【黙示録】異国のモノ
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■ショートシナリオ
担当:刃葉破
対応レベル:6〜10lv
難易度:難しい
成功報酬:4 G 50 C
参加人数:8人
サポート参加人数:-人
冒険期間:12月03日〜12月08日
リプレイ公開日:2008年12月11日
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●オープニング
●デビル北上
――これは、或る森でモンスター退治の依頼を受けた冒険者の軌跡である。
「これで最後だ! そっちは片付いたか?」
最後の1体を切り伏せたファイターは、仲間に状況を促した。
「こっちも完了した。所詮は雑魚、この程度の相手に‥‥ん? どうした?」
剣を収めながら答えたナイトは、怪訝な色を浮かべる。瞳に映るのは、指輪を見つめ戸惑う若いクレリックだ。
「蝶が羽ばたいていますッ」
「蝶って、デビルがいるのか!? 魔法は!?」
ナイトは静かに首を横に振る。経験も浅いパーティーはデビル対策を失念していたらしい。
尤も、今回の依頼はモンスター退治。襲って来なければ問題はない。
「近づいていますッ。どんどん激しくなって‥‥ッ!?」
刹那、冒険者達は何かの夥しい気配が通り過ぎたように感じた。
沈黙と困惑に彩られる中、クレリックが安堵の溜息を洩らす。
「行ってしまったようです‥‥」
「行った‥‥って軽く無視かよ」
彼等は気配が去った北の空を見つめた――――。
●デビル防衛線
――イギリス各地でデビルの出現報告が届くようになる。
村や町で騒動を起こす事件もあるが、共通する点が一つ確認された。
一部のデビルが北海に向けて収束しているらしい。
裏付けるようにキャメロットより北で出現情報が多くなり、メルドン近隣に集中しつつあった。
「王よ。黙示録の時が近づいております」
マーリンは静かに告げる。
「地獄のデビル共が動き始めています。静かに。だが確実にその爪を伸ばして参りましょう」
「北海の騒動が要因か元凶か定かでないが、デビルに集結される事は勢力拡大を意味する。北海のデビルと思われる男の早期探索と、北海付近に進軍するデビルの集結阻止が重要となるか」
アーサー王は王宮騎士を通じてギルドに依頼を告げた。
「王宮からの依頼は北海に向かうデビルの早期発見と退治だ。我々は北で防衛線を張り、デビルと対峙する事になるだろう。既に向かったデビルを追っても仕方ない。今は僅かでも勢力を拡大させない為にも、冒険者勇士の協力を期待する」
幸いというべきか、円卓の騎士により、北海のデビルと思われる男の探索依頼は出されている。王宮騎士団は北海地域に展開しており、日々出現し続けるデビルと奮戦中との事だ。
つまり、冒険者達は最前線に陣を置き、デビルを探索、退治する事が目的となる。
「ここでデビルの動きを伝えよう」
デビルの動向には大きく二つに分類された。
北へ向かうデビルと、近隣の村や町に留まり、騒動を起こすデビルである。
推測に過ぎないが、デビルにも嗜好というものがあるらしい。
しかし、北海に向かわない保障はないのだ。
王宮騎士は目的地を告げる。
「キャメロットから北へ2日程行った所で陣を張ってほしい。情報によればそこをデビルが通る筈であり、そこを抜かれたら‥‥村が襲われるのだ」
●巨漢の悪魔
ずぷりと血肉に何かが沈み込む音がする。
音のした原因は刃が埋め込まれたからだ‥‥人間の胸に。
刃は胸を通して、背中を抜け、血に塗れた自身を光らせる。と、それが引き抜かれ、刃が突き刺さっていた人間はそのまま地に倒れ伏す。
「なんじゃ。人間が脆いのはどこもそう変わらんのかのぅ」
刃―――巨大な刀を一振りして血を飛ばすと、刀の持ち主はつまらなさそうに笑う。どうせならもっと耐えてくれた方が面白かったのに‥‥と。
その刀の持ち主は巨大であった。人間より遥かに大きく、ジャイアントをも上回る巨体。筋骨逞しい褐色の肌を持つ男だ。
だが男から漂う雰囲気はただの人のものではない。明らかに邪悪のそれだ。
「キキッ、羅刹サマ! ドウセナラモット殺シマショウヨ!」
そして羅刹と呼ばれた男の後ろに控えていた犬のような毛むくじゃらの何かが、聞いてるだけで耳障りになる音――声と呼べるものなのだろうか――で羅刹に話しかける。
「そうじゃのう、邪魅よ。こんな商人1人殺したところで何も面白くないしのう」
羅刹は自分の足元に転がっている男の頭の上に足を乗せたかと思うと、そのまま振り下ろす。
ぐちゃり、とあっさりと潰れた音がした。
「ソウイエバ、コノママ進ンダトコロニ村ガアルソウデスゼ」
「ほぅ、村か。となると‥‥たくさん殺せそうじゃのぅ?」
「ヘヘッ、タノシミ‥‥!」
「タノシミ!」
「タノシミ!」
「タノシミ!」
楽しみ――人を殺すのを楽しみにするという、正に悪魔の声が響く。それも1つや2つではない。5や6ではない。9や10‥‥そういう数だ。
「そうじゃのう、ただ一方的に殺すのもつまらんものはあるがなぁ」
羅刹はがっはっはと豪快に笑ったかと思うと、視線を自分の後方にある森の中へと向ける。
がさりという葉が擦れる音、その直後に1人の男が泣き叫びながら羅刹から逃げるように走る。
だが羅刹は男を追いかけずに笑いながら見やるだけだ。
「コロサナインスカ?」
「どうせならワシらの事を広めてくれた方が色々と面白いものよぉ」
悪魔の集団は北へ向かって進む。道中にいる者を殺しながら。
●そのデビルは――
こうして、デビル北上の情報が騎士団の元へと届けられる。
しかし、騎士団の多くはメルドン近隣にて迫りくるデビルに対して展開しており、それに容易に対応できる状態でなかった。
故に、騎士団は1人の騎士に冒険者を連れてデビルを討伐する命を下す。
騎士――メアリ・ナーリシェンという名の女性の騎士だ――は倒すべきデビルに関しての情報を集めていた。
しかし、どれだけイギリスに過去現れたデビルに関する報告書を読んでも、それと思わしき存在を確認する事はできなかった。
「‥‥おかしい。最近のデビルの動きを見ても、あの集団は間違いなくデビルである筈。なのに情報が無いなんて‥‥」
だがその疑問に対する答えは意外な方向から出てきた。
「羅刹‥‥邪魅‥‥。確かに奴らはそう名乗っていたのか?」
「え、えぇ。奴らを見つけた人はそんな名を聞いた、と」
ギルドにて報告書を漁っていた時、物好きなジャパン出身の冒険者の僧侶が手伝ってくれたのだ。そして僧侶はメアリからデビルの名を聞き、眉を顰める。
「‥‥妙な話だな」
「何が、ですか? 確かに現状のデビルの動きは不可解なものが多いですが‥‥」
「それだけじゃない。羅刹に邪魅。こいつらは‥‥拙僧が知っている限り、ジャパンにしか現れないと聞く」
「え?」
ジャパンにしか現れない筈のデビル。それが何故イギリスに現れたのか―――。
●今回の参加者
ea0021 マナウス・ドラッケン(25歳・♂・ナイト・エルフ・イギリス王国)
ea1968 限間 時雨(30歳・♀・浪人・人間・ジャパン)
ea5936 アンドリュー・カールセン(27歳・♂・レンジャー・人間・イギリス王国)
eb0921 風雲寺 雷音丸(37歳・♂・志士・ジャイアント・ジャパン)
eb5379 鷹峰 瀞藍(37歳・♂・忍者・人間・ジャパン)
eb7784 黒宍 蝶鹿(28歳・♀・忍者・人間・ジャパン)
ec2813 サリ(28歳・♀・チュプオンカミクル・パラ・蝦夷)
ec3876 アイリス・リード(30歳・♀・クレリック・ハーフエルフ・イギリス王国)
●リプレイ本文
●何を企む
キャメロットからしばらく離れたところにあるとある街道。
現在侵攻中という話のデビルがそのまま進むなら間違いなく通る場所だ。
冒険者達は情報を元にそこに陣を張る。
「羅刹‥‥懐かしい響きですね。しかし、以前、江戸のお化け屋敷であった上品な羅刹さんとは違って、ずいぶんと乱暴です」
デビルを待ち受ける罠の作成の指示をするはサリ(ec2813)だ。彼女は過去に江戸で羅刹と戦った事があるらしい。どうにも印象が違うようだが、何にしろ倒さなくてはいけない敵には変わりはない。
「ガァアアア! はるばる海を越えて人様に迷惑掛けるとは、この日本の恥曝しめ! 主上に代わって叩き斬ってくれる!」
「いやいや全く、遠路遥々とご苦労さんなこって。‥‥月道解放に関連して、まさか悪魔共まで自由に行き来してるんじゃないだろね」
同じジャパン出身として、イギリスに迷惑をかけるのが許せないのだろう風雲寺雷音丸(eb0921)が怒りの咆哮を上げる。
ジャパンで現れるのが主な羅刹に対して、もしや月道を渡ったのではと推測するは限間時雨(ea1968)だ。
同じように、罠の作成を手伝いながらアイリス・リード(ec3876)も同じ推測をする。
「異国のデビル…月道の開放と関係があるのでしょうか。何の、目的で‥‥?」
最近、突如現れた壁。それを破壊した事により月道は常時開放状態となった。まさに世界中の多くが繋がったといえる状況だ。デビルがそこにつけこんだと考えてもおかしくはない。
「ジャパンの鬼‥‥といわれては放ってはおけない。故郷はとうに捨てた抜け忍ですが、黒宍蝶鹿参戦致します」
やはりジャパン人である黒宍蝶鹿(eb7784)にとっても今回の敵は放っておけないのだろう。ちなみにジャパンでいう鬼はこちらではオーガにあたるのだが‥‥些細な事か。
彼女も罠の作成を手伝いつつ、デビルと戦った事のある仲間にデビルに火が効くかを聞く。効くならば火を使った罠を作成しようと思っていたのだ。返ってくる答えとしてはノーだ。魔力を持たない通常の炎では、デビルに傷一つつける事はできない。
となれば、罠を使いつつも向かってくるデビルらと正面からぶつかり合う事になるだろう。
「正々堂々は本分じゃねぇが、戦うことには違いない。さていっちょやりますかっ」
と言うは鷹峰瀞藍(eb5379)。口調はどこか軽いが、それは彼が忍者という忍び欺く事が当たり前の職についているからだろう。軽々しく本音を表を出す事はしないのだ。
と、彼は周囲の冒険者達を一通り見渡してから。
「美人さん揃いで何よりだぜ‥‥やる気満タン! え、男?かんけーねーぜ」
‥‥‥本音を隠しているだけの筈だ。
と、その彼の言う美人の1人。同行する騎士のメアリ・ナーリシェン。
彼女の名を聞き、アンドリュー・カールセン(ea5936)が思わず反応する。
「ナーリシェン‥‥? もしや、ブライトンにいるクウェルの親族か?」
「え? クウェル・ナーリシェンは確かに兄ですが‥‥ご存知なのですか?」
「あぁ、色々と会う機会があってな」
どうやら話によると、メアリにはクウェルという兄がいるらしい。連絡が取れなくなり心配したらしいが、つい最近になって手紙が来て近況を聞けてようやく安心したらしい。機会があればまた兄に会いたいらしいが、それはまた別の話。
今は何より迫りくるデビルを倒さなくてはいけない。
「此処で羅刹も邪魅も殲滅する、これ以上奴らにこの国を荒らさせはしない。可能ならばこの勝利は完全なもので無ければならない。民を不安がらせないために。そして希望を持たせるためにな」
マナウス・ドラッケン(ea0021)がその心を怒りに染めながら、しかし言の葉は冷静に今回の依頼目標を告げる。
冒険者達に異論は無い。
デビルが迫る。
「来いよ三流悪魔、それとも戦えない民しか襲えない臆病者なのか?」
マナウスの言葉に答えるようにデビルがその邪悪な意思を冒険者達に向ける。
●数の暴力
「お出迎えか」
ニヤリと笑みを浮かべながら刀を構えるはデビル集団の先頭の褐色の巨漢、羅刹。その後ろに控えている10の毛むくじゃらの犬のような姿をした何か‥‥それらが邪魅だろう。
当然冒険者達もデビルの姿が見えた時点で戦闘態勢を取っている。敵の位置、自分の位置、罠の位置を頭で整理しつつ、どのようにすれば罠にうまくかける事ができるかを計算しているところだろう。
「よし‥‥!」
冒険者達がデビルに向け動き出そうとした時、羅刹が刀を掲げる。
「黒炎の陣じゃ! 黒髪のあんちゃん狙ったれ!」
「ヨッシャ!」
「!?」
デビルが何かしようとしている。それを察した冒険者達はすぐさま敵に向かって走る。だが計算の為に出遅れたのもあり、間に合わない!
ボウ!
邪魅の全身が黒い靄に包まれたかと思うと、右前足を前に突き出す。そこから発せられるは黒い炎!
しかも1つではない。10体の邪魅‥‥いや、羅刹も同じように手を突き出し、黒炎を吐き出す!
合計11の黒い炎が黒髪の男、アンドリューに向けて飛来する!!
「な‥‥!?」
それら全ては他の冒険者を無視し、まるで意思を持ってるかのように曲がりくねり、アンドリューただ1人に直撃する!
一発一発は軽い傷を負う程度の威力だが、それが11もあるとすれば話は別だ。
「ぐぅぁ!?」
勿論、全て直撃となったわけではない。しかし、それでも抵抗できなかったものの方が遥かに多い。
蓄積されたダメージによりアンドリューが膝をつく事になるのも仕方ない話だ。
「雑魚とはいえ束になってこられたら痛いもんじゃろう?」
「ザコッテヒドイッスー」
アイリスは今にも瀕死になりそうなアンドリューに回復の魔法をかける為に、傍によりながら冒険者達へ指示を飛ばす。
「皆さん、魔法の詠唱をさせないでください!」
最早罠にかけるなどと悠長な事を言ってられる場合ではない。数の暴力を防ぐ為には、数を減らさねばならないのだ。
●個々の力
と、手始めに手痛い攻撃を貰ったものの、冒険者達がその気になれば邪魅達の殲滅はそんなに難しい事ではない。
「そちら、お願いします!」
「はいよ―――素早さなら負けないんだよっと」
蝶鹿のテイマーズホイップを振り回した威圧により後退した邪魅に対して、瀞藍は素早く回りこみ小太刀の二刀流で瞬殺していく。
「何故にこの国に来てまでこのようなことを‥‥!」
サリの弓から放たれた魔力を持つ矢が邪魅の頭を貫き、その仮初の命を奪う。
時雨が、サリの弓矢に狙われなかった邪魅の首を一瞬で刈り取ると、次の獲物に狙いを定める。
その眼光に圧倒されたのか、狙われた邪魅が逃げ出そうとするが、勿論それを許す時雨ではない。
「逃げんのかい、ちっぽけな人間風情相手に。‥‥逃しはしないよ。何かを殺すってことは逆に殺される場合もあるってコトだ、悪魔共。人間無礼んな!」
剣を振る事によって発せられた衝撃波が逃げようとした邪魅の背に直撃し、撃破する!
「王国の為にも、あなた達を通すわけには‥‥!」
またメアリも時雨より借り受けたデビルスレイヤーの槍を用いて邪魅を確実に撃破していく。
邪魅に関しては、正面から戦うのであれば駆け出しの冒険者でも何とかなる――ダメージを与える事のできる方法がある前提だが――最下級のデビルゆえに、殲滅戦となれば、こうなる事は容易に予測できた。
尤もデビルの真の恐ろしさは正面の戦闘力ではないのだが、この場に限ってはこれ以上心配しなくてもよさそうだ。
「情けないやつらやのぅ」
撃破されていく邪魅を尻目に刀を振るう羅刹。だが雷音丸の盾にあっさりと受け止められる。
邪魅を撃破する間、羅刹をマナウスと雷音丸の2人が足止めする作戦だ。
反撃として刀を振るいながら――当てる気は毛頭無い――羅刹へと疑問をぶつける雷音丸。
「日本固有の妖怪である貴様が、なぜこんなところに居る。何をたくらんでいる!」
「わしがジャパン固有の妖怪? 面白い事を言いおるのぅ」
雷音丸の攻撃を避けると、次はマナウスに向けて刀を振り下ろすが、やはりそれもあっさりとマナウスに避けられる。
「何?」
「貴様らの強さに免じて教えてやるかの。わしらは地の獄からやってきておるわけだが、わしらはただ単にジャパンに現れる事が多いだけじゃ。別にあの地に住んでいるわけではない」
「では何故、ここに!」
「―――惹かれた、からのぅ。おぉっと、喋りすぎたか?」
常にニヤニヤと笑いながら刀を振るう羅刹。このデビルの言う事がどこまで本当で、どこが嘘かは分からない。
しかし、何にしろこれ以上聞き出せる事はないだろう。そしてマナウスは邪魅の数が大分減ったのを確認すると。
「遊びで命を弄んだお前達に、弄ばれる事の屈辱を教えてやる―――仮初の血と臓物の中で朽ち果てろ!」
避けるばかりだった2人が牙を剥いた。
●思惑
その後は実にあっさりとしたものであった。
本気を出した2人に羅刹が敵うものではなく、追い込まれ、飛行によるその場からの脱出を目論見た。
しかしそれも、復活したアンドリューの放った矢が羅刹を貫き、それがトドメとなり羅刹は消滅した。
「任務完了。矢玉を土産に帰るといい」
「‥‥英国まで来てこの手の輩を目にしてしまうとは‥‥。過去からは逃れられないのか‥‥」
溜め息と共に弱音を吐く蝶鹿。過去に何があったかは知る由が無いが、その憂いは彼女の美しさを際立てるものとなっている。瀞藍がどう声をかけたら有効かと思考しているが、多分気にしなくていい。
「結局、彼のデビル達がこの地に現れた理由はよく分かりませんでしたね」
戦闘後の傷を魔法で癒したアイリスは羅刹達の企みを推測するが‥‥聞けた事から考えると微妙なところだ。
「‥‥惹かれた、ですか」
サリは羅刹達が進もうとした方向に視線を向ける。
その先には小さな村があり、そしてその更に先には―――。