フタカマ
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■ショートシナリオ
担当:刃葉破
対応レベル:6〜10lv
難易度:普通
成功報酬:3 G 9 C
参加人数:4人
サポート参加人数:-人
冒険期間:07月20日〜07月25日
リプレイ公開日:2007年07月28日
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●オープニング
「私たち‥‥2人一緒じゃダメですか‥‥?」
キャメロットの夜。危険が香る時である、色んな意味で。
そんな街中を1人の男が上機嫌に歩いていた。酒場で酒でも飲んでいたのだろうか、足取りはおぼつかない。
「うぉっとっと‥‥危ない危ない」
転びそうになる男だが、なんとかそれは免れる。その口ぶりからはあまり危ないという意思は感じ取れないが。
今の男には危機察知能力とかそういうのが欠けていた。酒のせいだろう。
―――本来なら、夜のキャメロットなんて軽々しく男1人で歩けたものじゃないのに。
カツカツカツ‥‥。
「ん?」
ふと気づけば男を囲むようにして足音が周りから響いている事に気づいた。
音は1人分‥‥いや2人分だろうか。音がシンクロしすぎていた為に本来いる人数の半分にすら聞こえた。
そして――足音の主が姿を現した。
「いつの間にか好きになっちゃった‥‥♪」
「ずっとずっと気になってたの」
「‥‥‥‥は?」
男は、いきなり現れた2人に告白されたのだった。
勿論初対面である。もし過去に出会っていたら記憶に相当刻み込まれている筈だ。
何故なら――目の前に現われた2人は女装している筋骨逞しい男だったから―――。
「初めまして。私はキーリャです」
「あの‥‥はじめまして、こんばんは。私はユーラーです」
驚いている男を尻目に勝手に話し始める2人の男。女性的な服を着ているのに筋肉隆々と分かるとは中は相当凄い事になっているのだろう。2人とも見た目的には非常にそっくりだ、ぱっと見では見分けがつかない程だ。違いは頭につけているリボンの色だろうか。キーリャと名乗った方は赤いリボン、ユーラーと名乗った方は青いリボンをつけていた。
「あの‥‥突然なんだけど、私、あなたの事が好きになっちゃった」
「いきなりでビックリしたでしょう? キーリャちゃんは元気だから‥‥」
いやいきなりじゃなくても驚くだろう、常識的に考えて。
「でね、ユーラーちゃんもあなたの事が好きなんだって‥‥」
「はい、そうなんです‥‥。双子だからかもしれません。でもどっちかだけなんて‥‥だから、考えたんです」
双子らしいキーリャもユーラーも男の意思を完全に無視して話をどんどん進めていく。ちなみに男は逃げ出そうとしているのだが、2人にがっしりと肩を掴まれてまったく身動きできない状態だ。
「だから‥‥私たち‥‥2人一緒じゃダメですか?」
2人はまったく同じ声色で同じように言った。まるで1人が言ったように。
「2人だろうが1人だろうが駄目に決まってるだろうがあああああああああああ――――」
男の最後の渾身の叫びは、夜の街に消えた。
「受付係さんは、2人同時に愛せると思いますかー?」
「‥‥分かりませんけど、この2人なら例え1人でも無理だと断言できますね」
そんなこんなでキャメロットギルドの受付にて、受付係の青年と依頼人の女性が話をしていた。
内容はやはりキャメロットにて夜な夜な男性を襲う双子のキーリャとユーラーの退治である。
好きになってたとか気になってたとか言ってるが、結局はその場の勢いで襲っているのだろう。ぶっちゃけ、やってる事はいつもとあまり変わらないのだが。
「‥‥ふーん。否定しないとは受付係さんは中々軟派なようですねー」
「何故そうなりますか!?」
ともかく、こうして依頼が受理されたのであった。
●リプレイ本文
●囮っていうか生贄
夜のキャメロット。危険が蔓延るこの場所に、冒険者達は集まっていた。
勿論、ここ最近現れる双子のカマを退治する為である。
「双子のカマとはまたひどいナマモノが出たな‥‥。二人一組で破壊力は二倍、やられた方のトラウマも二倍って感じか」
「女装したオカマ男? ‥‥ええぃ、何たる男の恥! 男ってのはなぁ、こう‥‥誇り高く硬派でダーティーでニヒルな渋味を醸し出してないとだな‥‥」
様々な種類のカマが現れては消えるキャメロットでまた一段と変わったカマの事を考えて嘆息を洩らすセティア・ルナリード(eb7226)。そしてカマの何たるかを知った空木怜(ec1783)はその男の道からの外れっぷりに怒りを隠せないでいる。だが怜の考える男像もどうかと思うのだが。
「‥‥それでは囮役、頑張ってくださいね‥‥? あ‥‥『もしかした』ら相手が現れた時に駆けつけるのが遅れてしまいかもしれませんが‥‥その時はなんとか気合で頑張ってくださいね‥‥」
「あぁ、ここは俺が囮になるのが確実だろう。そう、俺が適任のはずだ。三十路にあと一歩、男の中の男、レイ・ウツギ。見事、カマ二人を誘き出し‥‥俺の男を証明してやる。女顔だとか、顔がガキだとか、そう言った評価を一変させるぜ、フフフ‥‥」
「とりあえず今回の主役はあなたです‥‥」
傍目から見るにやる気たっぷりの怜の肩にぽんと手を乗せながらサクラ・キドウ(ea6159)は怜に囮役を任せる、色々と言葉を含みながら。もし遅れたらなどと言ってるがこういう事言う時大抵は‥‥みなまで言わず。怜は怜で思うところがあるのか快く囮役を引き受ける。‥‥まったく恐れを抱いていないのは無知だから、だろうか。サクラの言う主役という意味は‥‥間違っちゃいないだろう。
「それにしても美青年とか美少年とかのカマってのがいても良いんじゃないか? あんなキモいナマモノじゃなくて、可憐な女装少年とかどっかいないかなー」
キャメロットにて現れたカマは今の所殆ど筋肉逞しいマッチョなカマばかりだからか、妙な希望を抱くセティア。もしそんな少年がいたらどうする気だ。
「まぁ、簡単な事じゃな。――キャメロットだからじゃ。それにそんな少年だったら退治されるどころか一部の人はこぞってむしろ襲うじゃろうなぁ‥‥」
セティアに答えになってるようななってないような事を笑顔で言うのはオーガ・シン(ea0717)だ。キャメロットだから、で納得できるのは何故だろうか。
「ともかく、いけに‥‥囮も確保できたようじゃから。カマカマ退治に向かうとしようかなのぅ」
オーガが適当に名づけたカマカマ曰くカマの双子を退治をする為に囮捜査を始めようという時。皆が怜の事を生暖かい目で見ていたのを熱く燃える怜本人は気づいていなかった。
●現れた双子
というわけで1人、夜のキャメロットを練り歩く怜。一応ダウジングやら過去の犯行現場やらで現れそうな場所を狙って歩いているが、別にそんな事しなくても現れてくれる気がする。
一応、オーガが足を忍ばせて怜からある程度離れて尾行しているからまったく1人ってわけでもないのだが。それに少し遅れて他の者もついているといった感じか。
「よーし、いつでも現れやがれ!」
「‥‥あ、はい。呼ばれましたので‥‥」
「早いよ!?」
まだ見ぬカマに対して怜が気合を入れると、即座に背後から響く野太い声。思わず振り向くとそこにはいつの間にか立っていたのかフリフリした服に、やはりフリフリしたスカートを履いている逞しい男がそこにいた。カマだ。紛れも無いカマだ。青いリボンを髪に結ってることからユーラーだろう。
「早速現れたのう。見事に情報通りじゃな」
「‥‥やっぱ視覚的・精神的にきっついなぁ」
ユーラーが現れたのをオーガもセティアも建物の影に隠れて覗くように見る。セティアの感想は尤もなものといえる。
「見たくは‥‥ないですけど‥‥とりあえずは様子見しましょう‥‥」
そう言うサクラは様子見どころか、いつのまにかお茶セットを取り出していて和む気満々である。わざわざ家から持ってきたお菓子もあるのが中々ニクイ。そんなサクラを見て、オーガとセティアは咎めるどころかそのお茶の席についたりするものだから‥‥怜は残念というか何というか。
「まあ、出番が来るまでゆっくりしていましょう‥‥。まだ私達の出番ではなさそうですし‥‥」
ある意味孤立状態になってしまった怜。だがそんな事も露知らず、銀色に輝くナックルを月の光に輝かせる!
「殴って目を覚ませてやる! このド変態!」
怜はユーラーとの距離を一気に縮め、両の手から渾身の拳を連打する!
「打つべし! 打つべし!」
ガスッ! ガスッ! ガスッ!
速さを重視した一撃である為、一撃一撃の威力はそんなに大きくないが数を与えればそれなりのダメージになる‥‥筈だ。
だが当の打たれているユーラはというと‥‥。
「あ、あぁ‥‥激しい‥‥ですぅ‥‥!」
「な、何ぃ!? 効いてないのか!?」
何故か顔を赤らめて恍惚としていた。びくびくと震えてるが多分それは痛みのせいではないだろう。いやある意味痛みのせいだろうが。
その様子に動揺して思わず拳を止めてしまう怜! だがそれはユーラーを前にしては大きすぎる隙だった。
「大好き‥‥です!」
怜が気づいた時には、既にユーラーは両手をがばっと広げ、抱きしめる直前の体勢であった。
ぎゅー!
「いだだだ! 熱い苦しいぬがぁぁぁぁぁぁ!!!」
ユーラーが力の限り怜をしっかりと抱きしめる! その体格に見合った腕力で抱きしめられるとたまったものではない。あと精神的にも。
「あー。もう、ユーラーちゃん。ひとり占めしちゃダメだよー」
「あ、キーリャちゃん‥‥」
するとふと聞こえるこつこつという足音。それに気づきユーラーが顔を上げるとそこに立っていたのはユーラーと同じような出で立ちのキーリャだった。
「私も、ね?」
「うん‥‥一緒に‥‥だね?」
「やめろおおおおおおおおおおお!!!!」
助けは、まだ来ない。
●遅ればせながら
「そろそろ動いた方がいいんじゃないかのう」
わいわいと和やかにお茶を飲みつつ適当に観戦している中、怜のピンチに気づいたのはオーガだった。
「近づきたくないんだけどなぁ‥‥」
やれやれと立ち上がるセティア。だがスクロールを広げるその姿はぶちのめすという意思がはっきりと見て取れた。
サクラもなるべくユーラーとキーリャを視界に入れないようにして立ち上がると、ぼそりと呟く。
「しかし色んな変態がここにはいますけど‥‥そのうちデビルも変態の真似とかしないでしょうね‥‥ここ」
‥‥さすがに無いだろう、うん。
「ん‥‥すごいいい体してるね――ぬぎゃっ!?」
衣服がぼろぼろになっている怜の胸板に指を這わすキーリャに突然襲い掛かる雷! それはセティアの放ったライトニングサンダーボルトだ!
「それじゃ、完膚なきまでに叩きのめしてやるよ」
「とりあえず変なもの見せ付けてないでさっさとしまいなさい‥‥。しまわないなら‥‥斬る‥‥!」
剣を抜いて構えるサクラ。ちなみにサクラの言う通り、カマ達は服が服としての意味を成さないような格好となっている。
「むむぅ‥‥! よし、ユーラーちゃん! 私たちのタッグで!」
「えぇ‥‥キーリャちゃん!」
2人はがっしりと手を繋いで冒険者達に向かい合う! これが美少女だったら美しい絵柄なのだろうが、実際は‥‥。
そして2人の意思が冒険者達に向いた事で解放される怜。彼の衣服は前述の通りぼろぼろになっており、彼の色んな大事なところが守られたかどうかは‥‥彼本人しかわからないだろう。
「私たちは‥‥絶対に負け――いだっ!?」
「大丈夫、キーリャちゃん――はぅっ!?」
キーリャが口上を述べようとするがそれを遮るように発動するセティアのライトニングサンダーボルト。ユーラーにはオーガの放った弓矢が突き刺さる!
「ちょっと、喋らせ――んぎゃっ!?」
「ひ、ひど――あぐぁ!?」
まさに外道。
「爺の美技に震え悶えるが良いわ」
オーガがトドメをさすべく、弓を引き絞りキーリャのただ一点に狙いをつける!
「‥‥終わらせましょう」
サクラも剣を構え、ユーラーのただ一点を貫く体勢になる!
――バシュン!
「あ、あぁぁぁぁぁぁ―――」
双子らしく、倒れるのも同時であった。
●戦いは続く
「これでイギリスに巣食う悪を一つ抹殺出来ましたね‥‥。けれどこれは氷山の一角‥‥。きっとまだ私達の知らないいろいろな変態が‥‥いて欲しくない‥‥」
「あんなのがウヨウヨいて、この国は大丈夫なのか‥‥?」
一仕事を終えて、剣をとにかく丁寧に拭くと遠い目でどこかを見つめるサクラ。その瞳には一体何が映るのだろうか。
サクラの言う通り、氷山の一角だとしてセティアもこの国の行く末が不安でならない。
「‥‥良かったのう、しっかり男として見てもらえて」
「よくねぇよおおおお―――」
男として見られたのはいいが、同時に何かを失ったような気がした怜であった。