ビッグとスモール

■ショートシナリオ


担当:刃葉破

対応レベル:1〜5lv

難易度:普通

成功報酬:1 G 35 C

参加人数:7人

サポート参加人数:1人

冒険期間:03月15日〜03月20日

リプレイ公開日:2007年03月23日

●オープニング

 夜のキャメロット。
 幾多の悪と、幾多の変態達が闊歩する街。
 さぁ、今宵出てくるのは悪か変態か―――。

 まぁ、どっちでも勘弁なんですがね。


「う〜〜、トイレトイレ」
 今、トイレを求めて全力疾走している彼はキャメロットで働くごく一般的な青年。
 強いて違うところをあげるとすればキャメロット滞在歴が短いってとこかナ――。
 名前はマサーキ。
 そんなわけで急いで自宅に帰る為に夜のキャメロットを走っていたのだ。
 ふと見ると、道の真ん中に一人の若い筋肉質な男のジャイアントが立っていた。
「ウホッ! 危なげな男‥‥」
 彼がそう思っていると、突然そのジャイアントは彼の見ている目の前で服を脱ぎ始めたのだ‥‥!
「やらないか」
「何をだよ!?」
 そういえばこのキャメロットは変態が多く出ることで有名なところだった。
 極めてノーマルな彼は、本能の警鐘に従うまま逃げ出したのだ!

「だが逃がしはせん」
「ぐっ!?」
 逃げ出した青年の体が急に止まる。体を動かしたくても動けないのだ。
 そんな彼の目の前には‥‥1人のシフールの男。恐らくそのシフールが何らかの魔法をかけたのだろう。
「男は度胸、何でも試してみるものさ。いきなり逃げ出さずにな」
「絶対逃げる方が正しいだろ、これ!?」
 動けない青年にじりじりと迫るジャイアントとシフール。
「よし、スモール。ちょっとやりやすいようにしろ」
「分かったよ、ビッグあんちゃん」
 スモールと呼ばれたジャイアントが動けない青年を押し倒し、しっかと仰向けで押さえつける。
 そしてビッグと呼ばれたシフールは目を光らせながら手をわきわきと動かし、青年の上に乗る。
「さて、シフールだから出来るテクニックというものを味あわせてやろう!」
「やらなくていいぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!!」
 これでキャメロット滞在歴が短い彼も、キャメロットの暗部を知ることが出来ただろう。悲しい事だが。

「ふぅ‥‥」
 しばらく経って、表現しにくい有様になってる青年から微妙にツヤツヤしているビッグは離れる。
「ビッグあんちゃん‥‥‥」
「スモール‥‥」
 ジャイアントのスモールの甘えるような声と視線。再度言うが、筋肉質な男である、スモールは。
 そんなスモールの視線に応えるように、ビッグはスモールの肩の上に乗り、スモールの頬を撫でる。
「スモール‥‥やっぱりお前が一番だよ」
「あぁ! あんちゃん!!」
 愛というのは種族も大きさも性別すらも超越するのだ――――そういう問題ではないが。


「今回はビッグとスモールの2人組が相手ですよー」
「ビッグがシフールで、スモールがジャイアントとはまたややこしいですねぇ」
 そんなこんなでやっぱりギルドに持ち込まれる退治の依頼。
「今回はしっかりがっしり退治しちゃってくださいねー」
「‥‥愛し合ってるという報告を聞いたが、それなら襲うなよ」
 ギルドの受付係の青年はただただ溜め息を洩らすばかりだった。

●今回の参加者

 ea5521 蒼月 潮(23歳・♂・武道家・人間・華仙教大国)
 ea6484 シャロン・ミットヴィル(29歳・♀・クレリック・パラ・フランク王国)
 ea8024 ユウヒ・シーナ(22歳・♀・バード・エルフ・ノルマン王国)
 eb5522 フィオナ・ファルケナーゲ(32歳・♀・バード・シフール・フランク王国)
 ec0843 雀尾 嵐淡(39歳・♂・僧侶・人間・ジャパン)
 ec0844 雀尾 煉淡(39歳・♂・僧侶・人間・ジャパン)
 ec1244 ヒュー・ディ(24歳・♀・神聖騎士・人間・ビザンチン帝国)

●サポート参加者

ウェンディ・ナイツ(eb1133

●リプレイ本文

●そして繰り返す
 キャメロットの変態―――。
 今や色々な方面で有名になってしまっているそれは、手当たり次第に男を襲うという性質を持っていた。
 そう、その襲う対象は一般人だけではなく冒険者も‥‥。
「変態の討伐ですね。任せてください」
「これがキャメロット名物の変態依頼ですか。受けるのは初めてですが、な、なんとか頑張ります」
 爽やかな笑顔で元気に話す蒼月潮(ea5521)。彼は過去にこの手の依頼を受けて襲われた記憶がある。それなのに明朗快活な彼を見て、初めてこの手の依頼を受ける雀尾煉淡(ec0844)はある意味感動のようなものを憶える。
「ぇ〜と、保存食にテント・寝具の準備よし!」
 煉淡の視線を気にする事無く自分の荷物の確認をする潮。襲われたというのに、過去を引きずる事なく頑張るその姿は涙ぐましいものがある。だが、しかし‥‥そんな彼をよく見てみると。
「‥‥ひっ! 目が!?」
 シャロン・ミットヴィル(ea6484)が見た潮の目。それはもう何ていうか‥‥簡単に言えばイっちゃっていた。
「アハハ、サぁミンナ、ハリキッテ逝キマショウ」
「俺‥‥囮専門か‥‥」
 目だけでなく言動も怪しいものになりつつ潮を見つつ、自分もそうなってしまうのだろうかと危機感を抱いて冷や汗をかく雀尾嵐淡(ec0843)の姿があった。彼がやる囮という役は―――襲われる可能性が非常に高い。
「僕は個人の趣味に口出しをするつもりはありませんが‥‥‥無理やりではやりすぎでしょう! 全力で御仕置きさせていただきます!」
 そんな潮の様子やこれからの事態に戦慄している嵐淡を見て、全力で退治を心に誓うヒュー・ディ(ec1244)。彼女のその思いが成し遂げられるのは多分色々された後だろう。
「さあ、パーティの始まりよ」
 言いながらフィオナ・ファルケナーゲ(eb5522)はキャメロットの街を見下ろす為に空へと飛んでいく。ってかどんなパーティだ。

●始まっちゃった
 そして退治対象であるビッグとスモールを誘い出すために、男達がキャメロットの街を歩く事になった。
 女性陣は男性陣より少し離れたところで様子を伺っている。
「邪気が来たか‥‥!」
 歩きながら時々行うデティクトライフフォースで周囲の生物を調べていた煉淡だったが、ついに反応が!
「はっ!? 鳥肌が。奴ら!」
 魔法に頼らずとも、根源的に植えつけられた恐怖のようなもので敵を察する潮! しかし、察しても時既に遅し!
 恐怖の元が近づく、どんどん近づく! それはもはや逃げる事など敵わぬ距離に!
「やらないか」
「出たか‥‥!」
 3人の男性陣の目の前に現われた1人のジャイアント。登場時の文句といい、彼がスモールだというのは間違いないだろう。
「ということは‥‥!」
 前にスモールがいるなら‥‥つまり後ろにはということで、振り返る嵐淡。そんな彼の目に映るのはやはり。
「君の予想、イエスだな」
 パタパタと羽ばたきながら宙に浮く1人のシフール。つまり――ビッグだ。

「あら、早速おでましのようね」
 上空でその様子をいち早く察知したフィオナは離れて様子を伺っている女性陣にテレパシーで知らせる。
「流石変態の国ネギリスやね。いろんな変態さんがおるわ〜♪ そのうち変態さんが同盟組んで襲ってきたりは‥‥せーへんか」
 ユウヒ・シーナ(ea8024)はその知らせをうけて角から覗くが、覗くだけ。助けに行く素振りを見せない。
「えと、助けに行かなくていいんですか?」
「このまま放っておけば取り返しのつかない事になりそうですが」
 同じく角から覗く、今回の数少ない常識人であるシャロンとヒューであるが‥‥。
「えぇんやって。この手の依頼はこういうものやから」
 からからと笑いながら言うユウヒの言葉に何故か納得してしまったのだった。

「ああ‥‥あぁぁぁぁ!!?」
 スモールに出会ってからがくがくと震えていた潮だったが、ついに恐怖だとかそういうのが限界に達したいきなり叫び始めた!
 そして叫んだまま、スモールに向かって走り出し何をするのかと思いきや―――。
「うわぁぁ! ヒップアッパー!!」
 素早い動きでスモールのすぐ傍まで接近した潮はすぐさま自分の桃のような尻を露出して、腰を凄まじい勢いでひねり、顔面目掛けて飛ぶようなアッパーを――桃尻で――スモールに対して行ったのだ!
 ぶにょん!
 ヒップアッパーを受けて軽くたたらを踏むスモール。だが、それでダメージがあるかというと‥‥。
「‥‥ニィ」
 スモールが、笑った。
「シャ、シャロンさん!」
「見ちゃ駄目です、多分!」
 咄嗟に目を逸らす、隠れて覗いているヒューとシャロン。ちなみにユウヒは興味津々の様子で見ている。
 上空からきっちり観察しているフィオナに至っては。
「そうね‥‥紫色の咲き誇る薔薇の園。マッシブな人が奏でる暑苦しい程の音楽によって散る薔薇‥‥そんな感じね」
 実況をテレパシーで伝えるぐらいだ。ってかどんなイメージだ。
 だが、散るという点では正しく‥‥。
「ネダルなカチとれサスればアタエられん‥‥え、絵熟れカぁぁぁぁ〜‥‥」
 ガクッ。
 真っ白に、燃え尽きた。

「くくく‥‥残るはお前たち2人のようだな」
 潮がダウンした様子を見て、ずずぃっと嵐淡と煉淡に迫ってくるビッグ。
「くっ! こうなったら仕方ない‥‥!」
 煉淡を前に嵐淡を後ろに、一列に並んでビッグへと突撃をする2人!
「動けぬところをおいしく頂く!」
 ビッグが唱える魔法‥‥コアギュレイト。
「なっ‥‥!」
 煉淡の足が止まる。そう、コアギュレイトにより指1本すらも動かせぬようになってしまったのだ!
「‥‥い、一応貞操が無事なうちに、なんとかしてくれえ!」
 この手の存在を前に少しも動けぬという特上の恐怖を味わいながら、嵐淡の行動の成功を祈るしかない煉淡!
 その祈りが届いたのか、嵐淡はその隙に見事にビッグに肉薄し‥‥!
「だりゃぁぁぁ!!」
 ビッグに触れる手! 彼の狙いはメタボリズムをビッグにかけてビッグのMPを無くしてしまう事! だがしかし―――。
「ん、どうした? わざわざ触ってくるとは‥‥積極的なんだな?」
「んなぁぁ!?」
 その嵐淡の触れた場所は‥‥まぁ、なんだ。真にビッグであった。
 更にいつの間にかやってきたスモールが嵐淡を取り押さえ――。
「よーし、スモール。俺はこっち、お前はそっちをやれ」
「分かったよ! ビッグあんちゃん!」
 ビッグが煉淡に近づき‥‥スモールはそのままで‥‥。
「うわ、どこに入り込んでるんだ貴様! ってイタイイタイイタイ!! 無理無理無理! いくらシフールでもそれは無理だぁぁぁ!」
「うぎゃああぁぁぁ! 何でそんなに嬉しそうなんだよ、お前らっ! ば、馬鹿ッ、こら! そんなふうに圧しかかられたら、痛っ! 痛痛痛痛っ! そ、それは痛いっ! 洒落にならん! 止め‥‥止めて‥‥うぎいぃぃぃぃぃぃぃっ!?」
 えーと、セリフだけで察してください。

●いいからさっさと助けろ
「シフールがどうやってと思うたけどああやるんやねー‥‥って、見とれてちゃいかんね」
 2人の雀尾が悲惨な目にあってる中、ユウヒはある意味キラキラ目を輝かせて見ていたが、やっとこさ現状認識。
「そこまでや! ネギリs‥‥もといイギリスにこれ以上変態は増やさないで!」
 楽器を演奏しながら現われたかと思うとずびしぃっとビッグとスモールを指差すユウヒ。
「やっぱりもうちょっと早く登場すべきだったんじゃ」
 同じくヒューも出てきて呟く。そのヒューの視線の先には‥‥もはや何も言うまい。
「む。せっかくのパーティを邪魔する無粋な者達だな」
 ビッグがやっと姿を現した女性陣に対して向き直ると。
「ふぅん‥‥ビッグ、ねぇ。名前負けじゃないといいんだけど」
 いつの間にかビッグの真後ろに降りていたフィオナの言葉。
「一体何の事ですか‥‥」
 シャロンはそんなフィオナの言葉をあまり分かっていなかったが。
「名は体を現すと言うしどうなのか教えてもらわへんとな♪ あ、安心してや? 唯の知的好奇心っていうやつやから♪ ‥‥恥的好奇心やないで?」
 ユウヒには何の事かバッチリのようだった。
「フフフ‥‥成る程成る程」
 合点がいったのだろうか、ビッグはスモールを手招きして自分の隣に立たせるとポーズを決めると、宣言をした!
「敢えて言おう! このビッグとスモールのサイズは一緒であると!」
「ビビビビビッグのあんちゃん! ははは恥ずかしいよ!」
 一体何のサイズが一緒なのかは分からない。分かる人だけ分かればいいんだろう。
「‥‥何ともお互い極端なのねぇ」
 それがフィオナの率直な感想であった。

●愛は不滅?
 後はもう一方的であった。
 フィオナがコンフュージョンをかけつつビッグが本当にスモールを愛してるか聞いてみるが、ビッグはコンフュージョンを跳ね除け。
「スモォォォル! お前が好きだぁぁぁ!」
 との大宣言。その直後に生まれた隙に魔法やら剣やらでたこ殴りの女性陣。彼女達の戦いぶりを見る限り、参戦がもっと早かったら潮や煉淡、嵐淡は今のような悲惨な姿になっていなかっただろう。今、ビッグとスモールは仲良く縛られていた。
「とりあえず恥的欲求‥‥違う、知的欲求は解消されたし警備の人に引渡しとこか? ついでに精神的にちょっとやば目の男性陣はうちの身体で慰めて‥‥は上げないで♪」
 そんなユウヒの冗談だが、誰も反応しないほど男性陣は‥‥‥うん。ヒューがリカバーで回復してるが効果は厳しいだろう。精神的なものだし。
「趣味についてはとやかく言うつもりはないですが、相手との同意のもとで愛し合ってください!!」
「ヒューさん。それ、神聖騎士の言う事じゃない」
 多分意味無いだろうがビッグとスモールに説教していたシャロンがヒューの言葉を聞くと、ついツッコミを入れてしまった。
 ジーザス教では同性愛は禁じられているのだから。そういう問題を超越してるが。