これが僕らの戦いだ!
|
■ショートシナリオ
担当:刃葉破
対応レベル:フリーlv
難易度:やや易
成功報酬:0 G 52 C
参加人数:4人
サポート参加人数:2人
冒険期間:10月14日〜10月19日
リプレイ公開日:2006年10月20日
|
●オープニング
「本当‥‥子供の教育って大変なんですねぇ」
「えぇ、まったくです‥‥」
世の子持ちのお母様方が井戸端会議で話してそうな内容を話す2人の人物。
1人はまさしくお母様といった感じの風貌だが、もう1人はギルドの受付係の青年。
そう、今日もまたギルドに依頼が舞い込んできたのである。
時は少し遡って依頼人がギルドにやってきて、依頼内容を話し始めた頃。
「えぇと、もう‥‥何というか。簡単に言ってしまえば、私の子供達が立てこもってるので何とかしてほしいんですけど」
「‥‥は?」
突拍子も無い依頼内容を聞き、思わず聞き返してしまう受付係。
「あのですね。私には3人の子供がいるんですよ。それが何を思ったか、近くの森にある小屋に立てこもってしまいましてねぇ」
依頼人が住む村はキャメロットからそう遠くない場所にある村。その近くには森もあり、猟師などが寝泊りする時に使ったりする小屋があるという。性質が性質ゆえに、中は色々と雑多なもので溢れてるそうだ。
「何でも話を聞いてみると、『おやつの量を増やせ』だとか『手伝いの量を減らせ』だとか、果てには『俺達は並の人生を歩む為に生きているんじゃない』とかわけのわからない事を言いまして」
「はぁ‥‥。何とも‥‥行動力のあるお子さんで」
「それで済めばいいんですけどね。その小屋には聞いた話だと保存食もあるそうで、何日も立て篭もれるとか。こちらが要求を満たすかのような素振りを示しても、どんどん要求を跳ね上げて出てこようとしない。お手上げですよ」
「‥‥それ、単純に立て篭もりが楽しいだけじゃ?」
「そうかもしれませんがね。とにかく困ってるんですよ」
はぁ、と溜め息をつく依頼人。思わず受付係も溜め息をつきたくなったが、困っているのは相手なのでそこは我慢した。
「えーと‥‥つまり、その子供達を引きずり出して欲しいって事ですね」
「はい、そういう事です」
そうして、ある意味平和な依頼が受理されたのだった。
●リプレイ本文
●下準備
チチチチ‥‥という小鳥の囀り。
サワサワとなる風に揺れる木々の葉っぱ。
そろそろ寒くなってきた季節の爽やかな朝。
そしてとある森にある小さな小屋。今回依頼を受けた冒険者達はその小屋のすぐ傍まで来ていた。
「子供は元気な方が良いが、立て篭もりは感心出来ん。少々怖い目に会って貰おうか」
むん、と腕組みをした男、マグナ・アドミラル(ea4868)。
もし彼が怒り顔で近づけば大抵の子供は泣き出すだろう。そんな感じの大男だった。
彼の言った通り、目の前の小屋には三人の子供が立てこもっている。
立てこもっているのは長男のジョーイ、長女のドロシー、次男のヒューイの3人兄弟だ。
「おやおやまぁまぁ、やんちゃな子供達ですね〜」
そして小屋に立てこもっている子供をやんちゃ程度で済ますどう見てもマイペース、ユイス・アーヴァイン(ea3179)。
「子供は天使のように可愛い‥‥‥けど、天使の皮を被った小悪魔にもなれるからね」
ラファエル・クアルト(ea8898)の方が今回の子供達の性質を分かってるだろう。
むしろユイスがマイペースすぎるだけかもしれないが。
何はともあれ、この場に揃った大人3人。子供3人とのある意味戦いが始まるわけである。
「私達はあんた達のお母さんに、連れて帰るよう頼まれたものなんだけど〜! どうしたら出てくるわけ? 要求はー!?」
一先ず話を聞いてから‥‥そう思ったラファエルは、大声で小屋に向かって声を上げる。
その言葉から少しして小屋の中からも声が聞こえる。
「むぅ、ついに増援が来たか。しかし俺達は挫けない、俺達こそ正義! とりあえず三食昼寝ついでにおやつ付き辺りは確実に欲しいところだな!!」
「ど、どこのぐーたら貴族よ、あんた達!!」
返ってきた声に思わずズッコケそうになるラファエル。そんな贅沢な生活をしてる者は中々いない。
また返ってきた声から推測するに、今のは長男のジョーイの声だろう。
「えーと‥‥確約はできないけど、何とかお母さんと話をしてみるわ! だから出てきてくれない!?」
「いえ、まだよ! 家での仕事を私達にさせないで。子供の仕事は遊ぶ事よ!」
そして返ってくる女の子‥‥長女のドロシーの声。要求の内容はさらに跳ね上がっている。
どんどん調子に乗っている‥‥それが分かったラファエルは溜め息を吐くと、仲間2人に合図を送る。
それと同時に動き出すユイスとマグナ。彼らの目論見とは‥‥。
「飛んでいても安全とは限りませんから、私も注意しませんとね〜」
そう言いながらフライングブルームに跨ってそれを飛ぶユイス。
木々が邪魔をして中々自由には飛べないが、小屋の周りの様子を把握するには十分だ。
「ふむ、ここか‥‥よっと」
ユイスの指示に従って、怪しいロープなどに足を引っ掛けないように注意して移動するマグナ。
ついでにそのロープを指差してラファエルを呼ぶと、ラファエルがちょちょいと器用に外していく。
ちなみにロープなどの正体は‥‥勿論トラップ。工作が得意なジョーイの仕業だろう。
「お、これだな‥‥よっと」
マグナは小屋の裏側に回ると、そこに積まれていた薪を見つける。恐らく暖を取るためのものだろう。
見つけた薪をマグナを全て森の中へ持っていってしまった。隠してしまえば子供達が使用する事はできない。
ついでに汲んであるだろう水も捨てる事ができれば‥‥と考えていたが、さすがにそれは小屋の中のようだった。
その上マグナは小屋の通気窓の近くで何かごそごそと作業をしていた。
「はてさて、立て篭もり中にどんな事をしてるんでしょうか〜」
周りの様子を確認し終えたユイスは地上に降りるとスクロールを広げ、エックスレイビジョンを唱える。
透視を可能とするその力により、小屋の中の様子を確認する。
「大怪我をするようなものが仕掛けてあるとは思いませんけれど〜。念のために〜」
そしてよく見てみると、やはりトラップが仕掛けてあった。入り口付近にである。
どうやら無理矢理扉を開けようとすると中から大きめの棒が飛び出してくる仕掛けのようだ。大怪我はしないが、怪我をするかもしれないレベルのトラップだろう。
3人兄弟はぱっと見た感じ向かい合って話しているようだ。冒険者達が来た事によって今まで状況が変わっている事が分かっているからだろう。
そんな小屋の中の様子をマグナとラファエルに話すユイス。
こうして冒険者達の下準備は終わり、夜を迎えた‥‥。
●ごめんなさい
子供達は困っていた、とにかく困っていた。
もう冒険者達が来てから3日目の夜である。
薪が隠されてしまったので暖を取る事はできない。でも兄弟が引っ付けばまだ何とかなる寒さだ。
しかしそれだけではなかった。
「兄ちゃん‥‥臭いよう」
次男のヒューイの声。そう、臭かった。凄く臭かった、小屋の中がである。
それはマグナが通気窓に仕掛けた物‥‥強烈な匂いの保存食のせいである。
放置していた為、もはや食べ物としては使えないだろう。しかし、元々強烈な匂いを放つものが放置されていて、結構な悪臭を放つ物体へと化していた。
「お兄ちゃん‥‥いい匂いがするよう」
今度はドロシーの声、もちろんいい匂いとは前述の匂いとは別物である。
その匂いの正体とは‥‥。
「ふふふ‥‥こんな感じかしら」
「わぁ〜、おいしそうですね〜」
「うむ、見事なものだな」
小屋の外で食事を作っているラファエル。そう、その食事の匂いが小屋の中まで漂っているのである。
しかも料理はわざわざ良い匂いが香るものをセレクト、保存食で生活していた子供達にとってよだれものである。
そしてトドメをさすかのような‥‥。
「クスクス‥‥‥」
「うわぁっ!?」
突如小屋の中のどこかから聞こえる忍び笑い。それに驚き思わず抱きしめあう兄弟。
そう、毎晩これが聞こえてくるのだ。勿論小屋の中に兄弟以外の者がいないのは確認済みだ。
夜に聞こえる誰かの笑い声‥‥これは子供達にとって計り知れない恐怖となろう。
種明かしすれば、ユイスがヴェントリラキュイで小屋の中の物から声を発するようにしているだけなのだが。
また自分達の身を守るための罠も全て解除済みという冒険者からの宣告。
とにかく子供達にとって小屋の中は非常に辛い状況となっていた。今までの遊び感覚で立てこもっていた時とは大違いだ。
「普段、親はおぬし達の為に多くの事をして育てているのだ。親に対し意見を言うのは良いが、立て篭もり、親を困らせる物では無い。互いに謝るのだ」
と、このタイミングで声をかけるマグナ。
こうして追い詰められた状況になり、そう言われると今まで親にどれだけ頼っていたか‥‥を自覚し始めた兄弟。
そんな兄弟に追い討ちをかけるかのようなラファエルの言葉。
「お母さんに迷惑ばっかかけてどうすんの! 言うこと聞いてくれないのは、私が悪いのかしらって、お母さん泣いてたわよ!」
別にそんな風に泣いていたという事実は無い。ラファエルの嘘八百である。
しかし、この際嘘だろうとなんだろうと子供達の心を動かせればそれで良いのだ。
ギィー‥‥‥バタン。
「ごめん‥‥なさい」
●深まる絆
「まったく、あんた達は一体何をやってるんだい!」
ガツーン、という拳骨! それが更に2発!
兄弟の母親が、兄弟に落とした怒りの拳骨である。
あの後、兄弟達は冒険者達に保護され、こうして母親と面会となったわけである。
「う、うわぁぁぁん! ごめんなさぁぁい!!!」
そして封を切ったかのように一斉に泣き出す子供3人。そんな3人を母親は屈んで抱きしめると‥‥。
「‥‥ふぅ。おやつなら、ちゃんとお手伝いしたら食べさせてあげるから。ちゃんと3人で協力して頑張るんだよ?」
「うん! うん!」
ぎゅぅっと、抱きしめる母親にそれに縋り付く子供達。微笑ましい光景である。
「私も小さいときには我侭を言って、似たように部屋に立て篭もった事がありましたね〜。まぁ、師匠にあっさり扉を魔法で吹き飛ばされて、捕まえられちゃったわけですが〜。その後、全身の間接をはずされて、縄でぐるぐる巻きに縛られた挙句、山の中に置き去りにされましたよ〜。今となっては、懐かしい思い出ですね〜」
「!!!!!!???」
ポツリとユイスの洩らした呟き。それを聞いて過剰に反応する子供達。
「いやいやいやいや! さすがにそんなお仕置きはしないから安心しなさい!!」
そして母親は動揺する子供達を一生懸命安心させるのであった。