ありのまま起こった事
|
■ショートシナリオ
担当:刃葉破
対応レベル:1〜5lv
難易度:やや難
成功報酬:2 G 3 C
参加人数:4人
サポート参加人数:-人
冒険期間:01月19日〜01月24日
リプレイ公開日:2007年01月28日
|
●オープニング
「本題の前に言っておく! 俺は自分の家にほんのちょっぴりだが入った。い‥‥いや‥‥入ったというよりはまったく理解を超えていたのだが‥‥‥」
場所はキャメロットギルド。今日も依頼が様々な依頼が舞い込んでくる。
今、受付で興奮したように話す男性も依頼を持ち込んできた依頼者だ。
彼はキャメロットに1人で住んでいたが、長い間仕事の都合で別の街へ行っていたのである。
そして数ヶ月ぶりに自宅へ帰ったのだが‥‥そんな彼をとんでもない事態が待ち受けていたのだ!
「あ‥‥ありのまま、自宅で起こった事を話すぜ!」
「は、はい。どうぞ」
ゴクリと生唾を飲んで、汗を流しながら真面目な顔で受付係の青年をじっと見ながら話してくる依頼者。そんな様子に受付係の青年も思わずたじたじだ。
「俺は家の中に入ったと思ったら、いつのまにか大怪我を負って倒れていた。な‥‥何を言ってるのかわからねーと思うが、俺も何をされたのか分からなかった‥‥。頭がどうにかなりそうだった‥‥。うっかりこけたとか疲れてたとかそんなチャチなもんじゃあ断じて無い。もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ‥‥」
「‥‥‥‥はぁ。よ、よく無事でしたね」
「はい。悲鳴を聞きつけた近所の人が助けてくれたので」
その時の事を興奮しながら話してたと思うと、急に冷静に話し出す依頼者。テンションの幅が広いのだろう。
「その時に中に入って俺を助けてくれた近所の人によると、妙な霧のようなものが浮かんでいたと」
「霧のような何か‥‥ですか」
「はい。その人が俺と同じような目に遭うかもしれないというのに助けてくださって、本当に感謝しています」
受付係は要点と思わしき事を依頼書に書き、顔を上げて、今回の依頼を簡単に纏める。
「つまり、家の中にいる霧のような何かを何とかして再び家に住めるようにしてほしいという事ですね」
「はい、そういう事です」
そのまま2人は報酬や依頼期間の話などもどんどん進めていき、最終的にこの依頼は受理される事となった。
頭を下げて去っていく依頼者を見ながら、今回の依頼は中々大変そうだなと思って腰を深く降ろした受付係の青年は一言。
「‥‥やれやれだぜ」
●リプレイ本文
●裁くのは俺たち冒険者だ!
キャメロット図書館。
そこはやはり荘厳で、騒ぎ立てるような愚か者もおらず実に静か。
多くの冒険者達が調べものに使うこの図書館で、彼女もまた、調べものをしていた。
「なるほどね‥‥いいわ、もう霧の情報はだいたいおぼえたわ‥‥」
パタンと本を閉じる女性のナイト。彼女の名はシュネー・エーデルハイト(eb8175)。いつも物静かでクールといった言葉が似合う。
そんな彼女だが、何故か今回は様子がどこか違っていた。そう、その瞳には普段と違う誇り高き光が‥‥。
彼女は2、3回目を通しただけの本を本棚の元の場所に戻すとクールに去っていった。
‥‥気になる点があるとしたら、彼女が資料として読んでいた本はエジプトへの旅だとか霧を操る老婆だとかの話が載っている、資料でもなんでもない物語という点だが。
「さて、ここが問題の家ですわね」
神聖騎士のサクラ・フリューゲル(eb8317)が少々のんびりした無邪気な顔をきりっと引き締めた視線の先。そこにあるのは今回の依頼でポルターガイストが住み着いたという家だ。
「どこか怪しいところは無いでしょうか‥‥」
討伐すべき対象に逃げられても困るし、戸締り確認などの意味も含めて周囲に怪しいところが無いか探索するサクラ。
「んー、特に問題は無さそうね」
サクラと一緒にアルマ・シャルフィ(eb8153)も調べてるが特に変わったものは見つからない。むしろ色気をむんむんと出しているアルマに注目する通行人がいたりした。
「それでは、武器をお貸ししますね」
今回参加した唯一の男性、神聖騎士ブリード・クロス(eb7358)が手持ちの魔法武器をアルマとシュネーに貸す。今回の敵、ポルターガイストには通常の武器では傷をつけれない為だ。尤も、普通の武器でも魔法を付与したりすればダメージを与えれるのだが、今回はその魔法の使い手がいないのだ。
「本当に助かるわ、ありがとう。とはいっても護身用にしかならないと思うけどね」
「ありがとう。霧は魔剣には勝てない‥‥ンッンー、名言ねこれは」
アルマに貸し出されたのはピグウィギンの槍、シュネーに貸し出されたのは妖精の剣だ。
「では、入りましょう」
各々の準備が出来たのを確認すると、ブリードは盾を構え、先陣を切って家の扉を開ける。男が前に出るべきという考えからきたもので、有無を言わさない強引さだ。
「‥‥お邪魔しまーす」
中にいるのはポルターガイストだけと分かってはいても律儀に言うサクラなのだった。
●正義(ジャスティス)は勝つ‥‥?
ドドドドドドドドドドド‥‥‥!
勿論このような地響きような音は実際にはしていない。だが、冒険者達が家に入った瞬間に背筋に走ったひやりとした感覚。常識外の敵がいる‥‥そう感じた彼らはその地響きのような心の震えを感じていたのだ。
扉は開けており光が差し込んでいる。アルマは家の外から扉の中を伺うように待機しており、他の3人は家の中に入っていた。
そして3人がある程度家の中に入ってたその時!
ガタガタガタガタ!!
「家具が‥‥揺れてる?」
ブリードの言う通り、あちらこちらにある家具がガタガタと震えているのだ。勿論風で動くようなものでもないし、そもそも風は家の中に入ってきていない。正に見えない何か‥‥の仕業である。
パァン! パァン!
「きゃ!?」
続けて聞こえてきたのは何かが破裂するような音。それもやはり何も無い空中から聞こえるのだ。
「来る‥‥!」
ポルターガイストが襲ってくる‥‥そう確信した3人の前に、やはり霧が現れたのだ!
ヒュウゥゥゥ‥‥!
ふわふわと空中に浮かぶ不定形の幽霊‥‥それがポルターガイスト。
そして3人が動き始める前に驚異的な速さでポルターガイストは宙を滑るように動く!
「ぐっ!?」
「‥‥つぅ!?」
ふとブリードとシュネーが胸に感じた鋭い痛み。外部から攻撃を受けたような跡は無い‥‥ただ、ポルターガイストに触れられただけだというのに。
すかさず反撃しようとしたが、気づけばポルターガイストはまた手を出しにくい空中へと逃げていた。
「大丈夫!? ‥‥‥サンレーザー・スプラッシュ!!」
その様子を外から見ていたアルマは術の詠唱を始め‥‥発動させる。その魔法は太陽の光を湾曲集中させてぶつけダメージを与えるサンレーザー。スプラッシュとつけたところで分散攻撃になったり緑色になったりしないが、彼女の気分によるものなのだろう。
サンレーザーは見事にポルターガイストに当たる‥‥が!
「全然効いてない!?」
ポルターガイストは外から見た限りまったく変化を被っていなかった。せいぜい意識が――あるとすれば――アルマに向けられたぐらいだろう。
そしてまたポルターガイストが動き出そうかというその時、シュネーは空中のポルターガイストに向けて剣を向けて高らかに宣言した。
「逃げる必要はないわ。あなたが一回呼吸する間にあなたを倒す」
かっこいいし、決まっているセリフだろう。‥‥相手が呼吸なんてしないポルターガイストで無ければ。
ともかく、敵対の意思を強く感じたからか、シュネーへと向かってくるポルターガイスト!
「くぅ‥‥!」
やはり触れただけ、だがそれでも痛みがシュネーの体を蝕んでいく!
そしてポルターガイストはまた空中へと逃げようとするが‥‥!
「逃がしませんわ!」
サクラの振るうリーチの長い魔槍レッドブランチが逃げようとするポルターガイストを貫く!
通常の武器では傷つかない性質を持つが、魔法武器による攻撃は防ぐ事ができず、非常に深いダメージを負うポルターガイスト。
「はぁぁぁぁ!」
続けて振るわれるブリードの剣。
止めは‥‥シュネーの剣による攻撃だった。
「あなたの敗因はたったひとつよ、ポルターガイスト。たったひとつのシンプルな答え‥‥『あなたは私を怒らせた』」
怒ったのは依頼人であって、ポルターガイストは特にシュネーを怒らせてない‥‥そうつっこむ野暮な者はいなかった。
●To be continued(次の依頼へ向けて)
「ブリード! アルマ! サクラ! 終わったよ‥‥」
「‥‥まるで死んだ風に言わないで」
ポルターガイストの退治を終え、家の外へ出たシュネーが空へ向かって言った言葉に、さすがにアルマもつっこみをいれる。
アルマもシュネーも借りた武器をブリードに返すと、ギルドへと報告に向かったのだった。