【バレンタイン】嫉妬の魔王
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■ショートシナリオ
担当:刃葉破
対応レベル:1〜5lv
難易度:普通
成功報酬:1 G 35 C
参加人数:7人
サポート参加人数:6人
冒険期間:02月18日〜02月23日
リプレイ公開日:2009年02月26日
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●オープニング
バレンタインデー。
それは司教である聖バレンタインが、愛の力で奇跡を起こし、後に聖人と列せられた日である。
起源はともかく、どんな日か簡単に言ってしまえば、愛の日。ラブの日。そういう日だ。
この日には多くの村々が、隣人愛に基づいて楽しもうとお祭りのような事を行っていた。
そう、楽しもうという日なのだ。
―――だが、それも奴らの手にかかれば阿鼻叫喚の祭になってしまう。
そう、それは昨年の事であった。
とある村ではバレンタインデーに例年通りの祭が開かれていた。
バレンタインデーの風習といえば、バレンタインカード、贈り物の交換、バレンタインパートナー、恋占いなどが主だろうか。
『理想のバレンタインカード』
「サム‥‥っと。うん、今年こそはサムとの関係を進めるんだから‥‥!」
木の板などに意中の相手の名前を書き、大切に保管するのがバレンタインカードだ。
『その村の現実のバレンタインカード』
「あっはぁん♪ あなたに私の名前を書いてわげるわぁん!」
「ちょっ、んな!?」
村の男性を押し倒すマッシブなボディを持つ男性。服を無理矢理脱がしたかと思えば、筆で押し倒された男性の胸板にはっきりと自分の名前を書く。風習以前にそれはまずカードではない。
『理想の贈り物の交換』
「これ‥‥私がよくつけてる髪飾り、大事にしてよね?」
「勿論だ。お前も俺の腕輪無くすなよ」
それぞれの贈り物を交換する恋人達。
この風習は恋人達が手作りのお菓子などの食べ物や、袖や髪飾りのようなよく身に着けてるものを交換するというものだ。
これに関しては恋人を持たない者達が嫉妬の視線をぶつける事も多い風習だが、それはそれ。
『その村の現実の贈り物の交換』
「ふふ‥‥あなたへのプレゼントはわ・た・し☆」
「いらねぇぇぇぇ!!!?」
やはり筋骨隆々な男性が、リボンのような何かで全裸の体を包み、その状態で男性を押し倒す。
交換してない。いや、自分を渡して相手を貰うつもりなのだろうか。
『理想のバレンタインパートナー』
「今年のパートナーは‥‥あ、貴方なの!?」
「げ、お前かよ‥‥ったく、しょうがねぇな」
そう、渋々と‥‥あくまでも渋々と手を女性に差し出す男性。その手をやはり渋々と握る女性。
お互いそれぞれの顔を見ずにそっぽを向いているが、真っ赤になった顔の表情は不満のものではない。
素直になれないだけなのだろう。ニヤニヤしながら見守るのが通というものだ。
くじやゲームでパートナーを選び、祭のゲームや催し物にはこのパートナーで参加するのが常だ。
また、このパートナーは老若男女関係なく、本当の恋人ではなくとも構わない。‥‥とはいえ、1年の間パートナーと仲良くするといい事があるという言い伝えもあって、パートナーが恋人になることはよくあるとかないとか。
『その村の現実のバレンタインパートナー』
「それじゃあ、あなたのパートナーは私ぃ!」
「お前が勝手に決めんなぁぁ!!?」
以下略。
「と、いうわけでその村は昨年のバレンタインの祭では変態達に襲撃されて大変だったのです」
キャメロットギルド。その受付と話をするは、変態退治依頼をよく持ち込むコレットだ。
「で、えぇーっと‥‥今年も現れるだろうからそれを退治してほしい、と?」
「そういう事です。‥‥それに、嫌な噂があります」
「嫌な、噂?」
これだけでも嫌な話だというのに、これ以上嫌な噂があるのだろうかと受付係の青年の顔が青ざめる。
「えぇ‥‥。最近、『嫉妬の魔王』と名乗るやはりアレな感じの変態が暴れまわっているとか。そんな嫉妬の魔王がその村のバレンタインの祭を狙っているとか‥‥」
「うわぁ‥‥」
集まるところに集まるのだろう。
「つまり、昨年も現れた変態達に加えてその嫉妬の魔王も退治しろ、と」
「そういう事です」
はぁーと溜め息をつきながら、嫌々ながらも依頼を受理する受付係の青年。
別に彼自身が依頼に赴くわけではないのだが、そんな依頼を扱う事自体が何となく嫌なのだろう。
「‥‥それにしても」
「はい?」
ふと、受付係は何かに気づいた風に。
「コレットさん、以前に比べて変わりましたね」
「‥‥いやまぁ、正体バレちゃいましたし。どうせだからノリというかキャラは統一しておこうかと‥‥」
今のコレットと以前のコレット。どちらが素に近いかは‥‥今は置いておこう。
さて、コレットが去り、受付係がそれを見送った直後‥‥1人の女性が受付係に話しかける。
彼女の名は森里霧子(ea2889)。冒険者である。
「えぇっと、今変態退治の依頼がきたと思うんだけどさ‥‥」
「? 確かに受理しましたが‥‥」
そういえば、と受付係は考えを巡らせる。この女性は変態退治の依頼によく入る人だったな、と。
「あぁ、受けるんですか?」
「ん、まぁ、受ける‥‥んだけどさ。追加で私からも依頼、いいかな?」
「はい?」
「―――魔王の所持品がさ、先日私がどっかに落としたブツっぽいんだよね」
さて、話題に上がった『嫉妬の魔王』。彼がどんな姿をしているか。
基本は全裸。体躯にリボンの如く褌をまきつけているらしい。
大事な所――明言はしない――は純潔の花でしっかりガード。‥‥純潔?
そして指に光るは嫉妬の指輪。‥‥なんだかとんでもないものを着けている気がするのだが。
「‥‥え、その、褌と花と指輪をあなたが落とした、と?」
「うん、そういう事。多分、指輪がやばそうだし‥‥方々に知れ渡る前に証拠隠滅しておきたいかなぁ、と」
実際、嫉妬の指輪の影響でそのような凶行に走ったかは定かではないが‥‥彼女としては自分が責任を被る可能性はできるだけ排除したいのだろう。
「ということで、細かい事は追求せずに協力頼むようお願いするわ」
●リプレイ本文
●戻れない道
とある村―――そう昨年のバレンタイン、変態達に襲われたという村だ。
その村に集まるは、変態退治の勇者達だ。
「愛の日に嫉妬の魔王だなんて、デビルの仕業でしょうか。力及ぶかはわかりませんけれど、私も討伐に参加させて頂きます!」
ぐっと可愛く気合を入れるのはヒルケイプ・リーツ(ec1007)だ。
ところでその手に持っている本は何だろう。禁断の愛の書と書かれているように見えるのは気のせいだろうか。そして男性を見る目が期待の眼差しに見えるのも気のせいだろうか。
その期待の眼差しを一身に受けているのは宿奈芳純(eb5475)だ。視線を背中で受け止めつつ、気にしないように努めているがやはり冷や汗は止まらない。
「嫉妬の魔王‥‥ですか。本物が聞いたらどこぞの国で暴れたりしませんかね?」
デビルが魔王が1。嫉妬の魔王。その名を借りて暴れているは単なる変態‥‥確かにデビルが怒り狂ってもおかしくは無い気がする。
「本物はともかくして。よくもまあ、風紀の欠片も無い連中が集まったもんで‥‥」
言いながらこめかみを押さえるキース・レイヴン(ea9633)。
そして集まる要因の1つである嫉妬の魔王を生み出した張本人をちらと見る。
「‥‥しかし、また趣味の悪い奴に拾われたものだな」
「塩気は砂糖じゃ中和できない‥‥うん。出来心‥‥好奇心の発露ってやつが原因だったんだ。溢れる嫉妬心を褌と花で緩和できるかな〜って。怖いね、未知の反応。恐ろしいね、変態。まさか‥‥ダメだこりゃ‥‥って脱いだブツ放置のせいで魔王生誕だなんて!」
「お前そんな事試してたのか!?」
森里霧子(ea2889)‥‥彼女のちょっとしたお茶目なドジがこんな事態を招いたかもしれない。とはいえ、彼女を責めるのは酷というものだろう。変態は素質があるからなるのであって、どうせ放っておいても暴れただろうからだ。
「それにしても‥‥他の囮連中はどうした?」
と周囲を見るキース。
彼女の記憶が正しければ、囮――男性――があと2人はいたはずなのだが。
「色々と準備してるんじゃないの?」
霧子がそう言うのは、彼女も準備した組だからだろうか。
そしてキースの先の発言を聞き、芳純がどこか遠い目をしながら口を開く。
「この手の依頼は‥‥男子はやはり囮専門ですか。無意味な質問ですが」
「頑張ってくださいね☆」
それに返ってきたヒルケイプの言葉は‥‥‥うん。
「‥‥無意味ついでに。手遅れになる前に助けに来て下さいね、女性陣の皆様」
「頑張ってくださいね☆」
うん、頑張れ。
●伝統と実績の漢達
さて、村の広場にてこれからバレンタインのイベントが始まろうかという時。
広場にいる冒険者は芳純1人であった。所謂囮である。
芳純は先程から嫌な予感を振り払うように懸命に何かを占っているようだが‥‥その結果は常に同じ。
そう、『嫌でも会える』というもの。
何と会うかは言わずとも分かるだろう。
「いえーす! 今年もまたバレンタインがやってきたわよーん!!」
はい、来ました。
声がした方向を見てみれば、そこに居たのは筋骨隆々の男達。
全裸にフンドーシをリボンのように体に巻きつけ、更にハートマークのボディペイント。そこかしこにLOVEだの書かれてる辺り、バレンタインを満喫する気満々のようだ。何か間違ってるが。
「アイ! ラブ! ユー! 愛! 裸武! 雄!」
アイラブユー、とひたすら呪詛のごとき――本来の意味とは正に真逆であるが――言葉を吐きつつ闊歩する多くの変態達。
その姿を見て、善良な一般村民は一目散に逃げ出していく。勿論それが正しい判断だ。
‥‥しかし、それでも男には立ち向かわなくてはいけない時があるのだ!
「くぅ、待ってましたよ! 会いたいとは欠片も思ってませんでしたが!!」
そう言いながら変態の前に立つ勇気ある芳純!
「きゃーん! そんなに私達とラヴラヴしたかったのね!?」
「会いたくないって言ったでしょうが!!」
変態達を誘い込む為に――そして本気で逃げ出すために、芳純は背を向けて走り出す!
勿論変態達は追いかける!
「ひぃぃ!!?」
「待ってぇん、あなたぁ♪」
どこかこの追いかけっこを楽しんでいるような余裕すら見せつつ追いかける変態達。芳純は本能で理解していた‥‥捕まったらヤラれる、と。
逃げに逃げて、ついには壁を背に追い詰められた芳純!
「んふぅん。今日のこの日をずっと前から、指折り数えて待ってたんだから♪」
――ソレハ、私ヲ亡キモノニデキル日ヲ楽シミニ待ッテイタ、トイウコトデスカ―――。
もはや芳純に逃げ道は無く‥‥このまま悲惨な結末を迎える、かと思われたその時であった。
「はーっはっはっはっは! もう一つ加えてはははのは!」
別に夜空の星が瞬いてるわけでもなく、悪ってわけでもないが、謎の笑いがこだまする!
笑いの主は芳純が背を向けている建物の屋根に立っていた。
「平和な村を己の欲望を満たす為に陵辱しつくす外道ども! 天と地と変態が許してもこのうさ褌鬼面が許さん!」
「な、なに!? うさふんきめん!?」
そこに立っていたのはまるごとウサギさんを着込み、その上に鬼の面と褌を装着した正義(?)の使者、うさ褌鬼面だった! その正体は閃我絶狼(ea3991)だというのはここだけの秘密だ!
「腰に巻くべき褌をそのように使いおって‥‥許せん!!」
そんな理由で怒るのか、うさ褌鬼面。
「くっ、言ってくれちゃって‥‥!」
「でも待って!! ―――イイ男の気がするわよ!?」
さすがというべきか。着ぐるみの上からでも中の人がどのような人物かを察する事ができるようであった。
「ふふ、いいわよ‥‥! ヤリあおうじゃない‥‥!!」
「望むところ! だが戦りはするが、ヤりはせんぞ!! いくぞ、マスクド絶ったん‥‥返事はどうした?」
うさ褌鬼面は自分の傍らに控えるマスカレードをつけた狼‥‥マスクド絶ったんこと絶っ太に話しかけるが、絶ったんはあふぅと欠伸を返すばかり。あまりやる気は無いようだ。
「うふっふふん。あなたの相棒はやる気が無いようだけど、あなた1人で私達に敵うのかしらん?」
芳純は最初から戦力外扱いなのか。間違っちゃいないが。
「ふっ‥‥1人ではない!」
そううさ褌鬼面が視線を向けた先――ぶっちゃけ視線なんて殆ど分からないのだが――には大きなプレゼントの箱のようなものが地面に置かれていた。
「こ、これは‥‥いつの間に!?」
「ふっふっふっふ、ふふふのふ‥‥」
変態達の注目が箱に集まると同時に、その中から漏れる笑い声!
「龍たんのコーディネートをマネするだけじゃなくて、神聖なるラヴ・イベントのジャマまでッ‥‥! ‥‥変態さんモドキには徹底的なお仕置きが必要みたいだネ」
ぱかーんと、箱が‥‥割れた!
その中から出てきたのは龍一歩々夢風(eb5296)! フンドーシを愛す、フンドーシ界のファッションリーダー的存在! ――――すいません、適当書きました。
ともかく、外套に身を包んだ彼が手をばさりと勢いよく天に掲げると、その手にあるのは褌! 手を上げた時の勢いで外套がめくれたが、中に何も着てなかったように見えるのは気のせいだという事にしておきたい!
「バレンタイーン、プレゼーント!」
龍一が褌を‥‥ばらまく! 褌の数やなんと53種類! なんというコレクションだ!
そしてその場に集まっていた変態たちは‥‥フンドーシに目が無かった。
「キャアー! す、すごいわぁ!!」
今、漢達は宙に舞うフンドーシしか目に入っていなかった。
勿論そんな隙を逃す2人ではない。
「貴様等に真の漢の証たるフンドーシを身に纏う資格は無い、うさ褌グラビティ! 更にうさ褌破断!」
うさ褌鬼面がローリンググラビティーで褌を更に宙に舞わせ、変態達の気が中空へ逸れた所に近づき‥‥永遠愛という名の小太刀を振るう! どこをどのように狙ったか? バーストアタックとポイントアタックを組み合わせたということで察してほしい!
「今日の龍たんは攻めモードッ! 変態さんモドキがこの鍛え上げられた伝家の宝刀の威力に耐えられるカナ?」
龍一はというと、彼が抜いた剣はエロスカリバー! 剣を抜くと同時に外套がばさりとどこかに飛んでいく。大丈夫、誰かがしっかりキャッチした。
容赦なく、スマッシュ! スマッシュ! ところであくまでも変態モドキで通すのだろうか、変態ではなく。
こうして2人の活躍により、多くの変態達がなぎ倒されていく‥‥!
「おぉ、これなら‥‥!」
自分も助かるのではないか‥‥芳純がそう思った、その時!
「アッー!」
芳純の希望は、容易くも砕け散った。
●魔王降臨
「妬ましい‥‥妬ましいわ‥‥。私だけ除け者にしてこんなに楽しそうにして‥‥」
何をどう食らったのか分からないが、芳純が崩れ落ちると、その後ろには‥‥半端ではないオーラを纏った全裸の漢がいた。
壁を背にしていた芳純の背後にいつの間にか回りこんでいる技術といい、生半可な力の持ち主ではない事が分かる‥‥そう、嫉妬の魔王だ!
「妬ましい、妬ましいわ‥‥! 私だってイチャイチャしたいのに‥‥!」
「貴様が魔王‥‥そうか、貴様もフンドーシを腰に巻くという最低限のマナーも守れぬド外道か」
一歩一歩確実に近づいてくる嫉妬の魔王。話に聞いた通り、フンドーシを全身に巻いていた。
その姿を見たうさ褌鬼面は、義憤に燃え‥‥刃を向ける!
うさ褌鬼面が嫉妬の魔王に近づき、刃をぶつけようとした次の瞬間‥‥!
「な!?」
吹っ飛んでいたのは――うさ褌鬼面であった。着ぐるみの股間部分がやけに凹んでいるのように見えるのは気のせいか。
「妬ましい、妬ましいわ‥‥! そしてそこのあなたも妬ましい‥‥!」
そう、嫉妬の魔王が目をつけたのは龍一であった。
「ふ、ふふ‥‥」
しかし、これは龍一の計算通りであった。
「今、キミは嫉妬しているッ! 龍たんのフンドーシ・コレクションに、そしてこのエロスカリバーに! 図星デショ? ‥‥貸してあげてもいいヨ?」
「ほ、本当!?」
なんと、龍一は素直にエロスカリバーを嫉妬の魔王に渡してしまったのだ!
だが、これも計算のうち。嫉妬の魔王が脱衣衝動で脱いでる隙に攻撃してしまえば‥‥とそう計算していたのだ。
「こ、これがエロスカリバー!!」
だが、次の瞬間。嫉妬の魔王の股間につけられていた純潔の花は風に吹かれて飛んでいき、全身に巻かれたフォビドゥン・フンドーシはこれもまた風に吹かれて、首の辺りにマフラーのように巻かれてしまった。これなら全裸と同じようなものだろう。
あ、ちなみに純潔の花は倒れた芳純の上に乗りました。
「えぇー!? まさか偶然吹く風すら味方につけるとは‥‥これが魔王の力なの!?」
「いえす! 私こそ嫉妬の魔王よん!!」
ずばばばーん。
龍一も嫉妬の魔王の毒牙にかかり、倒れてしまった! 生き残っていた変態たちも起き上がり、倒れた男達へと手を伸ばし始める。
もはや、ここまでなのか!?
●そういえば女性陣はどうした
「男性陣が倒されもはやここまで、そう思っていた時期が私にもありました」
その声と共に、戦場に吹く風。そう‥‥霧子だ。
「それじゃ、しっかり楽しんだ事だし退治といきましょうか」
言って右手に持つ縄を引っ張る霧子‥‥すると、どこからか網が飛んできて、それが変態達を捕らえる! 事前に仕掛けていた罠だ。
「って、ちょっと待て霧子! 俺も一緒なんだが!?」
「頑張れうさ褌鬼面。捕まってもイチャイチャしていたという様子は伝え広めておこう」
「やめろよマジで!?」
そして更に変態達に向けて石が相当なスピードで飛来していく。
「これを木の棒で撃ち返せたら、無茶キングの称号が与えられるそうなので頑張ってくださいね?」
ヒルケイプが事前に仕掛けた巨大スリングを使い、ペットのリッキーの力を借りて発射しているのだ。ところで無茶キングってなんだ。
「まったく、こんな奴らちゃっちゃっと片付けちまえばいいものを‥‥せぃや!」
更に更にキースが素手による格闘で変態達を沈めていく。加減無しで顔面やら鳩尾やら急所狙いだ。
「はン、悪人にかける情けは無いからな」
仰るとおり。
ついでに龍一も石やら拳やらの犠牲になっている気がする。そういえば出発直後に、龍一の友人が
「龍一の奴もフルボッコにして北海に沈めちまう位しても全然問題無えと思うんだよなぁ‥‥ぶっちゃけ同類だろ?」
と洩らしていた。それと関係あるかもしれない。
何はともあれ、女性陣の活躍により、所謂雑魚達は一掃され、残るは嫉妬の魔王だけとなっていた。
「妬ましい‥‥こんなに頼れる仲間がいるだなんて妬ましいわ‥‥!!」
「‥‥頼れる仲間、なぁ」
襲われてる男性陣を助けようと動こうとしたキースを、『ギリギリまで待とう』と引き止めた2人の女性が頼れる仲間なのか‥‥そう思いはしたが、あえて口には出さないのであった。
「でも‥‥私は負けないわ!!」
とはいえ。
霧子が分身やらで翻弄し、ヒルケイプの投石攻撃、それに加えてキースの徒手空拳による攻撃であっという間に魔王は追い詰められたのであった。何故女性陣にはこのように弱いのだろうか。それはきっと色々な理由が複雑に絡み合った結果なのだろう。
そして倒れた魔王を踏みつけながら、キースがドスを利かせる。
「‥‥‥てめえの勝手な都合で人様に多大な迷惑掛けたんだ、何か言う事はないのか」
「‥‥妬ましいわ!!」
本当に海に沈めてやろうか、キースがそう思った時であった。
「俺に任せてくれ」
キースの肩に手を置いたのはうさ褌鬼面であった。どうにかして罠から脱出したのだろう。
あちこちが破れて素肌が見えていたりするが、些細な事だ。きっと。
うさ褌鬼面は左手のガントレットに赤い愛の石を握りこむと‥‥。
「他人を祝福出来ぬ者に愛を得る事など出来ぬ、猛省喚起! うさ褌セイントバ〜〜ン!!」
愛と、怒りと、悲しみがこもったパンチであった。
「がふぅ!?」
更に様々な攻撃の余波を食らってボロボロになった龍一も嫉妬の魔王に近づくと。
「今日の龍たんは攻めモードッ! 変態さんモドキがこの鍛え上げられた漢のエクs」
以下略。
ともかく、龍一が近くに設営されたテントの中へと嫉妬の魔王を連れていった。
中で何が行われたかなんて気にしないでいい。戦いが終わった、これだけで十分じゃないか!
テントの中から出てきた龍一が妙にツヤツヤしてたり、その指に愛の証の如く指輪が填められてたりしてても気にしない事にしよう!
「嫉妬の魔王は倒されました。けれど、七つの罪はまだ六つあります。きっとまた、新たな魔王が現れるでしょう。ですが、私達は負けません!」
ヒルケイプよ、綺麗に纏めようと言っているが、そんなので纏められても普通は困る。