ぶっちゃけ菓子いらないんでしょうけどね

■ショートシナリオ


担当:刃葉破

対応レベル:2〜6lv

難易度:普通

成功報酬:1 G 69 C

参加人数:8人

サポート参加人数:2人

冒険期間:10月28日〜11月02日

リプレイ公開日:2006年11月01日

●オープニング

 Trick or treat!!


「あぁ、もう‥‥嫌だなぁ‥‥」
 そうぼやきながら夜のキャメロットを歩く1人の男性。
 彼を仕事が中々片付かず、夜の遅いこの時間にやっと帰る事ができるのだった。
 最近は物騒な話も聞くし、急いで帰らないと‥‥と思いながら足を速める男性。
 しかし、そんな彼の前に物騒な者は容赦なく現れたのだ。
「Trick or treat!!」
「うわぁぁ!?」
 体を黒いマントで覆った謎の人物が男の目の前に現れる。
 マントは全身を隠すように覆われており、いかにも怪しい雰囲気であった。
 そして怪人物というのを決定付ける1つのポイントが‥‥顔。
 謎の人物の顔は‥‥‥大きなカブだった。
 大きめのカブの中がくりぬかれ、それを頭に被っているのだろう。
 少々時期が早いがハロウィンにはぴったりの格好だ。
「え、えぇと‥‥ハロウィンは‥‥もう少し先、ですよね?」
「人は私をハロウィン男爵と呼ぶ‥‥」
「無視!?」
 意を決して話しかけた男性だったが、ハロウィン男爵と名乗った人物はまるで無視。
 誰がそんな風に呼ぶんだというツッコミを何とか抑えた男性は後ずさりをすると‥‥。
「そ、それじゃあこれで‥‥」
 背中を向けて走り出すがしかし!
「キィー! キィー!」
「ひぇぇぇぇぇ!!!?」
 わらわらとどこから湧いてくる、ハロウィン男爵と同じようなカブを頭につけた者達。
 体躯的にぶっちゃけゴブリンだった。きっとハロウィン男爵と心結ばれる何かがあったのだろう。
 ガシッガシッ。
 そのゴブリン達が逃げようとした男の手足をがっちりと掴み、その間にゆったりとした歩きで近づいてくるハロウィン男爵。
「お菓子をくれなきゃ‥‥イタズラするぞ?」
「お、お菓子なんて持ってませんよ!!」
 ハロウィン男爵はワキワキと怪しい指の動きをしながら近づいてくるが、持ってない物は持ってないので正直に答えるしかない男。
「それじゃあ仕方ない‥‥イタズラだ!」
 バサァッとマントを翻すハロウィン男爵。
 そのマントの下の姿は‥‥裸だった。全裸に大きなかぶを腰部分につけているだけという珍妙な格好。
 きっと、そのかぶも中をくりぬいて装着しているのだろう。細かい事は気にしちゃ駄目だ。
 やっぱりヤバイ人だ‥‥分かりきった事を確信する男、逃げる為にもがくがゴブリン達は離してくれない!
「フハハハハハハハ!!!」
 ハロウィン男爵はそのかぶを目にも止まらぬ素早さで取り外すとそれを手に持ち。
「さぁ、君にもハロウィンを楽しんでもらおうか!」
「いやぁぁぁぁぁぁ!!!!」
 哀れ、男はその腰につけられていたかぶを顔に被る事となってしまったのだった。
 その後、どんなイタズラをされたのかは‥‥まぁ、ある意味いつも通りということで。


「はい、そんなこんなでお待ちかねの変態退治ですよー」
「誰もそんなもん待ってませんよ!!」
 というわけでキャメロットギルドに依頼が持ち込まれる。
 何故か変態退治を依頼する人はいつも同じような人の気がするが気にしてはいけないんだろう。
「ハロウィンが間近に迫ってるっていうのに、変態にめちゃくちゃにされたら困りますからねー。しっかり退治してくださいね」
「何で僕が担当の時に限って変な依頼ばっか舞い込むんだ‥‥」
 それはきっと、デスティニー。

●今回の参加者

 ea4676 ダイモン・ライビー(25歳・♀・クレリック・人間・イギリス王国)
 eb2020 オルロック・サンズヒート(60歳・♂・ウィザード・エルフ・イギリス王国)
 eb5296 龍一 歩々夢風(28歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 eb6596 グラン・ルフェ(24歳・♂・レンジャー・ハーフエルフ・イギリス王国)
 eb7109 李 黎鳳(25歳・♀・武道家・人間・華仙教大国)
 eb7208 陰守 森写歩朗(28歳・♂・レンジャー・人間・ジャパン)
 eb7226 セティア・ルナリード(26歳・♀・志士・エルフ・イギリス王国)
 eb7692 クァイ・エーフォメンス(30歳・♀・ファイター・人間・イギリス王国)

●サポート参加者

神楽 香(ea8104)/ 凍扇 雪(eb2962

●リプレイ本文

●ハロウィンっていうか別物
 ハロウィンは、もともとケルトの祭「サムヘイン」と融合された形といわれて(以下略)
 とか薀蓄はこの際どうでもいいだろう。
 今回の依頼はつまりハロウィンに便乗して暴れてる変態の退治なのだから。
「街はハロウィンの準備で大忙し! ボクもお手伝いで大忙し! でもやっぱり変態さんが出たなら話は別! 今日も元気にてんちゅーしに行くのだー!」
 笑顔を振りまきながらやってきたダイモン・ライビー(ea4676)。ペットのわんころもちとにゃんころもちも元気! ちなみに犬と猫。
 ビシッと杖を構えてポーズを決め、呪文を唱えるライビー。次の瞬間‥‥彼女は大きなカブになっていた。
 ミミクリーによる変身である。街中にポツンと置いてある大きなカブ、違和感ありまくりであった。
「えぇぇぇぇ!? 擬態にすらなってないじゃないですか、それ!」
 至極当然のツッコミをいれるグラン・ルフェ(eb6596)、彼は襲い掛かってくる敵の脅威を減らそうと罠を仕掛け終えたところだった。
「まま、いいじゃないの。囮役頼んだよ」
 グランと一緒に罠を設置していたクァイ・エーフォメンス(eb7692)がグランの肩に手を置く。
「‥‥やっぱ、決定事項ですか?」
「ここはほら、相手は男しか襲わないっていうし、私達じゃ囮にもならないからね。『頑張って』ね」
 『頑張って』と妙に強調されているが、彼の未来は‥‥いや、まだ語るまい。
「これを持っておけば何とかなるような‥‥ならない気がしますが」
「どっちですか、それ」
 陰守森写歩朗(eb7208)が綺麗に包装されたお菓子や、特別な味の保存食をグランに手渡す。いわゆるハロウィンで渡すお菓子だ。
「ハロウィン男爵退治、頑張ってみよー」
 李黎鳳(eb7109)が片手をあげて言うが、お茶やお茶菓子を用意してたりして、どう見ても観戦ムードです。

●そして祭が始まる(地獄モード)
「HAHAHA☆は〜ろうぃん!」
 そして今宵も変態は踊る。
 ばっさばっさとマントを翻しながらステップを踏みやってくるハロウィン男爵。ついでに8体のゴブリン達も何故かバックダンサーのように踊りながらやってきた。ゴブリン達は罠に引っかかったような跡があったが、その顔はむしろ恍惚の色。痛いのがイイのだろう、詳しくは知らないし知りたくも無い。
「なんでイベントがあるたびにヤツラはどこからともなく現れるかなー。イベントなくても出てくるけどさ、つーかなんでいなくなんねーんだよ」
 思わずそんな独り言を呟くセティア・ルナリード(eb7226)。叩いても叩いても出てくる様はまるで黒いアレのよう‥‥と想像した所で頭をぶんぶん振って、嫌な想像を振り払った。
「とりあえず明日の平和のために、目の前のをきっちり潰さねーとなー」
 そう言う彼女だったが、彼女も黎鳳の隣でまったり観戦ムード。誰かが襲われても助ける気なぞ無さそうだ。
「あ、よかったら、みんなお茶どうぞ」
 その2人の隣に腰掛けながらお茶を入れるクァイ。カオスな状況を無視したほのぼの空間――――。
「おぉぉ、これは意外に暖かいのぅ」
 違った。オルロック・サンズヒート(eb2020)が裸に全身蜂蜜を塗り、更に股間部分にはリンゴをつけた状態でその空間でまったりしていた。カオスはどこまでいってもカオスという事なのか。ってか絶対寒いです、それ。
 裸のお爺ちゃんがお菓子になってるようだが‥‥食欲が凄い勢いで減退していくビジュアルだ。
「やる気あるんですか‥‥って、のぁ!?」
「Trick or treat!! 」
 文句を言ったグランの背後にいつの間にか迫っていたハロウィン男爵。
 お菓子をくれなきゃ悪戯するぞ‥‥と言っているわけだが、わきわきと指を動かしてるとこから悪戯する気まんまんのようだ。
「お菓子全部あげますから、イタズラしないでください」
 すかさず森写歩朗に渡されたお菓子類をハロウィン男爵に渡すグラン。
 一瞬、肩透かしを食らったかのような反応を見せたハロウィン男爵だったが。
「OK、それじゃ素敵なお菓子を頂きましょう」
「え、いや、何故俺を押さえつけるんです!? お菓子は俺ですか!?」
 逃げ出そうとするグランだが、いきなり彼の影が動き出し、グランを拘束する!
 何が起こったと周りを見渡すグラン。そんな彼の目にはニヤリと笑うセティアが見えた。
『イ・ケ・ニ・エ・だ』
 彼女の口はそう動いたように見えた。
 そしてワラワラとゴブリン達が集まってグランの四肢を拘束していく。
「ではでは、ハロウィンパーティー。スタート!」
「嫌だぁぁぁぁ!!!!」
 あぁ、救いは二度は起きないということだね。

 そしてこちらは観戦組。
「ハロウィン男爵って、新たな世界に導いてあげようっていう慈善行為に目覚めた人かな。え、違う?」
「いや、少なくとも慈善では無いだろ」
「でも、きっと新たな世界の扉を開けてくれるだろうね。男性陣に」
 クァイの疑問にセティアがツッコミをいれる。そして黎鳳は興味ある様子で見守っている。
「おー、襲われてる、襲われてる」
「あ、森写歩朗もゴブリン達に囲まれたようだぜ」
「こういう光景を見ながらのお茶もいいものだね」
 黎鳳よ、どこがいいんだ。あとお茶請けとして何故葱を用意する。
「無事囲いを脱出したようだね」
「ちっ、つまらねーなー」
「グランさんは相変わらずだけど‥‥ってあれ? オルロックさんは?」
 気づけば一緒にまったりしていた筈のオルロックがいない。
 そんなオルロックは何か壷を抱えてくんずほぐれずしてるグランやハロウィン男爵に近づいていたのだ。

「そぅれ、蜂蜜じゃぁ」
 そう、その壷に入っていたのは蜂蜜。つまりは他の男達もお菓子風にしてしまおうという事で、蜂蜜を男達にぶっかけたのだ。
 元から、何故かテカテカしていた男達が蜂蜜のせいで更にぬめぬめテカテカといった状態になった。
「蜂蜜の何ともいえない感覚が‥‥堪らん!」
「こっちは最悪だ!!」
 喜ぶハロウィン男爵、怒り泣き状態のグラン。
「燃えてきたぁぁ!」
 テンションが上がってきたのか、ついに腰のカブを外したハロウィン男爵!
 ハロウィン男爵が腰のカブを外した瞬間、今までカブに変身して転がっていたライビーの瞳がキュピーンと光る! 多分心の瞳だ!
「お、おぉぉぉぉ‥‥‥」
 それと同時にオルロックが何かに誘われるかのようにカブの方に歩いていく。
 ガシっとライビーが変身したカブの葉っぱ部分を掴み、引っ張り始めるオルロック。
「うんとこしょ どっこいしょ」
「それでもかぶは抜けません」
 気合を入れながら引っ張るがその体に大きなカブは厳しいのか中々動かない。後に続く解説の声は多分ライビーの声。どこから出してるのかは謎。
 ライビーのペットのわんころもちとにゃんころもちもオルロックと一緒にカブを引っ張るのを手伝い始める。
「いぬにねこも加わって、うんとこしょ どっこいしょ‥‥そして、やっとかぶが抜けました」
 ごろりと大きく転がるカブ、それと同時にカブが光に包まれる!
 変身を解き、光の中でポーズをビシっと決めるライビー! ここに変態の仇敵が降臨した!

●Trick or treat!! (ヤるかヤられるか)
「はぁはぁ‥‥。変態を殴れ!」
 何とかゴブリンの集団から抜け出した森写歩朗はペットのゴーレムに命令を出す。
「ま゛!」
 勿論ゴーレムは喋らない、鉄の体に何かが擦れた音だろう。そしてゴーレムは拳を――オルロックに対して振りぬいた。
「ぷほぁぁぁ!?」
「あ゛‥‥‥」
 気持ちよく吹き飛ぶオルロック、中々のダメージになる筈だ。
「えええええっと。ゴブリンに攻撃!!」
 すぐさま攻撃対象をゴブリンに変更する森写歩朗。ゴーレムはゴブリンに対して大暴れ、殴られてるゴブリンも次々に吹っ飛んでいく。嬉しそうな顔で。
「焼き菓子も‥‥いいかのぅ」
 ふらふらと立ち上がるオルロック。彼は魔法の詠唱を始め‥‥そしてファイヤーボムがハロウィン男爵に向かって飛んでいった。
「あつっ! 遠慮無しですか!?」
 勿論くんずほぐれず状態のグランもこんがりといい感じの焼き菓子になったのだが。
 そんな様子を見て満足げに微笑むオルロック‥‥が! そんな彼に一条の雷!
「んじゃ、そろそろ動き出すとするか」
 セティアの唱えたライトニングサンダーボルト。その雷はゴブリンやらハロウィン男爵やらついでに男性陣やらも薙ぎ払っていく。容赦無しとはこの事だ。
「うーん、クッキングタイムと思ったけど‥‥既にこんがり焼けちゃってるねー」
 クァイは鳴弦の弓の弦をかき鳴らしてゴブリン達の動きを止めていた。
「そこまでだ!」
 ハロウィン男爵の顔面にとび蹴りを食らわせる黎鳳。その攻撃により、ハロウィン男爵の顔のカブに大きなひび割れが入る!
 続けざまの足払い! ハロウィン男爵は避ける事敵わず、体勢を崩して地面に体を叩きつけてしまう。
 そんな大きな隙、あの仇敵が逃がすわけもなかった!
「Trick or treat!! でもアレなイタズラは許しません! というわけでくらえー! てんちゅー★」
 ライビーの唱えたディストロイ! やはりそれはハロウィン男爵のナニかを破壊し‥‥それと同時にカブも完全に割れてしまった。

●食べ物勿体無い
「うぅ‥‥ぐすっ‥‥えぐ‥‥」
 戦い終わってほぼ裸で倒れ伏しているグラン。上半身は完全にひん剥かれているが、最終防衛ラインであるズボンはギリギリで体裁を守っていた。妙に体がテカテカしていたりこんがり焼けてたりするのだが。
「変態に襲われて、変態が感染してるかもしれないからね。早期治療が大事だよ」
 黎鳳はそんなグランの背後にネギを片手に迫っていた。ぶっ刺す気満々だ。どこに、なんて野暮な事はキニシナイでおこう。
 多くの者が再起不能状態になってる中、クァイは辺りを見回して。
「このカブ‥‥捨てるしかなさそうね‥‥」
 そりゃそうだ。