【ブライトン】とりあえずの休息

■ショートシナリオ


担当:刃葉破

対応レベル:フリーlv

難易度:普通

成功報酬:0 G 62 C

参加人数:8人

サポート参加人数:2人

冒険期間:06月03日〜06月10日

リプレイ公開日:2008年06月12日

●オープニング

 ブライトン。
 キャメロットから南へ行ったところにある、ドーバー海峡に面している都市だ。
 漁業を主な生業として成り立っている。
 ―――故に最近困った事があるのだが、それは別の機会に記す。


 ブライトン、領主の館。
 領主の執務室で仕事をしているのは勿論領主である人間‥‥ライカ・アムテリアだ。
 彼女は24歳という若さながら、諸々あってこの地位についている。仕事振りは完璧とはいえないが、概ね問題はないだろう。領民からも特に不満の声は上がっていない。

 コンコン。
「おーい、連れてきたぞー」
 ノックをしてすぐに開かれる扉。部屋の主の返事を待たずして開けているのでノックの意味はまるで無いのだが、部屋の主ももう諦めているようだ。
 開かれた扉から入ってくるは、赤髪の騎士、クウェル・ナーリシェン。領主であるライカの護衛の騎士だ。彼は騎士団のメンバーから選ばれたわけでもなく、紆余曲折あって護衛の騎士になっている。そんな経緯があるからか、雑用のようなものもライカはクウェルに頼んでいる。
 今回の雑用の内容は人を連れてくる、というものだ。
 クウェルの後ろをついて部屋に入る1人の人物。
 白き法衣を身に纏っており、長き金髪に白き肌。ぱっと見ただけでは男性か女性か分からない中性的な外見をしている。
「ロイさんね?」
「はい。今はそう名乗っています」
 ライカの呼びかける名前。ロイ――それは光の支配者と呼ばれる組織が連れ去ったクレリックの‥‥ロー・エンジェルの名前。
 彼の組織に拉致され、研究材料とされていたものをつい先日冒険者が救ったのである。
「名乗っている?」
「このクレリックの姿は変身したものですから。それに相応しき名前‥‥という事で男性の名を」
「あら、じゃあ本名は別にあるのかしら?」
「そういう事になりますね。後は‥‥女性に変身した時も別の名を使います」
 ちなみに、エンジェルには性別が無い。男性的な性格、女性的な性格というのはあるだろうが。
 閑話休題。
「では本題に入りましょうか。私は領主として、この地で起きた事を詳しく把握しなければなりません。勿論、先の事件の事も」
「‥‥はい」
「あなたには気が重い事でしょうが、何が起きたのか‥‥それを話してもらわないといけないわ」
 場に流れる重い空気。話す内容が重いからか、仕方ない事かもしれない。
「―――とはいえ、こんな空気じゃ余計に気が滅入るわね」
 だが、そんな空気を断ち切るように口を開いたのは、その空気を作った張本人でもあるライカだ。
「そうね‥‥。お茶会なりでまずは気分転換しましょう、そうしましょう」
「いやそれお前がサボりたいだけじゃ」
 口を挟んできたクウェルに対しては一睨みで黙らせるライカ。
「エクター卿も呼んで‥‥。そうね、冒険者達にも会って話がしたい人達もいるかもしれないし。うん、色んな人を呼びましょう。‥‥いいわよね?」
「え、えぇ、はい」
「よし決まり」
 勢いに任せてロイの承諾を得ると、ライカはお茶会に向けての手配を早速始めるのであった。
(「‥‥あぁ、最近仕事多いから息抜きしたいんだろうなぁ」)
 クウェルの予想が合ってるかどうかはこの際置いておく。


 場所は変わってキャメロット。騎士の詰め所のとある一室。
 テーブルに妙なものが突っ伏していた。黒い鎧の塊、だ。
 それに向かって話しかけるは一人の騎士。
「‥‥どーしたんだ、エクター?」
「先輩ですか‥‥」
 黒い鎧の塊はエクター・ド・マリス。王宮騎士だ。いかなる時も黒い鎧兜で身を包み、素顔を見せない事で有名である。
 そんなエクターがテーブルに突っ伏したまま、右手を彼の先輩騎士に差し出す。そこに握られているのは羊皮紙‥‥手紙だ。
「えーっと、何々‥‥? ‥‥要約すれば、お茶会の誘いか」
「えぇ、そうです‥‥」
「行けばいいじゃないか」
「いやしかし、そうすると‥‥」
 何故かはっきりしないエクター。先輩騎士はそんな彼の悩みを理解する。
「あぁ、はいはい。こういった招待状を貰った以上、お茶会には失礼の無い格好で出なきゃいけない‥‥つまり、その鎧を脱がなきゃいけないってわけか」
「ぐ‥‥う、まぁ‥‥はい」
 いつもの彼ならば、貴婦人達にお茶を誘われても断るようにしていた。だが今回はまったく交友が無い相手ではなく、その上領主だ。非常に断りにくいのだ。
「まぁ、諦めろってこった。‥‥ちぃ、どうせなら俺も行きたかったぜ」
「絶対に来ないでください」
 はぁ、と溜め息一つのエクター。‥‥彼には彼で、一体どんな事が待ち受けているのだろうか。

●今回の参加者

 ea0021 マナウス・ドラッケン(25歳・♂・ナイト・エルフ・イギリス王国)
 ea1274 ヤングヴラド・ツェペシュ(25歳・♂・テンプルナイト・人間・神聖ローマ帝国)
 ea3868 エリンティア・フューゲル(28歳・♂・ウィザード・エルフ・イギリス王国)
 ea5556 フィーナ・ウィンスレット(22歳・♀・ウィザード・エルフ・イギリス王国)
 eb3776 クロック・ランベリー(42歳・♂・ナイト・人間・イギリス王国)
 eb8226 レア・クラウス(19歳・♀・ジプシー・エルフ・ノルマン王国)
 ec0583 鳳 美夕(30歳・♀・パラディン・人間・ジャパン)
 ec1783 空木 怜(37歳・♂・クレリック・人間・ジャパン)

●サポート参加者

李 乱華(eb5281)/ リスティア・レノン(eb9226

●リプレイ本文

●戦士の休息
 ブライトン領主の館にある庭。
 領主であるライカ・アムテリアが手配した通りに、そこではお茶会の用意ができていた。
「さて‥‥ちょうど来たようね」
 準備を終えたライカが顔を向けると、そこには警備の者に通された冒険者達が入ってくるところであった。
「パラディン候補生、鳳・美夕と申します。この度はお招きありがとうございます」
「いえいえ、どうもー。ま、気楽に」
「元よりそのつもりだけどね」
 まずは一歩前に踏み出た鳳美夕(ec0583)―――今回の彼女は純白のドレスに天使の羽を模した銀の冠、と全体的に天使をイメージさせる衣装となっている―――が頭を下げながらの丁寧な挨拶‥‥だが、ライカの返事を受けて顔を上げてからは先程までの礼儀正しさはあまり見えない。とりあえず挨拶だけでも礼儀正しく、といったところだろう。
 同じく挨拶するは初めてライカと会う事になるレア・クラウス(eb8226)だ。彼女もお茶会という事で借りたスカーレットドレスを着ているが‥‥露出度という点で考えればあまり違いはないだろうが、それはそれ。
「ジプシーのレア・クラウスよ。よろしくね。」
「久しぶりだな。クロック・ランベリーだ。よろしく」
 また、クロック・ランベリー(eb3776)も鎧を脱ぎつつ、挨拶をする。
「ん、2人ともよろしくね」
 お茶会という事で、今回は衣服に気合を入れた者が多い。上品な仕立ての礼服を着る空木怜(ec1783)もまた同じくだ。
「ん〜、こういう場はあんま経験ないんだよな。この格好、変じゃないよな?」
「いやー、問題ないだろ。それで」
 怜に返事するは、同じように礼服を着るマナウス・ドラッケン(ea0021)だ。
 そしてテンプルナイト――ヤングヴラド・ツェペシュ(ea1274)もまた、ライカへの挨拶を行う。
「ライカどの、この度はお招き大変かたじけないのだ。討伐依頼では見苦しきところ多々あったと思うのだが、ライカどののご協力のおかげで無事に異端を打ち払い、このブライトンに慈愛神の神罰地上代行を行うことが出来たのだ。教皇庁直下テンプルナイトとして、また必要な際にははせ参じたく思うのだ」
「こちらこそ、あなたの申し出は非常に有り難かったわ。‥‥ありがとうね」
 テンプルナイトらしい畏まった態度。それに釣られてか、ライカも同じく少々シリアスな雰囲気となる‥‥が。
「えーと、うーんと、エクターどのにもお礼とかご挨拶をと思っているのだが、今日はおられないのであろうか? ついでにあの鎧を引っぺがして中身を見てみたいな〜、と思っていたのだが」
 その雰囲気も華麗に潰す辺りさすが。
「‥‥おんや、そこな御仁は見かけないお顔であるな」
 ぎくり。
 ヤングヴラドに声をかけられて思わずそんな反応を取る人物が一人。
 金の長髪を結わえ、黒いサーコートに身を包み、青い目をした中性的というよりむしろ女性的なな外見の男性‥‥素顔を知っている者は分かるだろう。エクター・ド・マリスだ。
「あら、エクターさん。今日は素顔なんですね?」
 エクターを見てにっこりと微笑みかけるフィーナ・ウィンスレット(ea5556)。彼女も純白のエンジェルドレスに加え、ティアラや首飾りで着飾っている。白い。驚きの白さだ。とりあえず見た目は。
「え、えぇ‥‥まぁ」
 そんなフィーナに対して少々警戒心を抱いているエクター。見た目が白くても、中も白いとは限らない。
「‥‥どうしました?」
 エクターが警戒心を抱いている事を知ってか知らずか、変わらず微笑を返すフィーナ。
「――何でも、ありません」
 結局エクターは白だと判断した。‥‥それが正しいかどうかはまた後の話。

「おー、もう準備できたようだな」
 その声に振り向けば見えるは、館から出てくるクウェル・ナーリシェン。また、彼の後ろを歩くようにしてロイもいた。
 では、と纏めるのはある意味いつも通りのマナウスだ。
「一人は遅れるらしいから、始めるとしますか。まずは楽しいひと時を、だ」

●まずはのんびり
 こうしてお茶会が始まった。
 飲み物に関しては事前にブライトン側が用意したお茶もあるわけだが、フィーナがせっかくだからとハーブティーを振舞っている。
 ちなみに、今日の彼女は白いので別に何か入ってるとかそういうわけではない。

「光の支配者関連では都合3回はここに来てるのだが、よく考えたら無事に平和が戻ったブライトンに来るのは初めてなのだ。時間さえあればじっくり観光したいところであるな」
「そうね、ここがどんな場所なのか‥‥旅ばかりしている私としては興味深いもの」
 じっくり観光しながら館に来ようと思っていたヤングヴラドだが待ち合わせの時間などを考えたら、という事でまっすぐここに来ている。だからこそブライトンがどんな街か気になるのだろう。
 旅をよくするレアとしても、はじめて来る土地なのでどんな所なのか知りたいのだろう。
「私が言うのも何だけど、いい街よ。‥‥うん、私の愛する街」
「時々変なの出るけどな。それこそ変態とか」
「殴るわよ」
「ッ――殴ってから言うな!?」
 領主として、そこに住む者として、ライカはブライトンへの愛情を口に出す。
 思わず妙な事を口走ったクウェルが漫才の結果殴られて地に伏せるが、それはそれ。
「あー‥‥天職してるってオーラを感じるよ。勘違いだったらごめん」
「いや、多分勘違いじゃない‥‥と思う」
 殴られつつもいきいきしているクウェルを見ての怜の言葉。いや別にクウェルがそういう趣味の人って事ではない筈。
「あ、そういえばいい薬草の流通ルート持ってる商人とか知ってないか? レアな薬草扱ってるとことか、安く扱ってるとことか」
 思い出したようにライカに聞く怜。怜としてはなるべく安く仕入れて、一般人に負担を背負わせたくないとの事。
「医者として中々考えてるのね。そういう事なら協力してあげたいけど‥‥どうかしら? 一応調べてみるけど、多分今日中に伝えるのは厳しいかしらね」
「それでもいい。ありがとう」
 ふむ、と軽く顎に指をついて考えながら話すライカ。さすがに領主一人が全てを知っているわけではないので仕方ないだろう。怜もそれを承知する。
 と、今の会話を聞いて美夕は感嘆の声を上げる。
「わー、なんだか凄く領主っぽい会話。同じ女性の身で領主を勤められていると言うのは凄いなー」
 その思わずの眼差しは尊敬のもの。
「そう‥‥かしら? 私としてはあなたのパラディンの修行というのも相当に凄い事だと思うわ」
「そう? 改めてそう言われると‥‥何だか照れるかな」
 実に和気藹々と話は進む。
「んじゃ、さっきレアが旅の話をしてた事だし、俺も旅の話をしてみようかな?」
 こうしてマナウスが提案した旅の話で場は盛り上がっていく。

 さて、珍しく素顔でこのような場に参加しているエクター。彼は今どうなっているかというと。
「ふふ‥‥久しぶりに素顔を見ましたが、綺麗なお顔をしてますね?」
 弄られていた。主にフィーナに。
「こう、ついお化粧とかしたくなる顔立ちですね。どうです、しません?」
「しませんよ! ‥‥うぅ、白だと思ったのに」
「それくらいにしたらどうだ?」
 フィーナの提案に当然の如く反発するエクター。白だと思ったら黒‥‥なのだろうか。一応クロックが助け舟を出す、が。
「あら、勘違いしないでくださいね。別にエクターさんの事が嫌いでやっているんではないですから。むしろ私なりに好意を持っているんですよ」
 つまり、フィーナは白くてもこれぐらいはデフォルトなのだろう。
「そもそも嫌いでしたら、そんなことしませんし」
 微笑みながらこう言うフィーナに、エクターが逆らえるかといえば‥‥言わずもがな。

「ふふ‥‥皆さん、楽しそうですね」
 クレリックに変身したロー・エンジェル‥‥ロイ。
 言葉数は他の者に比べ少ないが、穏やかな笑みを浮かべ皆を見る彼もまた、このお茶会を楽しんでいるのだろう。
 その様子を見て、お茶会を開いてよかったと思う一同であった。

●ブライトンに住む者達
 さて、お茶会が既に始まっている頃、本来なら参加している筈のメンバー‥‥エリンティア・フューゲル(ea3868)は領主の館に向かわず、街の様子を伺っていた。
「え〜っとぉ〜‥‥」
 とりあえずは観光、といったところだろうか。今までは依頼で訪れていただけの街であり、こうしてのんびり辺りを見るのは初めての機会であるからだ。
「やっぱり海沿いの街は他の街とまた違う趣がありますねぇ〜」
 海に生活している者の傾向か、どちらかというと街の雰囲気も住人も豪快に感じる。
 辺りからは新鮮な魚を売ろうという呼び込みの声も多く聞こえた。
「んー‥‥せっかくですしぃ」
 という事で、近くの商店を覗いてみるエリンティア。
「お、何が入用だい?」
 代金を渡し、商品を受け取るエリンティア。と、ふと思いついたように店主に質問を投げかけてみる。
「いい街ですねぇ〜。これも‥‥領主様のお陰ですかぁ?」
「ライカちゃんの事かい? あの子は頑張ってると思うよ。先代が死んでから、あの若さでいきなり領主になって‥‥大変だと思うけどね。俺達の為に頑張ってくれる良い領主だよ。‥‥まぁ、ちぃーとばかし手が届いてない時もあるけどさ。だからこそ、これからも成長してほしいし、俺達も支えていきたいと思うね」
 不満もある。だが、それも飲み込み、ライカなら何とかしてくれるという信頼‥‥それが言葉から感じ取れた。
 エリンティアは店を出て、街を歩きながら時々話す人と似たような質問をぶつけてみる。
 ――結果は、多くの住人に信頼されている、という事。勿論、ライカとて万人に好かれるわけではないのだから、悪感情を抱く者も当然いる。それでも、ライカがよくやっているのがよくわかるようだった。
「ふふ‥‥これからどうなるか、楽しみですねぇ〜」
 エリンティアはライカとはまた別の友人の若き領主を思い出し、彼ら若き領主達の未来を楽しみにしながら足を進める。

●華麗に舞踏?
 お茶会も始まってからある程度経った頃だろうか。
「ふむ‥‥せっかくだから踊ってみるってのはどうだ?」
 そう切り出すのはマナウスだ。視線は主に女性陣、つまりはエスコートされる側の反応待ちという事だが、特に反対意見は無さそうだ。
「よし。では‥‥よろしいですか、レディ?」
「ふふ、それではお願いね。騎士様」
 マナウスがダンスの相手に選ぶはレアだ。レアはマナウスに誘われてこのお茶会に参加したので、それのエスコートという点もあるのだろう。
「むむ、それでは我輩は―――」
「美夕さん、宜しいですか?」
「勿論。よろしくね」
 ヤグヴラドもマナウスに倣ってダンスの相手を誘おうとする‥‥が、エクターが美夕をダンスの相手に誘った事で、相手はフィーナとなる。
「よろしくお願いしますね?」
「あ、あぁ、任せるのである。‥‥‥ぬぬ、何か陰謀めいたものを感じるのである」
「‥‥‥フフ、口は災いの元ですよ?」
 何故だろう。白い筈なのに黒く感じるのは。

 ちなみに、その後彼らはそのペアで踊ったわけであるが。
 マナウスペアはマナウスのさすがのエスコート、また踊り子であるレアの飲み込みが早い事もあって、実に華麗なダンスであった。
 エクターペアは、エクター自身はダンスができるようだがエスコートは不慣れのようで、少しおぼつかない所もあったが美夕の手助けもあり、次第に形になっていた。
 ヤングヴラドペアだが、フィーナがよく足を踏んだり引っ掛けたりしたのでヤングヴラドの悲鳴がよく聞こえたように感じる。わざとではない筈‥‥だ。

●気になる事
 エリンティアも合流し、そろそろお茶会もお開きか、という頃。
「さて、いい気分転換になった事だし‥‥皆、何か聞きたい事はあるかしら?」
 言いながらライカはロイの方を向く。つまり、ロイに対しても聞いて良いのか、と。
「構いません、私は大丈夫ですから。‥‥こうして友人も出来た事ですしね」
 穏やかな気持ちにさせてくれるような笑み。まさに天使の笑みに相応しいものだ。

「そうですね‥‥」
 まず口を開いたのはフィーナだ。
「ロイさんが何故現世にやってきたのか‥‥お教え願えないでしょうか」
「やってきた理由‥‥すみませんが、それは今はまだお話する事ができません」
「ふむ‥‥。では、光の支配者たちがどんな事をしていたか、よろしいですか? 首謀者は倒したようですが、また再発する可能性がないとも言い切れませんし」
「む、それに関しては余も聞きたい事であるな。天使の血を啜るという秘術‥‥真のものであろうか?」
 フィーナの質問に重ねて聞くはヤングヴラドだ。
「秘術に関しては‥‥本物です。首謀者であるゼヌエはその秘術を使い、エンジェルに関しての研究を進める事が目的だったようです。研究成果自体はある程度記して残していたようですが‥‥秘術を始めとして、核となる部分は彼の頭の中にしか存在してなかったようです」
「ふむ‥‥かような邪法があれば封印するのが我が使命であるが、現状既に失われたようなものであるか」
「そういう事になります。よっぽどの事がなければ同様の事件は起きないかと」
 ふむ、と考え込む者達。

「んじゃ、俺からライカにいいか?」
「えぇ、勿論」
 次に聞くのはマナウスだ。
「ビラオの行方や経歴で分かっている事。ゼヌエの経歴‥‥他にエンジェル研究で近しいものはいるか。貴女はロイをこの先どうするつもりか‥‥。そして、貴女が今調べている事について手助けはできないか。‥‥こんなとこか」
「ん、そうね」
 と、ライカは一呼吸。
「ビラオの行方は未だ掴めず、ね。色々とまだ調べてる途中よ」
 さて、と一呼吸。
「次にゼヌエ。どうやら少年時代からエンジェルに関して異常な興味を抱いていたようね。‥‥もしかしたら、その頃に先祖の残したエンジェルの資料を見つけて、それからずっと自分なりに研究していたのかもしれないわ。あとエンジェル研究自体が禁忌に近いものがあるから、そう研究者は居ないと思うわ」
 ふぅ、と一呼吸。
「ロイさんに関しては、ロイさんの意思を最優先。手助けに関しては、助けてくれるならいつでも大歓迎よ? ‥‥と、こんなところかしらね」
「成る程‥‥感謝する」
 と、何かを思い出したようにヤングヴラドが口を開く。
「ロイ殿は‥‥これからどうするのであるか? あと、出来れば真名を教えていただきたいのであるが‥‥」
「‥‥一先ず、私はここを去ります。真名に関しては、そうですね‥‥また会った時で、よろしいですか?」
 ここを去る、との答え。だがこれから先、ずっと会えないわけではない‥‥そういう答えだ。

「では、私はこれで‥‥」
 ロイがブライトンを‥‥去る。
 去り際に5人にお礼を渡してから、だ。
 また、マナウスはその時に傷が治るようにと秘薬を渡している。
 そして、お茶会は終わる。