白銀の守護者
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■ショートシナリオ
担当:刃葉破
対応レベル:11〜lv
難易度:難しい
成功報酬:9 G 4 C
参加人数:8人
サポート参加人数:4人
冒険期間:02月22日〜02月27日
リプレイ公開日:2008年03月02日
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●オープニング
ザッ―――。
何かが闇の中を進む。その動きは人のものだ。
人‥‥男は周囲を警戒するように見渡しながら、歩を進める。
今まで走っていたのだろう、男の息は荒い。男は息を整える為に、背を壁にもたれさせて休憩する。
そう、壁がある。男の居る場所は―――遺跡だ。
イギリスのとある場所にある遺跡。何の為に作られたかも分かってない遺跡だ。
勿論、過去に調査隊が中を調査しようとした事もあるが、失敗に終わっている。何故なら‥‥。
「おーおー、あそこにもいるようだな‥‥」
男は遺跡の通路の角から、曲がった先を顔だけ出して覗く。
その先に見えるは数人の人‥‥のようなもの。だが、それは決して人ではない。
グール。人に襲い掛かる凶暴なアンデットモンスターである。
「あんな数わざわざ相手してられんなぁ」
それを見た男の取った選択は、迂回。
確かここに来るまでに別の分岐があった筈‥‥そう思い出しながら今まで来た道を戻る。
(「そっちには確かレイスがいたが‥‥まぁ、一体だけだったし問題は無いか」)
男が手に握るは銀製のダガー。
男は冒険者であった。とはいってもギルドからの依頼を受けたわけではない。
彼一人でこの遺跡を探索に来たのだ。
別に何かを求めている、というわけではない。冒険こそが冒険者の本分だ、とばかりにやってきたのである。
そうして男が遺跡に入ってからしばらく経った頃。
「この先が最奥か‥‥?」
一人である事を活かした隠密行動により、戦闘は最低限にまで避けて進んできた男。
今、男が進む通路はどこか雰囲気が先ほどまでと違っている。壁に刻まれた何かの紋様らしきものがそう思わせるのだろうか。
長く真っ直ぐ伸びる一本道。それを進む男の足は、最初は慎重なものであったが、次第に早くなっていき、駆け足になり‥‥。
通路の先には開けた部屋があるのが見える。それを見ると、男は顔に喜色を浮かべながら部屋へと駆け込む。
「この俺が‥‥この遺跡を制覇した―――!?」
男はこの部屋が最奥だと思っていた。
だが、それは思い違いで、どうやら男が入ってきた通路の反対方向に、また通路があるようだった。つまり、その先が最奥だ。
ならばまた道を進めばいい。そして今度こそ最奥に辿り着き、遺跡を制覇したと宣言すればいい。
しかし、男にはそれができなかった。
何故なら、その部屋には通路を守るようにして立つ存在があったからだ。
「―――こいつは?」
それは2m程の彫像であった。まるでその姿は戦乙女を模しているかのように、頭部は兜のように作られ、体には鎧を装着しているように見え、手には像の体長を超える長さの槍を持っていた。
どうやら素材は銀。その上で白という彩色を施されているからか、白銀に輝いているように見える。
そんな彫像が、顔に当たる部分を男へと向けて動かす。
動く彫像。つまり、魔法によって動くゴーレム―――。
「認識された‥‥!?」
次の瞬間には、ゴーレムは手に持つ槍を男へ向けて突き出していた。
その動きは素早く、ストーンゴーレムやアイアンゴーレムとは段違いのものだ。
それを受けての男の取った行動は、全力による回避行動。男は大きく後ろに下がるステップを取り、先ほどまで男がいた場所にゴーレムの槍が突き刺さる!
衝撃と共に、床に穿たれるは穴。もしまともに食らえば男の命も危ないだろう。
ゴーレムはすぐに槍を引き抜くと、顔に当たる部分を男へと向け、また槍を構える。片足を引き、すぐにでも飛び掛る事のできる体勢だ。
「おいおい、こんなの勝てるかよ‥‥!?」
男の持つ戦闘技術、武器ではこのゴーレムを倒す事は到底敵わない。ならば男が取る方法はただ一つ。逃げる事だけ。
男はただひたすらに逃げる。来た道を戻りながら。
結局、奥に何があるかは男には知る事ができなかった。
「――って感じでよぉ」
「お前、その話何回目だよ‥‥」
それから数日後。男は行き着けの酒場にて、冒険者仲間達と飲みながら談笑していた。
話の内容は先日の遺跡の探索話だ。男は遺跡から帰った後、話をする機会があればその度に話をしている。
よっぽど自分の冒険話を聞いてもらいたいのだろう。
と、そこへ一人の髪の長い男がやってきた。耳から察するに種族はエルフだろう。
「その話、詳しく聞かせてもらえないか?」
男の名はマナウス・ドラッケン(ea0021)。彼もまた冒険者である。
更に場所と日は変わって、キャメロットギルド。
ギルドの受付にて話をするのは、受付係の青年とマナウスだ。いつもは依頼を受ける側のマナウスだが、今回は違う。
「まぁ、何人かの冒険者が潜り込んだらしいが、結果は全て守護者らしきゴーレムに追い返された、というわけだな」
「成る程、それで奥に何があるかはまだ分からない、と」
「そう。だから、何の為に作られたかは分かっていない。俺は‥‥魔法アイテムの製造所、と睨んでるがね」
「根拠はあるんですか?」
「いや、なんとなく」
半目でこちらを見る青年を、マナウスはとりあえず無視。
「奥に何があるかはともかく、アンデットもいるような遺跡だし、あまり放っておくわけにもいかないだろ?」
「それはそうですが」
「俺としても、遺跡の奥に用があるからな。ゴーレムを破壊する為の有志を募りたいわけだ。‥‥それにアンデットがいるような遺跡で、特殊なゴーレムが守ってる物ってのもキナくさい。危険そうなブツが見つかったらそれも破壊したいとこだな」
「まぁ‥‥依頼としては問題ないでしょう。しかし、用とは?」
青年の問いかけに対し、マナウスはニヤリと笑み一つ。
「それは行ってからのお楽しみ、というやつだ」
●リプレイ本文
●遺跡探索
闇の中を明かりを伴う集団が進んでいく。
それはマナウス・ドラッケン(ea0021)からの依頼で集まった冒険者達だ。
隊列の先頭は敵を警戒しながら進む尾花満(ea5322)と、彼に並ぶように罠を警戒しながら進むフレイア・ヴォルフ(ea6557)だ。
「遺跡を守るゴーレムか‥‥まぁ、色々と興味深いところではあるな」
「そんなゴーレムが守る奥‥‥さて、何が見つかるのやら」
同じように前方で周囲を警戒するのは飛行して進むシフールのリノルディア・カインハーツ(eb0862)だ。
「確か‥‥ゴーレムは戦乙女を模してるんですよね」
「‥‥素敵ですわね。少し壊すのが惜しい気もしますけれど、戦ってみたいですわ」
リノルディアの言葉を聞き、セレナ・ザーン(ea9951)はゴーレムの姿を思い浮かべる。乙女らしい感想を浮かべたかと思えば、やはり冒険者らしい思考もあるようだ。
「しかし‥‥所々にいるグールやレイスは何なんだろうなぁ」
「‥‥さて、な」
閃我絶狼(ea3991)の言う通り、遺跡の中で既に数回グールやレイスと戦闘して撃破している。尤も彼らにとっては他愛のない敵なのではあるが。
絶狼の言葉を聞いたマナウスの反応は微妙なものだ。何か思う事でもあるのだろうか。
「‥‥それはそれとして、シェリル」
「なんですか〜?」
「何故憑く」
「いいじゃないですか〜♪」
そんなマナウスの背にまるで憑くようにぷかぷか浮いているのはシェリル・シンクレア(ea7263)だ。リトルフライの効果で浮いているのだ。彼女は遺跡のマッピングを担当している。
「久しぶりの遺跡探索ですが、やっぱり楽しいですぅ。‥‥‥んー?」
エリンティア・フューゲル(ea3868)は遺跡について気になった事などをメモしながら進んでいる。そんな彼がふと疑問の声を上げる。
「道の雰囲気が変わりましたねぇ」
通路の雰囲気が先程までとは別のものとなっているのだ。
何はともあれ。
「話によると、この道の先に‥‥ゴーレムがいるわけか」
見据えた通路の先は、闇に閉ざされて見える事は無い。
●白銀の守護者
事前にここに侵入した冒険者から聞いた話だと、この先の部屋に守護者であるヴァルキュリア・ゴーレムが待ち構えてるとの事だ。
なので、冒険者達は部屋に入る前に、各々休息を取り傷を癒し、準備をしっかり整えて部屋へと向かう。
そして冒険者達は、ついに遺跡の守護者が待ち構えている部屋へと足を踏み入れる。
光が存在しない部屋を冒険者達のランタンの明かりや、リノルディアがスクロールで出したライトの光が照らす。
「あれが‥‥か」
マナウスの視線の先にあるのは、人より一回りほど大きいサイズの戦乙女を模した白銀の彫像――ヴァルキュリア・ゴーレムだ。
ゴーレムは部屋の更に奥へと続く道を守るかのように、じっと静止した状態で佇んでいる。
そんなゴーレムが、ゆっくりと動き始める。―――冒険者達を排除する為にだ。
それを見て冒険者達も戦闘態勢を取り、陣形を組む。
前衛は製造したクリスタルソードを持つ絶狼、ホーリーパニッシャー‥‥いわゆるフレイルを持つ満、そして自分の身長の2倍近い大きさを誇るヒュージクレイモアを持つセレナだ。
そして3人の前衛の後ろに控えるのが、弓を装備したマナウスとフレイア。魔法やスクロールを使うエリンティア、シェリル、リノルディアだ。
こちらが陣形を組むと同時、ゴーレムがこちらに向かい足を進める。その動きは先ほどまでのゆっくりとしたものではなく、非常に素早いものだ。それを迎撃する為に前に出る前衛3人。
あっという間にお互いの武器が届くその距離、先に仕掛けたのはゴーレム! 手に持つ槍を満目掛けて振るう!
遺跡の床を穿つその一撃が満へと迫るが、それは届く事なく満の持つ盾に阻まれる!
「この盾を石畳などと一緒にするな!」
だがゴーレムは攻撃を受け止められたからといって別に焦りもしない。ただ攻撃を続けるだけだ。
即座に返すように強引に2撃目を振るい、それもまた盾で受け止める満。
更に―――
「3撃目、だとっ!?」
ゴーレムの攻撃は止まらない。巨体に見合わぬ槍さばきで追加の突きを仕掛ける! 重装備の満では盾で受ける事ができるのはせいぜい2手まで――3手目を受ける事はできず、脇腹部分に直撃する!
「満っ! ‥‥このっ!」
攻撃を受けた満に対して心配するような声を飛ばすフレイアだが、素早く思考を目の前の敵へと切り替える。自分にできる事は弓での牽制の射撃だと。狙うは人でいうところの手足の関節部分―――だが、ゴーレムには狙うような関節の隙間というものが存在しない。無いものは狙えはしないのだ。仕方なく動きを牽制するように足に向かって撃つが、効果は辺りに矢と金属がぶつかった音が響くだけだ。
ゴーレムに対して射撃でダメージを与えようとすると、対象を破壊する技術が必要になるのだがフレイアにはそれができない。またそれが可能なのはマナウスだが、彼の扱う弓は重くて扱いづらいのか、まだ弓に矢を番えているところだ。
「援護しますぅ〜」
更に援護としてエリンティアがスクロールを広げる。それはグラビティーキャノンのスクロール。彼が所持しているスクロール魔法の中で唯一ゴーレムにダメージを与える事ができるものだ。
魔法の発動と同時に、重力の帯がゴーレム目掛けて直線に進み直撃する! しかしその効果は微々たる物で、装甲にカスリ傷がついた程度で終わる。
「マグナブローを―――いえ、無理ですね」
同じくスクロールを広げてマグナブローによる魔法で援護しようとしたリノルディアだが、その動きを途中で止める。理由は、ゴーレムに対してマグナブローを発動させると、周囲の仲間達も否応無しに巻き込んでしまうからだ。
さて、ダメージは与えられなかったが、そのような援護のお陰で絶狼がゴーレムの側面に回りこむ!
「その動き‥‥流石に駆け出しの頃にやりあった木製品とは桁違いだな‥‥だが!」
側面から仕掛けるは、武器の重さを乗せ、更に対象を破壊する事を主軸に置いた技による一撃! それがゴーレムの腹部の一部を破壊する! 返す動きもまた同じように、だ。
「いきますわよ!」
セレナの方も同じように剣を振るう! 絶狼との大きな違いは得物の違い、その圧倒的な威力を持ってゴーレムの胸部を粉砕する!
と、同時に、シェリルの魔法の詠唱が終わり、発動する!
「風の精霊よ。契約の元、我に断ち斬る真空の刃を貸し与え給わん‥‥ウィンドスラッシュ」
かざした手の平から真空の刃がゴーレムに対して襲い掛かる! その威力は正に絶大である――普通のモンスターには。
パシュン。
「あら?」
ゴーレムに当たった真空の刃は、何も切り裂く事なく終わる。
空気の刃では、例え威力がどれだけ強かろうと‥‥岩のように硬いゴーレムにダメージを与える事は不可能なのだ。
とはいえ、既に絶狼とセレナの攻撃により、ヴァルキュリア・ゴーレムの動きは鈍いものとなっている。だがゴーレムは決して動きを止めようとはしない。
「‥‥もう眠っていいんだ」
それを見てマナウスは何を思うのか。先ほど番えた矢を放つ。それはゴーレムの頭部に小さな穴を穿つ!
ゴーレムは止まらない。鈍い動きだが、それでもただ槍で突く。狙うは目の前のセレナだ。
「――――」
セレナは決して避けず受け止める。ただ急所だけを避ける最小限の動きでその一撃を耐えると、ゴーレムに止めを刺すべくカウンターの一撃を振るう。
「肉を斬らせて骨を絶つ‥‥ですわ」
その一撃は正に一撃必殺に相応しいものであった。大上段から振り下ろされる武器の重さを十二分に活かした破壊の一撃。
ガギィ―――!!!
斬る、ではなく叩き潰す。そのような攻撃でありながらゴーレムを頭部から分断する程の威力を持った攻撃。
―――ゴーレムが崩れ落ちる。
●遺跡の奥
‥‥意思を持たず、ただ命令のままに動き続けるゴーレムとはいえ、完全に破壊されてしまえば動く事はできない。
最早ゴーレムはただの銀の塊となっていた。
「あー‥‥槍、折れちゃってるなぁ。ま、仕方ないか」
できればゴーレムの使ってた槍が回収できれば‥‥と思いながらゴーレムの残骸を漁ってみた絶狼であったが、崩れる時にでも巻き込まれたのかに折れてしまっていた。しかし、ちゃっかりゴーレムの残骸でもある銀塊を回収している。
「通じた攻撃と通じなかった攻撃と、色々ありましたねぇ」
エリンティアは先程の戦いやヴァルキュリア・ゴーレムに関して楽しそうに色々と書き留めている。また、彼もゴーレムについて調べる為ということで銀塊を回収している。
「さて、前人未到の遺跡の奥、一体何が待つやら‥‥?」
そう言う満の前にはゴーレムが守っていた道。
冒険者達は全員顔を見合わせると、その道へ向けて歩を進める。
罠への警戒を緩めず慎重に。奥にあるものを確かめる為に歩く。
だが―――
「これは‥‥崩れてるのか?」
罠を警戒する為に前を歩いていたフレイアが初めに気づく。―――目の前に道が無い事に。
土砂や石などが道を完全に塞いでいるのだ。
「‥‥駄目です、行けそうにありません」
リノルディアが隙間があったりしないか飛び回り確かめてみたものの、どこにも隙間は無く、完全な行き止まりであった。
「地震でも起きて崩落したんでしょうか?」
簡単に理由を推測してみるシェリル。恐らくその推測は当たらずとも遠からずといったところか。
何にしろ、このままではこの先に進めはしない。尤も、この先も完全に崩壊してるかもしれないが。
「‥‥いや、いいさ。引き返そう。崩れてるならそれでいい」
となるとどうするかを決めるのは、依頼人でもあるマナウス。彼の取った結論は‥‥撤退だ。
他の冒険者達も異論は無い。実際前に進めないのだから。
「今や存在しないものを守り続けていた、か。‥‥お疲れ様」