華麗なる戦い―――華麗なる?

■ショートシナリオ


担当:刃葉破

対応レベル:1〜5lv

難易度:普通

成功報酬:1 G 35 C

参加人数:8人

サポート参加人数:3人

冒険期間:11月23日〜11月28日

リプレイ公開日:2006年11月30日

●オープニング

 今日も平和なキャメロットの夜。
 静寂の夜‥‥月が煌々と街を照らしている。
 あぁ、このまま平和が続けばいいのに。

「ふんふふ〜ん。わぁ〜たしは世界一の美人よぉ〜!」

 キャメロットでそんな事を願うのは無理なようだった。


 それではちょっと、今謎の声が聞こえたところを見てみよう。
 そこには大方の予想通り男らしい体格をした男(但し脱いでる)と1人の哀れな男性。
 ついでに顔に化粧を施したゴブリンが5匹ほどその2人を囲むように円になって踊っているが、細かい事は気にしない。
 変態同士何か通じるものがあるんだろう、きっと。
「どう? 私は美しいわよねぇ?」
「ひひぇぇぇぇ!!!」
 裸で迫る男。体格や顔つき自体は男らしいのだが、仕草などは女性のそれ。顔にもバリバリに濃い化粧をしていて、ただでさえ濃い雰囲気がさらに濃くなっていた。
「こんな美人に迫られてるんだからぁ、もっと喜びなさいよねっ!」
 被害者の男性を押し倒し、その上に乗るような姿勢の裸男。それにしてもこの男、ノリノリである。
「ふふ、お姉さんがいい事教えて‥‥あ・げ・る」
「やめろぉぉぉぉぉ!!!!!」
 本物の美人のお姉さんにそんな事言われたら喜ぶ男だったが、相手が相手なので当然叫ぶ。
 だがその叫びが天に届くはずもなく、お約束通り闇に消えていくだけだった。



「はいはい、今日も今日とて変態さん退治の依頼ですよー」
「またですか‥‥」
 そしてギルドに依頼に持ち込まれる。内容はやはり変態退治。
 笑顔で依頼を持ってくる依頼人の女性に比べて、受付係の青年の顔は諦めたようなものだった。
「なんとびっくり! 今回は相手の名前が分かっているんです。その名もレディア!」
「正直、どうでもいい」
 といったやり取りをしていると、そこに別の17歳ぐらいの女性が近づいてくる。
「ちょうど良かった。私もそれに関する依頼を出したいのだが」
「はい?」
 思わぬ声に気の抜けたような返事をしてしまう受付係。
「いや何、私は画家でな。良い絵のモチーフを探して旅をしているのだが‥‥中々見つからない。そこで、だ。ある意味キャメロットの特色と言われているその変態達を絵に描こうかと思ってな。私は変態自体は見たことないんだが‥‥」
「見ないでいいと思いますが」
「そんなわけでその依頼、私も同行させてもらおう。金を出せば私も依頼を出せるのだろう? そうだな、私からの注文は‥‥」
 しばしの思考。


「華麗に戦ってくれ」

●今回の参加者

 ea4676 ダイモン・ライビー(25歳・♀・クレリック・人間・イギリス王国)
 ea5521 蒼月 潮(23歳・♂・武道家・人間・華仙教大国)
 eb5296 龍一 歩々夢風(28歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 eb5522 フィオナ・ファルケナーゲ(32歳・♀・バード・シフール・フランク王国)
 eb6596 グラン・ルフェ(24歳・♂・レンジャー・ハーフエルフ・イギリス王国)
 eb7109 李 黎鳳(25歳・♀・武道家・人間・華仙教大国)
 eb7226 セティア・ルナリード(26歳・♀・志士・エルフ・イギリス王国)
 eb9078 神宮寺 黎明(35歳・♂・陰陽師・人間・ジャパン)

●サポート参加者

留菜 流笛(eb7122)/ ルナ・ルフェ(eb7934)/ サスケ・ヒノモリ(eb8646

●リプレイ本文

●もえろ 色んな意味で
 今宵もキャメロットに変態とそれを退治する為の冒険者達の戦いが始まる。
 しかし今宵は一味違った。今回はその戦いを観察し、絵を描くものがいるのだ。
 その画家の名はハールゥ。美的センスが気になる17歳の女の子。彼女の要望によって今回は華麗に戦わなければいけない。
「どうも最近、変態の相手ばっかしてる気がするぜ‥‥。なんか気をつけねーと毒されそうで怖いな」
 はぁーと溜め息をつくセティア・ルナリード(eb7226)。
「って戦う前から燃え尽きてどーすんだあたしはっ!!」
「華麗に戦えって、男性諸氏には酷よねぇ〜。合掌」
 変態の男達への悪行を知っているフィオナ・ファルケナーゲ(eb5522)の言葉。
「そうか? あの人とか結構ノリノリのようだが」
 その言葉を聞いてハールゥが指差したのは龍一歩々夢風(eb5296)。
「華麗に優雅に美しく戦えばイイのネ! まさしく龍たんの専売特許! お任せアレ」
 彼はマントで体をすっぽり包み、その下の格好が尋常じゃないのは容易に予測できる。
「彼はね。ほら、あのコとかあのコとか」
 フィオナが指差した2人の男性。それは蒼月潮(ea5521)とグラン・ルフェ(eb6596)。2人とも様子が尋常ではない。
「逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ‥‥」
 ブツブツと呟きながらしゃがみ込んでいる潮。
「今回は空気に徹します。華麗にする演出はお任せください」
 グランは巫女服を着て母親に化粧をしてもらい女装をしている。襲われない為の策だろう。肩幅などどうしても隠せない部分はあるので、見る人が見れば一発でバレるのだが。
「まぁ、変態とやらを絵に描ければ私はそれでいいのだが」
 男達の異常にはあまり関心が無いようなハールゥ。
「やっぱりイギリスといえば変態の聖地だもんね。画家としてはイギリスの象徴を描かずにはいられないんだろうね」
 変態をイギリスの象徴と決め付けるかのように言う李黎鳳(eb7109)。
「変態さんは変態さんでもオカマさんを相手にするのは久しぶりですねー。というわけではりきっていくのだー!!」
 今日も元気なダイモン・ライビー(ea4676)。
 それぞれが様々な思いを抱え、宴は始まる。

●事はエレガントに
 そして現れたレディアと5匹のゴブリン。
「あれが噂の‥‥腕が鳴るな」
 キャンバスのセットを始めるハールゥ。
「うん、それじゃあ男性陣の頑張りを見よっか」
 そう言いながらハールゥの隣に茣蓙をしき、そこに座る黎鳳。何気に暖を取る準備やお茶に茶菓子も用意してある。だが一緒に用意してある葱の意味が分からない。
「あー、あたしもそこに座らせてくれ」
「どうぞどうぞー」
 セティアも同じように茣蓙の上に座る。
「う〜ん、化粧の仕方がへたくそよね〜」
 ふとレディアの頭の上から聞こえてくる声。何事かと顔を上げてみるとそこに居たのはフィオナ。
「あんたに化粧の真髄の何が分かるっていうのよ!」
 さすがレディアだ、自分が一番だと思っているがなんともないぜ。
 これには何を言っても無駄だ、と悟ったフィオナもまったり組へと合流する。
「それじゃあ美味しい場面まで待機だ! へんしーん! まじかるちぇーんじ♪」
 ライビーもいつも通りミミクリーで変身。ドラゴンの一種に変身しようと思ったけど、詳しく知らないので無難な鳥に変身し、ゴブリン達を爪や嘴でつっついて遊んでいる。
「美味しそうな男のコがいるじゃない! きゃっ♪」
 乙女チックに両手を顎の前に持っていきポーズのレディア。直視してはいけない存在の1つに違いない。
 そんなレディアの視線の先にいるのはずずーんと黒いオーラ放出中の潮。
「お前は! お前はぁぁ!!」
 レディアの視線に気づいたのか、レディアをにらめつける潮。
「こ今度こそ奴らヤツラヲぉぉぉ、ヤってやるぅ!!!!」
 見事に壊れている。
「あらん♪ ヤってやるだなんて積極的ね!」
 レディアは胸を張り手を広げて迎え入れるポーズを取る。
「うわぁぁぁ!」
 そして何を思ったか尻を露出する潮。相変わらず桃のように瑞々しい。彼はそんな尻にオーラパワーを付与すると。
「くらぇぇぇ〜!」
 天高くジャンプ! そのままレディアに向かい急降下!
 そう、これが彼の奥義ヒップオプション! 果てしなく自爆技の気がするがツッコミ禁止だ!
 月をバックに、ついでにグランが花びらを撒き散らしており、この上なく美しい――気がした。
 ぷにゅんっ!
「あぁん!」
 それをやはりというか顔で受け止めるレディア。その顔は悦楽に染まっているものだった。結局、特にダメージを与えるわけでもなく相手を喜ばせるに終わる。
 そのまま抱きしめるようにするレディア。その力の強さに逃げられる筈も無い潮。服の中に素早く手を入れられたりしてる。
「ひっ!」
 脱出する為に自らの体越しに爆虎掌で攻撃するが、無理な体勢な為、大した威力は無くレディアは気にせず死の抱擁を続けるのだった。

「うむ、良いシーンが見れたな。忘れぬうちに早く描かねば」
 淡々と絵を描き続けるハールゥ。潮の事は気にしていない。
「あーそれにしても、マッチョなカマっての生理的に受け付けない。気持ち悪くて仕方がないぜ。神様はなにを考えてあんなわけのわからんナマモノを作っちまったんだろうなぁ」
 レディアの暴れっぷりを見ながら愚痴るセティア。そんな責任を押し付けられても神様きっと困る。
「ねね、裸婦の絵とかは描いたことある?」
「む? 描いた事はあるがそれがどうかしたか?」
 からかう目的のフィオナの発言だが、普通に受け取って普通に返答するハールゥ。
「う〜ん、つまらないわね。それじゃあちょっと刺激を増やしてみましょうか」
 ハグハグしてるレディアのところまで飛ぶフィオナ。そして唱えるはコンフュージョンの呪文。
 そう、『男を襲う』を『女を襲う』に反転しようというのだ。それでいいのか、女性として。
「うぅぅぅ‥‥!」
 潮を離し、苦しそうに喘ぐレディア。この隙に潮は場を離れるが、衣服はまるでボロ雑巾のようだった。
「私の道はぁ‥‥そう簡単に曲げられないのよ!」
 よく分からない気合でそのコンフュージョンの抵抗に成功する。

「皆頑張ってるネ! 龍たん負けられない!」
 回転しながらマントを脱ぎ捨てる龍一。その姿はオーロラのヴェールを頭に、腰にエロスカリバーを差し、更に数多の褌を重ねつけているというある意味エレガント。
 龍一はゴブリンの近くによると、腰をくいっと曲げて褌の紐を引っ張るように主張。
 言われるままにゴブリンが紐を引っ張るとそれに合わせて龍一は回転。褌すらも脱ぎさっていく!
 最後の1枚になるとヴェールも取り、すかさずレディアの元へとダッシュ! レティアに最後の1枚の紐を引っ張るように要求。
 レディアは喜びながら紐を引っ張り、最後の褌が落ちると同時にエロスカリバーを抜く龍一。ぎりぎりピンクのもやが局部を隠してくれました。
 グランはここでも花びらを撒き散らして演出担当。
「ウ、ウツクシイ‥‥!」
 ポッと頬を染めるレディア。
「うむ、華麗だな」
 先ほどの潮の情景をとりあえず絵に収めたハールゥは、今度は龍一の行動を絵に描き始める。
「うんうん、皆頑張ってるね」
 言いながら少し離れた所で待機していたグランの肩をつかむ黎鳳。
「え、ちょっ! 何を!?」
「誰でも新たな扉を開くのは怖いものだけれど、男は度胸! お姉さま方! よろしく可愛がってあげちゃって下さい!」
 ガシっと足を掴んでグルグルまわしてポーンとレディアの方へグランを投げる黎鳳。
「はーい♪」
「うわぁぁぁぁ!!?」
 抱きっ☆
 逃げ切るには経験とか予測とかそういうのが足りなかったようだ。
 そしてグランとイチャつきはじめるレディア。そんなレディアの傍に寄りながら進言する龍一。
「さあ、アナタも生まれたままの姿にナリナサイ!」
「そうよね! そうよね!」
 全裸の龍一に言葉に乗って、すぐさま全裸になるレディア。グランの服がやっぱりボロ雑巾だが気にしない。
「まだ足りないワ! もう一枚脱ぐべきモノがある‥‥そう、アナタのその厚化粧ヨ!」
「あぁっ!?」
 自分の素顔を化粧という偽りで隠していた事実をつきつけられ、驚愕のあまり膝をつくレディア。
 そしてやっぱりカマ狩りの使徒――ダイモン・ライビー――はこの隙を逃さなかった。
 鳥の姿のまま天高く上昇し、そこで変身を解除するライビー。
「でりゃあああああああああっ!!!!」
 そのまま稲妻のような蹴りをレディアの脳天にぶちかます!
 すぐさま今の様子もスケッチしはじめるハールゥ。
「あたしには華麗とかはよく分からんが‥‥そろそろ終わらせるか」
 セティアも腰をやっとあげ、魔法の詠唱に入る。
 バチバチィ!
 ゴブリン達への止めとなるライトニングサンダーボルト! 幾多の雷が敵を貫いていく!
「くぅぅぅ‥‥!」
 ライビーの強力な蹴りを頭に受けて蹲っていたレディアが顔を上げるとそこには凛々しく立つライビー!
「ダイモン・ライビー! ここに参上!」
 ビシッとポーズ! 今日の彼女は後光が見えるぐらいだ!
「オカマさん相手ならやる気も百倍! くらえー! てんちゅー★」
 大事なモノを砕くライビーのディストロイがレディアに炸裂!
「これで‥‥私はなれるのね‥‥本当の‥‥」
 バタリ。
 悪は倒れた。ついでに黎鳳は治療と称して倒れてる者全てに葱を刺しまくってた。


「うむ、良い絵が描けた皆ありがとう」
「この惨状を見て言う事はそれかー!」
 ハールゥのお礼にキレ気味の葱が刺さってる(どことは言わない)グランであった。

●後日談
 ギルドの方にハールゥが描いた絵が送られてきた。
 それは月をバックに跳んでいる潮、華麗に脱ぎまくってる龍一、イナズマキックのライビーの3枚の絵。
「こんなの、僕に一体どうしろと‥‥‥」
 受け取った受付係の青年は絵の引き取り手を募集中との事だ。