ラーンス派の決着にフンドーシってどうよ?

■ショートシナリオ


担当:刃葉破

対応レベル:フリーlv

難易度:普通

成功報酬:0 G 65 C

参加人数:4人

サポート参加人数:-人

冒険期間:05月05日〜05月10日

リプレイ公開日:2007年05月13日

●オープニング

 今のイギリスはある程度落ち着いていた。
 そう、マレアガンス城攻略戦を境にして。
 デビルが深く関わっていた事を始めとして様々な事がそこで判明した。
 それはラーンス・ロットの行動にも答えが出るものであり、アーサー王はラーンスを受け入れる答えを出した。


 ―――だが、それで全ての決着がつくわけではないのだ。


「フンドーシをつけろー!」


 ―――こんな決着はさすがにどうかと思うが。



 ある晴れた昼下がりのキャメロット。
 自国他国の者問わず、色々な事を言われているイギリスの街だが、平日の昼間の街のど真ん中にてアレな人物が出てくる事は比較的少ない。
 だが、まったくもって無いわけでは無いのだ。そう‥‥今正に街の真ん中にアレな集団がいるのだから!
「王国を裏切ったラーンス派は処罰せよー!」
「そうだー!」
 街の真ん中で演説するように叫ぶ男達の集団があった。その叫びの内容は、先日までの戦いでイギリス王国から離れてラーンスへついた騎士達への処罰をすべしという、それだけ聞けば至極真っ当なものであった。
 ‥‥そう、それだけ聞けば。
「ラーンス派には処罰として全裸にフンドーシ&マスカレード着用を義務とせよー!」
「そうだー!」
 何故、そんな思考が出てくるのだろうか。皆目検討がつかない。
 そんな事を言っている男達の格好は‥‥彼らが言うところの全裸にフンドーシ&マスカレードをつけた状態であった。
 勿論、周囲の人々の反応も引き気味っていうか完全に引いている。
「貴様らー! こんなところで何をしている!」
 と、そこへ騒ぎを聞きつけたのか武器を携えた騎士が数人こちらに向かい走ってきているのが男達の目に見えた。
「兄貴! 騎士達ですぜ!」
「うむ、我々の崇高なる思想を浸透させる前に捕まってはならん! すぐに逃げ出すのだ!」
「言われなくてもスタコラサッサだぜ!」
 今までのパターンからすると襲い掛かって服をはいだりしそうなものだが、別にそんな事は無くさっさと逃げてしまう男達。
 その逃げ足は格好が身軽だからかとても素早く、騎士達が追いつけるものではなかった。
「待てー!」
「くそっ‥‥! また逃げられた!」
 結局フンドーシ集団は見えなくなってしまい、騎士達はその場で地団駄を踏む。
「あのような勝手な事を言うやつらを‥‥放置しておくわけにはいかん!」



「って事で、ギルドに依頼が持ち込まれたわけですよー」
「何かもう面倒事は全部ギルドって感じがするんですが」
 そして場所は打って変わってキャメロットギルド。そこにはやはりいつも通りの依頼人の女性と、いつも通りの受付係の青年がいた。
「そういうわけでフンドーシ集団を退治‥‥はやりすぎですねー。演説しかしてませんし。やめさせるように説得‥‥でしょうかー」
「もうふっ飛ばせばいいよ、ふっ飛ばせば」
 さすがに誰かを襲ったわけではない集団を退治するのはどうかと思っている依頼人だが、受付係はもうそんな事はどうでもいいようだ。
「‥‥えーと、ともかく依頼は退治ではなく説得ですのでー。よろしくお願いしますねー」

●今回の参加者

 ea0448 レイジュ・カザミ(29歳・♂・ファイター・人間・イギリス王国)
 ea8024 ユウヒ・シーナ(22歳・♀・バード・エルフ・ノルマン王国)
 eb2020 オルロック・サンズヒート(60歳・♂・ウィザード・エルフ・イギリス王国)
 ec2478 ガイン・バーグ(30歳・♂・神聖騎士・エルフ・イギリス王国)

●リプレイ本文

●怪しい集団?
 今日も活気に満ち溢れたキャメロットの一点に3人のそれぞれ年齢も性別も微妙にバラバラな集団がいた。
「褌マスカレードとは懐かしい人々だね。昔そんな集団がいて、彼らとの戦いの中で、僕は葉っぱ男の名を手にした訳だから、放って行く訳にはいかないね!」
「なんとも素敵な経歴やなー」
 そのうちの2人の男女の会話。明るく元気に笑ってる男の方はレイジュ・カザミ(ea0448)。今はごく真っ当な格好をしている。そう‥‥今は、だ。彼はイギリス規模の――単純に彼の知名度を考えれば世界規模かもしれない――とんでもない渾名を持っているイギリス国民なのだ。彼の言葉と合わせて考えると、後の事も簡単に推測できよう。
 そしてもう1人の女性はユウヒ・シーナ(ea8024)。笑顔でどことなくかるーいノリを思わせる彼女だが‥‥まぁ、実際の所がどうなのかはこれもやっぱりその内分かるだろう。この時点で分かる気もするが。
「ふぉふぉふぉ、早く見つかると良いのじゃが」
 最後の1人はどう見てもおじいちゃんなオルロック・サンズヒート(eb2020)。この面子の中にいるのだから当然ただのお爺ちゃんではない。過去の経歴から言うと‥‥脱ぎまくってるお爺ちゃんだ。今はちゃんと服を着ているが既に片手で自身の服を掴んでるあたり、いざという時脱ぐ気満々のように見える。

「何だ、あの集団は!?」

 と、少し離れた人ごみから突然起こるざわめき。ざわめきは収まる事無く、何かとんでもない存在が現われた事を表していた。
 冒険者達は目的の集団が現われた事を確信して走り出す!

●邂逅
「ラーンス派には処罰として全裸にフンドーシ&マスカレード着用を義務とせよー!」
「そうだー!」
 やはり、そこにいたのはギルドで説得を依頼されたフンドーシ集団であった。
 服を身に纏っておらず、身に着けているのはフンドーシと仮面であるマスカレードのみという珍妙極まりない格好。そんな格好で寒くないのかと思いきや、分厚い筋肉は暑苦しい程の汗をかいてる点から考えて、むしろ暑いぐらいなのだろう。息がこもってるのか、仮面の中からコフーコフーという激しい息遣いが聞こえる。
 そんなどうみてもイギリス民な男が6人ほどいる集団のすぐ傍までやってきた冒険者達。
 その場からフンドーシ集団に向かい歩きながら服を脱ぐレイジュとオルロック。
「うちは離れたとこから見さしてもらうなー♪」
 ユウヒは高見の見物と洒落込むつもりのようだ。
 そして着ていたものは全て脱ぎ捨て、レイジュは取り出した褌とマスカレードを装着し、オルロックは‥‥何というかあれな格好をしてフンドーシ集団の前に立つ!
「お前らは‥‥?」
「貴方達の主張に感激しました、僕も仲間に入れて下さい!」
 高らかに宣言するのはレイジュ、その格好は裸に褌とマスカレードのみと、目の前の集団とまるで同じ格好である。
 そのレイジュの言葉に気分を良くしたのか、リーダー格の男が近づいてきてレイジュの肩に手をポンと乗せる。
「おぉ! 分かってくれるか! 中々そそるいい男じゃないか!」
「いえ、どうも。顔見えないのにいい男とかよく分かりますね」
「なーに、体つきで色々分かるもんさ!」
 ぐいっと顔を近すぎるぐらい近づけてくるフンドーシ男にちょっと焦りつつも返答するレイジュ。仮面越しでも分かる息遣いの荒さが何だか嫌だ。
 そんなフンドーシ男の目に更にオルロックも映る。
「えーっと‥‥あの老人もかね?」
 フンドーシ男が戸惑う程のオルロック、一体どんな格好をしているのか。
「やっぱりこの時期はこの格好じゃ。あんこというものを用意できなかったのが心残りじゃな‥‥」
 この時期の意味が分からないが、オルロックの格好は‥‥凄い。
 頭には羊皮紙で作られた兜のようなもの、それは良いとしよう。そして服は着ていない、良くはないが周囲にいる者達もあれな事を考えると、それも良いとしよう。いや良くないんだが。
 何よりもやばいのは‥‥股間部。勿論何も着けていないわけではない。着けているのだが‥‥あえて表現するならば、オルロックの言葉を借りてこう表現しよう。葉っぱで包まれたちまきが1本とかしわ餅が2つ、という格好であった。
 すると‥‥。
「おい! 騎士のやつらが来たぞ!」
「ちぃ、もう嗅ぎつけやがったか! 逃げるぞ!」
 見物人の集団を割るようにやってきた騎士達を見つけた1人のフンドーシ男が叫ぶと、リーダーが素早く判断を下して逃げる為に駆け出す!
「僕もついていきます!」
「ふぉっふぉ、わしもじゃ」
「あぁ、ついてこい!」
 レイジュとオルロックを仲間と認めたフンドーシ男達は、2人の同行を許し一緒に逃げ始める!

●正義なんて誰が決めた
「ここまで逃げれば安心だな」
 ある程度の時が経った頃だろうか。人が全然居ない路地のような場所にフンドーシ集団は逃げていた。
「ふむ‥‥そろそろ警戒がきついか。今日はここら辺で引き上げるべきか‥‥よし、それじゃお前ら解散――ん?」
 リーダーの男が最近の状況を鑑みて、解散の指示を仲間たちに下そうとした時、とある異変に気づいた。
 それは今日新しく加入した仲間‥‥そう、レイジュの異変だ。
「ふふふ‥‥逃がしはしないよ。ふふ、この僕の正体を見せてあげるよ! 僕は褌でもマスカレイドでもない、葉っぱ派だ!」
「な、何ー!?」
 怪しく笑ったかと思うといきなり褌とマスカレードをばっさと脱ぎ捨てるレイジュ。そんな事をしてしまったら生まれたままの姿になってしまうが、それはギリギリで防がれた。何故なら‥‥彼は股間部を隠すように大きな葉っぱをそこにつけていたからだ!
「貴様! 俺たちを騎士へ引き渡すつもりか!」
 正体を現したレイジュに動揺しまくるフンドーシ男達。
「別に騎士に引き渡す訳じゃないさ。素顔を見せずに主張だけする等、どうかと思ったけどね」
 レイジュはどことなく真っ当なような意見を言う。ただ、根本からして真っ当ではないのが最大の問題だ。
 と、フンドーシ男が動揺してる所に、建物の影にてキラリと怪しく光る目があった。
「ふふ〜♪ 来はったな♪ いらっしゃいませや♪ ということで‥‥その褌、貰ったー!」
 次の瞬間!
 ズサササーッ!!
「あー!?」
「俺の褌がぁー!?」
 フンドーシ集団を間を駆け抜ける疾風。その正体は‥‥隠れて様子を伺っていたユウヒ。彼女は事前の打ち合わせでこの場に先回りしていたのだ。そんな駆け抜けたユウヒの手にあったのは‥‥褌。そう、フンドーシ男達がつけていた褌であった! きっちり6人分、全て剥ぎ取っている!
「ふむ、大きいことゆうとる割にはモノは大したことあらへんな? ‥‥と、よく考えたらそこじゃなくて仮面を剥ぐべきだったやろか」
「どこ見ながら言ってんだよ!?」
 じっとナニかを見ながら言うユウヒに対して、赤面しながら股間を急いで手で隠す男達。何だか普通と男女逆な気がしてならない。
「さて、そいじゃ説得は葉っぱさんに任せてうちは高みの見物といこうかな♪」
 自分のやるべき事は終わったのか、悠々と褌を手にその場から離れるユウヒ。いつの間にかお茶セットを用意してるあたり用意周到だ。
 フンドーシ男は股間を手で隠し、何とも逃げるに逃げにくい状況であった。この状況を好機と見て、レイジュは言葉を畳み掛けていく!
「褌とマスカレイドをつけさせた所で、ラーンス派の状況が変わる訳でもないし、処罰は国に任せればいいと思う」
「そもそもラーンス派騎士達は既に褌を着用済みじゃ!」
 オルロックの妙な主張の根拠は過去に自分が見たラーンスがフンドーシをつけている肖像画からきてるものらしい。どう考えても捏造というかそういう類の品物であると思うのだが。
「ラーンス卿に褌は流石にちょっと嫌やなぁ。怪しい絵があった気がするけどそっちは無視や」
 お茶を飲みながらまったりするユウヒもラーンスが褌をつけている姿を軽く想像したのか、妙な顔になる。
「それより、褌+マスカレイドの主張はもっと別で生かすべきだと思う。上よりも下を見るんだ! そう、国民からその格好を浸透させていけば、必ず上の王家まで辿り着く! ただし、強引な主張はダメだ。反発されるだけだからね、失敗に結びつく」
「彼らの処分は、フンドーシ剥奪が妥当な処分じゃろぅ」
「お爺ちゃん、文が繋がってない!」
 やはり真っ当に見える主張をしていくレイジュの横で、自身の主張を続けるオルロック。ボケているのだろうか、文脈がおかしい事にユウヒが突っ込むがまるで聞いていないようだ。

「そう、か‥‥。俺たちは間違って、いたんだな‥‥」
「‥‥でじゃ、ラーンス派に褌着用を求めるお主らに‥‥んん?」
 レイジュの言葉に胸をうたれたのか、がっくりと項垂れる男達。その様子に思わずオルロックも言葉を止める。
「分かった! 俺たち、ちゃんと正しい方法を模索して頑張るよ!」
 そして顔を上げた時にはそこには晴れやかな笑顔。自分のやるべき事をしっかり見つける為、男達は走る! 夕日に向かって! 全裸で!
 男達を説得した冒険者は晴れ晴れとした気持ちで、笑顔で彼らを見送ったのだった。

●だがしかし
「君達、ちょっと来てくれるかな?」
「‥‥え?」
 ふと気づけば数人の騎士に囲まれてる事に気づくレイジュとオルロック。ユウヒはいつのまにかいなくなっている。
 囲まれているレイジュとオルロックは共にほぼ全裸に近い状態だ。何も言われない方がおかしい。
「しかるべきところで話を聞かせてもらうからね!」
「‥‥おいしいものは出るのかのう」
「出ないよ!」
 ――彼らはその後、騎士にお説教をされてから帰ったという。

 そしてたった1人、別の場所のユウヒ‥‥彼女が手に持っているのは褌。
「褌ねぇ。そないにいいものなんかな? ‥‥はっ!?」
 赤面して気づけば、ついつい褌を履いてしまっているユウヒがそこに居た。