ゆきふる☆よるに
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■ショートシナリオ
担当:刃葉破
対応レベル:フリーlv
難易度:普通
成功報酬:0 G 52 C
参加人数:8人
サポート参加人数:8人
冒険期間:12月31日〜01月05日
リプレイ公開日:2007年01月07日
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●オープニング
しんしんと白い雪が降り積もる‥‥‥。
そう、キャメロットの聖夜祭。
あぁ、何か素敵な事が起こりそう!
「わぁー。ねぇねぇお姉ちゃん、雪だよー!」
「あら、本当ね」
とある小さな教会から外を見る子供達とその教会のシスターと思われる女性。
その子供達を見ながらシスターは顔を曇らせる。
(「こうして聖夜祭を過ごしているというのに‥‥私はこの貧しい子供達に何もしてあげられない‥‥何て無力なの」)
「お姉ちゃん、どうしたの?」
「んーん、何でもない」
シスターの様子を子供ながらの感覚で悟ったのか、1人の子供が聞くが、すぐにシスターは表情を笑顔にすると顔を振って誤魔化す。
子供達は貧しい子供達のようで、こうしてよく教会に集まったりするようだ。
そしてここのシスターがその面倒を見るというわけである。
精々、10人ぐらいの子供達。色々な子供達がいて、色々な騒ぎがあって、色々な笑顔があった。
今まで面倒を見てきた彼女にとって、この聖夜祭にて何もできないのが歯がゆくて仕方が無いのだろう。
尤も一番盛り上がる12月25日のジーザス聖誕祭は既に過ぎてしまってるのだが。
「さ、寒くなってきましたし窓を閉めましょう。風邪を引いたらいけませんからね」
「はーい」
シスターの言葉に従い、窓を閉めていく子供達。
ヒュウゥゥゥ‥‥。
閉めきった筈なのに、どこからかの風。そしてその風だけが原因ではない寒気!
「もう、誰ですか? ちゃんと閉めてないのは」
シスターは嫌な予感を感じつつも風が出所を見ると‥‥。
開いた扉。そして男が、立っていた。
それもまぁ、お約束なんだが、ただの男じゃあ無かった。
まず基本として裸だ。筋骨隆々だ。真っ赤な褌をつけている。
そして糸で結び付けているのか胸の頂点部には木の実がつけてあった。
頭には赤い帽子を被っている。だがそんなとこをカバーする以前にもっとカバーするところがあるだろう、と。
正気の沙汰ではない。季節柄とかそんなの色々含めて。尤も夏でも正気の沙汰ではないが。
「ひぃぃぃぃぃ!!? 皆、見ちゃいけません!!」
すかさず子供達の前に出て両手を広げて子供達の視界に入らないようにするシスター。
自分も見たくないが、子供達に見せるのはもっとやばい。
「はっはっは、シスター。お困りのようだね?」
「えぇ、困ってます! 今まさにあなたのせいで困ってます!!」
シスターの反応を無視してずんずんと近づいてくる怪しい男。
「私の名はニコラ。怪しい者ではない、ただの紳士だ」
「いやいやいやいや!!」
首をぶんぶんと横に振るシスター。純真な子供達は興味津々な顔でニコラを見ている。
「そして困っている内容は‥‥そうだな、聖夜祭なのに子供達に何もしてあげられないこと、かな?」
「ななななな何故それを!?」
「ふふふ‥‥。それならば私にお任せあれ! このニコラがとっておきのショーを催してあげるよ」
「うわぁぁぁぁ」
とっておきのショーと聞いて、目をキラキラと輝かせる子供達。純真っていいね。
「駄目です駄目です駄目です!! 何をしでかすかわかったもんじゃ――いや分かりたくないですけど!」
「もう、遠慮はいらないよ。ふふっ、それじゃあ準備があるので今夜はこれぐらいにして退散するよ、グッナイ!」
そして人の話をまったく聞かないで背を向け去っていくニコラ。
去り際に
「ふふふ、可愛い男の子が何人かいたね‥‥。さすがに今は手を出せないけど、今のうちに虜にしておけば大きくなった時に‥‥ふふ」
とか言ってたようなそうじゃなかったような。
とにかくシスターの言葉にはそれが耳に入ったようで。
「いいいいいけません!!! これは何とかしなくては!!」
「もー、変態さんは聖夜祭でも元気なんですねー」
「本当、勘弁してください」
そして舞台はキャメロットギルド。つまりはそういうわけで。
「はい、今回も変態さんをどうにかしてほしいってわけですねー」
「はいはい、いつも通り退治すればいいんでしょ」
笑顔ハツラツで言ういつも変態依頼を持ち込んでくる女性と、もう投げやりな受付係。
「それがそうもいかないんですよねー」
「何ですって?」
「いえ、恐らくニコラさんと冒険者さんが相対するときって教会だと思うんですよね。でも十中八九子供達の前なのでなるべく暴力的なのは避けてほしいとのこと」
「‥‥はぁ、それはそうですね」
「そして子供達はショーを期待しちゃって毎日瞳を輝かせちゃってるので、何とかそのついでにショーっぽいのをお願いしますだそうですー」
「‥‥‥何だかなぁ」
はぁ、と溜め息。キャメロットの未来を担う子供達は大丈夫かなぁと1人心配するギルド員だったそうな。
●リプレイ本文
●裏方からお送りします
「みんな、準備はできたー?」
「んー、もうちょっとかかるわね」
「あれ? 私の着ぐるみ知りませんか?」
「あ、これじゃないですか?」
「そろそろかのう、急がねば」
「準備カンペキー!」
ごそごそごそごそ‥‥。
これからのショーの為の準備をしている冒険者一同。てんやわんやの騒ぎになりつつも各々の準備は着々と進んでいく。
教会の中では子供達がわくわくしながらシスター達と待っている。冒険者達は別室にいるわけだ。
そして冒険者達を彼を待つ。
「ふぅ‥‥寒いですね‥‥」
長い布を頭に巻いて耳を隠すようにしながら、教会の周りの清掃をしているウルバン・ゼーンケ(eb2795)。
今回の討伐対象であるニコラを警戒するという名目で外に出て、そして外の掃除をしているわけである。
(「俺の耳をわざわざ晒して面倒を引き起こしたかないんで」)
ハーフエルフである彼の彼なりの気遣いという事だろう。
そうして清掃をしていると、ふと人影が。それも直感でただの人物ではないと悟るウルバン。
「うほっ、いい男」
「来ましたね‥‥」
姿がはっきり見えて分かる。裸をベースに褌を木の実のみをつけている変態、ニコラである。
そして何を思ったか、ウルバンはニコラに近づくと組みかかるように手を伸ばす!
「おやおや? 出会い頭に外でなんて大胆な人ですね」
「えぇい、喜ぶんじゃない! ズボンを穿かせたいだけです!」
ニコラを押し倒しながらズボンを片手に暴れるウルバン。傍目から見るとその、なんだ。
「外が騒がしいようですが―――あ」
教会の扉から出てきたシスターとばっちり目があうウルバン。ウルバンはズボン片手にニコラを組み倒してる状態なわけで。
「‥‥そのような事は神聖な教会前でしないでほしいのですが」
「ご、誤解だー!?」
「イヤん♪」
と、騒ぎはあったものの、ショーの参加者の最後の1人であるニコラの到着。
彼が教会の中に入ると、中は薄暗くてよく見えない様子。
「これは‥‥?」
そんなニコラの疑問に答えるように、教会の明かりが灯る。
●開幕、まるごとファイブ!
「こーんにちはー! みんな元気かなー! 今日は来てくれてありがとー!」
「わー!!」
明かりが灯り、立っていたのは1人の女性。出るところは出ていて引っ込む所は引っ込んでいる美人のお姉さん。
何を隠そうダイモン・ライビー(ea4676)である。いつもの一部の人に受けそうな体型とは全然違うが、お約束のミミクリーだ。
そんなライビーのかけ声に子供達も元気に声を出している。
「これは一体‥‥!?」
ニコラが狼狽していると、ライビーが1枚の褌を取り出す。
「な、なーんと! 怪盗レヲなるどから予告状だー!」
その褌に書かれていた文字は何と!
『今夜まるやきを頂きに参上しマッスルvvv』
‥‥凄く頭が悪そうな文章だ。
「くぅ‥‥怪盗なんかに盗まれるわけにはいかないの‥‥!」
予告状を読み上げるのと同時に大きな鳥の丸焼きが現れる! その正体はまるごとまるやきを着込んだカイト・マクミラン(eb7721)!
そしてそれを追いかけるように現れる巨大などことなくデビルちっくなヤギ! その正体はやはりまるごとレヲなるどを着込んだ龍一歩々夢風(eb5296)!
「おいしそうなまるやきタン! 食べちゃうゾ〜!」
「さあ大変! 悪の怪盗レオなるどが現れてしまいました! みんなでまるごとファイブを呼んでみよう! せーの! たすけてー! まるごとファイブぅー!」
「まるごとファイブー!!」
ライビーのかけ声に合わせて一斉に大声で叫ぶ子供達、そしてその声を聞いてヒーローはやってくる!
「天が呼ぶ! 地が叫ぶ! 悩める貴方をキュートにお助け、着ぐるみだいぶつ、ただいま参上!」
まずはまるごとだいぶつを着込んだメグレズ・ファウンテン(eb5451)! 恥ずかしさを抑えつつポーズを決めるそのいじらしさに教会で大仏は如何なものだろうというツッコミをする気も失せていく!
「あ、その口上いいっすね。自分も考えておけば――っと、まるごとぺがさす参上!」
続けて現れたるはまるごとぺがさすの陰守森写歩朗(eb7208)!
「変身! すたぁレンジャー! じゃーじゃーじゃー」
教会に響く声を発しながらすたっと現われ、すたっと着こんで変身! まるごとすたぁのセルゲイ・ギーン(ea6251)!
まるごとすたぁと言えば壁際にまるごとすたぁを着せてるが、どう見てもはみ出ているゴーレムがあるが気にしてはいけない!
「そして最後のヒーローは君だー!」
ライビーがビシっと指差したのはニコラに他ならない!
「わ、私ですと!?」
「この劇でヒーローになったらカワイイオトコノコたちのハートをドキューンズキューン☆ダヨ?」
「やる」
戸惑い気味のニコラにぼそっと耳打ちする龍一、その言葉を聞いて即決心するニコラ。
いそいそと用意されたまるごときのこを着込むニコラ。
「まるごとファイブ! ここに集結!!」
ドーンという効果音! そのような演出担当はウルバンだ。
ちなみにヒロインのまるごとまるやきも含めてのまるごとファイブだ。男のカイトがヒロインだとか統一性が全然無いメンバーだとか細かい事は気にしちゃ駄目なんだ!
●何が正義で何が悪か(どうでもいい)
「それではあなたがリーダーです」
「当然ですね」
メグレズがニコラをリーダーに任命し、当然のようにリーダーになるニコラ。
「リーダーよ。あの剣があれば、レヲなるどを退けられる。あれを抜くのじゃ」
どこぞの老魔術師が助言するかのようにシリアスな顔で告げるセルゲイ。でもまるごとすたぁ故に緊張感無し。
そんなセルゲイの指したあの剣とは、1本のツリーの傍に刺さっている剣!
そのツリーはどっからどう見てもゴーレムが着ぐるみのツリーを着ているようにしか見えないが、誰も気にしてないので気にしないのが正解なのだろう。
「まるで伝説の主人公になった気分ですね。‥‥はっ!」
剣を抜くニコラ! そして!
「こ、この思いは一体‥‥!?」
発生するピンクのもや、脱ぎ始めるニコラ! そう、彼が抜いた剣はエロスカリバー! 抜くと脱ぎたくなる魔剣!
「はいはーい、皆さん見ないようにねー」
森写歩朗は軍配で子供達に有害な物が見えないようにカバー。シスターも必死になって隠している。
「こ、これはぁぁぁぁ―――ぐはぁ!?」
素っ裸になってしまったニコラの咆哮! そんなニコラに突っ込むかのように動き出したツリーに扮したゴーレムの拳がニコラの顔面に!
「今よ! 囲んでおしまい!」
今がチャンスとばかりのカイトの指示、それに従うように一斉にニコラを囲むまるごと達。子供達からは何が行われてるかはさっぱり見えない。
どこすかどかすかと手が動いたり足が動いたりと大騒ぎ、意外と気持ちいいかもとか声が中から聞こえてるが全員無視。ついでに2体のゴーレムも囲みに参加している。
カイトはフルートで何ともコミカルな音楽を奏でて場を盛り上げる。
そして囲みが解ける‥‥。
「あ、あれ、もうお終い‥‥ってあれ?」
中にいたニコラの格好は裸ではなく何故かまるごとレヲなるどを着込んだ状態。最初にそれを着ていた龍一はいつの間にかまるごときのこを着込んでいる。入れ替わった形だ。
この場面でカイトの奏でる音楽が変わる! どこか寂しい音楽に‥‥。
「ニコラ‥‥久しぶりでござる」
「!? ‥‥そう、ね」
どこからか現われたまるごとネズミーを着込んだ6人目のヒーロー‥‥葉霧幻蔵(ea5683)。
その姿を見たニコラは驚き、そして伏目がちに答える。
幻蔵は思いを馳せる、そうあの日へと‥‥。
「いかないで‥‥」
「拙者は忍び‥‥貴殿とは暮らせぬ」
「そんな!?」
「さらば!」
「あのー、本当にそんな事あったんですか?」
「無いでござる」
「ついノリで」
メグレズの疑問に即行で答える幻蔵とニコラ。
「6人目が出てきたという事は‥‥」
「そう、終わりが近いという事!」
カイトの言葉を継ぐ森写歩朗。
「そういう事で、終わりへ向けて! まるやきタンは渡さないワ!」
龍一がエロスカリバーの柄を持たないように器用に持って、それでニコラを一発ゴツン!
それが囲み再開の合図! 再びまるごと達はニコラを囲んでどこすかぼかすか。
「いたいけな子供達は見ちゃダメでござるよぉ」
今度は幻蔵の呼び出した大ガマも子供達の目を防ぐ壁の役目をしている。
そして数分後!
「正義は勝つ!!」
まるごとファイブ+1の勝利宣言! そして倒れてのびているニコラ。
「皆の応援のお陰でまるごとファイブが勝ちましたー!」
「わーい!」
ライビーが締めのセリフを言い、歓声をあげる子供達。
「面白かったね〜でも真似しちゃだめだよ〜♪」
いつの間にか子供達の背後に回った森写歩朗の忠告。安心して、誰も真似しない。
●終劇
「はい、それじゃ、お菓子よー」
「やったー!」
全てが終わり、ニコラを縛り上げて片付けを終えた後。カイトは事前に自腹で購入したお菓子を子供達に配っていた。
「ねぇねぇ、次はいつやるのー?」
「次回? ‥‥あるんでしょうか」
まるごとファイブの虜になった子供達がメグレズに聞くが、満足な答えは得られない模様。
「最後はシスターの真面目なお話で締めるのが――ーあれ? ニコラさんは?」
ふとウルバンがニコラが居ない事に気づく!
雪がしんしんと降り積もる教会の外。そこには2人の男が向かい合っていた。
「今後は変態の紳士協定に背く行為をするなでござる」
男の1人は幻蔵。もう1人の男に背を向ける。
「そうですね‥‥さよなら」
もう1人はニコラ。幻蔵が逃がすために連れ出したのだ。
ニコラは幻蔵に熱い視線を送るが、やがて目を閉じて‥‥雪の夜の街へと走っていった。
雪が降る闇の中。
「くらえー! てんちゅー★」
彼女が獲物を逃がす事は無く、男の悲鳴が街に響いたのだった。