美味い店、流行らぬ店
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■ショートシナリオ&プロモート
担当:刃葉破
対応レベル:フリーlv
難易度:普通
成功報酬:0 G 52 C
参加人数:6人
サポート参加人数:5人
冒険期間:07月20日〜07月25日
リプレイ公開日:2006年07月26日
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●オープニング
「とーにーかーく! 味は良いのよ、味は!」
「は、はぁ‥‥‥」
場所はギルドの受付所。
大声をあげているのは若い女性。その声をうけて困ってるのはギルドの受付係の青年。
今日、ここに持ち込まれた依頼はどのようなものなのだろうか。
イギリスのキャメロットにある店があった。
その店では訪れる客に食べ物や飲み物を提供する‥‥いわゆる飲食店だった。
酒場と似たような感じではあるが、その店では料理に重きを置いていた。
店長はエイルリィ・ディーン。若い女性である。具体的な年齢は秘密、だそうだ。
で、肝心の店の賑わいは‥‥というと。
「はぁ‥‥今日も暇ねぇ」
閑古鳥が鳴いていた。
とにかく来ない、客が来ない。
1日に10人来れば良い方である。勿論、それでは店はいずれ潰れるだろう。
「一体、何がいけないのかしら‥‥」
客も来ないので彼女は一人考えてみる。
まず味。これはまず美味しいと言える。自分で言うのも何だが、自分は料理人としてはかなり上手い部類に入る筈だ。
値段。ちょっと軽く‥‥といった感じには訪れにくい設定だが、提供している料理の材料から考えると妥当だ。
見た目。清潔であるつもりだ。ただ店内ばっかりを気をつけてるので外観は微妙かもしれない。
場所。お金が無いからといって、奥まった裏路地に店を作ったのは間違いだったかしら‥‥と溜息。
プラスアルファ。自分という美女がいるのだ、問題は無い。
「う〜ん、味は良いんだし‥‥なんとかなりそうなんだけど」
ちょっと場所が分かりにくくても口コミで何とかなる‥‥と楽観視していた結果がこの様だ。
「やっぱり、このままじゃいけないわよねぇ‥‥」
そして彼女の思考が行き着いた末が、ギルドへの依頼である。
「お金はあんまり持ってないから、報酬は少ないけど‥‥何とかならないかしら。料理ぐらいなら振舞うわよ」
「えぇと‥‥そういうのが好きな冒険者達もいますから、何とかしてみますです、はい」
猫撫で声で言うエイルリィの言葉を受け、青年係はしどろもどろに答えるのであった。
●リプレイ本文
●まずは外から変えてみる
「さて、色々と案が出てきたわけだけど‥‥」
朝の早い時間帯、店はまだ開いておらず、そこに店長であるエイルリィと冒険者達が居た。
「改装、ねぇ‥‥」
店を盛り上げるための案の一つとして出てきたのが店の外観の改装である。
「えぇ、お値段の設定からしても上品な方が来店すると思いますし‥‥それに合わせた外観の方がよろしいかと」
「そうだな。それにやはり清潔な店の方が客は来るだろう」
アクテ・シュラウヴェル(ea4137)が改装の理由を話し、それにリ・ル(ea3888)が言葉を足す。
「うーん、お金はある程度なら用意できなくは無いけど。改装期間は? あと周りに許可も取らなきゃいけないし」
「今日と明日、丸々2日使ってやるつもりです。許可を取る事に関しては私達とエイルリィさんが説得にまわるということで‥‥」
エイルリィの疑問に、アクテはスラスラと答える。
「目処があるようなら‥‥それでいいかな」
その回答に満足したのか、エイルリィはGOサインを出す。
「後は表通りで料理の素材当て大会でもして、店の宣伝をしてみようと思うのだが」
「それは無理ね」
リルの提案を今度はきっぱりと跳ね除けるエイルリィ。
「まず表通りの敷地を使うにしても商人ギルドの許可が必要だし、それに使用許可がすぐに下りるわけじゃない。大体お金もかかるわ。改装でお金を使う以上は厳しいわね。‥‥ただ、それは店の中ですれば何とかなるかしら? せっかく改装もするんだし、その間に店内で行う準備とかをしてみるのもいいかもしれないわね」
と、エイルリィはそのイベントを店内で行うなら‥‥という事で許可を出す。
「それじゃ、他の提案も何とかなりそうだし‥‥頑張ってみますか!」
そして、エイルリィがリルやアクテと共に近隣住民から改装する許可を得る為に説得にまわる。
雰囲気を明るくすれば犯罪なども減る‥‥とメリットを上げて説明する事で、何とか許可を得る事ができたのであった。
●宣伝は口コミから
「美味しいのに流行らない店だって? 何、このキャメロットの葉っぱ男にして世界最強のファイターたる僕にかかれば、瞬く間に店は大繁盛!」
そう自信満々に言ったのはレイジュ・カザミ(ea0448)。
キャメロットの葉っぱ男というフレーズに、エイルリィはジト目でレイジュを見たが、世界最強のファイターという名声は確かなものであった。
その名声と、彼の振りまく笑顔。それにより若い女性や婦人達を中心に店やイベントの宣伝をしていく。
「現在はお弁当を配っているよ。是非来て下さい♪」
その言葉通り、現在改装中である店『プレジャー』はヲーク・シン(ea5984)の提案により、弁当の販売を行っていた。
「女性の御客様向けの、量とコストを抑えたお弁当。冷めたものを使ったり、作りおきをしておけば時間の短縮にもなるし、いいんじゃないか?」
という提案通り、弁当は中々好評であった。お弁当の容器を返却すれば割引をするなど、リピーター確保にもつとめていた。
また、他の者もそれぞれの方法で宣伝を行っていた。
例えばエスナ・ウォルター(eb0752)は小さな看板を首にかけた愛犬と街を歩いていた。
ちなみにその看板には案内板といった感じで店の事を書いていた、エスナの手作りである。
「うーん、これでどうでしょう‥‥」
その看板はエスナの手作りであった。
彼女は自分のセンスに自信を持てなかったのか、周りの者に評価を聞いてみるが、周りの者も特に美術センスに優れてるというわけでも無く、彼女の初期デザインに軽く手を加えた程度となった。
そして彼女は吟遊詩人らしく、歌を歌い宣伝をする。
「そこに行けば どんな恋も叶うと言うよ
誰もみな行きたがるが 人知れずあるその店
そこへ行く道 アプローチを想い人と同じ月
3度往復し 告白すれば 必ず結ばれるという
その店の名は「プレジャー」 喜びと幸せの溢れる場所
○○通りの奥 アプローチを抜けて辿り着く場所
恋の叶う店『プレジャー』」
ちなみに、恋が叶う云々は今までにそんな事例は無い。
このような噂を流せば客が増えるのでは無いか‥‥という試みである。
尾花満(ea5322)もその噂を広める為に、独特の宣伝をしていた。
「確かに手伝うとは言ったが、それが何故、拙者とフレイアが夫婦で宣伝回りと云う話に‥‥?」
そう、彼は妻と一緒にいちゃつきながら‥‥つまりはデートしながら宣伝をしていた。
宣伝をするといっても、声高に店の事を言うわけでなく、人通りの多い所を行きながら会話の中に店の事を出すのである。
「プレジャーの料理は美味しかったな‥‥雰囲気も良いし」
といった感じである。
エスナの歌や、満のいちゃつきっぷり。またレイジュやリルが噂を町で流した事により、プレジャーの噂はどんどん広まっていくのであった。
例えば『意中の異性と一月以内に3回食事したあと告白すると両思いになれる』という噂である。
あとは新装開店を待つばかりである。
そして改装の状況はというと。
リルが路地の片付けや資材の運搬など力仕事を行い、アクテが外観変更の主な作業を請け負っていた。
勿論、2人だけではなく、様々なサポートがあり作業は順調に進んでいた。
掃除をしてから、店の外壁を白っぽい色に塗り替えたり、草花のプランターでアプローチを作ったり。
以前と比べるまでもなく、明るい雰囲気となっていた。
2日目からは、満も改装作業に加わり、その日の夜には改装作業が終了したのであった。
●新装開店、プレジャーにようこそ!
「いらっしゃいませ!」
扉が開く音、そしてエイルリィや冒険者達の挨拶。
その日は店の宣伝と並行して宣伝していた、料理の素材当て大会の日である。
そんなに大きくない店は訪れた参加者や見学客で埋まっていた。
「これをどうぞ」
とアクテは冷えたエールを一杯サービス。なんと無料である。
このサービスに訪れた客を気を良くした。
そして始まった大会。
大会内容は、参加者が一対一で料理の素材を1品ずつ言っていき、間違えたり言えなかったものが失格になるというもの。
参加賞は次回食事時にデザート1品無料だったり、優勝者はディナーペアご招待だったり。
「これで店に興味を持ってくれる人も現れるし、料理も食べてもらえる。‥‥良い感じだな」
そう呟くのは提案者のリルだった。
大会内容はというと、順調に進んでいき1人の女性が優勝した。
優勝したのは1人であったが、他の参加者達も美味しい料理が食べれて中々に満足しているようだった。
「美味しそうね‥‥。私も食べてみようかしら」
見学していた1人の女性客がランチを頼む。
そのランチは女性向けという事で、お弁当と同じく量や値段を抑えたものであった。
彼女のように他の客もどんどんと料理を頼んでいく。
「ランチもお弁当も2種類程度に絞って、具材を相互に重ねる様にすれば、調理の手間が省けてメニューの具を盛りだくさんにできるからね」
というヲークの提案を実行し、それもまた好評であった。
「お越し下さり、有難うございました! 次回はご家族様やお友達を連れて来て下さいね♪」
レイジュは接客をしながらエイルリィに頼み込んで作ったもらった簡素なお菓子を、客が帰る時にお土産として渡していく。
「忙しくなってきました‥‥」
エスナやリルも接客の手伝いをしていたが、客は中々に多い。
しかし、それよりも大変だったのが厨房であった。
「そっち! 前菜できてる!?」
「あぁ! 今ちょうど完成した!」
普段では有り得ないような忙しさに、とてもエイルリィ1人では対応しきれず、達人級の料理人である満も厨房に入ったのだ。
「大変だけど‥‥この忙しさもいいわね!」
そう言ったエイルリィの笑顔はここ数日ぶりに晴れたものであった。
●またのご来店を!
「ふぅ‥‥やっと一段落つけますね」
閉店時間を過ぎ、客がいなくなった店で掃除を終わらせたアクテが椅子に座りながら言った。
「そうだな。結構来てくれて有り難いものだ」
同じくリルも座っていた。
「皆ー! お疲れ様っと!」
エイルリィが数々の料理を運んで、テーブルに置いた。
「頑張ってくれたからね、ご馳走しちゃうわ」
「わぁ‥‥ありがとうございます。それでは、いただきます」
ぱくぱくと料理を食べていく冒険者達。
「へぇ‥‥」
「ほぉ‥‥」
その味は料理の達人であるレイジュや満が感嘆する程のものであった。
「ふむ。また折を見て客として来させていただこうかな。無論、妻と二人で」
「‥‥僕もそんな風に来れたらいいなー」
満が呟き、レイジュがそれに反応する。このプレジャーの噂が本当になればいいなと思い。
「いやー、これは美味いですね! どうです? 今度、俺と2人っきりでディナーというのは?」
そしてエイルリィの手を握りながら口説きにかかるヲーク。
「‥‥‥ふふ」
いつの間にかエイルリィはトレイを手に持ち、それでヲークの頭をカンッと殴る。
「あいた!?」
そんなヲークを見ながら、冒険者達は笑顔になるのであった。
こうしてプレジャーには客が来るようになり、常連客もそれなりについたようだった。