素顔を見せて!
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■ショートシナリオ
担当:刃葉破
対応レベル:11〜lv
難易度:やや難
成功報酬:8 G 76 C
参加人数:8人
サポート参加人数:1人
冒険期間:09月15日〜09月20日
リプレイ公開日:2007年09月24日
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●オープニング
イギリス王国には円卓の騎士を始めとした、様々な有名な騎士がいる。
その中でやはり最たるものは誰かと問われれば多くの者はこう答えるだろう。
湖の騎士―――ラーンス・ロット、だと。
ラーンスは類稀なる美貌、剣の腕を持って、多くの貴婦人の憧れの視線を集めている。
―――ならば、その弟はどうなのだろうか。
「なぁ、エクター」
「はい、何ですか?」
キャメロットのとある騎士の詰め所。その部屋の一室にいるのは2人の王宮騎士。片方はエクターと呼ばれた全身を黒い鎧兜で覆っている騎士、もう1人はエクターの先輩である。
エクター―――エクター・ド・マリスはラーンス・ロットの弟である。彼はラーンスの弟という事で有名であり、もう1つ彼を有名にする要因があった。‥‥それは今の彼の格好を見れば一目瞭然だろう。室内だというのに黒い鎧兜を装備し、少しの肌も晒さぬ程だ。その重装備っぷりに彼が座っている椅子が心配になるぐらいである。
そう、彼の素顔を見た者は殆どいない。それほどまでに徹底しているのだ。それがエクターを有名にする要因の1つであった。
そんなエクターに聞きたい事があるという事で話しかける先輩の騎士。ちなみに実力としてはエクターの方が上だが、エクター曰く何となく逆らいがたい先輩らしい。
「お前、何でいつもそんな格好なの?」
「‥‥直球ですね」
聞きたい事はズバッと聞くのが男だ、と自負している先輩騎士。きっとデリケートな女性にはもてないだろう。
「あっつい真夏日にもその格好だったし、室内でもそれだろ? 普通は気になるって」
「えー‥‥いや、あの、大した事でもないんですけど」
「何、人と目を合わせるのが怖いとか? それとも人には見せれないような中身なのか」
「別にそういうわけでも‥‥って、中身って言い草は酷いですね」
臆する事なくズバズバと質問を投げかける先輩騎士。エクターの声に戸惑いが感じられるが、兜のせいで表情までは伺えない。その上肝心の声もくぐもっているのだが。
だが先輩騎士の言い分は尤もであろう。四六時中こんな格好されたら――誰だって気になる。
「お前の中身がどんなのかってのは結構噂になるんだぜ? ラーンス卿に憧れを抱いてる貴族のご婦人方からは特に、だな。やれやっぱりラーンス卿に似て美麗だとか、いやそれなら隠す必要が無いのでは‥‥とかな」
「うぅ‥‥何故私の事が噂に‥‥」
何故、、と問うエクターだが噂になるには十分な土壌がある気がする。
「っつーわけで、脱いで見せろ」
「どういうわけですか!?」
ツッコミを入れるエクターだが、先輩騎士は聞く耳を持たない。
「何だよー、どうしても見せれない理由があるのかよー」
「う‥‥それを言われると弱いのですが‥‥」
「じゃあ、いいじゃんかよー」
まるで欲しいものをねだる子供のようだ、とエクターは思った。それぐらい今の先輩騎士はタチが悪い。
「‥‥そうですね、では私と勝負をして勝てたら脱ぎましょう」
「お前強いから嫌だ」
「そんな理由で拒否ですか!? ‥‥じゃあ私も脱ぐの嫌です」
「我侭だなぁ」
「どっちがですか!」
騎士らしく剣で決めようという提案をあっさりと却下する先輩騎士。エクターがそんな提案をしたのも剣ならば勝てるからという事なのだが、そんな魂胆をお見通しなのか。何を言われても先輩騎士は中々納得しようとしない。
「‥‥ん、あ、いや、待てよ」
「‥‥‥?」
唐突に話題を手で遮るように上げる先輩騎士。そんな先輩騎士の様子にエクターは戸惑い気味だ。
「勝負に勝てば、いいんだな?」
「え、えぇ、そうですけど。あ、戦闘以外の勝負は無しですよ」
先手を打つように釘を刺しておくエクターだが、先輩騎士は別にその点には気にも留めない様子で。むしろ――戦闘で良いなら問題ない――とニヤリと笑っていた。
「エクター、その言葉に二言は無いな?」
「えぇ、騎士として」
「オーケイ、オーケイ。んじゃ詳しいルールとか戦う期日とかは後でそっちに伝える。こっちはちょっと作戦を練らせてもらう」
「え‥‥‥?」
まさか先輩騎士が承諾するとは思っていなかったのだろう、戸惑いの声を上げるエクター。いや、そんな事よりも彼は不穏な事を言っていなかったか、作戦を練るとか。‥‥エクターは先輩騎士の悪知恵が働くのをよく知っていた。
「え、ちょっと、待っ―――」
エクターが止めようとするも、既に先輩騎士は部屋から逃げるように出ていった。
それから数日後、キャメロットギルドにて依頼が貼り出される。
『エクター・ド・マリス率いる騎士との模擬戦闘をする者を求む』
「せんぱぁぁぁい! あれはどういう事ですか!?」
「お、知ったのか。中々耳が早いな」
スパーンと開け放たれる扉から勢いよく入ってくるエクター。知り合いからギルドにその依頼の事を聞いたのか、先輩騎士に詰め寄る。先輩騎士はそれでも悪びれる様子も無い。
「いやー、勝てばエクターが脱ぐって事でちょいと知り合いの貴族のご婦人に声をかけたら支援してくださってな。お陰で報酬の用意が簡単だった」
「私は! そんな事を聞きたいんじゃありません!」
先輩騎士の肩をがっしりと掴んでガクガクと思いっきり揺さぶるエクター。そんな状況でも先輩騎士は笑ったままだ。
「どうせ真正面から俺が挑んでも勝てないしー。だったら冒険者に頼んじゃおうかなーと。集団戦の方が何とかなりそうだし、それに集団戦闘なら戦闘訓練って事で色々と言い訳もしやすい、うん」
「どうしてそう悪知恵が働くんですか、先輩は! 私は断り―――」
「騎士に二言は無いんじゃ?」
「ぐっ!?」
兄のような立派な騎士を目指しているエクターとしては騎士という言葉を盾にされると非常に弱い。それに彼は剣の腕程に口は上手くないのだ。反論ができずに口ごもってしまう。
そしてエクターはもう撤回させる事を諦めたのか、先輩騎士の肩から手を離し、ふぅと息を抜きながら顔を伏せる。どうせ顔を伏せようが上げようが兜のせいで表情は伺えないのだが。
次の瞬間、顔を上げたエクターからその鎧に相応しい黒い威圧感のようなものが、バシバシと放出される!
「ふ、ふふふ‥‥分かりました。やりますよ、やってやりますよ‥‥! 私が勝ったらどうなるか思い知らせてあげますからね!」
「‥‥やる気なのはいいけど、キレて死人出すなよ、お前」
普段は穏やかなのだが、実はキレやすい後輩の挙動が気になる先輩騎士であった。
●リプレイ本文
●いい試合を
キャメロットから少し離れた所にある平野。そこに幾人もの冒険者達と騎士が集まっていた。エクター率いる騎士達と、彼らを倒すために依頼を受けた冒険者達である。また、彼らに加えて更に観客として数人の貴族の女性に、今回の戦いの発端となった先輩騎士もその場にいた。更にいざという時の為の救護の準備もばっちりだ。
今は戦う前の顔合わせをしているといったところ。
「頭部装備には確かに違いありませんけど‥‥」
そんな中、冒険者達を見て少し呆然とした様子になっているのは騎士側のリーダーであるエクター。相変わらず黒い鎧兜で全身を覆っており、表情などはまったく伺えないが声の様子から感情はある程度読み取れる。
エクターの視線の先にいるのは――冒険者の女性達。
「えっと‥‥問題ありますか?」
リノルディア・カインハーツ(eb0862)の頭に付けられているのは七色に染め上げられたレインボーリボンである。エクターの想定していた頭部装備とはかけ離れたものだが、シフールである彼女の場合仕方ないだろう。他の物だと装備すらできない場合もあるからだ。
「いえ、あなたは構いません‥‥構わないんです」
「え、私?」
エクターの次なる視線を受けたのは李斎(ea3415)だ。彼女はドワーフであり、その証として立派な髭を蓄えている。‥‥そしてそこには今回の戦いに参加する証としての頭部装備、レインボーリボンが巻かれていた。
「別に頭部に付けてる事には変わりないと思うけど」
「それは‥‥そうですが‥‥」
こう言われては口が下手なエクターに返す術は無い。そしてエクターはそのまま女性の最後の1人へと顔を向ける。
「えーっと‥‥」
顔を向けられたフレイア・ヴォルフ(ea6557)。そんな彼女の姿は前述の2人どころではなく、頭に付けてるのは獣耳ヘアバンド、更には顔にはエクセレントマスカレードを着用している。
何となく、エクターの無言の視線が、痛い。
「‥‥断じて趣味じゃないぞ? ちなみにマスクはリルから、着用勧めたのはマナウスだ」
「あれ、何か責任転嫁されてる!?」
爽やかに言い放つフレイア。彼女の言葉に反応したのは着用を勧めたらしいマナウス・ドラッケン(ea0021)だ。ちなみに彼自体は極めて普通の格好をしている。
またマスクを渡したというリ・ル(ea3888)は少し離れたところで、何やら邪な笑みを浮かべながら先輩騎士と話をしている。話の内容などは聞き取れないがきっと碌な事じゃないだろう。
その様子を見て、なんともいえない気分になっているエクターの元にやってきたのはクロック・ランベリー(eb3776)だ。
「こういう形での戦いは初めてだな。エクター殿、いい試合をしよう」
「‥‥はい! そうですね」
真面目な事を言ってくれるクロックの言葉に声を弾ませるエクター。きっと真面目な人がいてくれて嬉しいのだろう。
更にギリアム・バルセイド(ea3245)、エクターと同じく重装甲で身を固めている尾花満(ea5322)の2人もやってきて言葉を交わす。
「ギリアム・バルセイドだ。参加させてもらうぜ」
「尾花満、よろしく頼む」
「はい!」
どうせならこういう人ばっかりだったらいいのになぁと叶う筈が無い事を願うエクターなのだった。
そしてエクターや彼と共に顔合わせに来ていた騎士達は自分の陣地へと戻る。戦いが―――始まる。
「ところで、乙女の香りがするけど観客席から、だよな‥‥?」
そんな、マナウスの呟き。
●進軍
戦いの合図である鐘の音が響き渡る―――。
それを聞き、すぐに走り始める冒険者達。狙いは簡単な事だ、中心にある丘の占拠である。
そして丘の頂にたどりつく冒険者達。その位置から敵がいるだろう場所を見下ろしてみれば‥‥。
「遅い、な」
マナウスの言う通りであった。集団の先頭を行くはエクターだが、彼はその重装甲故に足が遅い。そんなエクターに足並みを合わせている為だ。
遠目で見る限り、エクターの装備はあの重装甲に右手にクレイモア、左手にヘビーシールドを持っているのだから仕方ないだろう。他の騎士達はさすがにそこまで重装甲な者はいない。弓を使う騎士が2人程いるのが目に入ったぐらいだ。
さて、そろそろフレイアや騎士の弓の射程に入るだろうという地点でエクター達の足が止まる。何事かと見てみれば、エクターを含む3人の騎士が桃色の気をその身に纏った。オーラ魔法である。何を発動したかは判断できないが、何か2回発動したようである。
この隙にリノルディアはストーンウォールのスクロールを広げて土の壁をいくつか作り出す。
それらの行為が終わると、エクターはクレイモアを片手で軽々と掲げ、丘の上にいる冒険者達へ向ける。その突撃の合図を受けて一斉に走り出す騎士たち!
走り出してきた事により射程内に入った騎士目掛けてフレイアが2本の矢を弓にかけ引き絞り‥‥放つ!
「はっ!」
全速力で走っていた為に避ける事はできず、先頭をいく騎士に2本とも突き刺さる! だが騎士は怯む事なく走るのを止めない。
更にそれに対するように弓を使う騎士の方も弓を引き絞り、放つ! こちらは下側からの射撃であり、更にフレイアはリノルディアの作り出したストーンウォールに隠れている為、1人の騎士が放った方は当たらず。
だが、もう1人の騎士が放った弓はフレイアの肩へと突き刺さる! いくつか有利な要素があったとしても射撃の為にストーンウォールからある程度身を乗り出していれば当たるものは当たる。
この時、リノルディアはファンタズムのスクロールを広げて柵の幻影を作るが‥‥いきなり現れた柵を本物と信じないだろうから意味は薄いだろう。
お互い怯む事なく、歩を進める。矢を放つ。決定的な遠距離攻撃を持つのがフレイアだけなので、ダブルシューティングで矢の数を稼ぐも牽制程度にしかならない。また弓を使う騎士も歩を少しずつ進めながら矢を放つので、迂闊に動くと矢が刺さってしまう状況であった。
そして先頭を走っていた4人の騎士が丘の上まで近づいてくるこの状況、戦いの激化を予想し、隠れながらオーラエリベイションを唱えるマナウス。
「食らえっ!」
騎士達がある程度まで近づいたのを見て、クロックはソニックブームを飛ばして攻撃を仕掛ける。見事騎士に当たるが、やはりこの後の隙を矢で射られてしまうのだが、高さのお陰もあって大したダメージにはならない。
4人の騎士が‥‥辿り着く!
「これでも‥‥食らえ!」
それと同時にギリアムが武器であるフレイルを猛烈な勢いで叩きつける! 但し、敵ではなく――ストーンウォールでできた壁に、だ。それを派手に破壊して土煙で視界を防ぐつもりだ―――なのだが。
「あれ?」
そんな事はなく、ストーンウォールは依然健在のままだ。理由は簡単、ギリアムが武器の重さを込めた一撃で殴ろうとストーンウォールを破壊する為に必要な威力に達しないからだ。
「だが動きを邪魔するのはそれだけじゃないってな!」
リルは斎から漁師が漁で使う網を受け取り、それを騎士達に向けて投げる! 漁師ではないからその網が上手い具合に広がって‥‥とはいかないが、それでも1人の動きを妨害するには十分である。
そして騎士の到着と同時に敵味方入り乱れる乱戦が繰り広げられる!
遠距離攻撃を重視したフレイアとリノルディアはなるべく丘から離れるように動き、他の者はペアを組んでコンビネーションを活かして戦う。
「いよっと!」
「そーれ!」
相手騎士の攻撃を斎が盾で受け止め、その背後から鞭で絡めるように攻撃するリルは上手く戦えてる例だろう。
今丘に辿り着いてる騎士は4人、数の上では圧倒的有利の冒険者達が押している。もはや騎士のうち2人は兜を取られていた。
そこに―――エクターともう1人の騎士が辿り着く。
●エクター・ド・マリス
「尾花満‥‥参る!」
なるべく軽装の騎士を狙いたいが、重装備故に動き回れない満は目の前にエクターが現われた時、彼と交戦するという選択肢を取る。
だが――満の攻撃はエクターの持つ盾に受け止められ。
ぶぉん!
暴風。
気づけば受けていた筈のエクターがクレイモアを片手にくるりと右方向にまわっていた。武器の重さを威力に乗せる為に、だ。そしてその軌道は明らかに頭部を狙ったものであり――。
「盾で受けるか――いや、バーストアタック!?」
満は己の判断に従い盾で受けるより、回避する選択をする。
だが――その剣は兜の破壊を狙っているものでありながら、なお回避ができないものであった。
バガン!!
鈍い破砕音と共に、満の装備していた強固な兜が真っ二つになる! 満自身にはダメージはない。
「くぅ!」
「何て威力‥‥ん!?」
クロックは目の前にいる騎士に対して剣で攻撃しながら今起きた事に驚愕に目を開く。だが、その瞬間まったく予想してなかった衝撃が彼の頭に走る!
‥‥ハラリ。
彼のレザーヘルムが真っ二つになったのだ。
「何が起きた!?」
「左後方のやつだ!」
見た限りクロックに攻撃を仕掛けた騎士はいなかったのに、破壊された兜。その疑問に答えるように少し離れた所から射撃しながら見ていたフレイアが答えを告げる。
そこにいたのはエクターと同じく遅れて丘に到着した騎士。
「そいつのソニックブームだ!」
「そんなの有りか!?」
ソニックブーム、剣から衝撃を飛ばして攻撃する技術。それで武器や鎧を破壊する事も技術さえあれば可能。エクターの狙いはなるべく混戦状態にして、その騎士の攻撃で不意打ち気味に兜を破壊する事であった。食らったクロックとしては驚愕するばかりだ。
「なるべく背中を見せないように!」
それを理解し、冒険者は背中を見せないように複数人で固まる。この状況で冒険者側の脱落者は2人、騎士側も2人である。しかし、被害でいえば騎士のうち2人は重傷状態であり、戦えるのはエクターとソニックブーム騎士、弓騎士2人ぐらいのものである。
「いきますよ!」
騎士達がエクターの檄を受け、剣を握り敵に迫り、再び攻防が始まる!
「今度はこっちが潰させてもらうぜ!」
「まずは‥‥倒す!」
ギリアムのフレイルが1人の騎士の兜を破壊し、リルの振るう十手が傷ついた騎士に追い討ちをかける!
「よし――くっ!」
ギリアムが兜を破壊した直後、頭に走る衝撃。‥‥ソニックブームだ。彼もまたレザーヘルムを破壊される。レザーヘルムは簡単に破壊できる兜だから仕方ない面もある。そしてリルは倒れた騎士の兜を脱がす。
「サンレーザー!」
「こうしなきゃ‥‥通じないかね!」
不用意に近づけないエクターに対してリノルディアはサンレーザーで、マナウスはダガーを兜の隙間を狙いを放ち攻撃する!
だが、サンレーザーは鎧に阻まれダメージを与えれず、ダガーに関しては盾で弾かれてしまう。
弓騎士2人は2人とも矢を放ち、斎に対して牽制を行う。とはいっても、彼女の受け技術なら防ぐ事も簡単なのだが。
フレイアは尽きた矢を補充する為にバックパックから矢を取り出していた。
「対処が難しいエクター卿は後にして厄介なソニックブームと弓を何とかしましょう!」
リノルディアの声が飛ぶ。エクターに対しての攻撃はカウンターが飛んでくるのだから仕方ないだろう。
その事を理解した冒険者達はまずは周りの者達を排除する為に動く!
「さて、接近しちまえば!」
リルがソニックブーム騎士の目の前に立ち、十手を振るう! 盾で受け止める騎士だが、ソニックブームによる不意打ちというアドバンテージが無ければ彼がリルの頭部装備を破壊するのは難しい。そもそもリルには不意打ちは通用しないのだが。
また少し離れている2人の弓騎士に対してはフレイア、リノルディア、マナウスが攻撃を仕掛けていく。
「ってことは私の相手はエクター君か」
斎は目の前にいるエクターには攻撃せずに盾を構える。
「はぁぁぁぁ!!」
エクターはそんな斎の硬い守りを突破する為、踏み出すと同時にやはりクレイモアを片手に回りながらの一撃を決める!
「くぅ!」
攻撃を避ける技術を持っていない斎はそのまま右手に持つリュートベイルで攻撃を受け止める!
バガァン!
やはり盾の破壊を狙った一撃であり、リュートベイルはあっさりと破壊されてしまう!
「だけど気を引くには十分!」
そのまま後退する斎。気づけば他の騎士はエクターより相当に離れており、彼の足では救援に向かうのも時間がかかる。
熱くなりがちな彼らしい結果といえた。
●そして素顔は
エクター1人が離れている間に他の騎士を倒した冒険者達は残りのメンバーでたった1人のエクターを追い詰める。
とはいえ、彼の最後の抵抗により、リルのレザーヘルムも破壊されてしまうのだが。
「くぅっ‥‥!」
膝をつき、もはや立つ事もかなわない程のダメージを受けたエクター。フレイアを始めとする、鎧の隙間を攻撃する技術を持った冒険者がいなければここまで追い詰めるのも厳しかっただろう。
「さて、それじゃ兜を脱がさせてもらう」
もはやエクターが剣を振るえないのを確認すると、マナウスが彼の兜に手を伸ばし、外していく。それと同時に観客席から貴族の婦人や、先輩騎士に離脱した冒険者達。また救護班が走ってきた。
―――ふぁさ。
兜が外れると同時にエクターの縛られた長い金髪がまず目に入る。次に白い肌、そしてラーンス・ロットと同じ青い瞳。そんな彼の印象を一言で言い表すなら‥‥。
「‥‥女性?」
「違います!」
見た誰もが思った言葉を代表して言ったのはクロック。勿論即座にエクターは反論する。兜を脱いで初めて分かるそんなエクターの声は青年というよりもずっと女性に近い。
「まー、ともかく鎧も脱げよー」
「うぅ」
先輩騎士が囃したて、渋々といった様子でエクターは鎧を脱ぐ。その体はやはり鎧に比べてずっと華奢な体であり。
「‥‥やっぱり女性?」
「だから違います!」
今度はフレイアの言葉。勿論否定するエクター。
「うぅ‥‥女性みたいな外見していて、だからこそ隠してきたのに‥‥やっぱり言われました」
ずーんと沈みながら足を抱えていじける様に座るエクター。男の騎士というよりやっぱり女性にしか見えないのだが。
「ま‥‥何だ。良い試合だった」
「あ、ありがとうございます‥‥」
丁寧に試合後の礼をする満。エクターとしては礼をするより放ってほしいかもしれないが。
「えっと、ともかく親睦を兼ねてお食事しましょう!」
いじけるエクターの心情を変える為にぱんっと手を打ち合わせてから提案するリノルディア。それは良い提案だという事でその場にいる者達がせっせと準備をして――主に先輩騎士が笑いながら――食事の準備が整った。
こうして、楽しい食事をしたという。
「‥‥うーん?」
ハンターだとかエロフだとか呼ばれるマナウスが、何故か首を傾げていた。