【捜索】真偽の翼

■ショートシナリオ


担当:刃葉破

対応レベル:1〜5lv

難易度:普通

成功報酬:1 G 35 C

参加人数:6人

サポート参加人数:8人

冒険期間:02月09日〜02月14日

リプレイ公開日:2007年02月17日

●オープニング

●極秘の再捜索
「つまりグィネヴィアはあの男の許にはいなかったと言うのだな?」
 アーサー王は喜びの砦に潜入を果たした一人の密偵からの報告を聞き、思わず腰をあげた。
 先の物資補給阻止の際、巧く紛れ込んだ者がいたのである。日数の経過から察しても砦が遠方にある事が容易に理解できた。新たにもたらされた情報に、円卓の騎士が口を開く。
「もしかすると、隠し部屋や他に隠れ家があるのでは?」
 しかし、男は首を横に振る。いかにラーンスとは言え、隠し部屋か他の隠れ家があれば向かわぬ訳がない。そんな素振りもなかったとの事だ。
 ――ならば、グィネヴィアは何処にいるのか?
 ――ラーンスは何ゆえ篭城なぞ‥‥!?
「否‥‥違う」
 アーサーは顎に手を運び思案するとポツリと独り言を続ける。
「ラーンスは森を彷徨っていたのだ。喜びの砦は集った騎士らの為‥‥ならば」
 ――グィネヴィアは見つかっていない。
 同じ答えを導き出した円卓の騎士の声も重なった。王妃は発見されていない可能性が高い。
 アーサーは円卓の騎士や選りすぐりの王宮騎士へ告げる。
「冒険者と共に『グィネヴィア再捜索』を命じる! 但し、王妃捜索という目的は伏せねばならん! ギルドへの依頼内容は任せる! 頼んだぞ!」
 新たな神聖暦を迎えたキャメロットで、刻は動き出そうとしていた――――。

●一つの動き
「森にハルピュイアが現われた‥‥ですか?」
 場所はキャメロットのギルド。受付係の青年がそう問い返す相手は‥‥騎士である。
「あぁ、普段そう現われる事は無い珍しいモンスターなのだがな。その分中々厄介なモンスターでもあるので野放しにしておくわけにもいかんというわけだ」
「成る程‥‥」
 騎士は特に表情を変える事もなく淡々と事情を説明していく。厄介な事を話しているというのに、まったく表情を変えない事に受付係の青年は軽い違和感を覚えたが、大したことではないとすぐに頭から振り払った。
「それにしてもハルピュイアとは確か‥‥」
「人の顔とヴァルチャーの体を持った大型の鳥だ。凶暴な性格で人をよく襲ったりする危険なモンスターだ」
 ハルピュイアの事を思い出そうとする受付係の青年に、騎士はすぐに説明をする。
「へぇ、お詳しいんですね。ところでどんな目撃情報があったんですか?」
「‥‥‥森に入った猟師の目撃談だ。大きな鳥のようなものが見えたからすぐに逃げ出してきたそうだ」
「‥‥‥?」
 そしてまた違和感を覚える受付係。すぐに言葉を返していた騎士の少しの間。そんな少ない情報でハルピュイアと決め付ける点。だが彼は紛れも無いキャメロットの騎士であり、何かを企む立場でもない人間である。やはり考えすぎかと受付係は結論付ける。
「なるべく逃したくないからな。とにかく森の中では目を光らせて、どんな小さな事でも少しでも変だと思ったら知らせるようにな」
「はい、分かりました」
 そして騎士は自分もついていく点や依頼期間、報酬の話をして依頼の届出をすませると、そそくさとギルドを出ていった。
「‥‥うーん?」
 やっぱり受付係の青年は最後まで首を傾げたままだった。

●今回の参加者

 eb5188 ベルトーチカ・ベルメール(44歳・♀・レンジャー・人間・イスパニア王国)
 eb5868 ヴェニー・ブリッド(33歳・♀・ウィザード・ハーフエルフ・フランク王国)
 eb7017 キュアン・ウィンデル(30歳・♂・ナイト・ハーフエルフ・イギリス王国)
 eb7741 リオ・オレアリス(33歳・♀・ウィザード・エルフ・イギリス王国)
 eb8240 ソフィア・スィテリアード(29歳・♀・ウィザード・エルフ・イギリス王国)
 ec0574 カルロック・ジャスティス(20歳・♂・ウィザード・ハーフエルフ・イギリス王国)

●サポート参加者

エグゼ・クエーサー(ea7191)/ 若宮 天鐘(eb2156)/ ジークリンデ・ケリン(eb3225)/ フィーネ・オレアリス(eb3529)/ アンリ・フィルス(eb4667)/ 日高 瑞雲(eb5295)/ フォックス・ブリッド(eb5375)/ マリアーナ・ヴァレンタイン(eb7019

●リプレイ本文

●疑わしき点
「んー‥‥どうしてあれっぽっちの目撃談でモンスター=ハルピュイア、に決まりなのかしら」
「そうですね。やっぱりお話は聞いた方が良さそうです」
 今回の依頼、ハルピュイアを退治するとの事だが、情報が不透明なのだ。
 その点が気になったベルトーチカ・ベルメール(eb5188)とソフィア・スィテリアード(eb8240)はハルピュイアを目撃したという猟師を探して、話を聞こうとした。
 肝心の猟師だが、見つけるのは簡単で、話をすぐに聞くことができたのだったが、その猟師から聞けた話もやはり不透明な情報だった。
「いや、おいらが見かけたのはただ大きい鳥のような生き物ってだけで、ハルピュイアと断定してねぇだよ。騎士様に『何か森の中で脅威になりそうなものを見かけなかったか?』と聞かれたからそれを言ったんだけどよ」
「そうなの? ‥‥ますます気になってきたわね」
 猟師から話を聞いて更に考えこむベルトーチカ。
「肝心の居場所とかは分かりますか?」
「んー、さすがに詳しい場所は分からないけども、方角とかなら教えられるだ」
 ソフィアがハルピュイアらしき存在を見かけた場所を聞くが、得られる情報はその程度。とはいってもまったくの情報無しで森に入るよりは何倍も良い。
 それに乗じてベルトーチカも気になっていた森の状況などを聞きだしていく。
「ふぅん、こんなところね。‥‥ね、そういえばあの森にハルピュイアが現われた事はあるの?」
 聞きたい事は全て聞けた、ということで最後のベルトーチカの質問。
「おいらが知ってる限りは無いなぁ。だがあの森は結構深いからいる時はいそうだ」
 ‥‥やっぱりあまりあてにならない情報だった。

「で、どうでした?」
「微妙なものだな。今回の事に関して関係あるかどうかは分からない情報ばかりだ」
 リオ・オレアリス(eb7741)がキュアン・ウィンデル(eb7017)に聞いた事。それは彼が酒場などで集めたという噂話についてだ。
 だが、やはり彼の言葉通り成果は微妙なものでハルピュイアが云々なんて情報は殆ど無いに等しかった。
「やれ実はラーンスは云々、やれアーサー王は云々、そんな話が多かった」
 尤もイギリス事情に疎いキュアンにとってはそれらの噂話もある意味貴重な情報だったのだが。
「あ、騎士さまの到着のようね」
 ギルドで荷物を整理してたヴェニー・ブリッド(eb5868)がふと顔を上げると、依頼をしてきた騎士がこちらにやってくるのが見えてきた。
 少し前にギルドに戻ってきたベルトーチカとソフィアも合流し、これで依頼に出立するメンバーが揃ったのだ。
「ソフィア・スィテリアードです、よろしくお願いいたします。多少の土地勘はあります故、頑張りたいと思います」
「あぁ、こちらこそよろしく頼む」
 騎士に一番に挨拶をするソフィアに、挨拶を返す騎士。続いて他の面々も挨拶をして紹介は終わった。
 後は森へ行くだけである。

●垣間見えるもの
 鬱蒼と茂る森の中。冒険者達は広い広い森の中、たった1匹のハルピュイアを見つける為に目を凝らしていた。
 リオなどはテレスコープの魔法も使って、相当広範囲に目を光らせてる。
 そうして捜索を続けながら、ふとキュアンがこれは良い機会だと思い、騎士に質問をぶつける。
「そういえば、是非聞きたい事があるのだが良いか?」
「ん? まぁ、私に答えれる事ならな」
 あっさりと承諾した騎士に安堵し、肝心の質問の内容を話し始めるキュアン。
「私は最近このイギリスに戻ってきたので、今の情勢がよく分からないんだが‥‥ラーンス卿とアーサー王の間に、何かあったのか?」
 その内容を聞いた途端、騎士の顔が、変わった。
「ラーンスは‥‥騎士にあるまじき事をしたのだ! 円卓の騎士でありながら! 許されざるべき事を!」
 それはまるで烈火のごとく。騎士は怒りを露に勢いよく話始める。
「仕える主のアーサー王に対して、あの唾棄すべき行為! 騎士の道を外れている!」
「あ、あぁ‥‥」
 その騎士の勢いにおされて、思わず頷くしかできないキュアン。キュアンの心境を知ってか知らずか、騎士はとことんラーンスに対して侮蔑の言葉を吐いている。本来ならそれが許される対象ではない円卓の騎士に、しかしその侮蔑は当然だというように。
(「アーサー派なのね‥‥極端なまでに」)
 騎士の様子を見ていた、今のイギリスの情勢――アーサー王とラーンスがとある事情から対立しているという状況――を知る者の心の中の呟きだった。

「あら‥‥もしかして、あれでしょうか?」
 そんなちょっとした騒動からしばらくして、リオがふと見つけた何か。
 とはいっても、テレスコープを使っているリオだから分かる事で、他の者には何がなんだかよく分からない。
「もう少し近づいてみましょう」
 ヴェニーの提案に従い、リオが何かを見つけた方向に向かって、一同は慎重に歩を進めるのだった。
 そしてある程度近づいて、他の者達も見える距離に近づいたのだが。
「あれ‥‥なのかしら」
「どうなんでしょうか‥‥」
 ベルトーチカの疑問、ソフィアもそれに答えれないぐらい困惑してる。
 それも仕方ない。何故なら、見つけたのはハルピュイアのようなモンスターではなく。
「イーグル、だな」
「あぁ、イーグルだな」
 キュアンがその対象の名前を言い、同行している騎士も同意する。
 イーグル‥‥いわゆる大型の猛禽類で、珍しいわけでもない、ましてやハルピュイアのようなモンスターでもない。
「イーグルをハルピュイアと見間違えた‥‥ってこと?」
「確かに鳥にしては大きいですけれど‥‥」
 ヴェニーが仮説を立て、リオがその仮説を実証する為の要素をあげるが‥‥やはり弱い。
「でも猟師が言っていた事は間違ってないわね‥‥あの猟師が言っていたのはただ大きい鳥のような生き物を見かけたってだけだから」
「そうですね。となると‥‥」
 実際に猟師に話を聞いているベルトーチカとソフィアの言葉。それを聞いて全員の視線が騎士に刺さる。
「‥‥ご、ごほん! とにかくどちらかというと危険な動物には違いない! 退治するぞ!」
 咳をして誤魔化すように騎士が言うと同時に、イーグルがこちらを向いた。
 そして一啼きしたかと思うと、襲い掛かってきたのだ!

●真偽
 あっけないものであった。
 襲い掛かってきたイーグルに対して素早く叩き込まれるヴェニーのライトニングサンダーボルトとベルトーチカの高速の弓による射撃。
 そこにソフィアのグラビティーキャノンが撃ちこまれ、地上に落ちたイーグルに対してキュアンの槍と騎士の剣が突き刺さる。
 リオは捜索時のテレスコープで魔力を使い果たしていた為に魔法を唱える事ができなかったが、それでも圧勝であった。
 確かに駆け出し冒険者数人程度では苦労する相手であるイーグルだが、ある程度戦いの経験を積んでいた冒険者の敵ではなかったのだ。
「これがハルピュイア‥‥ねぇ。ウソつくのは良くないわよ?」
 イーグルの死体を見下ろしながら騎士に問い詰めるように言うベルトーチカ。
「‥‥似てなくは無いからな。間違える事もあるだろう」
「でも、意図的に情報を曲げているような気がするんですが‥‥」
 言い訳をする騎士だったが、実際に猟師から話を聞いているソフィアが間髪いれずつっこみを入れる。
 そしてまたイーグルとの戦闘前のように全員の視線が騎士に突き刺さる。
「む、むぅ‥‥。分かった分かった、本当の事を話す!」
 騎士は観念したように両手を挙げ、真意を話し始めた。
「確かに私は大した情報も無いのに、ハルピュイアがいると断定した。しかし、それには理由があるのだ。それはギルドに依頼を出す為‥‥あるものを捜す為にだ」
「成る程、重大そうに見せかけて冒険者を集めて、その人手で‥‥って事か」
 とりあえずはハルピュイア退治の依頼を出した理由は判明した。納得したキュアンの言葉通りなのだろう。
「で、何を捜してるの?」
 となると、気になるのはその点という事で、ヴェニーが聞き出すのだが‥‥。
「申し訳ないが、それだけは言えない。ただ、重要な事だけだ、と言っておこう。‥‥本当に何か変なものは見かけなかったんだな?」
「え、えぇ。何かあったり居たりはしませんでした」
 言えない答え、そして再度リオに確認するがやはり何も無しという事で落胆した様子の騎士。
「まぁまぁ、お酒でも飲んでぱーっと気分晴らしましょう?」
「‥‥‥。いや、任務中なのでな。せっかくだが断らせてもらう」
 ヴェニーは酔わせて口を割らせようと思い酒飲みに誘うが、ヴェニーの真意を知ってか知らずか断る騎士。
「ふぅ‥‥ともかく、依頼は完了した。ギルドへ戻って報酬を渡そう」
 気落ちしたように森を出る為に歩き始める騎士。
「‥‥さすがにあの様子を見て、危険手当を出せ、とは言いにくいわねぇ」
 そもそもあんまり危険じゃなかったし仕方ないか、と諦めるベルトーチカであった。