【ゴーレムが眠る地】灼熱の人形
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■ショートシナリオ
担当:刃葉破
対応レベル:11〜lv
難易度:難しい
成功報酬:10 G 86 C
参加人数:8人
サポート参加人数:1人
冒険期間:12月14日〜12月21日
リプレイ公開日:2008年12月24日
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●オープニング
キャメロットのとある酒場‥‥。
1人の男性が酒を飲み干しテーブルに置くと、ふぅとため息を一つ吐く。
「はぁ‥‥どうしたもんかねぇ‥‥」
男の名はジョージ・サカモト。フランク王国出身のファイターだ。
金髪青眼のどこからどう見てもフランク人の彼だが、どこかその雰囲気にはそれとは違うものがある。‥‥ジャパン人のそれだ。
彼のサカモトという名字の通り、先祖の1人にジャパン人がおり、その為なのだろう。
「確かに名を上げるチャンスっちゃあチャンスだがなぁ‥‥」
齢は33。この歳になっても彼はまだ諦めていない夢がある。それは―――侍になることだ。
先祖に憧れての事だろうが、それならば何故ジャパンではなくイギリスに渡ってきたのかなどつっこむべき所がいくつかあるが、そこは彼にも事情があるのだろう。
何はともあれ、彼の夢は主君に仕え侍になることである。
金で雇われる傭兵などとは違い、しっかり仕えるからにはやはり名声があった方が良いと彼は考えていた。名声が無い者を実力がある者と判断する者は殆どいないからだ。
そして、今世界はデビルによる混乱に包まれており、確かにこれは名を上げるチャンスではある‥‥のだが。
「なーんか違うんだよなぁ。勿論やる事はやるけどなぁ‥‥」
デビルを守る為に戦う。
この選択肢はジョージにとって当然のものであった。『当然』すぎたのだ。
弱き者を守るために戦うのは、力ある者として当然の事と考えており、これで手に入れた名声を特別なものと感じる事ができないのだ。
「やっぱ、特別な事をしたっていう証が欲しいよな‥‥」
という結論に至るのであった。
「ここ、よろしいですか?」
「ん‥‥?」
ふと気づくとジョージの目の前の席に1人の人物が座っていた。フードを深く被っており顔を伺う事はできないが、聞こえた声から察するに恐らくは男だろう。
騒がしい周囲の喧騒に紛れてひっそりと座ったのだろう。その静かさといいまるで影みたいな男だな、とジョージは思った。
「あぁ、別に構わないよ」
「ありがとうございます。‥‥‥何やら、悩んでいたようですが、どうしました?」
どうせ誰かに聞かれたところで困る悩みでもなし、せっかくだから聞いてもらった方がすっきりするかもしれない‥‥ジョージはそう思い、先ほどまで考えていた事を目の前の男に話す。
「特別な証‥‥ですか」
「そー。そんなもん、そうそうないだろうけどな」
「‥‥‥そういえば、先程面白い話を聞きまして」
途端、今までで十分静かだった男の声が更に小さくなる。男の声を聞き取るため、ジョージは耳を男の方へと近づける。
「なんでもここから南へずっといったところ‥‥ブライトンという都市の更に南東に行った所にあるピースヘイヴンという場所にて、面白い遺跡があったとか」
「遺跡?」
「えぇ、何やらその遺跡には守護者としてゴーレムがいるとか‥‥しかも普通のゴーレムではない、と。どうです?」
確かにそれが本当なら面白い話ではある。普通じゃないゴーレムが守る遺跡、一体何があるのか。
「あそこにいる一団、彼らがその遺跡に挑んだらしいですから、詳しい話を聞いてみてはどうです?」
と男が指差すはテーブルの1つを陣取っている屈強な男たちだ。ぱっと見るからに体の至る所に傷があるところから相当の激戦だったのだろう。
「成る程‥‥ちょっと聞いてみるか。情報ありがとうな」
「いえいえ」
ジョージは席を立ち、一団のテーブルへと近づいていく。
男は、いつの間にか姿を消していた。
「あ、ピースヘイヴンの遺跡の話?」
「あぁ、良ければ聞かせてもらいたいんだが」
「タダでか?」
「‥‥ったく」
ジョージは懐から財布袋を取り出すと、いくつか硬貨を机の上に広げる。ここでの酒代ぐらいにはなるだろう。
「へへっ、悪いな。んじゃ話してやるよ」
一団のリーダーらしき男が新しい酒を注文してから、思い出すように話しはじめる。
「俺たちはまぁ、遺跡に潜って宝探しやらをする所謂トレジャーハンターなんだがな。ちょいとピースヘイヴンにまだ誰も探ってない遺跡がある噂を耳に挟んだのよ。実際行ってみると現地のやつらも遺跡に興味はないのか、遺跡の事知ってるやつなんて全然いなくて探すのにだいぶ手間取ったぜ。で、噂の遺跡を苦労してようやく見つけたわけよ」
そこまで話したところで注文した酒がテーブルに置かれ、リーダーはそれに手を伸ばす。
「だが、入ってからの方がもっと大変だったな。こんな寒い時期だってのに、遺跡の中はむしろ暖かいくらいだ。それもその筈だ。‥‥何しろ溶岩石で出来たゴーレムがいたんだからな」
「溶岩石、で?」
「おうよ、あえて名づけるならラヴァゴーレム‥‥ってところか? そいつが襲い掛かってきたわけよ。溶岩で出来てるから当然素手で触れば火傷するし、護身用の木の盾はあっさりと燃えるしで散々だったな。すぐに撤退したぜ」
「ラヴァゴーレム‥‥か」
溶岩で出来たゴーレム‥‥まるで聞いた事がないシロモノだ。確かにそれを倒せば‥‥そしてそれが守ってるのを手に入れる事ができれば、とジョージは考える。
「で、その遺跡はどこにあるんだ?」
「タダでか?」
「‥‥またか」
どうやら地図は別料金らしい。
こうしてジョージはラヴァゴーレムが待つ遺跡への地図を手に入れる。
勿論自分1人で行くつもりはない。こういう時に頼れるのは冒険者だと、彼は知っているからだ。
●リプレイ本文
●噂の元
ピースヘイヴン。
ラヴァゴーレムが守護するという遺跡がある土地。その地に向かうは冒険者達だ。
とはいえ全員が全員真っ直ぐその地へ向かっているわけではない。
冒険者のうち何人が別行動を取っていた。情報収集の為である。
そのうちの1人、陰守森写歩朗(eb7208)はピースヘイヴンに関しての資料を図書館で探していた。
だが‥‥。
「特に無い‥‥か。せいぜい漁業で営んでいる事が分かるくらい、か」
驚くほど無かった。
辺鄙な土地柄というのが一番の理由だろう。栄えているわけでもなく、資料に残る限り過去に何か事件が起きたわけでもない。
そんなよくある平和な土地だからだ。
それならそれで何故あんな遺跡が―――そう思考しはじめた時、後ろから声がかかる。
「何かお探しですか?」
この図書館で働く者だろう。森写歩朗はせっかくだから探すのを手伝ってもらおうかと思い、ピースヘイヴンについて話す。
「ピースヘイヴン‥‥? ‥‥あぁ、そういえば」
職員はどこかへ行ったかと思うと、相当の年代物と思われる書物を手に戻ってきた。
「以前にその地に住む者から買い取った書物です。恐らく貴重な物だと思われるので、持ち出しはできませんが」
「いえいえ、十分です」
森写歩朗は職員から書物を受け取り、目を通す‥‥が。
「‥‥読めない」
それは古代の言葉で書かれていた―――。
情報収集のうちもう2人はマナウス・ドラッケン(ea0021)とキット・ファゼータ(ea2307)だ。
彼らは運よく以前遺跡に潜ったという一団に接触する事ができたので、話を聞こうと思ったのだ。
尤も、やはりいくらか支払う事になったようだが。
「どういうルートでその遺跡の情報を手に入れたか、教えてくれるとありがたいのだが」
「あー、情報の元ねぇ」
マナウスの質問に、リーダーの男は腕を組んで一つずつ思い出すように口を開く。
「ある日、俺達はちょいと南の方に用があったんでそっちに寄った時の事なんだがな。そこで女に古代の文献を買いませんかって言われてな。俺達の風貌を見て、そういうのに興味を持つって判ったんじゃねぇかな?」
「女の風貌は?」
「どこにでもいそうな女だったから、よく覚えてねぇな。それに女の話じゃピースヘイヴンじゃ珍しくないらしいぜ、文献を売るのって。住民はそういうのに興味がない、でも変わり者は高値で買い取ってくれる。だったら飯のタネにする‥‥ってな」
「成る程‥‥。じゃああの地方の言い伝えや、何時の時代の遺跡かなどは分かるか?」
「んにゃ、そういう言い伝えは聞いた事は無いな。何時の時代かは‥‥少なくとも相当昔って事ぐらいか。買い取った文献は古代魔法語で書かれてたしな。俺達は生業が生業だから、そういうのが読める奴もいるんでな」
これ以上情報の出所に関して聞ける事は無いだろう。そう判断して、次に質問するのはキットだ。
「以前遺跡に入ったっていうなら遺跡の詳しい構造が知りたいんだが。あとはせっかくだから文献とやらも」
「あー、遺跡の構造ならマッピングしたものを売ってやってもいいが‥‥文献はなぁ」
困ったように頭をぽりぽりと掻くリーダー。
「俺達にゃ突破できない遺跡と分かった時点で売り払っちまった」
「おいおい‥‥」
リーダーの話を聞くに、その文献の足取りを追おうと思えばまた相当の手間をかける必要があるだろう。だが今はそのような事をしている暇は無い。
仕方なく2人は遺跡の地図を入手するだけに留めておいた。
●ピースヘイヴン
他の冒険者達は依頼人であるジョージ・サカモトとの合流を果たしていた。後は3人の合流を待つだけである。
「依頼人のジョージだ。よろしく頼むぜ」
「志士のアイシャ・オルテンシアです。こちらこそよろしく御願いしますね。遺跡探索ですか‥‥遺跡には浪漫がいっぱいですよね」
「お、分かってるじゃねぇか」
遺跡への見果てぬ浪漫を求めるという点で意気投合するアイシャ・オルテンシア(ec2418)とジョージ。
とはいえ、遺跡に眠るは浪漫だけではない‥‥と危惧する者もいた。閃我絶狼(ea3991)だ。
「そもそも何のためにゴーレムなんか居るんだか? ‥‥ヤバイ物とか封印されてねえだろな?」
調査しないのは不味いと告げる勘に従って、ジョージにゴーレム討伐後の探索許可を求める絶狼。勿論ジョージとしては断る意味は無い。
「何も見つからなかったら、それはそれでちょいと困るからな」
「見つかるとしたら、何があるのでしょうか‥‥」
話に聞く遺跡がある方向へと視線を向けるベアータ・レジーネス(eb1422)。
「とんでもないものがあるとしたら、それを狙う輩がいるかもしれないね」
と言うはライル・フォレスト(ea9027)。一応、この地に来るまでに不審者が現れたかどうかの聞き込みをしていた彼。
その結果としては、遺跡の調査と称する者が何人かこの地に訪れた事が分かった事ぐらいだ。事前に話に聞いたトレジャーハンターの一団の事だろうと推測する。
さて、何が眠るのだろうか‥‥そう各々が思考をしている所に情報収集をしていた3人が合流する。
3人の手に入れた情報を統合してから、冒険者達とジョージは遺跡へと向かう。
そんな遺跡に向かう道すがら、室川太一郎(eb2304)がジョージへと話しかける。
「サカモトさんは侍になりたいのですか?」
「ん、あぁ、子供の頃からの夢でな」
「俺は教師になりたくて浪人になりましたが‥‥武士としての心得なら基本的なことは分かります」
ほぅ、と今まで耳だけを傾けていたジョージはその顔を太一郎へと向ける。
「『義』はフェアプレイの精神‥‥たとえ敵だとしても困っている人がいたら助太刀するという意味。真の武士とは卑怯な手段は使用しないのです。『勇』‥‥危険を冒してまで討ち死にするは『匹夫の勇』と呼び悪い意味で言います。本当の勇とは天寿を全うし最後まで生き抜くこと。だからこそサカモトさんには本当の意味での『義と勇』を忘れないでいただきたいと思っています」
「成る程‥‥。義と勇、か」
ジョージは己の持つ日本刀へと視線を注ぐ。
―――と。
「あれか‥‥」
言ったのは誰だろうか。その言葉に従い、視線を向けると、石造りの建物のような何かが見えた。
●遺跡探索
遺跡はまるで祭壇か何かを模したようなものであり、その中央部に四角い穴が開いていた。
穴を覗き込めば、地下に行くためだろう階段が見える。内部に入る為にはこれを降りる必要があるだろう。
冒険者達は細心の注意を払いながら、階段を降りていく。
階段を降りきった冒険者達は明かりをつけ、事前に手に入れた地図を頼りに通路を進んでいく。罠などを警戒しながら慎重に、だ。
「‥‥今のところ、特に何か動きなどは無いようですが」
と、定期的にベアータがバイブレーションセンサーのスクロールを広げ、何か振動が無いかを調べるが、特に冒険者達以外の反応は無いようだ。
かり、と軽く爪で擦るように壁に触れるマナウス。相当な年代物の筈だが、その手触りはそれを感じさせない。風に晒される事が無いからか、何らかの魔力が付与されてるからか。その判断は難しいところだが。
「しかし‥‥溶岩が近くにあるような地形とは思えんが」
壁から離れ、呟くマナウス。遺跡に入る前に周囲を軽く見てみたが、溶岩があるようには見えなかった。
「もしかしたらゴーレムが作られた当時と地形が違うのかもしれないね。何か地震でも起きて変わったとか」
「さすがにそれは地層を調べなきゃ分からんだろうし、調べる余裕も無さそうだな」
相当に古い遺跡だという話から推測するライル。だが絶狼の言う通り、そこまで調べる余裕は無い。
「そろそろですね」
地図を見ながら前衛を勤めていたアイシャが言う。地図の通りならば、目の前の通路を真っ直ぐ行けばラヴァゴーレムがいる大広間に出る筈だ。
「それでは‥‥」
ベアータがレジストファイヤーのスクロールを広げ、冒険者達に順次魔法を付与していく。通常の炎に対する完全な耐性を得る魔法だ。
これにより、ラヴァゴーレムの熱さも凌げるだろう。
それに加えキットやライルは冰玉散を飲み、また各自防具を水で濡らす。まさに完璧な炎対策だ。
全員の準備が出来たのを見ると、冒険者達は大広間へと足を進める。
進みながらマナウスはぽつりと呟く。
「わざわざ特殊な岩まで作ったゴーレム、ね。そこまでして守りたかったものは‥‥何なんだろうな」
●灼熱・氷結
果たして、ラヴァゴーレムはそこにいた。
赤黒い岩のような何かで作られた歪な人型をしたゴーレム。通常のゴーレムよりやや大きめだろうか。
遠目から見ても、その体が高熱を発している事が分かるような赤がその体の所々から見えている。
そんなゴーレムが大広間の冒険者達が入ってきた通路の反対側の壁‥‥そこにある通路の行く手を阻むように立っていた。
「来る‥‥!」
ラヴァゴーレムが冒険者達を認識したのだろう。最初の一歩はゆっくりと‥‥そして次第に足を早め近づいてくる!
後衛を守るように前衛が立ちふさがる陣形を取る冒険者達。
「うわー、近くにいるだけで熱いよ、やっぱ火‥‥いや溶岩吐いたりするんだろうか?」
絶狼の言う通り、近づくたびに熱気が増す。
そして最初の一撃を加えるのは―――!
「氷の棺にて眠れ――アイスコフィン!」
ベアータがアイスコフィンの魔法を完成させる。その次の瞬間、一瞬ゴーレムが動きを止めたかと思うと、ゴーレムは全身を氷によって包まれる!
「おぉ‥‥一発で決まるもんなんだな」
氷で固められまったく動きが取れなくなったラヴァゴーレムを前に感嘆の声を上げるジョージ。
「いえ、ゴーレムは魔法で動いてるからか、魔法への抵抗力も比較的高い方ですからこういうのは珍しいんですが‥‥。もしかしたら水の精霊魔法には特別弱い、とかあるのかもしれませんね」
ゴーレムの調査を第一に考えていた森写歩朗の推測。どれだけ正しいかは分からないが、信用に足る気もする。
そう話している間にベアータは更にフリーズフィールドのスクロールを広げ、ゴーレムが凍っている空間の気温を下げる。氷が溶ける速度を遅くする為だ。
「まぁ、アイスコフィンが効くならありがたい。今のうちにここに何人か置いて奥の調査と行きますか」
絶狼の言葉に従い、ジョージを初めとした数人が奥へと向かう。
それから二時間は経っただろうか。
奥からジョージ達が戻ってくると、その目に入ったのは―――。
「まだ凍ってるのか、それ」
「えぇ」
先程凍った時と寸分違わず同じポーズで固まっていたラヴァゴーレムの姿があった。
ちなみに、アイスコフィンは周囲の環境で氷の溶ける速度が変わるが、凍らせてる物体の温度自体でそれが変わる事は無い。フリーズフィールドで気温を下げた事もあり、まだ溶けるには少々時間を必要としそうだ。
「何か見つかりましたか?」
「色々とな。ま、それはこいつを倒してから話すってことで」
ラヴァゴーレムが再び動き出したのはそれから結構な時間が経ってからの事であった。
●今度こそ戦闘
ラヴァゴーレム、その戦闘力自体は侮れないものであった。
ゴーレムの名に相応しきその堅牢さ。その拳による攻撃は素早く、並の戦士では避ける事も難しいものだろう。
だが、冒険者達の多くは並の戦士ではなかった。
「ふん、避けられない攻撃じゃあ無いな‥‥!」
キットは振るわれた拳を避けると、手に持つ剣で足を狙うように振るう。頭などを狙うのは高さの関係で少々厳しいだろう。
ラヴァゴーレムは特に避ける素振りを見せずに足に当たる‥‥が、その剣は傷一つつける事なく弾かれる。
「やっぱり剣じゃ傷をつけるのも難しいって事かな!?」
ダメージを与える事はできなかったが、隙を作る事はできた‥‥とライルが懐に潜り込み、ハンマーを振るう!
バキッ!
少々表面が欠けただけ、だろうか。
「じゃあ武器の重さを活かし、更に壊す事主体のこの攻撃なら‥‥どうだ!」
ゴーレムから少々離れた所から、レミエラを発動させラージハンマーから衝撃波を飛ばす絶狼。その一撃は武器の重さを威力に加え、かつ破壊を主軸に置いたもの――!
果たしてその一撃は、ラヴァゴーレムの胸部を深く抉る!
それを見て冒険者達は動く。各自ゴーレムの気を引く為に動き、隙あらばそこに一撃を叩き込む!
「これで―――はぁっ!」
そして太一郎の攻撃もまた、ゴーレムにヒビを刻むぐらいは出来る。
「てぇい!」
隙を作るように‥‥と、アイシャがゴーレムに足につるはしによる一撃を叩き込む‥‥が、攻撃する為に作られたものではないからか、やはりダメージは殆ど無い。
しかし、ラヴァゴーレムの気を引いたのか、アイシャに向けて灼熱の拳が振るわれる!
「くぅっ!?」
避ける事ができずに直撃を貰ってしまうアイシャ。そのダメージは決して軽いものではない‥‥がどうやら装備は大丈夫なようだ。
ラヴァゴーレムの氷が溶ける前に再び炎対策をしたのがよかったのだろう。
その直後に、胸部に穿たれた傷に2本の矢が飛来し、さらに傷を広げる! マナウスが放った矢だ!
「ドドメを!!」
「うぉぉぉ!!!」
それぞれが援護の攻撃をいれながら、バーストアタックが出来る者が次々と破壊の一撃を叩き込む!
そしてジョージが最後の一撃を入れた時、ラヴァゴーレムは力なく倒れていった。
「長い間、お疲れ様。後はゆっくりお休み、ゴーレム」
●守られていたもの
「‥‥っとまだ熱を持ってるが持てないぐらいじゃないか」
キットは崩れ落ちたラヴァゴーレムの欠片を1つ手にとる。
倒されたからか、特に魔力などは通ってないように見える‥‥このままではただの石ころ同然になるだろう。
とはいっても記念品として考えれば別か。
そして再び冒険者達は大広間の通路の奥の部屋に行き、見つけたものを再確認する。
「っつうわけで、奥にあったのはこんなもんなんだが」
ジョージが広げたのは古めかしい紙と、何か金属で作られた手のひら大の大きさのメダルらしきものだ。
「この紙、相当の年代物にも関わらずこうして現存している事を考えるとやはり何か魔力が‥‥?」
「かもな」
ライルの言葉に、頷くジョージ。
「こっちのメダルは‥‥ゴーレムに使うものとはまた少し違うように見えますが。その紙には何と?」
メダルを手に取り、興味津々に観察してからジョージに問う森写歩朗。
「昔の言葉で書かれてるせいで俺には読めんな。地図っぽいものが描いてあるように見えるが」
それに書かれた古代魔法語を解読できるものは、今この場にいない。
結局、ラヴァゴーレムが守っていたものが何かは分からなかった。
しかし、それが近いうちに分かる時が来るのかもしれない。