【コレットの剣】ザ・フンドシ狩り

■ショートシナリオ


担当:刃葉破

対応レベル:6〜10lv

難易度:普通

成功報酬:3 G 9 C

参加人数:5人

サポート参加人数:1人

冒険期間:07月24日〜07月29日

リプレイ公開日:2008年07月31日

●オープニング

 イギリス王国はキャメロット。
 北海の騒動やら何やらで、今この国は危機に晒されているといい。
 だが―――このような事態でも、己が私欲の為に闊歩する悪人というものはいるものだ。

「それじゃ、ちぃとばかし脱いでもらおうかぁ!」
「ぬぎゃぁぁぁぁぁ!!?」

 単純に空気が読めないだけかもしれない。変態だし。


 キャメロットの夜。
 以前はそこかしこに変態が出没した時間帯ではあるが、最近は比較的安全ともいえる。
 とはいえ、変態というのはいつ出没するか分からないものなので、キャメロットの住人はなるべく夜出歩かないようにしている。
 危機感薄く出歩く者といえば‥‥最近この街に訪れた者だろう。
 今、夜の街を歩いている男性‥‥ジャパン人の彼も最近この国にひょんな事でやってきたのだ。
「なんだなんだぁ? この街は夜は大人しいんだな?」
 先程から歩いても誰ともすれ違わない事に少々疑問を思うが、それはこの国の特性かと軽く納得する。
「あー‥‥しかし、ジャパンよりマシとはいえ暑いな」
 どうせ誰も見てないのなら、と胸元を大きく開けるように着物を着崩す男。ちらちらと生足が見えたりと、見る人が見れば喜びそうな絵ではある。
 ―――そして、それに喜ぶ人種が現れるのがキャメロットだ。
「ふっふっふ‥‥。そんな格好して、誘ってるのかい、あんちゃん?」
「あん? 何をふざけた――――え?」
 横道から出てきたのだろうか、先程まで誰もいなかった筈の背後から唐突にかけられる声。それに振り向くと見えたのは―――。
「白い‥‥化け物!?」
「化け物とは酷いよなぁ」
 人の形をしたナニカであった。
 確かに人の形をしている、しているのだが。それが何か、どんな顔をしているかなどはまったく分からない。
 何故なら‥‥全身に白い布のようなものをぐるぐる巻きにしているのだ。それこそ頭の天辺から足のつま先まで。
「せっかく、こうしてフンドーシを身に纏った正装をしているというのに」
「褌!? それ全部褌なのか!?」
 褌で全身を覆う‥‥一体どれほどの量が必要になるのか。考えたくもないし、考える必要もないだろう。
「そう、我が目的は‥‥究極のフンドーシでこの全身を覆うこと!」
「わけがわからねぇ! お、落ち着け俺‥‥! 数を数えて落ち着くんだ‥‥2、3、5、7、11、13、17‥‥‥」
「ジャパン人であるお前はフンドーシをつけている筈‥‥そう! そのフンドーシを頂こうか!」
「‥‥67、71、72――あ、違う。って落ち着けるかぁぁ!!?」
 脱兎。背中を見せてひたすら逃げの一手を選択する男。
 だが、褌男は悠然とした態度で指を軽く鳴らす。すると‥‥。
 ザッ!
「なっ!?」
 突如男の行く手を阻むように立ちはだかる8人の男達! 全員、裸に褌一丁という辺りまともな人種ではないという事が見てわかる。
「逃がしはしないぜぇ?」
「ならば、死中に活ありだぁぁ!!」
 最早退路は無いとばかりに褌男に向かって特攻する男。嗚呼、男の魂は真っ赤に燃えていた。
「我が絶技を見よ!」
「何ぃ!?」
 だが次の瞬間、褌男が両手を振るえば、男は‥‥白き褌によって手足を拘束される!
 よっぽど上手く絡まったのか、褌が丈夫なのか、男はまるで身動きが取れないようで、身じろぎをするばかりだ。
 自分の技が決まったのを確認した褌男は、右手を天に掲げて勝利宣言をする。
「おばあちゃんが言っていた。一流の褌使いは‥‥一流の鞭使いにも劣りはしない」
「どんなおばあちゃんだよ!!」
「さぁ、剥がせてもらうぜ!」
「いやああああああ!!!?」
 こうして、身動きできない1人の男に、9人の男が群がるのであった。

「くっ‥‥やはりこのフンドーシもまた究極には程遠いか」
 先程奪ったばかりの褌を右手に握り締めながら、夜空に輝く星を見つめる褌男。
「だが、俺はいつか究極の聖なるフンドーシ‥‥アーサー王のフンドーシを、ラーンスのフンドーシを手に入れてみせる!!」
 アーサー王らが褌をつけているという前提がまずおかしいような気がする。



「と、いうわけでまたまたキャメロットに変態が現れたわけですがー」
 時と場所を移ってキャメロットギルド。いつものように変態退治の依頼をするは、謎の多い女性‥‥コレットだ。
「今回現れた変態は、フンドーシをつけた男性しか狙わないようですね。見つけると、襲ってそのフンドーシを奪ってしまう。そして、鞭の要領でフンドーシを操る技術を持つとか」
「鞭のように使えるフンドーシって‥‥」
「また、部下も数人ほどいるようなのでー。だからこそ、冒険者にお願いしたいわけですが‥‥」
「が?」
「今回は、私も同行したいと思います」
「え、えぇぇ!?」
 驚きのあまり、つい椅子から立ち上がってしまう受付係の青年。彼の知る限り、コレットは変態退治を殆ど冒険者に丸投げしていた。そんな彼女が何故‥‥と。
「えーと、ですね。‥‥ラーンス卿のフンドーシを奪うとかわけのわからない事をのたまった、と聞きましたのでー」
 そう言う彼女の表情は笑顔だ。いつも通りの笑顔である。
 ‥‥だが、目は明らかに笑ってない。というよりむしろ怒りのオーラが伺える。完全に怒っている。
(「‥‥ラーンス卿のファンなのかな‥‥?」)
 何故そんなに怒っているのかは気になったが、とりあえずつっこみはしなかった青年であった。

●今回の参加者

 ea2889 森里 霧子(30歳・♀・忍者・人間・ジャパン)
 ea3991 閃我 絶狼(33歳・♂・志士・人間・ジャパン)
 ea5898 アルテス・リアレイ(17歳・♂・神聖騎士・エルフ・イギリス王国)
 ea6159 サクラ・キドウ(25歳・♀・ナイト・人間・神聖ローマ帝国)
 ec4176 マリヤ・シェフォース(28歳・♀・レンジャー・人間・イギリス王国)

●サポート参加者

グロリア・ヒューム(ea8729

●リプレイ本文

●散りゆく者
 夜のキャメロット。
 そんな所で一人でうろつくうら若き男子は、正に狩られる為の羊といっても差し支えないかもしれない。
「うぅ‥‥サクラさんに誘われて受けたのに、変態への囮役って何か間違ってませんか‥‥?」
 そう言いながら誰もいない路地を歩く一人の羊‥‥もとい少年はアルテス・リアレイ(ea5898)。
 恋人の誘いを受けてこの依頼に入ったアルテスであるが、甘酸っぱい雰囲気はまったくもって無い。
 何故なら、今の彼は裸に褌一枚しかつけてないのだ。フンドーシ男を誘い出す為なのだろうが‥‥もしこれを善良な一般市民に見られた場合、アルテスが捕まってもおかしくない状況である。
 むしろキャメロットだからこそスルーしそうな気もするが。

 そんなアルテスを離れた路地の角から見守る一人の女性がいた。
「変態はどんな時でもいなくならないのですね‥‥。アルテス、囮気をつけてくださいね。‥‥色んな意味で。一応後でケアはしてあげます‥‥」
 サクラ・キドウ(ea6159)、アルテスを誘った張本人である。後でケアするという事はアルテスがあーんなことやこーんなことをされる事を理解してるのか。理解していて囮にするとは‥‥恐ろしい子。

 勿論、そんな格好の獲物がいるのを見過ごす程、キャメロットの変態達は紳士ではない。
 突如起こった旋風によって砂が巻き上げられ、砂煙が晴れた後アルテスの目の前には数人の男達が立っていた。
「こーんな夜更けにフンドーシ一丁‥‥君は我々の仲間になりたいのか?」
 全身褌男と、その部下の男達である。
「そんなわけないじゃないですか!?」
「じゃあその格好は何なんだ?」
「うっ」

「確かに、あれじゃ仲間と間違えられても仕方ないな」
 サクラと同じく路地の角から眺めるは森里霧子(ea2889)だ。標的が現れたというのに飛び出そうという気配はまったく見えない。
「えぇと‥‥助けないでいいんですかー?」
 そう問うのはこの依頼に同行している依頼人でもあるコレットだ。彼女自身は変態の討伐に赴くのは初めてなのでこの観戦ムードに戸惑っているのだろう。
「様式美というやつです。では、皆さんお茶はどうですか‥‥?」
「そういうものなんですかー‥‥」
 サクラが勧めてきたお茶を受け取るコレット。実に和やかな雰囲気だ。
「せっかくだから、私もいただくわぁ」
 同じく依頼に参加しているマリヤ・シェフォース(ec4176)もサクラの用意したお茶を受け取り、まったりと過ごす。
 実に平和だなぁ。
「平和じゃないですよー!?」
 と、叫ぶはアルテス。いつの間にか囲まれていたり、全身褌男により手足を拘束されていたりした。
「ま、まだ遅くはないですから、そんなことはやめてくださいっ!」
 手足が動かないとなれば、できる事は説得だ。アルテスは自分の為にも必死になって全身褌男を説得にかかる。
「真面目に稼いで、将来ジャパンに行けば至高の褌なんていくらでも‥‥」
「俺が求めるのは究極のフンドーシ! 至高のフンドーシ程度で満足できるかぁ!」
「いいじゃないですか、至高の方が大物っぽいじゃないですか!? 和解しましょうよ!」
 アルテスの説得もむなしく、全身褌男の褌がアルテスを締める! 手を足を色んなところを! 締められて悶絶しているアルテスに更に周囲の男達が手を這わす!
「いやぁぁぁ!!?」

 合掌。

●褌魂
「待てぃ!」
 アルテスに群がる男達に突如浴びせられる声。
 声の主が只者ではない事を察した男達はすぐさま散開し、声がしてきた方向を見据える。
 ちなみにアルテスはしっかり全身褌男が確保している。褌で雁字搦めにして、だ。
 そこに居たのは全身をマントで覆った一人の男だ。
「フンドーシは腰に履いてこそ漢が磨かれるのだ、全身に、しかも他人から奪った物を巻きつけるとは言語道断!」
 その言葉と同時、男がマントを脱ぎ捨てる! マントの下の格好は―――裸に褌一枚! 更にエクセレントマスカレードをつけて顔を隠している。
 彼の名は‥‥閃我絶狼(ea3991)。正しく褌を扱う為に生まれた褌の勇者だ。
「では私もそろそろ動くとしよう」
 お茶を飲み終えた霧子が立ち上がり、傍にあったロープを引っ張る‥‥と。
「むぅ!?」
 危険を察したのか全身褌男がアルテスを手放し素早くその場から動く!
 そして先ほどまで全身褌男が居た場所‥‥アルテス場所が居る場所に、空から漁師が使う網が落ちてくる。事前に霧子が仕掛けた罠のようだ。
「助かった‥‥って、何ですかこれ!?」
「え? ウナギってこう使うものじゃないのか?」
 その網はただの網ではなく、何故かイールがセットであった。ぬめぬめとした細長い体のニクイやつがアルテスの体を這い回る。ちなみに依頼終了後においしく頂きました。誰かが。
「え、あぅ、いや、これは‥‥んんっ!?」
「アルテス‥‥妙な趣味に目覚めちゃ駄目ですよ」
 いいから助けてやれ、恋人。
「す、凄いですね‥‥」
 顔を赤くしているがじっくり見るコレット。色々な意味で大丈夫だろうか
 それはともかく、罠を発動させた当の霧子はというと、既に路地の見える所には居なかった。ではどこへ‥‥そんな疑問に答えるように高笑いが響く!
「ははは! 私、ラ〜ンス・ロットの褌が見たいかね?」
 家の屋根に上って笑っているは高貴な服に身を包んだ騎士。なんと、ラーンス・ロットが変態相手に現れたのだ―――という事はまったくもってなく。
 霧子の変装である。顔の部分はラーンスの肖像画を加工してお面としたものだ。
「ラーンス卿だと‥‥!? 馬鹿な!」
 褌男達に広まる動揺。ラーンスが現れたとなると仕方ないだろう。偽者だが。
「落ち着けぃ!!」
 だが、そんな動揺を一発で沈静化させるは全身褌男!
「やつはラーンス卿ではない! 俺には分かる‥‥そう、俺だからこそ分かる!」
「あなたににい―――ラーンス卿の何が分かるんですか!?」
「げふっ!?」
 ばっこーん。
 今の全身褌男の発言により怒ったのだろうコレットの剣――かなりの大きさを誇るものだ――が全身褌男を大きく吹っ飛ばす!

「あぁ、リーダーが!?」
 全身褌男が吹っ飛ばされた事に激怒した男達が冒険者達に襲い掛かる!
「いいものが見れました‥‥。ご馳走様‥‥。アルテスはお疲れ様です‥‥」
 アルテスを保護したサクラはアルテスにマントをかけると褌男達の迎撃へと向かう。
「さて、変態さん達にはそれ相応の報いは受けてもらいましょう‥‥」
「何!?」
 オーラ纏った剣が褌男の何かを斬る、突く、抉る!
 ただ、褌が‥‥散っていった。
「‥‥安心してください。峰打ちですから‥‥」
 諸刃の剣に峰打ちなんてものは存在しない。
「お、おい‥‥あの女!?」
 男の注目を受ける1人の女性‥‥それはマリヤだ。
「ふふん‥‥私のフンドーシはどうかしらぁ?」
 彼女は女性ながらに褌をつけて下半身を露出させている。見る人が見れば襲い掛かりそうなものだ‥‥が。
「女のフンドーシなぞ認めるか!!」
「えー!?」
 別の意味で襲い掛かってきた。彼にとって褌は男性がつけるべきものなのだろう。
 とはいえ、縄ひょうで迎撃されているのだが。
 そしてラーンス卿に扮する霧子。彼女にも男達が襲い掛かっていた。
「偽者と分かれば怖くはない!」
「はっはっは。それはどうかな?」
 と、霧子の体から出てくるは煙‥‥春花の術。
 煙に包まれた男達は成す術も無く夢の世界へと飛び立っていく!
 残りの男達‥‥絶狼に近づいた男達だが、急に宙に浮かび、地面へと叩きつけられる! ローリンググラビティーだ。
 そのまま、倒れた男たちへ超速の勢いで近づくと、月夜に舞うは男達がつけていた筈の褌!
「ふん、ド素人め、履き方が甘いわ‥‥そして、貴様等程度ではこれらもただの布切れに過ぎん」
「成る程‥‥一味違うやつがいるようだな」
 パシュ!!
 次の瞬間、絶狼の両手に白き布‥‥褌が絡まる! 褌の先を見れば、そこに居たのは全身褌男だ!
 更に、と褌を飛ばしてくる全身褌男! 足狙いのそれは‥‥だが絶狼の褌の前垂れによって阻まれる!
「何!?」
「‥‥捕らえたぞ、後は貴様と俺のフンドーシ、どっちが脱げるか勝負だ!」
「そういう事か、いいだろう!!」
 漢の熱き戦いが始まる!!
 懸命に引っ張り始める両者! お互い表情は伺えないが、きっと死闘をしている漢のそれに間違いないだろう。
「ぬおおおぉぉぉ‥‥燃え上がれ俺の魂よ、輝き唸って我がフンドーシに力与えん!!」
「な、なんだとぉぉ!!?」
 ぶち、ブチブチ!!
 千切れて宙に舞う褌‥‥軍配が上がったのは、絶狼だ!
「己が心に決めたたった一つのフンドーシを履き続けてこそ真のフンドーシ力が身に付くのだ、借り物のフンドーシから出る力などまやかしに過ぎん」
「はっ‥‥教えられたぜ、ブラザー‥‥」
 ガクリ。
 漢が、沈んだ。

●戦い終わって
 戦いが終わった。
 アルテスが倒れた全身褌男に火をつけたりとしたが、とにかく終わった事は終わったのだ。
「アルテス、お疲れ様です‥‥住処でケアをしてあげますから‥‥帰りますよ‥‥」
「あ、はい‥‥」
 サクラはちょっと危ない様子のアルテスの傍までいくと、傷を癒すように頬へとキス。それを受けてアルテスの頬も赤く染まる。きっと住処ではもっと甘い雰囲気が漂うのだろう。
「‥‥何故だろう。襲われなかったという点では勝ち組の筈なのに、心が寒いのは」
 そんな様子を見て一人呟くは褌一枚で佇む絶狼。‥‥彼はこの依頼で一体何を得て、何を失ったのだろうか。
「あ、あの霧子さん‥‥!」
 そして変装を解いた霧子に駆け寄る、コレット。その目は凄く、物欲しそうで。
「‥‥え‥‥と。この肖像画、要る?」
 霧子は思わず、ラーンスの肖像画を差し出してしまう。
 勿論コレットの答えは。
「はい! ありがとうございます! ふふ‥‥にい――ラーンス卿の肖像画」
 ともかく、円満に終わったのだ。