【北海の悪夢】漂う騎士
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■ショートシナリオ
担当:刃葉破
対応レベル:11〜lv
難易度:やや難
成功報酬:8 G 3 C
参加人数:5人
サポート参加人数:-人
冒険期間:09月23日〜09月29日
リプレイ公開日:2008年10月01日
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●オープニング
●再び荒れる北海
――先月のメルドンを強襲した大津波から約1ヶ月。
平穏な北海は再びモンスターの猛威に荒らされようとしていた。
このままでは貿易船が被害を被る可能性も否定できない。
アシュレイ・ゼルガートは調査の結果、幾つかのモンスターを確認しており、ギルドにモンスターの駆除を依頼に訪れた。
腰ほどまで長い黒髪と口髭が印象深い高貴そうな紳士が告げる。
「北海で確認されたモンスターはウエイプスだ。可能な限り速やかにこれを討伐し、騎士達を助けていただきたい」
「騎士の救援、ですか?」
「詳細はまた後ほど伝えよう」
用件を受付係に伝えると、ふとギルドの掲示板に張られている依頼が視界に入る。
「ふむ、メルドン近海の依頼か。捜索を果たす為にもモンスターの駆除は必要だろう」
――行方不明の船長捜索。
モンスターがメルドン近海に移動すれば、捜索依頼にも支障が出るかもしれない。
海洋モンスターとはいえ、陸に上がれるタイプもいるのだ。
冒険者ギルドに北海の依頼がまた一枚貼られる事になる――――。
●北海の騎士
先述の通り、北海は再びモンスターの脅威に晒されている。
勿論騎士達も何もしないというわけではない。現在北海にて巡回をしている騎士達が良い例だろう。
船上にて騎士達に指示を出すは王宮騎士、エクター・ド・マリスだ。
「‥‥‥大変な状況なのは分かりますが」
部下の者達に気づかれぬよう、溜め息を溢すエクター。
彼の戦闘適性は明らかに陸上の戦闘向きで海上戦闘にはあまりにも不向き故の嘆息であるが、嘆いても仕方がない。そんな彼ですら海に出さねばならない状況という事だろう。
また、エクターといえば全身を覆う黒の鎧兜が印象的ではあるが、今の格好はそれとは違うものだ。確かにいつもの重装備だと海に落ちた時にまず助からないので仕方ないのだが。
軽鎧の上に黒のサーコートを着込み、兜は鼻から上が隠れるようなヘルム――よくそんなものを調達してきたとは思うが――、剣も盾もいつものような重いものではなく扱いやすいものを装備している。
「何事も無ければ良いのですが‥‥やはりそうはいきませんかね‥‥」
当然というべきか―――エクターの予感は的中する。
天気は快晴。風も適度なものであり、海が荒れる要素は見た所まったくない。
だが‥‥。
「エクター様! な、ななな何ですかあの波飛沫は!?」
騎士達の乗る船の前方。そこには海を割り、波を起こしながら近づく何かがあった。
その姿は波飛沫によりはっきりと視認できないが、まずこちらにとって益となるものが近づいてるわけではない事は明白であり、すぐさま騎士達は武器を構え戦闘態勢に入る。
波飛沫の主が船に近づき―――騎士達はその姿を認める。
「巨人‥‥!!」
「ウエイプスか!?」
海面から突き出るは間違いなく人の形をしたそれの上半身。見える限りの全身は真っ黒でらんらんと光る真っ赤な瞳を持ち、口は耳許まで裂けている巨人。東洋では海坊主とも呼ばれるモンスター‥‥ウエイプス。
船乗り達からは出合った船を転覆させてしまう事で大変恐れられている。
そのようなモンスターが目の前に船に対してする事といえばただ一つ。
ウエイプスは裂けた口を笑みの形に歪めながら右の拳を天へと振り上げる―――!
「総員、船をやらせるなぁっ!!」
ウエイプスと騎士達の戦いが始まる!
‥‥そして戦いは終わった。
騎士達の踏ん張りもあり、辛くもウエイプスをとりあえずは退ける事に成功する。だが深い手傷を負わせたとはいえないので、またその内襲い掛かってくるだろう。
船も何度か攻撃を食らったものの、依然健在。少々の破損は応急処置で何とかなる程度だろう‥‥が。
「エクター様、大変です!」
「どうしました!?」
「舵が‥‥舵がやられました!!」
「何‥‥!?」
ウエイプスの攻撃が舵に対してまともに直撃したのだろうか。完全に破壊されてしまったのだ。
こうなってしまってはまともな航行はまず無理と言える。
「くっ、こうなっては救援を頼むしか‥‥。伝令のシフールを呼んでください」
「はっ!」
こうして、エクター達騎士の救援がギルドへと依頼されたのであった。
「救援が来るまで何としても持ちこたえねば‥‥!」
●リプレイ本文
●いざ北海へ
北海に取り残されたエクター達騎士を助けるため、キャメロットから出発した冒険者達。
彼らが依頼人であるアシュレイ・ゼルガートに指定された港町に辿り着いたのは当初の予定より1日程早かった。各自が馬などの移動手段を用意してきたお陰だろう。
今、冒険者達は港で船を前にして、船員達と顔を合わせていた。ちなみにアシュレイの姿はない。彼も彼でまた色々とやる事があるのだろう。
挨拶も程ほどにしたところで、提案をするはクリステル・シャルダン(eb3862)だ。
「巨人の起こす波で転覆しないよう、船の両横に小船や浮きをつけて安定性を高められないでしょうか?」
それを聞いた船長は、困ったように髭を弄りながら、自分の乗る船を見て答える。
「できねぇことはねぇが‥‥。しっかり効果があるように作ろうと思えば、時間がかかっちまうな。急いだ方がいいんだろ?」
「そうですか‥‥。では、いざという時の修理の為に修理用の道具や木材などを積み込むのは?」
「おう、そっちならばっちりだ」
脅威を迎え撃つにはしっかりとした準備が重要ということだろう。勿論対策を練っていたのは彼女だけではない。
「ウエイプス、ウエイプス‥‥。種族はクリーチャーに分類される、海の巨人。攻撃方法は主に水の精霊魔法と巨体を活かした殴打攻撃‥‥ふむふむ。特筆すべき点としては、魔法攻撃に対する防御力は高め‥‥ってところですかね」
陰守森写歩朗(eb7208)は海の魔物について書かれた写本でウエイプスの事を調べていた。できれば弱点も知りたかったが、そこまでは望みすぎというものだろう。
「ウエイプス‥‥滅多に姿を現すものではなく、必ずしも邪悪ではないとも聞くが。北海の悪夢未だ覚めやらずという事か。とまれ今は、海の安寧の為討伐に全力を尽くそう」
エスリン・マッカレル(ea9669)はウエイプスとの戦いを想像し、頼りにしている自分の相棒ともいえるグリフォンのティターニアの喉元をわしわしと擽ってやる。主人に頼りにされている事が分かっているのか、ティターニアも嬉しそうだ。
「前にウエイプスと相対したのは京都で、でしたか‥‥。あの時は逃げられてしまいましたからね‥‥‥同じ個体というわけでもないでしょうが、個人的雪辱でも晴らすとしましょう」
以前に逃がしてしまったウエイプスの事を思い出し、フィーナ・ウィンスレット(ea5556)はやる気を漲らせる。今度こそ逃がす前に倒す、と。
「では、手早く準備を済ませて救援に向かおうか」
船員達が荷物をある程度船に積ませたのを見て、レイア・アローネ(eb8106)が口を開く。
こうして冒険者達は騎士を救うため、北海へと出る。
ちなみに余談ではあるが。
海上で森写歩朗がウォーターウォークを発動した状態でフライングブルームを使用したらどうなるかという実験を行ったが、結果は見事失敗であった。
水面を歩けるようになっても結局フライングブルームの基準は海底ということだろう。
●北海の巨人
船が港町を出てから、問題のエクター達が留まっているという海域まで特にトラブルもなく向かう事ができた。
潮の流れや風によって船が流されている可能性もあるが、海域的には潮の流れは強くない場所なので探していればそのうち見つかるだろう。
事実、ペガサスのスノウに乗って周囲の警戒を兼ねて探索していたクリステルが騎士達が乗ってるであろう船を見つける。
「船を見つけました。‥‥今のところ、何かに襲われているという様子はありませんが」
船のあった場所を一度仲間達や船員に伝えてから、また上空へと戻るクリステル。同じくティターニアに騎乗して空を駆けているエスリンと共にウエイプスの警戒にあたる。
そして冒険者達の乗る船は、騎士達が乗る船と接触をする。
「助けが来ましたか‥‥!」
騎士達の船と並べるように船を停めると、真っ先に顔を出したのはエクターだ。恐らく他の者達は体力の限界で顔を出すのも辛い状況なのだろう。しかし、助けが来た事は分かってるようで、船のそこかしこから歓声のようなものが聞こえる。
「おや、エクターさん随分とさっぱりした格好で。余裕があれば弄って差し上げたいところですが‥‥今はそれどころじゃないですね。頼みますよ、セレネ」
エクターの姿を認めると、フィーナはエレメンタラーフェアリーのセレネに伝令の手紙を持たせて、騎士達の船へと向かわせる。
それと同時にエスリンも騎士の船に降り立ち、今後の予定を伝える。
「このまま何事もなければ良いのですが‥‥‥」
騎士達の救助に向けて、依頼人が予め用意してくれた食料や薬などを向こうの船に輸送する準備や、船を引っ張る準備を見ながらどこかで聞いたような事をグリフォンのレオンに乗って呟く森写歩朗。
そして、やはり何事もないという事は無い。
「‥‥! 来るぞ、北西の方向!」
唐突に叫んだエスリンの言葉に従い、そちらの方向を見てみれば確かに白波が起きていた。彼女は鷹のマッハに周囲を警戒させ、オーラテレパスを通じて何かあったら伝えるようにさせていた。その鷹の目が異変に気づいたのだろう。
場所的には並んだ船の船尾の方向だ。エクターの船側に出てこなかったのは幸いだろう。
冒険者達は各々の戦闘態勢へと移行する。
海が割れ、巨人が姿を現す―――!
●海上戦闘
ウエイプスに対してまず動いたのは森写歩朗だ。彼の位置取りはちょうどウエイプスの真上、そんな彼がしたことはレオンに積まれていた油を眼下のウエイプスに対して振りかける事。そして直後火を投下―――勿論ウエイプスは全身が炎に包まれる!
「これで‥‥効きますかね?」
とりあえずは自分が一端船に戻るまでの時間稼ぎのようなものだが、ウエイプスの反応は鈍い。確かに少々苦しんでるように見えるといえば見えるのだが殆どダメージを負っているようには見えない。一度海に潜ってしまえば消火は簡単だろう。
実際、その通り海に潜るウエイプス。だが、これはこれで時間を稼ぐ事ができたという事だ。
この隙にとクリステルがホーリーフィールドによる聖なる結界をまずは騎士達が乗っている船に対して張る。
またエスリンは気を高めてオーラを練り始めていた。装備の重さ故集中できず、練るのに少々時間がかかるが仕方ない。
森写歩朗が船に戻ったのとほぼ同じぐらいのタイミングだろうか。水中に潜っていたウエイプスが再び姿を現す。炎が消えた今改めて見るとやはり少し焦げた程度でまともにダメージを負っていないようだ。
「でやぁっ!」
レイアが剣に埋め込まれたレミエラの力を発動させ、剣を振るう。剣を振るった場所は船の上だが、その攻撃は少し離れた場所にいるウエイプスにも届くソニックブーム! 自分の攻撃をソニックブームに変えるレミエラの力だ。
特に避けるような素振りも見せないウエイプスの腕に、飛翔した衝撃波が斬り口を作る!
「そんなに大きい顔なら、狙いやすいというものです」
更にフィーナが発動するはライトニングサンダーボルトの魔法。達人が放つ威力のそれは、ウエイプスの顔面へと向かい、電撃が貫く!
―――グァァァ!!
よっぽどの痛みが走ったのだろう、大きくのけぞるウエイプス。魔法攻撃に強いとはいえ、威力が威力だから仕方ない。
今のでよっぽど頭に来たのか、印を練っていたウエイプスの視線の対象はフィーナ‥‥そして彼女が乗る冒険者の船へと移る。
ウエイプスの魔法の成就‥‥それは吹雪を巻き起こすアイスブリザードの魔法!
が。
「そうはいきません!」
魔法の成就を見てから、敵の魔法を悟ったフィーナは高速で魔法を完成させ発動させる! アイスブリザードをそのまま相手に返す暴風を巻き起こすストームだ!
やはりその程度の魔法ではウエイプス自身はダメージ自体はほぼ負っていないが、自分の魔法を返されたのだからウエイプスのフィーナへの怒りのボルテージは更に上がる。
そしてエスリンのオーラ魔法が発動し、オーラエリベションで自身の気を高める。
また、クリステルのホーリーフィールドが冒険者達の乗る船にも張られ、両方の船に対して貧弱な攻撃は通らないという状況になっていた。
――――グォォォ!!!
怒りのまま、フィーナが乗る船へと向かい拳を振り下ろすウエイプス。だが、その攻撃は彼女まで届く事は無い。
ホーリーフィールドがウエイプスの攻撃をただひたすらに阻む。何回拳を振るっても破壊される事は無いだろう。
こうなってしまえば、冒険者達に恐れるものは無い。
フィーナやレイアのように船の上から遠距離攻撃を仕掛ける者の場合、完全な安全圏である。
「この攻撃、見切れるか―――!」
またウォータウォークを発動させ、海の上を自在に走る森写歩朗の皮膚の薄い所を狙った七支刀による攻撃がウエイプスを切り裂く!
この段階に至って、ウエイプスはようやく自分では歯が立たない事を悟ったのだろう。海中に潜って逃げ出そうとするが―――。
「逃がしは、しません」
クリステルのコアギュレイトによる縛めがウエイプスがその場から動く事を許さない。
「マナナン・マクリルよ、加護を!」
ケルトの海神の加護を祈りながらエスリンが放つ二本の急所狙いの矢が‥‥ウエイプスにとどめを刺す。
●帰還
こうして冒険者達は騎士達の治療をしてから、船を引っ張り港を目指していた。
「本当に助かりました。皆さん、ありがとうございます」
礼を言い頭を下げるエクター。いつもより外しやすそうなその兜を見て、外そうかと企んだものがいるかどうかはまた別のお話。
こうして、無事にウエイプスを退治できた報告が、クリステルが鷹に持たせた手紙により、一足早く港へと届けられるのであった。