【北海の悪夢】破壊者は海底より来たる
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■ショートシナリオ
担当:刃葉破
対応レベル:11〜lv
難易度:難しい
成功報酬:12 G 67 C
参加人数:7人
サポート参加人数:-人
冒険期間:06月11日〜06月20日
リプレイ公開日:2008年06月19日
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●オープニング
●戦慄の大海原
――大海が災厄の警鐘を鳴らすかの如くうねる。
5月15日頃からイギリス周辺の近海で海難事故が頻発するようになっていた。
始めこそ被害は少なかったものの、紺碧の大海原は底の見えない闇に彩られたように不気味な静けさと共に忍び寄り、次々と船舶を襲い、異常事態に拍車を掛けてゆく。
王宮騎士団も対応に急いだが、相手は広大な大海。人員不足が否めない。地表を徘徊するモンスターも暖かな季節と共に増え始め、犯罪者も後を絶たない現状、人手を割くにも限界があった。
「リチャード侯爵も動いたと聞いたが、去年の暮れといい、海で何が起きているというのだ?」
チェスター侯爵であり円卓の騎士『獅子心王』の異名もつリチャード・ライオンハートも北海の混乱に動き出したと、アーサー王に知らせが届いていた。自領であるチェスターへの物資の流入に異常が出ることも懸念しており、重い腰をあげたという。
「キャメロットから遠方の海岸沿いは、港町の領主達が何とかしてくれる筈だが‥‥後は冒険者の働きに期待するしかないか」
現状キャメロットから2日程度の距離にあるテムズ川河口付近の港町が北海に出る最短地域だ。
海上異常事態の解決を願い、冒険者ギルドに依頼が舞い込んでいた――――。
●海魔の影、そして―――
問題があるのは北海だけではない。
覚えている者もいるだろう。今年の初め、ドーバー海峡にて海難事故が起きていた事を。
勿論、海運ギルドから冒険者ギルドへと調査の依頼があった。
結果分かった事‥‥それは、船が大型のモンスターに襲撃されたという事。
その後、一時的にではあるがモンスターは影を潜め、未だに退治されていない。
そして最近の海難事故が頻発しているこの状況‥‥大型のこのモンスターも再び活動を開始する。
ドーバー海峡、ブライトン近海。
ブライトンからおよそ1日程の航行で辿り着く海域にて、一隻の漁船が網を広げていた。
天気も良く、潮風も気持ちのよいものだ。海も荒れておらず、周辺に怪しげな影が見える事も無い。
まったくもって平和な海であった。
―――その瞬間までは。
船が、揺れる。
「何だ‥‥?」
微かな揺れは次第に大きくなっていき、船員がその揺れのおかしさに気づいた時は既に―――。
「お、おい!? あれ!」
―――大きな影が船の真下へと迫っていた。
次の瞬間、影は海面を割り、長い足を伸ばす。
そう、足だ。とてつもなく長い、4本の足。足には吸盤のようなものがついているのが見える。
そのまま4本の足は、船にしがみつくように巻きつく。
メキメキメキ‥‥。
木の軋む音。船が巻きつかれた足によって締め付けられているのだ。
船員達が足を剥がそうと思いっきり引っ張ってみるが、まるで効果は無く。
バキバキッ!
船が―――沈む。
同様の事件は、他にも数件起きている。
生存者は殆ど居ない。船が沈められて生き残る事ができる方が珍しいからだ。
そして、奇跡的にも生き残った者の証言からモンスターの正体が判明する。
クラーケン。
10mを誇る巨大な蛸。足を広げれば20mにもなると言われるサイズだ。
普段は海の底におり、時折海上に上がって船に襲い掛かり沈没させてしまうという凶暴なモンスターである。
その凶暴さ、戦いの場が海‥‥という事で、とても並の騎士達が対処できるものではない。
こうして冒険者ギルドにクラーケン討伐の依頼が出されるのであった。
●リプレイ本文
●海魔の影
キャメロットから南へ3日程行ったところにある都市、ブライトン。
それより更に船に乗って1日程ドーバー海峡を進んだところにある海域。
そう、クラーケンの出没報告がある海域だ。
そんな危険極まりない海域に、1隻の船が浮かんでいた。クラーケンを討伐する為に集まった冒険者達が乗る船だ。
「リヴァイアサンにクラーケン‥‥一体、海で何が起きてるって言うんだ」
「この間のセイレーンといい、満月の夜に大津波で滅んだ村もあると聞く。この海で何かが起きているのは間違いないようだ。裏でデビルが蠢いていそうだが、一先ずは無辜の民を害すクラーケンを討ち果たし、海の平穏をとりもどすところから始めよう」
遥か彼方まで広がる水平線を注視しながら呟くはマナウス・ドラッケン(ea0021)。尤もリヴァイアサンは過去に噂として聞いたぐらいで、実際に関わっているかどうかは分からない。だが、アンドリー・フィルス(ec0129)が言ったような事件の事も考えると海で確実に何かが起きている事は確かだ。
「そうですね、一先ずは目の前のクラーケンを討伐しなくてはいけませんね」
「クラーケン討伐‥‥海での戦いになりますから、数が少なくても苦戦を強いられそうです」
どこかぽけぽけっとした雰囲気を持ちながらも、現状を正しく認識するシエラ・クライン(ea0071)。リノルディア・カインハーツ(eb0862)も強敵との戦いを推測し、気力を充実させる。
「よし‥‥これで最後だな」
2つの樽をロープで強く縛ってから一息つくはアラン・ハリファックス(ea4295)だ。港にて仕入れた空樽をロープで繋ぎ合わせていざという時の救命用具にする為だ。できればペット用の足場なども作っておきたかったが、さすがにそれを作る程の余裕は無かったというのが現状だ。
その為、連れてきたペットによって少々甲板が窮屈になっているが、船の動きには支障は無い。
「では、そろそろ出没する海域ですし‥‥私は上空から警戒しますね」
その連れてきたペットのうち1体‥‥ペガサスに跨るクリステル・シャルダン(eb3862)。彼女は、グリフォンを駆るアンドリーと共に空からクラーケンを警戒するようだ。
また、クラーケンの出没海域の詳細が分かれば‥‥という事で事前にダウジングペンデュラムで探しているが、おおざっぱな海図しか無いので事前に分かっていた情報以上の情報を手に入れる事はできなかった。
「準備も万端だし来るなら来い、だね」
空へと上がる2人を見やってから、楠木麻(ea8087)は視線を周囲へと戻す。クラーケンを迎え撃つ準備は万端だ、と。
そして、海底に潜む破壊者は己が獲物を見つける―――。
●破壊者、来たる
2人が空からの警戒を始め、幾時か。アランが自身の持つ日本刀に埋め込まれたレミエラの能力‥‥クリーチャーに対する結界を張りなおす頃。
自身へのオーラを再度付与したアンドリーが、ふと眼下の異変に気づく。
―――何か、大きな影が見える事に。
「来るぞっ!」
大きな影‥‥この状況では考えるまでもない、クラーケンだ。アンドリーの警告に従い、それぞれが襲撃に身構える。
ザバァ!
直後、海面から突き出るは赤黒く長い何か‥‥クラーケンの何本かあるうちの足だ。足はそのまま、船の穂先に絡みつくと沈めるように強く引っ張り始める!
「燃え上がる炎よ、力を漲らせ給え―――!」
「よし! 沈みなぞ‥‥させるか!」
シエラにフレイムエリベイションを付与してもらったアランが、絡み付いてる足に向かい斬りつける!
足に刻まれる深い傷! そしてその攻撃の直後海中から波のうねりと共に足の主が姿を現す!
まさに巨大な蛸の姿であるクラーケン。敵意のようなものが発せられている事は傍目からも分かる。
「傷つけられて怒った‥‥というところでしょうか」
上空から船近くまで降りたクリステルが、ホーリーフィールドの為の詠唱を完成させながら推測する。船を包むように――とはいっても全てを包むようにとはいかないが――発動するホーリーフィールド。成功率5割程の魔法が成功したのは運が良かっただろう。
「お前は‥‥何故ここに来たんだ?」
そう、問いかけるマナウス。勿論、このようなモンスターとは通常会話が成立する事は無い‥‥が。
『ツブス‥‥オマエラ、ツブス‥‥!』
マナウスの頭にだけ聞こえるクラーケンの声。言葉の通じぬモノと会話する魔法、オーラテレパスの効果だ。
とはいっても、会話内容は相手の知性によるものが大きいので、本能しか無いような敵相手には、こちらへの敵意が聞こえるだけだ。
「臓物をぶち撒けろ!」」
次に完成する魔法は、麻によるグラビティーキャノンだ。一直線に伸びる黒い破壊の帯がクラーケンを抉る!
「通じますかっ‥‥!?」
クラーケンが足を蠢かせるその空間。リノルディアは目の前に仲間がいない事を確認して、そこに向かってアイスブリザードのスクロールを広げ魔法を発動させる。
荒れ狂う氷の暴風がクラーケンを襲うが、やはり威力が足りないか。せいぜいカスリ傷程度だ。
「となると‥‥これですか」
彼女の持ってるスクロール魔法では、今のが最大威力だが、それが通じないとなるとシフールの礫での攻撃を余儀なくされる。
小さな小さな、クラーケンにとっては小石以下の存在であるそれだが、シフールであるリノルディアが投げた場合、不思議な力で威力が大幅に増加され、クラーケンを貫く!
ザバァァァ!
咆哮を上げるでもなく、ただ足を激しく動かす事で怒りを露にするクラーケン。
その怒りをそのままぶつけるかのように4本の足が船上の冒険者へと伸びる!
内2本はアランへ、内2本は麻へと伸びる。手痛い攻撃をしてきた者を狙っているのだろう。
だが、麻を狙った足はクリステルの張った結界により、その攻撃を阻まれる。アランに関してだが、彼は足に斬りつける為に前に出ていた為、結界の範囲外に居た。
まったく同じタイミングで打ち付けるように伸びる足! 手に持つ刀で何とか片方の足の攻撃は打ち払う、が!
「くっ、しまった!」
同タイミングの攻撃故に両方を捌き切る事は難しい。アランの体を締め上げるように巻きつく足!
このままでは、下手すればアランが海に引きずりこまれる‥‥その時。
―――破壊者は上空より来たる。
「うおおおおお!!!」
槍を構えたアンドリーの、グリフォンを駆っての突進攻撃。それはあたかも巨大な槍が上空から突き刺さるような光景だ。
巨大な槍が‥‥クラーケンを穿つ!
ザバァァァ!
大きくのけぞってから、一度海面に力なく浮かぶクラーケン。また、力が抜けたのかアランは足の締め付けから解放される。
「やりましたか?」
今の一撃は相当効いたはずだ。エリンティアがクラーケンの様子を観察するが、先程までの凶暴さは見てとれない。
「あ、逃げます!」
「そうは‥‥させません!」
と、クラーケンが緩慢な動きで船から離れるように移動し始める。クリステルの言う通り、逃げる為だろう。
そこでシエラがスクロールを広げ魔法を発動させる。
すると、クラーケンは逃げるのをやめ、その場で暴れるような動きをし始める。
シエラが広げたスクロールはイリュージョン。幻覚を見せる魔法だ。
「さて、それでは幻覚に囚われたまま死んでもらおうか」
弓に矢を装着しながらマナウスは死の宣告をする。他の射撃攻撃が出来る者も同様に自身の得物を構える。
そして、海の破壊者は幾多もの攻撃を受け‥‥力無く海面に浮かぶ。
●いわゆる海の藻屑
さて、こうしてクラーケンの討伐は完了したわけであるが。
「今の海は明らかに様子がおかしいですからね。出来れば死体は確実に処理した方が安全だと思います」
このまま帰るわけにはいかない、と言い出すはシエラだ。
「万に一つでもズゥンビ化されたら問題です」
「それはそうだな。しかし、どうする?」
通常ならクラーケンがズゥンビ化される事はまず無い。だが現状海では何があってもおかしくないというのがシエラの危惧だ。それも尤もだと頷くアンドリーは、方法を問う。
「できれば地上で火葬にしたいですね」
「となると、この大物を何とかして引っ張らなきゃいけないね‥‥」
麻が海面に浮かんでいるクラーケンを見るが‥‥それを実行するのは相当に厳しいだろう。
「事前に用意した救命用具を使うか?」
結局使う事は無かった空樽を全て繋ぎ合わせれば何とかクラーケンの死体を運べるんじゃないかと提案するのはアランだ。せっかく用意したんだから、という思いも無くはない。
というわけで、クラーケンを運ぶ為の準備が始まる。
作業の途中、海に落ちる者が数人居たりしたが、それはそれ。
「タオルや毛布を用意しておいたよかったです」
クリステルの準備のお陰で何とか寒い思いはせずに済んだところ。
そして、四苦八苦した結果、何とかクラーケンを地上まで運ぶ事に成功する。
後は油をかけてから燃やすだけだ。
火をつけられて、煌々と燃えるクラーケンを見て、リノルディアはぽつりと呟く。
「そういえば、ジャパンではクラーケンに似た生き物も食べていましたね。クラーケンも調理すれば食べられるようになるのでしょうか? 」
「‥‥食べたいと思うのか?」
呟きを聞いて、マナウスはこの場唯一のジャパン人である麻を見る。
「え、え、僕!?」
まぁ、さすがに普通はこんなクラーケンまでは食べないだろう。いくらジャパン人でも。
実際に、彼らがクラーケンを食したかどうかは‥‥本人達に聞いてみるといいだろう。