脅しに屈するな!

■ショートシナリオ&プロモート


担当:刃葉破

対応レベル:1〜5lv

難易度:普通

成功報酬:1 G 35 C

参加人数:6人

サポート参加人数:5人

冒険期間:06月27日〜07月02日

リプレイ公開日:2006年06月30日

●オープニング

――その日もまた、ギルドに悩める依頼人がやってきた。

「では、依頼をお伺いしましょう」
 ギルドの受付係の男が依頼人に尋ねる。
「はい‥‥」
 依頼人である老人はぽつりぽつりと語り始めた。


 事件が起きているのはある小さな村‥‥依頼人はその村の住人である。
 その村では農作物や狩猟により生計を立てている者が多く、賑やかではないがのどかで平和な村であった。
 しかし、そんな平和を脅かす事件が起きたのだ。
「な‥‥! これは一体何事だ!?」
 村の住人が朝、自分の畑に手入れをしようと畑に行ってみたところ、その畑が荒らされていたのだ。
 それはもう酷い有様で大丈夫なものは一つも無かったという。
「よぉー、俺達のお手伝いはどうだい?」
 下品な笑いとともに聞こえる声の方に顔を向けると、そこにはいかにもチンピラ‥といった姿の男達が居た。
「お、お前達がこれをやったのか!!」
 畑の持ち主が激昂してその男達に詰め寄る。
「あぁ、そうだぜ」
「ふざけるな!」
 畑の持ち主は目の前にいる男に向かって拳を振るう‥‥が!
「おいおい、俺達はお手伝いをしたってのに殴るってのは酷いなぁ?」
 別の男がその腕を掴んで止めたのだ。
「そうそう、やっぱりお手伝いのお礼は‥‥お金で払ってもらわなきゃな」
 また別の男が畑の持ち主のもう片方の腕を掴んで拘束する。
「とは言っても‥‥すぐに用意なんてできそうにないしな。少しぐらい待ってやるよ」
 ニヤニヤ笑いながら、正面の男が見下すように言う。
 男達は畑の持ち主を地面に叩きつけ、その場から去るように歩いた。
 そしてリーダー格と思われる男が足を止め、振り向いて言った。
「そうそう。もし払わなかったら‥‥俺達はお手伝いをまたするからな。そこらへん、周りの者にも伝えとけよ」


「つまり‥‥畑を荒らされたくなければ、お金を用意しろ‥‥そう脅してきたわけですね」
 受付係は依頼人の話を聞き、その内容を簡潔に纏めた。
「そういう事です。しかし‥‥要求を飲んでも荒らさないという保証はありませんし‥‥。かといって、私達の村には戦える者が居ないので‥‥やつらを止める事もかないません」
 依頼人は沈痛な面持ちで、沈んだ声でぽつりぽつりと話す。
「‥‥分かりました。その依頼、受け付けましょう。大丈夫です、我がギルドの冒険者達ならそんなチンピラ達、簡単に追い払ってくれるでしょう」
「おぉ、ありがとうございます!」
 依頼人は縋るように、差し出された受付係の手を握るのであった。

●今回の参加者

 ea5832 南雲 要(31歳・♂・侍・人間・ジャパン)
 ea7597 リリアクー・フルーネル(20歳・♀・クレリック・エルフ・ロシア王国)
 eb0606 キッシュ・カーラネーミ(32歳・♀・ウィザード・エルフ・フランク王国)
 eb3671 シルヴィア・クロスロード(32歳・♀・神聖騎士・人間・神聖ローマ帝国)
 eb5367 リディア・フィールエッツ(35歳・♀・ナイト・人間・ロシア王国)
 eb5451 メグレズ・ファウンテン(36歳・♀・神聖騎士・ジャイアント・イギリス王国)

●サポート参加者

斎穏 夢(ea4905)/ リマ・アティール(ea5397)/ ティアラ・フォーリスト(ea7222)/ リアナ・レジーネス(eb1421)/ エリオス・ラインフィルド(eb2439

●リプレイ本文

●戦いは情報から
 依頼を受けた一行は1日をかけて、依頼人の村に到着した。
「しかし‥‥畑を荒らしまわって、手伝ってやったんだから金を払え、払わないともっと手伝うぞ、とはまた随分な言い分だね」
「まったくね。やった事への対価はきっちり受け取ってもらわないとね? そう、連中の言う手伝いに見合ったお礼をね」
 南雲要(ea5832)があまりの事に呆れ果てて、頭を抑え呟いた言葉にキッシュ・カーラネーミ(eb0606)がクスリと笑いながら応える。
 キッシュは、チンピラは酒場あたりにでも溜まっているのでは‥‥と思い、そういう類の溜まり場に顔を出してみるが、見かける事は無かった。
 しかし、その場に居た村人からチンピラを時々村で見かけたという情報を聞く。
「へぇ、どんな人物だったの?」
 見かけたとは言っても話したわけではないので詳しい話は聞けなかったが、風貌や立ち居振る舞いから得られた印象を村人は話す。
 それによると、やはり粗暴であくどい‥‥そんな感じだったそうである。とても平和的にはいきそうにないという。
「畑を荒らしたあげくに手伝ったと言い張り報酬を要求するチンピラか‥‥許せないな、真面目に働いてる人達にこんな事をするなんて」
 リディア・フィールエッツ(eb5367)は憤り、このような目に遭う人が他にも出ないように‥ということで、村人に頼んで近隣の村への注意を呼びかける。
 これで少しは被害が減るだろうと思いながら、チンピラ達を懲らしめてこのような事は一切起こらないようにしようと胸に誓うリディア。
「悪行をしておきながら、謝礼を要求するとは恥知らずにも程があります。二度とそのような事をする気が起こらないように懲らしめましょう」
 リディアと同じくチンピラ達を許せない様子のシルヴィア・クロスロード(eb3671)。
 彼女は村に余計な被害を出したくないという事で、メグレズ・ファウンテン(eb5451)とリリアクー・フルーネル(ea7597)と共にチンピラを待ち伏せできる1本道があるかどうかを村人に聞きまわる。
 話によると、村の入り口に続く1本道があるとかで、仲間が他の村人から聞いた話をまとめるとチンピラ達はその道を通ってやってくるらしい。
「これは好都合ですね」
 仲間と打ち合わせ、そこを待ち伏せ場所にすることにしたシルヴィア。
「はい、作戦通りにいきそうですね」
 事前に決めた作戦通りにいきそうだとリリアクーは喜ぶ。
 リリアクーはなんとしてもチンピラ達を打ち倒すから‥と村人達を安心させる。
 メグレズは更に、他に被害を受けた者はいないかと村の調査を続ける。
 不幸中の幸いか、被害を受けたのは1人のみで他の村人の畑は無事であった。
「とはいえ、私達の働きによって今後の被害がどうなるか決まりますね。気を抜けません」
 そうして、今後が決まる3日目がやってきたのであった。

●戦いは交渉段階で始まっている
「ん? なんだてめぇらは」
 3日目の昼頃、6人のチンピラ達は律儀に約束どおりの時間に村に行く為に道を歩いていたところ、冒険者達に道を阻まれる。
 要とキッシュは道の横の草むらに隠れ、残りの4人が通せんぼをしている形となっていた。
 リリアクーとシルヴィアとメグレズはやや後方で待機し、リディアがチンピラ達への警告を行う。
「私達は村に雇われた冒険者。‥‥言いたい事は分かるね? 村に手を出す事は許さないよ。この警告を聞き入れないなら‥‥力ずくで排除させてもらうよ」
「ほぅ、できるもんならやってもらうじゃねぇか?」
 途端にいろめきたつチンピラ達。その様子を見てシルヴィアはさりげなく前へ出る。
「お前ら、やっちま―――」
 チンピラのリーダー格と思われる男がチンピラ達に声を飛ばそうとするが、その声が最後まで出る事は無かった。
「ふふ、これからの季節はやっぱコレでしょ? ‥‥どう? 皆まとめて涼しくしてあげるわよ?」
 それは草むらに隠れていたキッシュが唱えたアイスコフィン。その魔法により、リーダー格の男は氷の棺に封印されてしまったのだ。
 動揺するチンピラ達に向かい、メグレズは走り、槍によるソードボンバーをチンピラ達の目の前に打ち込む。
「破槍、天昇!」
 いわゆる脅し目的であり、チンピラ達にダメージは無かったのだが。
「く、くそっ! ふざけんな!」
 突然の自体に逆上したチンピラ達はダガーを手に、冒険者達へと襲い掛かる!
「やはりこうなりましたか」
 シルヴィアは剣を鞘ごと抜き、構える。またリディアもロングロッドを構える。
 シルヴィアはその鞘に納まった剣を振るい、迫ってきたチンピラの1人に叩きつける。
 勿論、抜いている状態よりも威力は落ちるが技量の差を見せ付けるには十分であった。
 ‥‥尤も鞘が剣から飛ばぬよう抑えながら戦うため、少々不恰好であったが。
「はっ!」
 リディアも襲ってきたチンピラの1人に向かい、ロッドを振るう。
 剣ではなくロッドを振るう理由はやりすぎないように‥‥という配慮だったが、その威力は実質剣を振るった時のものとあまり変わらないのであるが。
 とはいえ、チンピラもその1撃でさすがに命の危機に陥るほど弱くは無かった。心は折れたようだが。
「ちくしょう!」
 また他のチンピラがメグレズにダガーを連続して振るうが当たらず、当たったとしてもカスリ傷にしかならないものであった。
「牙刃、剽狼!」
 そんなチンピラを吹き飛ばすだけに留めるように、バーストアタックでチンピラのダガーを破壊する。
 カスリ傷とはいえ、一応怪我をしたメグレズを見てリカバーを詠唱しようとするリリアクー‥‥だが。
「‥‥集中できません」
 装備が重く、集中できなかったのでスタッフを地面に突き刺してから再度詠唱を始める。
 リカバーの詠唱が終わり、発動した頃にシルヴィアとメグレズは腰を抜かして尻餅をついている2人のチンピラの前に立つ。
「私にこれ以上剣を抜かせるつもりですか? その時は命が無いものと思うことです」
 軽く剣を引き抜き、刃を見せるシルヴィア。
「これ以上お聞き届け頂けない場合は、不作法ながら手加減が難しくなりますので、皆様には治療所で後悔なさって頂く、という形になります」
 槍の穂先をチンピラに眼前につきつけながら笑顔で言うメグレズ。
 その様子を見た2人のチンピラは武器を捨て、大人しくなった。
「何でこんな事に!?」
 武器を破壊されただけのチンピラが1人、逃げ出そうと来た道を戻る‥‥が。
「わかってるんだよ、こういう手合いは‥‥中途半端に痛めつけた上で逃がすってのが、一番後々たちが悪くなるって、ね!」
 いつの間にか逃げ道を塞ぐようにそこに要が立っていた。
「これでも食らえっ!」
 一喝しながらの剣によるソニックブーム!チンピラはそれを避けきれず、直撃。地に膝をつく事となった。
 投降するチンピラ達にシルヴィアはある紙を渡す。それにはこう書かれていた。
 自業自得、と。

●そして償い
「金を払わなければ手伝う、と言ったんだから‥‥有言実行。ちゃんと手伝ってもらおうじゃないか」
 畑作業をしているチンピラ達を見ながら笑う要。
 捕縛したチンピラ達を村に突き出し、償いをさせる為にこうなったのである。
 勿論、また悪さをしないように目を光らせて‥‥だ。
「人のお仕事を邪魔した上に、それでお金を手に入れようだなんてとっても悪いことなんですよ」
 リリアクーはそんなチンピラ達にくどくどと説法を続けている。
「分かった、分かったよ! だからこうしてるんだろ!」
 アイスコフィンの氷が解けて捕まったリーダー格の男の働きを見ながら、メグレズも畑を直す手伝いをしている。
「ふふ、悪い事はできないもの‥‥分かったかしら?」
 キッシュが艶のある笑みを浮かべながらその様子を見ていた。
 こうして、村に平和が戻ったのである。後日、この話は近隣の村にも伝わり、同じような事をする者は現れなかったという話である。