【北海の悪夢】竜を率いる小船
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■ショートシナリオ
担当:刃葉破
対応レベル:11〜lv
難易度:難しい
成功報酬:11 G 94 C
参加人数:8人
サポート参加人数:3人
冒険期間:07月16日〜07月22日
リプレイ公開日:2008年07月24日
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●オープニング
●戦慄の大海原
――大海が災厄の警鐘を鳴らすかの如くうねる。
5月15日頃からイギリス周辺の近海で海難事故が頻発するようになっていた。
始めこそ被害は少なかったものの、紺碧の大海原は底の見えない闇に彩られたように不気味な静けさと共に忍び寄り、次々と船舶を襲い、異常事態に拍車を掛けてゆく。
王宮騎士団も対応に急いだが、相手は広大な大海。人員不足が否めない。地表を徘徊するモンスターも暖かな季節と共に増え始め、犯罪者も後を絶たない現状、人手を割くにも限界があった。
「リチャード侯爵も動いたと聞いたが、去年の暮れといい、海で何が起きているというのだ?」
チェスター侯爵であり円卓の騎士『獅子心王』の異名もつリチャード・ライオンハートも北海の混乱に動き出したと、アーサー王に知らせが届いていた。自領であるチェスターへの物資の流入に異常が出ることも懸念しており、重い腰をあげたという。
「キャメロットから遠方の海岸沿いは、港町の領主達が何とかしてくれる筈だが‥‥後は冒険者の働きに期待するしかないか」
現状キャメロットから2日程度の距離にあるテムズ川河口付近の港町が北海に出る最短地域だ。
海上異常事態の解決を願い、冒険者ギルドに依頼が舞い込んでいた――――。
●悪魔、再び
キャメロット近海である、北海。
幽霊船団が現れたという話もあるように、未だこの海は荒れていた。幽霊船団がどうなったかは‥‥ここでは記さすにおく。
多くのモンスターが現れ、そして冒険者達によって葬り去られていた。
だが、退治されてないモンスターもいる。
―――小船に乗ったデビル。
過去にデビルが現れたという海域。
そこに現れた船を襲っていたのはデビルという事が分かってから、さすがに商船などはこの海域を通る事をやめていた。
とはいえ、全ての船がこの海域を通らないわけではない。
海域調査の為に派遣される船があるからだ。
「おーい、そっちはどうだー?」
「いや、今のところは‥‥」
2人の男が甲板の上から海を見渡している船‥‥それが正に調査船であった。
「ただ、ここに現れたデビルって姿を消して現れるんだろ? それじゃあな‥‥」
「それでもいいから見張っとけ」
この海域に現れたデビルは、いつの間にか船に近づき、船に穴を開ける。
つまりは船を沈めようとするのだが‥‥その後取る行動が特徴的であった。
ガゴッ!
「っ!? これは!」
唐突に船が揺れる。勿論岩礁にぶつかったわけではない。事前に聞いた通りならば―――。
「やっぱり! 船に穴が開いてやがる!」
「このままじゃ、沈むってか!?」
―――そして、小船が姿を現す。
まるで水でできたような小船に乗る、フードを被った小柄な男‥‥デビル。
「現れたな‥‥!?」
「はは、そう邪険にせずに。何、沈む船に乗るより、こっちに来るのは?」
デビルという事が知られていても、男は気にせずに小船に乗るように誘ってくる。
まともな判断をすれば、その誘いに乗る事は有り得ない‥‥のだが。
「あ、あぁ‥‥沈む船よりかは‥‥いいか」
「そう‥‥だよな」
船員は次々と小船に乗るという意思を見せる。まるで正気を失ったかのように。
そう、そのデビルの発した言葉は力を持つ‥‥言霊なのだ。
船に穴を開け、船に乗る者を魅了し、さらに言霊で従わせ自分の小船に乗せるデビル。
前回の調査で分かった事を元に調べた結果、判明したその名は―――シップウォーター。
「皆!?」
甲板に居た者は全てシップウォーターの言葉に従ってしまったが、甲板に居なかった為に言霊を逃れた者もいる。
しかし、シップウォーターは見逃しはしない。
「出てこい!」
シップウォーターの何かを呼ぶような声。それと同時に、海中から何か影が迫る。
影は次第に大きくなり、海面をつきやぶり姿を現す! その姿は―――。
「ドラゴン!?」
船員が最期に見たものは、口を大きく開けて水の弾を吐き出すウォータードラゴンの姿であった。
●リプレイ本文
●討伐に赴く者達
キャメロットは北海。
そこを往くはシップウォーター討伐の為に集った冒険者達が乗る船だ。
「たま〜には、のんびりと船旅もいいものですね〜」
「そうかもしれへんね〜。‥‥今回はデビルが船を沈めてくるんやけど」
「そんないつ沈むかもしれないという綱渡り的な感じがいい雰囲気を出していますの☆」
デビル討伐の為‥‥なのであるが、あくまでもマイペースなユナ・クランティ(eb2898)。
のんびりと相槌をうちつつも一応つっこみを入れる藤村凪(eb3310)ではあるが、ユナはやはりのマイペース。
「でも‥‥確かに静かでよく晴れた日は心が落ち着きます‥‥よね。行きは仕方が無い‥‥ですけれど、帰りの船旅は、憂いの無い気分でのんびりそれを楽しみたい、です」
「その為にもシップウォーターを倒さなくては、な」
今はまだ穏やかな海の潮風を受けて顔を綻ばせながら言うラミア・リュミスヴェルン(ec0557)。マナウス・ドラッケン(ea0021)の言う通りシップウォーターを倒せば、問題の海域はある程度平和になるだろう。
「シップウォーターか。今回はきっちり倒させてもらう!」
シップウォーターと聞いて、意気込むのはクリムゾン・コスタクルス(ea3075)だ。彼女は今回依頼に参加した冒険者の中で唯一前回この海域に現れたシップウォーターと遭遇している。
尤も、シップウォーターとの交戦経験なら、彼女だけではない。
「ドレスタット沖の海上で討ち果たしたが、ここにもシップウォーターがいるとはな」
アンドリー・フィルス(ec0129)もドレスタッドでシップウォーターと戦ったようだ。
「悪魔の所業もここまでにしていただきましょう」
「えぇ、ここで殲滅して次の被害を無くしましょう」
フィーネ・オレアリス(eb3529)の言葉にリースフィア・エルスリード(eb2745)も同意する。
「――幽霊船団を撃滅したとはいえ、まだその上に親玉がいる模様。このシップウォーターもその手先の1つなのでしょう」
リースフィアが見る先にいる悪魔の親玉とは―――?
さて、シップウォーターが船を襲うように、冒険者達が乗ってないように見せよう‥‥というのが冒険者達の考えなのであるが。
「頼むから、じっとしててくれよ」
――グルゥ。
アンドリーのペットのグリフォン、ガルーダと共に積荷に紛れるように布を被らされているクリムゾン。優しくかけられたその言葉に従うようにガルーダも大人しく伏せている。
クリムゾンが隠れているのは、前回シップウォーターと交戦した為である。
これだけならば、積荷として誤魔化せる‥‥のだが。
「こいつは‥‥ちょいと無茶か?」
積荷へのカモフラージュを手伝ったマナウスは、頭を掻きながら困惑した表情を浮かべる。
その視線の先にあるのは――。
「えぇっと、すいません〜」
「‥‥隠すのは厳しい、ですね」
ユナのペットのララディ、フィーネのペットのグリフォンとスモールホルス‥‥どれも非常に大きいペットだ。ちなみに、ララディは5m、グリフォンは3m、スモールホルスは8m。グリフォンもスモールホルスも上空でずっと待機させるには少々無理があるだろう。
結局、これ以上のカモフラージュは無理だという事で仕方なくこのままにする事になる。
●蒼海の竜
問題の海域へ船を進めて、数刻。
デビルを察知する事ができる指輪‥‥石の中の蝶を持つ者はそれに気をつけつつ、周囲の海を注視していた。
透明になって現れるシップウォーター‥‥その奇襲を避ける為だ。
「‥‥‥ん?」
そして―――石の中の蝶が羽ばたく。
それは30mの範囲内にデビルがいる、という事だ。
だが、見る限り周囲にデビルの姿は見えない。今回も透明になっているのだろう。
デビルの接近を知り、フィーネが自分や仲間達、船員にレジストデビルを付与していく。これでシップウォーターの厄介な言霊を無効化できる。
と、その時。
「んん? 皆、海の中から何か来るで!?」
凪が気づく。海のとある一点にぽつんとできた影が次第に大きくなり、それと同時に波立つのを。
ザバァッ!
海面が割れ、そこから姿を現したのは―――やはりウォータードラゴン!
「石の中の蝶は相変わらずの反応‥‥って事はシップウォーターは高見の見物か!」
マナウスが見る石の中の蝶の羽ばたきはゆっくりとしたもの‥‥つまりデビルは近づいてはいない。
船上の明らかに巨大なペットを見て、シップウォーターも警戒してウォータードラゴンだけを先行させたのだろう。
「っ‥‥!?」
ウォータードラゴンだけが来たのを見て、船室まで退避するリースフィア。装備を対ドラゴン用にする為だ。特に、ブレスを受ける為の盾は重要である‥‥が。
ガァアアァァ!!!
間に合わない。
ウォータードラゴンの口が大きく広げられ、激しい水弾が吐き出される!
「聖なる結界よ――!」
高速で唱えられ完成したフィーネのホーリーフィールドがブレスを受け止め‥‥破壊される!
ホーリーフィールドにより、威力が減衰されたとはいえ、水弾のブレスが冒険者達を襲う。
「くぅ!?」
結果、ブレスに攻撃を晒される事になったのはマナウス、クリムゾン、フィーネ、ラミアの4人だ。4人とも、中傷といえるダメージを負う事になる。
「何故、俺達を襲う!?」
マナウスが問いかける。普通なら返答は無いが、マナウスは事前にオーラテレパスの魔法を発動させているので、言葉が通じぬものとも会話ができるのだ。
『ウミヲ‥‥ケガス‥‥!』
「何‥‥!?」
デビルに唆されての事なのか、それともそれがドラゴンの真意なのか。それを知るための会話をする余裕は‥‥この状況では無い。
「ちっ、ドラゴンから先に倒すしか無いか‥‥!」
できればウォーターシップを倒してから対処する、というのが冒険者の総意であったが、この状況だとクリムゾンの言う通りにするしか無いだろう。
クリムゾンはドラゴンに有効な黒の矢を番え‥‥放つ!
体の隙間を狙うように撃ってはいるが、それでも大きなダメージを与えた、という感じはしない。
「何でデビルに手を貸してるかわからへんけど‥‥堪忍な!」
続けて矢を放つは凪。先程のクリムゾンの攻撃による傷のせいもあってか、ウォータードラゴンは身じろぐ!
ユナはラミアに魔法‥‥ウォータウォークを付与する。これにより、ラミアは海面を歩く事ができるようになり、そしてラミア自身もインビジブル――透明化する魔法――を発動する。
―――グルルァァァ!!!
攻撃されて怒っているのだろう、ウォータードラゴンはそのまま船に肉迫すると、船を壊すように爪を振り下ろす!
ドグシャ‥‥衝撃と共に揺れる船!
「そうは‥‥させるか!」
クリムゾン、凪、マナウスの射撃の援護を貰いながら、アンドリーは力強くブレイブランスをウォータードラゴンの顔に向かって突く!
本来は助走して勢いをつける事により更に威力を上げるつもりだったのだが、揺れる船上という事で、さすがにそれはできなかった。
「お待たせしました!」
そして船室で装備を変更したリースフィアが駆けつけ、ウォータードラゴンに斬りかかり‥‥それが止めになったのだろう。ウォータードラゴンは息を絶え、海の中へと沈んでゆく。
「‥‥お前の、真意なのか?」
マナウスの問いかけ。だが‥‥沈んでいくドラゴンからの返答は――無い。
●蒼海の悪魔
「所詮、あんなものか」
何も無い筈の海から届く声。その声に冒険者達が一斉に振り向くと、そこに居たのは小船に乗った小柄な男‥‥シップウォーターだ。
黒い靄のようなものを纏っている事から、何らかの魔法を発動させたのだろう。
「だが、船に打撃を与えたのは評価できる。後はもう少し手を加えて完全に沈めてやろう」
「そうはさせるか! 今度はあんたを葬り去ってやるぜ!」
船に接近しようとするシップウォーターに対して、感情をむき出しにして吼えるクリムゾン。矢を番え‥‥放つ!
フードの中を目掛けて撃ったからか、以前とは違いダメージは通っているようだ。
「これもや!」
更には凪の放つシルバーアローも着弾する。
「アイスブリザードもつけますよ〜」
ユナが発動する、氷の嵐。
「やはり、面倒か‥‥!?」
何度か攻撃を食らい、シップウォーターが転進する。船を沈めるのを諦め、逃げ出すようだ。
逃がすものかとマナウスが先程番えた矢を放つが、予想通りシップウォーターはエボリューションを発動しており、同じ種類の攻撃は通用しない。先程のクリムゾンが放った矢と同じ普通の矢であった為通用しなかったのだ。
オーラパワーを矢に付与すれば通じたのだが、現状のマナウスの装備ではオーラを集中して矢に付与するのに時間がかかり、とても現実的とはいえないだろう。事前に付与しておけばまた別なのだが。
「セ――デビルに同じ攻撃は通用しない!」
「だが、切り札は最後まで伏せたほうが勝ちなのさ」
矢の衝撃はあったのだろうか、シップウォーターが少し吐息をした程度で、余裕を持った態度で告げるが、それに対するマナウスもやはり余裕を持った笑顔で告げる。
「何‥‥がっ!?」
唐突にシップウォーターの体が何かによって斬られる。
「目には目を、透明化には透明化、ですっ」
それは先程、インビジブルの魔法で消えたラミアの連撃であった。海面を歩いて、密かにシップウォーターへと接近していたのだ。
「はぁ―――ッ!」
更に装備を対デビル用に戻したリースフィアの武器のレミエラが光り‥‥デビルを消滅させるソニックブームが飛来する!
「なっ!? 馬鹿なぁぁ!?」
シップウォーターが逃げることは、敵わない。
様々な矢を持つ射手、そしてグリフォンに乗るパラディンがいる限り。
「罪深き者よ、その命神に帰せ」
最初から逃げる事を選択すればできただろうに、船を沈める事を選択してしまったデビルは、ここで討滅される事になる。