ぼうけんしゃー、うしろうしろ!
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■ショートシナリオ
担当:刃葉破
対応レベル:1〜5lv
難易度:普通
成功報酬:1 G 8 C
参加人数:8人
サポート参加人数:2人
冒険期間:12月06日〜12月11日
リプレイ公開日:2006年12月13日
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●オープニング
ここはどこかの小屋の中。そして話しているのは数人の屈強な男。
「あーあ。近くの村から盗るもん盗ってるけど、やっぱ少ねぇよなぁ」
「だよな、もっとドパーって稼げないもんかね」
「でもさすがに金持ちがいるだろう都市とかは騎士とかが怖いしな」
「何か一気に稼げる手段は無いかな」
「‥‥お、そういえば。最近の冒険者はやたらと金持ちらしいな」
「馬鹿かお前? 冒険者なんかに手を出したら返り討ちにあっちまう」
「だからなるべく駆け出しの冒険者を狙うんだよ」
「どうやって」
「いいか、俺たちがよく物を奪いにいく村の近くにゴブリンが住んでる洞窟ってのがあるらしい」
「ほうほう」
「実際、村人もそのゴブリンには困ってるらしいしな。で、そのゴブリンを退治する依頼を俺たちで出すんだよ。ゴブリン退治なんてのは駆け出し冒険者の仕事だから当然駆け出しがやってくるだろ?」
「まぁな」
「それで冒険者達が苦労してゴブリン倒して疲れてるところをガツン! どーよ?」
「完璧な作戦だな。‥‥‥俺たちに依頼を受け付けてもらう為の報酬金が用意できないという点を除けば」
「それぐらい何とかなる! 少ない報酬でも受け付けてもらえるんだからとにかくかき集めろ!」
数日後。
場所はキャメロットギルドの受付。新しい依頼がここに持ち込まれている。
そしてその依頼の内容とは‥‥。
「村の近くのゴブリン退治、ですか」
「はい、そうなんです。近くの洞窟でゴブリンが住み着きまして、悪さをしてきて村民皆が迷惑してるんですよ」
「それは大変ですね。では依頼を受け付けます。詳しい情報を教えてください」
「えーと、こんな感じですね」
依頼人は受付係に聞かれた情報をどんどん答えていく。村の場所、洞窟の場所、見かけたゴブリンの数々。
そして最後に報酬として出す為のお金を袋に入れて机に置く依頼人。
「少ない額ですみませんねぇ」
「いえいえ、苦労してるんですから仕方ないですよ。ではこちらで冒険者を募ってみますね」
「はい、ありがとうございます」
礼をしてから去っていく依頼人。
依頼人の姿が完全に見えなくなってからの受付係の一言。
「‥‥それにしても、まるで盗賊でもやってそうな顔してたな、あの人」
●リプレイ本文
●いきなり明かされる驚愕の事実!
「な、なんだってー!?」
「この村ではゴブリン退治を依頼した人は居ないはず‥‥ですか」
場所は今回の依頼の内容、ゴブリン退治をする為に訪れたゴブリンが近くに住んでいるという村。
その村の村長の家に大勢の冒険者達が大挙して話を聞いていた。
先ほど大きく叫んだのは巨漢のファイター、ヴァル・ヴァロス(eb2122)。
その次に言葉を発したのは女性のように見えなくもないがれっきとした男のエレイン・ラ・ファイエット(eb5299)、彼はただ1人イギリス語が喋れないので仲間に通訳をしてもらっている。
まず満場一致の意見での情報収集。どこかきな臭いこの依頼の裏を取る為に村長の家にやってきた冒険者達。
ディディエ・ベルナール(eb8703)がこう聞いたのだ。
「すみませ〜んゴブリン退治に来ました〜。依頼人さんに話を聞きたいのですが?」
「‥‥‥は? 何の事ですかな?」
怪訝な顔でこの発言。これがディディエの質問を聞いた村長の最初の反応である。
「え。このような人物から依頼を持ち込まれているのですが」
と留菜流笛(eb7122)が慌ててギルドの受付係から聞いた依頼人の顔の風貌など特徴を話していく。
「‥‥そもそもそのような人物はこの村には住んでおりませんが」
「しかし、前金もしっかり受け取っているのですが‥‥」
依頼人の存在を否定する村長に、確かに依頼はあった事を主張するディディエ。
「これは何か裏がありそうだ。‥‥何か分かる事は無いだろうか?」
そう呟いたのは桜乃屋周(eb8856)。ちなみに彼女はエレインと逆で男性のように見えるがれっきとした女性である。
「そういえばさっき聞きました風貌‥‥‥うーん」
「知っているのか? 無精髭を生やしていて、頬に大きな傷があって‥‥」
といった風に悩む村長に依頼人の風貌の補足をしていくヴァル。
「そんな奴が‥‥ここの近くを根城にしているという盗賊におるという話を聞いた事がある」
「盗賊だって? せっかくだしそっちもやっとくか?」
盗賊がいるという話をした村長、それを聞いたラディオス・カーター(eb8346)はついでに退治してやろうかと息巻く。
「どうして依頼人は盗賊退治ではなくゴブリン退治だけ依頼してきたのか」
報酬が足りないだけかもしれないが、と考えるラーイ・カナン(eb7636)。しかしきな臭いものが絡んでるという考えは消えない。
「もしやその依頼人が盗賊なのでは?」
と、普通では有り得ない事を言い出す陰守森写歩朗(eb7208)。
「‥‥‥」
しかし、誰もそれを否定できない。今の状況が普通ではないからだ。
「これは‥‥調べられる事は全て調べた方がいいな」
「そうですね。こういう時はやはり村の人たちのナマの声を聞かなければ」
周の提案に同意する流笛。勿論他の者達も異論は無く、聞き込みをしようと立ち上がったその時―――。
バタン!
「た、大変だ! 村の外に何だかよくわかんねぇけど鉄と岩の大きい怪物が!」
村長の家に入るなり大声で叫ぶ村人。その様子から察するに相当にやばい物を見た様子。
「何!?」
その話を聞いて慌てて立ち上がる村長。
そんな様子を見て。
「あのー‥‥すいません」
「‥‥それ、私達のペットです」
おずおずと申し訳なさそうに手を挙げる森写歩朗とディディエ。
そう、村人が見た怪物とは2人のペットであるスモールアイアンゴーレムとスモールストーンゴーレム。
村の中に入れる事はできないと判断して、村の外で待たせていたのだが結局騒がせてしまったようだ。それも仕方ない。何も知らない一般人にとって、モンスターと大して変わらない存在なのだから。
「この様子じゃあ‥‥ペットを預かってくれなんてとても言えないな」
はぁ、と溜め息をついたラディオス。こんな所にペットを預けたら双方にとってマイナスにしかならないは明白だ。
何はともあれ、騒動が一段落してからやっと聞き込みをする事ができたのだった。
ラーイの連れてる幼い熊のせいでまた一騒動あったのはここでは割愛しておく。
●まずは表向き
「盗賊も律儀ですね。洞窟の情報、わざわざ正確に教えてくれるとは」
「まったくだね。この場合は律儀というより間抜けなんだろうが。お陰でマッピングの必要は無さそうだ」
流笛は依頼人の盗賊が持ってきた洞窟の情報が間違ってた場合の事を考えて、その件についても情報収集していたのだが、村人から聞けた事は盗賊の持ってきた情報をまったく同じ。一本道じゃない場合の事を考えてマッピング作業をしていたエレインの苦労も無駄に終わりそうだ。
「依頼に信憑性を持たせようと思ったんじゃないか?」
と隊列の先頭を用心深く歩くヴァルの言葉。
「何にせよ、悪さをするゴブリン‥‥そして盗賊達を退治して村人達が安全に暮らせるようにしたいな」
殿をつとめているラーイの言葉。正に騎士らしい言葉である。
「情報ではそんなに深くない筈ですからゴブリンが出てくるとしたらそろそろですかね」
「そこを抜ければすぐ、だ」
ゴブリンはどこだろう、と流笛の言葉にすぐに返事をするエレイン。彼は予めブレスセンサーの魔法を唱えていて、生き物の呼吸を察する事ができるのだ。その彼の言葉曰く、部屋のような広い空間に出ればそこに4匹ともいるらしい。
「それでは行くぞ。準備はいいか?」
「あぁ、問題ない」
先頭のヴァルの呼びかけ。それに呼応するかのように戦闘態勢に入るラーイを始めとする冒険者達。
そして一行は広めの空間に飛び出した!
「キィー!?」
適当にまったりしていたのだろう。突然の襲撃者に驚くゴブリン達。尤も入り口付近に座ってた者は居なかったので何とか立って武器を構える事ぐらいはできたのだが。
「遅い!」
すぐさま1番近いゴブリンまで走り、大上段に振り上げた剣を重さを乗せて一気に振り下ろすヴァル! その達人級の剣技は例えどんな大振りでもゴブリン程度なら楽々当てる事ができる!
勿論避ける事なぞできずに一気に肩から大きく斬り裂かれ瀕死状態となり倒れるゴブリン。残るは3匹。
「負けてられないな!」
「ですね!」
ラーイも同じようにゴブリンに肉薄しスマッシュ! ヴァル程の腕前ではないのでさすがにそこまで大振りはできないが十分な威力である。それに続けて軽い霞小太刀で斬りつける流笛! トドメとばかりに流笛がもう一回斬りつければそれでゴブリンは戦闘不能だ。
「やるね。それでは私も‥‥ウィンドスラッシュ!」
刃を飛ばす風の魔法、ウインドスラッシュでまた別のゴブリンを斬りさくエレイン。
そう、まさに圧倒的。ゴブリンなぞ相手にならない強さである。
圧倒的な強さで一気に4匹とも片付けていく冒険者達。
「これでとりあえず受けた依頼を終了‥‥だが」
剣を納めつつゴブリンの死を確認したヴァル。すぐさま一行は外へとに走る。
●そして裏
「しかし、今更ですが‥‥来ますかね」
「どう‥‥でしょうね」
洞窟の傍にある茂みに隠れるようにして待機している森写歩朗とディディエ。その2人の視線の先にあるのは‥‥洞窟の入り口をふせぐ様にして立っている2体のゴーレム。
「あれ見て‥‥襲おうと考える奴は相当の馬鹿だよな」
同じように待機しているラディオス。彼の言う通り、ゴーレムが2体も立っているだけで威圧感は抜群だ。
「襲われないのはいいが‥‥退治できないのもそれはそれで、な」
3人から少し離れたところでやはり隠れて様子を伺ってる周。そして‥‥彼女の視界に妙な姿が入った。
「‥‥‥?」
よくよく観察すると、それは洞窟の様子を伺ってるような挙動をする男。ただの村人とは言い難い軽鎧に腰に下げた短剣。見るからに盗賊だ。
「皆‥‥盗賊が来たぞ!」
小声で仲間達に告げる周。それを聞いた他の3人も盗賊の姿を確認しつつ動き出す。
「今の所1人しか見当たりませんが‥‥」
「他の仲間はどこへ‥‥あっ!? 逃げた!?」
茂みに隠れるようにして近づく森写歩朗とディディエ。そしてディディエの言葉通り盗賊はいきなり背中を向けて走り出したのである!
「ちっ、隠れてるのがバレた様子じゃなさそうだが‥‥。ともかく追うぞ!」
ラディオスは茂みに隠れているのをやめ、追いかけるように走る! 他の者達も同様に盗賊を追いかける!
「くそっ! 何でゴブリン退治にくるような冒険者があんなもん持ってんだよ! おかしいだろ!!」
逃げながら毒づく盗賊。確かに金を持ってる駆け出し冒険者が狙いだったが、あそこまで色々と充実しているとは思いもよらなかったのだろう。一心不乱に逃げる!
だが1対4では逃げ切る事は到底不可能。あっという間に盗賊は囲まれてしまう。
さすがにこの状況をどうにかするのは無理だと判断した盗賊は両手を挙げて。
「降参だ降参! 抵抗しないから命だけは助けてくれ!」
「他の盗賊達はどうしたのです?」
戦闘態勢を崩さずに大事な事を聞くディディエ。
「村に怪物がいるって騒ぎ聞いた時点でやばいと思って逃げたよ」
「何故1人でここに?」
1人だけここにいる事を問い質す森写歩朗。
「様子見の為だよ。貧乏くじ引いちまったなぁ」
これらの話を統合して考えるにもう盗賊はこの辺にはいないらしい。
「こんな事なら駆け出し冒険者狩りなんて考えるんじゃなかったぜ」
はぁと溜め息をついて落ち込む盗賊に拳骨1つ落とすラディオス。
「俺たちをバカにしてんのか? それともギルドをバカにしてんのか?」
「舐められたものだ。これは怒るべきなのか‥‥」
カモにされていたと聞いて複雑な心境になった周であった。
その後、洞窟組と合流して然るべきところに捕まえた盗賊を引き渡した一行。
捕まえた盗賊の情報を元にアジトを別の者達が家捜ししてみたが既にもぬけのカラ。手がかりもなかったらしい。
ただ、盗賊達が戻ってきたという話も聞かないので、盗賊退治もこれはこれで成功したと言えるのだろう。