「アハハハー☆ こいつぅ★」
「HAHAHAHAHA♪」
グランの幻影やかなり際どい状態になってる潮と戯れる山々ゾクゾクの皆さん。無駄にキラキラしてるけど当然のごとく美しくない。
夢見心地のまま、足元にある罠に気づくはずも無く普通に引っかかってしまう。
そして今が好機と判断した鈴麗はプラントコントロールのスクロールを広げて唱え、木の蔓を操り、変態集団の束縛にかかる。
「お、おふぅ! だが、この山の幸の体現であるかのような縛り具合がまた良い‥‥!」
「‥‥‥うむ、間違いなく変態じゃな」
縛られて喜ぶ男の1人を見て感心したかのような顔になる鈴麗。そこ、感心するとこなのか。
今の彼女は、彼女なりの3つのGを楽しめているだろう。
ただGood(楽しい・愉快な)、Gibe(からかい)、Game(戯れ・遊び)が彼女にとっての3つのGというのはどうなのだろう。
同じく個人個人の3つのGを堪能してる者達が。
シンはまるで夢のようなというか悪夢のようなこの光景をスケッチしている。気合が入っていたり、なんともな状態になってる潮の顔を詳しく描きこんでる辺り、一体その絵をどうするつもりだと問い詰めたくなる。
Gag(冗談・さるぐつわ)、Grapple(つかみあい・格闘)、Graphic(絵のような)が彼女の3つのGらしい。
また相変わらず木に擬態して様子を観察しているライビーの3つのGは。
「にゅふふふふ腐‥‥glamourous(魅惑的な)戦い! glaring(ギラギラ光る)汗! それはまさにglorious(すばらしい)!!」
あの光景を素晴らしいと思う彼女の思考回路についていけるものは中々いない気がする。あ、でもイギリスなら結構いそうな気もする。
「それでは私の知っている『G』をお披露目するわ」
邪悪な笑みを浮かべながらヴェニーがついに壷の封印を解く! その中から出てきたのは‥‥まさしくG!
いわゆるあれというか、あのあれというか。Gという虫だ!
『英語だったらGはつかない』とかその手のツッコミは一切受け付けないものとする勢いで壷の中からどんどんGが外へ飛び出る。
彼女はそれを酒場などで捕まえたらしいが、綺麗な顔に似合わずえげつない事をするものである。
辺りにはGが飛び回り、ただでさえ悪夢のような空間であった場所はさらに阿鼻叫喚の地獄絵図となる!
「あらら、大変な事になってるわねぇ。ん〜私の場合、3つのGは‥‥きゃっ!?」
高みの見物と決め込んでいたフィオナが何か口にしようとした時にフィオナに向かって飛んでいく1匹のG。
それは何か使命を帯びた瞳でフィオナを見つめていた。具体的には『言わせはせん、言わせはせんぞぉ!』といった感じの使命を。
「そして真打は遅れてやってくる!」
颯爽と現れる、黒い夜の外套を纏った男が1人! 状況が状況だからってGみたいなんて言っちゃ駄目!
その男の名は‥‥龍一歩々夢風(eb5296)!!
「キミたちがGuildの人が言ってた変態さん気取りだネ? 俺たちはここのGatekeeper(門番)! ここがキミたちのGrave(墓場)になるのさ! キャメロットには足一本入れさせないんだから!」
言いながら夜の外套を脱ぎ捨てた龍一! その姿は真っ裸で股間にファンタスティックマスカレードを装備しているのみだ!
「それじゃあ龍たんが真の3つのGを教えてあげる! まずは『ゲイボルク』! 最高峰のゲイにのみ持つことが許される伝説の槍なんだヨ☆」
最高級品レベルの魔法の武器であるゲイボルクを振り回して山々ゾクゾクをしばいていく龍一。
謝れ! ゲイボルクを作った人に謝れ! 思わずそんな事を言いたくなってしまう大嘘だ。
「2つ目は『ギャランドゥ』! ココの毛! ココの毛!」
今度はへそ下あたりを指差しながら前衛的な踊りを披露! 思わず見とれてしまう変態集団!
「そしてぇぇぇ『ゴールデンボール』!」
股間のあたりを指差してポーズを決める龍一。コメントを控えさせてもらおう。
ポロリ。
ポーズの勢いが強すぎたのか、ファンタスティックマスカレードが取れてしまったのだ。
「いやーん! 恥ずかしい! こんなあられもない姿見られちゃったら龍たんGroom(花婿)になれないぃぃぃ! 初恋もまだなのにぃぃぃ!」
言いながら外套を羽織ってうずくまる龍一。
ドガァァン!!
そんな龍一を変態集団ごと吹き飛ばす重力波やら水弾やら。
「おや、敵かと思うたら龍一殿であったか。すまぬのう」
「おっと、すまへんなー」
重力波は鈴麗の、水弾はシンの魔法である。まったくもって反省しているようには見えない。
「くそっ!」
そして地獄の中でグランに迫る幾人もの変態! 必死に弓矢で応戦するが、ついに1人が肉薄する!
「慣れてないからね、今回だけよ?」
そんなグランを助ける為に肉薄した男にコンフュージョンをかけるフィオナ。その効果により、男はグランから逃げるように走る。
このように助かるのはまさに奇跡。今後はこのような事は起こらないだろう、いやマジで。
「よーし、それじゃあたっぷり堪能したし、これで決めます! てんちゅー★」
この混沌とした場に決着をつけるべく、1人の少女が舞う!
ライビー! そう彼女が擬態を解き、動き出した時。変態さんの大事なものはディストロイで砕かれる運命なのだ!
そしてこの度の変態も‥‥その運命を逃れる事はできなかったのであった。