【海魔の影】荒れる海、怪しい海
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■ショートシナリオ
担当:刃葉破
対応レベル:フリーlv
難易度:普通
成功報酬:0 G 91 C
参加人数:8人
サポート参加人数:-人
冒険期間:12月30日〜01月08日
リプレイ公開日:2008年01月07日
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●オープニング
「おいおい、本当にこれはいつもの事なのかよ‥‥」
キャメロットから南へ3日程行った所にある都市、ブライトン。海に面しており、ブライトン周辺の村々を含め、漁業で成り立っている地域である。その為、海で何か異変が起こった場合は、それがダイレクトに表れるのだ。
―――実際、ブライトン周辺に住み、漁業を営む者達は異変を察していた。例年に比べ、漁獲量が減っているのである。
だが、殆どの者達が特に問題視していなかった。自然が密接に関わる事なので、そんな年もあると。過去に漁獲量が少ない年だってある、と。
冒険者達が――また別の件でだが――調査に来た時も、住民はそういう認識であった。
しかし‥‥‥。
「これじゃあ‥‥また魚が高くなっちまうなぁ」
そう言いながら、港に帰ってきた漁船を覗き込む一人の漁師。筋肉質な体つきをしており、体に残るいくつもの傷跡は、彼をまた歴戦のツワモノと証明する。
「いやぁ、散々ですわ。最近の海は本当、どこかおかしい。荒れる気配がありましたから、さっさと帰ってきましたわ」
漁船から降りてきた漁師が、困った風に頭を書きながら言う。その言葉を聞き、表情を曇らせる迎えに来ていた漁師。
「‥‥まぁ、その方が賢明だわな。無理に出ちまって船沈めた馬鹿みてぇになるよりは」
「そんなに自分の事責めなくても‥‥」
自嘲するように言う漁師を、宥めすかすように言うもう一人の漁師。今の会話から察するに、迎えに来た漁師は漁で船を無くしてしまったようだ。
「大体、海が荒れてるだけが原因じゃないんっしょ? 何かに襲われたような衝撃を感じた、とか」
「‥‥いや、俺の勘違いかもしれんしよ」
「どうですかねぇ。どうも最近の海はどこもおかしいそうっすよ」
「どこも?」
「北海の辺りも、似たような事になってるとか」
そう、最近の海は、おかしい。
ここ、ブライトン周辺の海であるドーバー海峡だけではなく、イギリスの東部に位置する北海でも同じように異変が起きている。
それらの海にて、何故か海難事故が多発しているのだ。このことに各都市の海運ギルドは船を守る戦士を冒険者ギルドにまで手配しなければならないほど忙しい状況になっている。
これらの海難事故の際には、必ず何かの影が見られていることから、ただの自然現象ではないと怪しんでいるものも多くいる。
―――ブライトンでの漁獲量は次第に減りつつある。例年以上に、だ。それは単純に魚が減ったという問題だけではなく、漁に出る船がいくつか沈んでいるからでもある。
「やっぱり‥‥調べた方がいいんじゃないっすかねぇ?」
●リプレイ本文
●年明け早々
神聖暦1003年1月1日。新しき年を迎えるめでたき日に、依頼を受けた冒険者達はブライトンへとやってきていた。普通に行けばもう少し後に到着しただろうが、冒険者達のそれぞれの移動手段により、早めに到着する事ができたのだ。
「ふははは、年末年始と言えど休み無しなのだ。いやさ、慈愛神の地上代行者たる我らには民への奉仕こそが新年の抱負であり儀式なのだ〜、と思えば休暇無しも苦にはなるまい?」
せっかくのめでたい日だというのに仕事があるという事なのだが、ヤングヴラド・ツェペシュ(ea1274)にとっては笑って済ませる事のようで、まさに神に仕えるテンプルナイトの鑑とも言える。尤も彼は修行中の身ではあるが。
「そうねぇ。漁獲量の減少に、海難事故ねぇ‥‥海の女としては放っておけないわよね、やっぱり」
神に仕える身では無いが、海での仕事を生業とするベルトーチカ・ベルメール(eb5188)としても今回の事を放っておけないのは同様のようで、言いながら自分の傍らにいる少女の頭を撫でてやる。
「えへへ。やっと再会できたママと一緒に海に出るためにも、海がおかしい原因をがんばってしらべなきゃなの!」
少女の名はベルナベウ・ベルメール(eb2933)。ベルトーチカの娘であり、今まで離れ離れだったのが、聖夜祭にて再会できたそうで、その分二人の絆はとても強いように感じとれる。
尤も、海が気になるのは彼らだけでなく、この場に集まっていた冒険者全員が思う事だ。
「海に起きた異変か。しかし、ドーバーの航路に問題が起きると、交易にも外交にも色々問題が生じるからね。何とか早めの解決と行きたい所だ」
「盗賊の次は海か、一体この国で何が起ころうとしてるんだ‥‥?」
ヒースクリフ・ムーア(ea0286)はこの状況に憂い、諸外国含めた問題解決の為にも意気込みを見せる。また、マナウス・ドラッケン(ea0021)は盗賊騒ぎやら海の異変やらと、事件が次々と起こる事に考えを巡らせる。
「ほんま、何が起きてるんやろな〜。北海の方でもなんや起きてるらしいし」
「北海にも及んでるとなると、そこに面したボクの故郷のフランクも心配だなぁ‥‥。悪しき芽を早期に摘める様に、頑張らなくちゃ」
藤村凪(eb3310)がどこかのんびりとした口調で言うが、それでも彼女の言う通り問題はドーバー海峡だけではなく北海でも起きている程の大きな問題だ。アネカ・グラムランド(ec3769)も故郷の事を心配し、だがそこを守る為にも、気合を入れる。
「では、何が起きてるかを調べる為にも‥‥動きましょう」
ジャンヌ・シェール(ec1858)が仲間達の顔を一人一人見渡すようにしてから言う。その言葉を受けて動くのはヤングヴラドだ。
「ではせっかくなので新年の祈りを皆に捧げるのだ。『いと高きところには栄光、神にあれ、地には平和、御心に適う人にあれ』」
こうして、新年最初の仕事が始まる。
●陸で聞く者
ブライトン領主の屋敷、その扉が開き、中から姿を見せるのはジャンヌだ。
「どうだったのだ?」
「検死には協力してくれるそうです」
ヤングヴラドの問いに答えるジャンヌ。彼女は領主と交流があるという事を活かして、協力を仰ごうとしたのだ。尤も領主であるライカも現在は忙しいようで、出迎えたのは彼女の護衛のクウェルだったのだが。
とはいっても大した事は聞けず、領主の方でもあまり事件については把握してないようだ。むしろ漁師側の方が詳しいだろう、と。また漁師側からの依頼である為、紹介状も不要だろうという事になった。
ということで、できる協力は遺体が出たときの検死には知識がある者を派遣してくれるとの事だった。
「ふむ、では漁師達から話を聞くとしよう」
「調査は足でってやつだね。テンプルナイトのブラドくんのいをかれば、聞き込みしやすいだろうね♪」
「ま、まぁ‥‥良いのだ」
となれば、後は地道に聞くだけだと言うヒースクリフ。アネカもノリノリではあるが、ヤングヴラドに頼る気満々のようだ。
「‥‥船が沈められた時の状況、な」
港近くのとある酒場。船が沈められていながら生き残っている漁師というのはそんなにいるわけでもなく、冒険者達は聞きまわりようやく1人の漁師に話を聞く事ができた。
「あまり思い出したくない事かもしれないのだが、きっと原因を突き止めて、取り除いてみせるのだ」
「ま、あんな事‥‥また起きてもかなわねぇしな」
苦い顔をしていた漁師だったが、ヤングヴラドの言葉を聞き、口を開き始める。
「あの時な‥‥大体日が傾き始めた頃か。天気は普通なんだが‥‥急に船が妙に揺れたんだよな」
「風のせいじゃなくて?」
「いや、特に風はなかったな。そしたら次の瞬間だ、いきなり船にかなりでかい衝撃がきたんだよ」
漁師が語るのは船が沈んだ時の様子。アネカが途中で聞くが、漁師はそれを否定し語りを続ける。
「岩礁か何かにぶつかったのかとでも思ったんだけど、どうもおかしい。何かにぶつかった‥‥というよりぶつかられた、というか」
「ぶつかられた?」
と聞くのはヒースクリフだ。
「あぁ、いや、どう説明すりゃいいのかな。ただ、なんか揺れの質が違うと思ったんだよ。で、船底から木が潰れる音がするわ、水も入ってくるわで、こりゃ沈むと思ったな」
その時の事を思い出しているのだろうか。漁師の顔に浮かぶ表情は恐怖か、悔しさか。
「揺れ方がおかしい事もあったから、さっさと船捨てて海に飛び込んだんだが‥‥。その時、海面に妙な影があったのはよく覚えてる。とにかくでかくてな、しかも動いてるからありゃ見間違いじゃなきゃモンスターだ。必死こいて泳いで逃げたよ。運良く通り掛かった船が無かったら死んでたろうな」
「‥‥やはり、ここ最近のドーバー海峡での海難事件の原因は」
「俺はそいつの仕業だと睨んでる。全部が全部、そうだとは言えねぇが」
漁師の話に一区切りがついた時、ジャンヌがそれが原因ではないかと言い、漁師もその意見には同意するようだった。
こうして様々な者達から話を聞き、とある漁村の老人から話を聞きだす時に、ヒースクリフがある事を問いかける。
「何かこのような事態に近い言い伝えや‥‥海の主みたいな怪物の伝説は無いか?」
「そうじゃな‥‥。今回の事に関係あるかは知らんが、世界中の船乗りに伝わる海の悪魔の伝説でよければ」
「海の悪魔?」
「そうじゃ。海で災いが起きれば、それはやつの仕業だと言われておる‥‥それが海の悪魔―――リヴァイアサンじゃ」
●海で見る者
陸で話を聞く者達とは別に、船を借りて海へ出る者達もいた。マナウス、ベルベナウ、凪、ベルトーチカの4人だ。それに加えて、協力者の船乗りが何人か乗り合わせている。
船の指揮を取るのはベルベナウだ。少女という見た目に反してしっかりと海の荒くれ達に指示を飛ばしている。
「大体、ここらへんっす」
「わかったの!」
調査海域に到着した事を告げる船乗りに元気に答えるベルベナウ。
「‥‥ま、こんなもんかね」
言いながら先ほどまで釣竿に垂らしていた糸を引き上げるのはマナウスだ。ここに来るまでに釣りをしていたのだが釣果はさっぱりである。尤も、マナウスの釣りの技術が素人なのだから仕方ないだろう。
「それにしても‥‥凄い格好ねぇ」
ベルトーチカが言いながら見るのは凪だ。
「毛布をズルズル引き摺ってもーて鬱陶しいやろうけど、堪忍や。‥‥めっちゃ寒いねん。潮風気持ちいいんやけどね〜‥‥」
今の凪の格好は、防寒服を着込んだ上で毛布を羽織っているという重装備っぷりだ。
確かに、非常に寒い。冬の海だから仕方ないだろう。お陰でマナウスのベルモットやらを飲んで体を温めるぐらいだ。またヒースクリフからも今の自分は飲めないからという事で酒が渡されている。その時の残念そうな顔が印象的であった。
「何が見えるか。ま、海神エーギルの加護が欲しいところだぁね。今回は」
目を光らせながら辺りの海を見渡すマナウス。他の者達も同様にだ。
そうして船をゆっくり進ませながら、辺りを見渡してある程度経った頃。
「んー‥‥なんか浮いてるなぁ〜」
始めにそれを見つけたのは、最も目が良い凪であった。確かに彼女の視線の先に何かが浮いているのが見える。
「慎重に、慎重に船を進めるのー」
それを聞き、ベルベナウの指示の元、ゆっくりと船の針路が浮いている物の先へと向けられる。
そうやって船がある程度まで近づいたところで、浮かんでいる物がはっきりと目に映る。
「これは‥‥」
船の残骸と思わしき木片。それらに乗せられて浮かんでいる、人間。
「‥‥さすがに死んでいる、わね」
「あぁ、だろうな」
慎重に縄ひょうやロープなどを使い、木片をたぐりよせるベルトーチカ。マナウスはそれらを船乗り達と協力して引き上げていく。
「‥‥なぁ、ところで皆。あれ、どう思う?」
と、引き上げが終わった頃、仲間達と違う所を見てた凪が静かな声で告げ、ある程度離れた海域の一点を指差す。
そこに見えるは‥‥何かの生物の影。大体10メートルぐらいはあるだろう巨大なものだ。動きからして、恐らくこちらに気づいていないだろう。
「これは‥‥逃げ、やんな?」
凪が言うが、言われるまでもなく船乗り達は既に自分達の持ち場へと行っていた。
「この状況で戦うのはさすがに、な」
「あれと戦うのはちょっと‥‥ねぇ」
「気づかれずに、かつ素早く逃げるの!」
船は即座にブライトンへと引き返す。幸い、影に気づかれる事は無かったようだ。こうして事前に察知できたのは非常に稀な事であり、そういう点でも幸いだったと言える。
●海魔の影
そして無事にブライトンにて合流できた冒険者達。情報を統合した上で、海で見つけた木片や遺体をブライトン領主の協力もあり、調べていく。
結果は‥‥明らかにモンスターに襲われたというもの。
まだ、モンスターが退治されたという情報は聞かない。