森に消えた宝物

■ショートシナリオ


担当:刃葉破

対応レベル:1〜5lv

難易度:普通

成功報酬:1 G 8 C

参加人数:4人

サポート参加人数:-人

冒険期間:05月20日〜05月25日

リプレイ公開日:2007年05月28日

●オープニング

 時もそろそろ夜になる頃の日没の時。
 カラスもカアカアと鳴き、動物達は自らの巣に戻っていく。それは人間も例外ではなく。
 キャメロットから少し離れたとある森に近い村、1人の少女が山から出て自分の村の家への帰途についていた。
 少女の首に揺れるは紐で繋がれた小さな宝石。あまり高価なものではなさそうだが、綺麗に磨かれており、少女が大切にしている事は目に分かった。
「ん、早く帰らなきゃ‥‥」
 予定より帰るのが遅れてしまったのか、早足で歩き始める少女。

 ぶちっ。

「あっ!?」
 劣化していたのだろうか宝石を繋いでいた紐が、振れに耐え切れずに切れてしまう。
 そして転がり落ちる少女の大事な宝石‥‥。
 急いで拾おうと、少女は足を止めてその場で振り返る。

 ――――カア。
「えっ‥‥?」
 そこに居たのは‥‥大きなカラスであった。普通のカラスの2倍程の大きさはあるだろう。
 そんなカラスが、落ちた少女の宝石を嘴で啄ばむようにいたのである。
「駄目‥‥やめて!」
 カラスの習性――光物を集める――を思い出して、すぐに宝石を取り替えそうと駆け寄る少女だが、カラスは宝石を嘴で挟むとすぐさまその場を飛びたってしまう!
「返して‥‥お母さんの形見‥‥返してぇぇぇぇぇ!!!!」
 少女の叫びも虚しく――カラスは森の中へと消えていった。



「母親の形見である宝石を取り戻したい‥‥ですか」
「はい、大きなカラスに奪われたのを‥‥何としても取り戻したいんです!」
 それから数日が経ち、キャメロットギルドにその少女がいた。
「私の今まで溜めてたお金を全て報酬として出します! だからお願いします!」
 深々と頭を下げる少女、持ってる金の全てと提示された報酬はそれでもやはり少ないものであった。
 だが、ここまで言わせておいて受け付けないわけにはいかない。そう、受付係は思っていた。
「分かりました‥‥。えっと、宝石の在り処に目処は?」
「正確な場所は分かりませんが‥‥カラスは自分の巣にそういうのを持ち帰ると思いますので、おそらくそこに。そして‥‥カラスが私の村の近くの森に帰っていくのを見ました。‥‥えっと、やはりこれだけでは無理でしょうか?」
 途端に不安そうな顔になる少女。だが受付係の青年はにこっと笑うと。
「大丈夫です。我々ギルドが認める冒険者達を信じてください」

●今回の参加者

 ea3132 クラウディ・トゥエルブ(28歳・♀・バード・パラ・ノルマン王国)
 eb8646 サスケ・ヒノモリ(24歳・♂・ウィザード・ハーフエルフ・イギリス王国)
 ec2802 ミシュナ・レスカ(19歳・♀・ウィザード・ハーフエルフ・イギリス王国)
 ec2809 ユウリ・ディアレイン(22歳・♂・バード・ハーフエルフ・イギリス王国)

●リプレイ本文

●困ったカラス
 ジャイアントクロウが棲んでいるらしい森の近くにある村。特に目に見えた異変が起きているわけでもない平和でのどかなその村で、少女から宝石を取り戻す依頼を受けた冒険者達は村人から話を聞いていた。
「宝石をジャイアントクロウと言う大きなカラスに持っていかれたことはありますか?」
「大きなカラス‥‥ねぇ」
 手を自分の頬に当てるようにして考え込む女性に話を聞いてる男は冒険者のユウリ・ディアレイン(ec2809)。育ちの良さそうな、ぱっと見女性と間違えそうな端整な顔立ちで真っ直ぐ女性の顔を見ながら話すと、女性は軽く照れたような素振りを見せる。
「うーん‥‥そういえば、宝石ではないんだけど、ちょっと前に髪飾りを大きなカラスに持っていかれた事はあるわね」
「森のどちらの方角に行ったのですか?」
 ユウリに聞かれて自分の記憶を探る女性。そして出てきた答えにユウリは間髪いれずにカラスがどこへ行ったのかを聞く。
「さすがにそこまでは分からないねぇ‥‥」
「そう、ですか」
 やはりカラスが森の方向へ飛び立った事ぐらいしか見えなかったのか、さすがに巣のある場所の見当を聞き込みでつけるのは厳しそうだ。

 そして同じように聞き込みをするクラウディ・トゥエルブ(ea3132)。彼女は依頼人の少女に宝石を奪われた時の状況を詳しく聞いていた。パラゆえに少女と同じぐらいの背で話をする姿は微笑ましいものが見える。
「どこで宝石を奪われたのか、詳しく教えてくれませんか?」
 クラウディの質問に答えるように、彼女を案内して少女は村の外へ出る。そこは見通しのよい道が続く平野。少し離れたところに森が見えた。
「‥‥大体、この辺です」
「奪っていったカラスの特徴とか、分かりませんか?」
 ある程度道を進んだところで立ち止まる少女。同じくクラウディも立ち止まり、カラスの特徴を聞くが‥‥。
 ふるふる‥‥と首を横に振るだけの少女。いきなり大きなカラスが目の前に現われたので、驚きで正確に姿を把握できていないのだろう。そも、漆黒に包まれたカラスの特徴なんて、簡単には見つからないだろう。
「そうですか‥‥。村の人たちから聞いた情報も芳しくありませんでしたし、現地で何とか、ですかね」
 ふむ、と考え込むように呟くクラウディだったが、そんなクラウディを不安げに見上げる少女。少女の様子に気づき、クラウディは少女と目を合わせ、少女を安心させるように言葉を紡ぐ。
「大丈夫、あたし達に任せてください」

 こうして2人の冒険者が聞き込みなどをしていると、1人の男性の冒険者がそこに合流した。彼の名はサスケ・ヒノモリ(eb8646)。彼はカラスを誘き寄せる為の簡単な光り物を調達していたのだ。尤も、タダというわけにはいかなかったのだが。
「こちらの準備はできました、そちらはどうですか?」
「‥‥えぇと、はい。できました‥‥」
 サスケの問いに少々へこみ気味に銀のネックレスを取り出すユウリ。そんなユウリの様子が気になったサスケは、当然一体どうしたのかを彼に聞く。
「‥‥いえ、保存食を持ってくるの忘れまして。仕方なく色々と調達したのですが、それが結構響きまして‥‥」
「それは‥‥大変ですね」
 何ともコメントしづらいサスケは言葉を濁すように言う。
 そしてユウリは保存食を通常の3倍の価格で調達する羽目になってしまっていたのだった。

●森の中へ
 日がまだ高い時間、3人の冒険者達はジャイアントクロウが棲むという森の中に入っていった。
 特に鬱蒼と茂ってはおらず、木漏れ日が森の中を明るく照らす。事前に村人達に聞いた話では特に凶暴なモンスターなどが生息しているわけではなく、いるとしても野犬程度らしい。
「獰猛な動物がいないなら、ある程度安心できますね」
「そうですね。何とか動物から情報が得られれば良いのですが」
 サスケがあたりを見渡し、周りには小動物ぐらいしか見当たらないのを見ると安心したように言う。そして、クラウディは動物から情報を得る為に、動物と会話できる魔法‥‥テレパシーを発動させる。
「‥‥どう、ですか?」
 周囲にいる動物とテレパシーで会話しているのだろう、黙りこくったクラウディ。その様子をしばらく見て、ユウリが結果どうなったのかをクラウディに聞く。
「‥‥この辺りで黒い鳥らしきものを見たことは無い、という事は分かりました。相手は動物ですからそれぐらいしか分かりませんね‥‥。場所を変えてまたそこにいる動物に聞くようにしましょう」
 クラウディの提案通り、冒険者達は次々と場所を変えて動物達にテレパシーで話を聞く。
 そして数刻過ぎた時、やっと――。
「‥‥この辺りに、いるそうです」
 テレパシーによる会話を終えたクラウディが仲間2人に告げた事実。それはこの周囲によくジャイアントクロウが現われるらしいという情報。
「なら、この辺で待ってみましょうか」
 ユウリが銀のネックレスを取り出しながら言う。同じくサスケも事前に入手した光り物を懐から取り出す。
 そしてその2つをある程度目立ちそうな木の枝のところに置くようにして、茂みの中に隠れるようにする。これでジャイアントクロウが引っかかるのを待つというわけだ。
 暫くして、日が暮れ始めた時‥‥。
 バサッバサッバサッ。
 頭上の方向から聞こえる羽ばたきの音。その音の方に目を向ければ、そこには居たのはやはり大きなカラス‥‥ジャイアントクロウだった。
「来ましたね‥‥」
「まずは巣を見つける為に追いかけましょう」
 ユウリの呟きにサスケが頷くと、サスケはフライングブルームを取り出してそれに跨る。空をいくジャイアントクロウを同じく空をいって追いかけるつもりのようだ。
「あたし達も追いかけますから、あまり無理しないでくださいね」
 クラウディが心配するように声をかけ、それにサスケは力強く頷く事で答える。
 そして、仕掛けた光り物を持って飛び立つジャイアントクロウを追いかけるように冒険者達は行動を開始した。

●発見
 ギャーギャーギャー‥‥!
 冒険者達が追いかけた末、そこにジャイアントクロウの巣はやはりあった。だがそれは1つではなく、大体4つぐらいだろうか。そして巣が4つあるという事はジャイアントクロウ自体も4匹はいるという事である。
 ジャイアントクロウ達は自分達の巣の近くに現われた冒険者達を警戒するように鳴きながら空を飛んでいた。
「まずは話を――――くっ!?」
 無闇に傷つけたくないからか、クラウディはテレパシーを発動させてジャイアントクロウとの会話を試みる――。だが、突如クラウディの頭に強く響く『デテイケ!』という声。そして襲い掛かるように迫ってくるジャイアントクロウ!
 ジャイアントクロウ達は巣に近づく冒険者達を完全に敵と認識したようで、爪を煌かせて急降下してきたのだ!
「っと‥‥!」
 いきなりの事だったが何とか回避した冒険者達。どうやら話し合いの余地は無さそうである。それもそうだろう、動物が巣に近づいた人と交渉なぞできるわけないのだから。
「仕方がありません、あまり傷つけたくありませんでしたが‥‥」
「えぇ、何とかしてこの場を切り抜けましょう」
 同時に魔法の詠唱を始めるサスケとクラウディ。ユウリは後方に下がりつつ、ジャイアントクロウを引き付けて2人が安全に魔法を唱えれるように動く。
 そして2人の魔法の詠唱が同時に終わり、同時に発動する!
 サスケからは黒い重力の帯‥‥グラビティーキャノンがジャイアントクロウに向けて発射される! クラウディの唱えた魔法はスリープ、空を飛ぶジャイアントクロウを眠らせる魔法だ!
 グラビティーキャノンが2体のジャイアントクロウを巻き込み、地に落とす! スリープの対象となったジャイアントクロウも眠ってしまい、そのまま空から地面に叩きつけられる!
 さすがにこれでは死なないものの、グラビティーキャノンを食らったジャイアントクロウは中々のダメージを食らっており、起き上がると逃げるようにどこかへと飛んでいってしまう!
 これは地面に叩きつけられて起きたジャイアントクロウ、そして何もされていないジャイアントクロウも同じで、冒険者達に敵わないと思ったのだろうか。やはり逃げていった。
「ふぅ‥‥傷つけてはしまいましたが‥‥殺さずには済みましたね」
 飛んで逃げていくジャイアントクロウ達を見送りながら安堵の息をつくユウリ。
「それでは、ジャイアントクロウが戻ってくる前に宝石を見つけてしまいましょう」
「そうですね。それでは俺が取ってきますね」
 サスケがまたフライングブームに跨り、木の上の方にある巣を1つずつ覗いていく。
 そして、ある1つの巣を見て‥‥。
「これは‥‥事前に聞いた情報と同じ、ですね」

●大事な宝物
 目的を達した冒険者達が村に戻った時には既に夜になっており、空には星が輝いていた。
 そんな時間であるのに、村の入り口にて少女が立っているのが冒険者達の目に入った。
「あっ‥‥!」
 ずっと待っていたのだろうか、少女は冒険者達を見つけるとこちらの方に駆けつけてきた。
「あの、お母さんの‥‥形見は‥‥!?」
「はい、これですね」
 縋りつくような声で宝石を行方を聞く少女に、サスケは見つけた宝石を取り出して少女に渡す。
「あぁ、これです! あぁ‥‥あぁ‥‥ありがと、ございますぅ‥‥!」
 少女は泣きながら、宝石を胸に抱くように大事に握り締める。
「もう二度と無くさないよう、気をつけなさい」
「はい‥‥! はい‥‥!」
 出発する前と同じく、クラウディが少女と目を合わせ、よく注意するように言い聞かせ、少女は何度も頷いた。


 後日。彼らが依頼料を受け取った時、サスケは依頼人の少女に何かお土産を持っていったとか。
 その時の少女の胸にはより強い紐で繋がれた宝石が揺れていたそうだ。