【ラーンス決着】決意を胸に
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■ショートシナリオ
担当:刃葉破
対応レベル:11〜lv
難易度:難しい
成功報酬:10 G 85 C
参加人数:8人
サポート参加人数:-人
冒険期間:11月15日〜11月20日
リプレイ公開日:2009年11月25日
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●オープニング
私には何も無い―――
●決着の時
その日届いた手紙は、王宮を震撼させるに足るものであった。
運んできたのはただの行商人。宛先はアーサー・ペンドラゴン。
そして差出人は―――
「――ラーンス・ロット」
エクスカリバー奪取事件に始まり様々な事件を経て、イギリス王国最強の騎士は今や追われる身となっていた。
その彼からの手紙である。
行商人の話によると、旅人らしき男が商いをしている自分に話しかけ、保存食を買った代金を渡すと同時にこの手紙を渡してきたとのこと。
言葉はなく、しかしその手に握られたのは金貨。よって行商人は手紙に書かれた宛先へと持ってきたのだった。
(「‥‥監視されているのを恐れている、か?」)
行商人の言葉通りなら手紙を渡した男――ラーンスは、誰にも知られないよう手紙を届けてほしかったのだろう。
そこまでしてラーンスが届けたい内容とは‥‥アーサーは、意を決して手紙を広げる。
ある森の中。日は既に落ちて、月明かりも入らないその森を支配するは夜の闇。
しかし、闇も獣も恐れていないような佇まいで、男は目の前の焚き火を眺めていた。
「―――わざわざ姿を表すとは、どういう風の吹き回しだ?」
言葉を発するはラーンス。
そして、いつの間にかラーンスと焚き火を向かい合うような形で倒木に腰掛けている男がいた。
ぱっと見には猟師のように見えるが‥‥実際そうでない事は問うまでもないことだろう。
「チャンス、なのでねぇ」
「お前を斬る、か?」
すらりと抜いた剣を猟師の首に当てるラーンス。だが猟師は表情一つ変えない。
「王妃がどうなってもぉ?」
「‥‥‥ッ」
ラーンスが敬愛し、そして忠誠を誓った王の愛する人――グィネヴィア。
アスタロトにより誘拐された今、彼女の命を握っているのはデビル側だ。
「そう、いい子だねぇ。王妃が大事ならばどうすればいいか‥‥分かるよねぇ?」
『――そしてデビルは、王妃の命を盾にある事を私に要求した。
それは、王宮の襲撃。
デビルの話によると、円卓の騎士の離脱といいバロールの復活の騒ぎといい、今が絶好の機会らしい。
狙いは王の命。最悪でも円卓の騎士クラスの重要人物の命。
なら何故以前襲撃した時に狙わなかったのかと問うてみたものの、さすがにそれには答えなかった。
‥‥潮時、なのだろう。
自分の過ちから重大な事件を引き起こし、それが更に多くの悲劇を生み出した。
私はそれが許せぬとして、自分の力で何かを掴む‥‥そう思っていた。
だが結局、その自己満足の行動の結果はこれだ。
最早、私1人でできる事は‥‥無い。
王妃の命を盾に取られている以上、私はデビルの言葉に従う他は無い。
デビルもそれを分かっているようで、襲撃の際は私に力を貸すという。監視のついでだろうが。
‥‥そう、私はイギリス王国に剣を向ける。
それは変えようのない事実だ。
しかし、襲撃予定日時と予定ルートをここに記す。理由は語るまでもないことだろう。
王よ、騎士よ、イギリス王国を守る戦士達よ。
全身全霊を持って、イギリス王国に仇名す悪を――討ち滅ぼしてほしい』
●持たざる者
「は、は、は、は―――」
「っくしゅん」
「何で俺がしようとしたくしゃみをお前がするんだよへっくしょん!!」
「何その理不尽な怒られ方!?」
そんな馬鹿みたいなやり取りをしながら雑務をするは王宮騎士エクター・ド・マリスと、その先輩騎士。
その2人の下にある事が伝えられる。そう、ラーンスの手紙の事だ。
部屋の雰囲気が、変わる。
「で、どうする気なんだ?」
「――――」
先輩の問いにエクターは答えず、無言で届けられた手紙を見つめている。
いや、先輩も聞かずともエクターの答えは分かっていたのだろう。あくまでも確認の為だ。
エクターは顔を上げると、先輩の想像通りの答えを返す。
「私が‥‥兄様と、いえ――ラーンス・ロットと戦います」
敬愛する兄に裏切られたと思ったエクスカリバー奪取事件。その時の彼女の様子は見られたものではなかった。
しかし、それからなんとか立ち直り‥‥彼女は、兄に立ち向かう決意を固めたのだ。
「この手紙は嘘で、実は別の場所を襲うかもしれないぞ?」
「私は兄様を信じ、正面から立ち向かいたいと思います」
「それどころか、偽物の手紙かもしれないぞ?」
「その時はその時です」
はぁ、と溜め息を零す先輩騎士。彼のエクターを見る顔は、出来の悪い生徒を見るような苦笑か、もしくは子を見守る親のような顔か。
「‥‥んじゃ、しゃーない。はっきり言って俺は今のラーンスは信じられん。が、お前を信じる事にしよう」
先輩騎士のその言葉はエクターに協力すると言うものだ。
「何、冒険者の手も借りるし、いざとなったら騎士団総出で何とかするさ」
「いやさすがに騎士団総出は他の守りが危ないと思いますが‥‥」
「さて、問題はどこで待ち受けるかだが‥‥。城の外だといざという時の被害は少ないが外部から介入されやすい。逆に中だと―――」
来るラーンス襲撃に向けて、打ち合わせを始める2人。
ふと、エクターはこれからの戦いに思いを馳せ、開かれた窓から青空へと顔を向ける。
‥‥‥私には何も無い。
伝説の力だとか、運命の血だとか、聖なる剣だとか‥‥そういった特別なものは何も。
私は何も無い。ただ強いて言うだけなら、ラーンス・ロットの妹というだけ。
私には何も無い―――
―――けど。
だからこそ、今の私を作ったのは、ただただ純粋に『私』だ‥‥今ならそう言える。
私は、私の決着を‥‥つける。
●リプレイ本文
闇の中を疾走しながら、男は自嘲していた。
この剣は誰に捧げたものだったか、今からその剣を誰に向けようとしているのか。
その問いに答えるものはいない。
彼は―――孤独だった。
●ラーンスの帰還
冒険者達は、王宮の中庭にて集まっていた。
マナウス・ドラッケン(ea0021)が王にここで戦闘を行う許可を貰っているので、多少の損害は問題ないだろう。
「今日が約束の日、か」
「そうですね」
声に振り向いてエクターを見るマナウス。
視線は中庭へと続く道を見据えており、その表情からは迷いは見受けられない。
「自分で止まって欲しいんだけどね。人任せにも程があるぜ。面倒な兄貴を持ったね、エクター」
「槍‥‥あの偽善者の考えてる事だけは最初から最後まで判らなかったなあ」
エクターの視線の先――これから待ち受けるラーンスとの戦いを思い浮かべ、口を開くは空木怜(ec1783)。
怜の言葉に苦笑で返すと、閃我絶狼(ea3991)が吐き捨てるように己の気持ちを洩らす。
もはや絶狼にとって、かつてのイギリス最強の騎士は侮蔑の対象でしかないのだろう。
「私も分かりません。でも‥‥だからこそ、私達が止めて、話を聞いてみようと思います」
剣を交わす事になろうとも。
その言葉を聞いたエリンティア・フューゲル(ea3868)は彼女の頭を撫でる。
「マリちゃんもそろそろ覚悟を決めて自分に決着を着けないとですねぇ」
彼女の固めた意志を後押しするように、守るように。
それを受けてエクターは抵抗するでもなく笑顔で返す。
グラディ・アトール(ea0640)は彼女の覚悟・意思を察すると、声をかける。
「エクター、覚悟は決めたんだな‥‥。なら行こう、すべての決着をつけるために!」
そう――全ての決着をつける為に。
同じく覚悟を決めた瞳で前を向く少女がいた。
リースフィア・エルスリード(eb2745)。
ラーンス・ロットと剣を交えたこともある騎士である。
彼女は悔いていた。
ラーンスと戦い、話し、信じ、その結果‥‥このような結果に繋がってしまったことを。
勿論誰も彼女を責めやしない。こんな事態になるとは誰が予想できようか。
しかし、それでも彼女は許せなかった。自分を、ラーンスを。
「――私も以前とは違います」
剣を握る手に力が篭もる。今度こそ―――と。
しばらくそうして中庭で待機していると、周囲の人の動きが変わっていく。
それと同時に建物の入り口で待機していたリ・ル(ea3888)が中庭へと駆け込んできた。
彼がここに来たという事は、ラーンスの発見報告などがあったという事だろう。
もうしばらくすれば王の傍で待機しているシェリル・オレアリス(eb4803)もやってくる筈だ。
イギリス王国最強の騎士、ラーンス・ロットの『帰還』である。
●振るわれる剣
そこに顔を見せたのはまさしくラーンス・ロットであった。
彼の傍には1人の騎士風の男。そして背後には何体もの下級デビル。少なくとも、この状況で騎士風の男がデビルというわけはないだろう。
「――――」
「‥‥コレットか。いや、エクターと呼んだ方がいいのだろうな」
コレットの名を呼ぶラーンス。エリンティアのラーンス指定のムーンアローも一直線にラーンスへと飛んでいき――尤もダメージは無いが――とどめに遅れてこの場にやってきたシェリルが告げる。
あのラーンスからは、悪魔の反応も魔法の反応も無い‥‥つまり、本物だと。
同じくリースフィアの真実の瞳が示すのは、騎士風の男にデビルの影が見える事ぐらいである。
「ぁ‥‥」
本物のラーンスが悪魔に囲まれているのを見てか、エクターの足が揺れる‥‥固めた筈の覚悟と共に。
「誰でも無い自分を見失うな! やるべき事、目の前の事を見据えろ! そこに何があるか、その先に何があるか考え動け!」
「ッ!」
マナウスの一喝で、エクターは自分を取り戻すと手に持っていた兜を被る。
退きはしない、戦闘態勢だ。
「王を討つにしてもこれじゃさすがに戦闘は避けられないねぇ」
渋々といった様子で剣を引き抜く騎士風の男。それに続いてラーンスも腰の剣を抜く。
(「アロンダイトではない‥‥?」)
ふと、その事に気づいたのは過去にラーンスと戦った者か。
ラーンスが抜いた剣はアロンダイトではなく、かといってそれ以上に力のある剣には思えない。
エチゴヤに行ったら普通に買えるような代物と大差ないものであった。
(「こちらを舐めているのか‥‥それとも?」)
ともかく、それに合わせて冒険者達は剣を抜くと同時口を開く。
「滅びたければ一人で滅びやがれ! 一般人を巻き沿いにしやがって!」
開口一番にぶつけるはリルだ。彼の怒りをそのままぶつけるが、ラーンスは何も返さない。
それどころか―――
「どうした? 敵は目の前だ。国を守る者がする事はお喋りではないだろう?」
「ッ開き直りですか!?」
返答は剣を向けるだけ。口で語る事はない、と。
「‥‥そう、ですね。目の前に敵がいる。大事なのはそれだけです」
一歩踏み出すはエクター。
「ラーンス・ロット、あなたを倒します」
それを受けたラーンスは‥‥笑みを浮かべていた。
ラーンスが走る。それに合わせて、エクターとリースフィアも前に出る。この2人が前衛で当たろうという事なのだろう。
少し下がってリルがロンゴミニアドの結界を発動させる。デビルの動きを鈍らせるものだ。
「っと――。面倒な事するねぇ‥‥でも」
「邪魔はさせん、いや俺があんたらの邪魔をしてやろう‥‥何、それだけで良いのさ、俺は一人で戦ってるわけじゃねえからな!」
騎士デビルが手に持つ剣をラーンス達に向けるよう振ると、それに合わせて背後の下級デビルが動く。
しかし、空を行こうとするのが叩き落される。絶狼のローリンググラビティだ。
更に、上空から突っ込むように降り立ってきたマナウスの槍の一閃で、また別のデビルが消滅していた。
「お前達の相手は俺たちだ。黙示録のデビルのように、地上に出れなくしてやるよ」
ニヤリと挑発を込めた一言。騎士デビルは苛立ちを隠そうともせず舌打ちをする。
「我らは滅びん、何度でも蘇る! ‥‥とでも言ってほしいかぁ!?」
「あぁ、実にお約束なセリフで堪らんね!」
怜が放つはソニックブーム。騎士デビルはそれを盾で受け流すと一歩下がる。
「ビフロンス様ぁ!?」
「いいから、お前達が前に出るんだねぇ!」
騎士デビルはビフロンスというらしい。それの指示により、下級デビルが前に出るが、それは冒険者達の振るう剣によってすぐさま消滅していく。
「‥‥なんだか哀れですぅ」
「そうねぇ‥‥。どうせ侵入もできないだろうし」
援護のライトニングサンダーボルトを放つエリンティアがぽつりと洩らした呟きに、シェリルもしみじみと答える。
彼女が王宮の各所に設置した超越級の結界により、通常のデビルの侵入はまず不可能なものとなっていた。
「ちぃ、これほどの力を持っているとはねぇ―――!?」
ビフロンスも恐らくは、現状の『詰み』要素に気づいたのだろう。じりと、足を一歩後ろに下げるが。
「おっと、どこに行こうと?」
「!?」
ビフロンスの背後の地面から、まるで泳いできたように顔を出す絶狼。アースダイブの効果で実際に地中を泳いできたのだろう。
体を出し切った絶狼の炎の槍の一振りで、ビフロンスの体は寸断される。
次の瞬間、寸断された体へとグラディが両手に持つ剣でそれぞれ斬撃を加える。
「終わりだ――!」
「ガァァァ!?」
右半身と左半身に分かたれたその体が再び立つ事はなく、倒れていく。
光の粒子のようなものが立ち上り消えていくが、分断された体はそのままであった。ビフロンスが憑依していた死体自体は人間のものだからであろう。
「残るは―――」
下級デビルも含めて消滅したのを確認して、冒険者達はラーンスの方を向く。
そこには戦いを続ける4人の姿があった。
●孤独の騎士
(「さすがに‥‥強い!」)
エクターは何度目かになる剣の空振りを感じながら、それを実感する。
先程から何度も剣を打ち込んでいるが、それが当たる事は無い。
リースフィアも同じように剣を打ち込んでいるが、そちらは全て盾で受け止めているようだった。
――ラーンスも気づいているのだろう。絶対に当たってはいけない攻撃、というものが。
(「‥‥剣を振るう人物ではなく、剣自体に気をつけなければいけない時代、か」)
嫌な時代になったものだ―――とラーンスは何度目かの切り払いを行ってから、考える。
エチゴヤの進んだ技術により、武器・防具はどんどん進化しているらしい‥‥とは耳に挟んだ事はあるが、まさかここまでとは思わなかった。
ちらと目に入った冒険者とデビルの戦いだが、まさにデビルが消滅しているのだ。その威力も察しがつく。
(「英雄の時代は終わりを告げ、これからは‥‥軍と武器の時代、か‥‥」)
1人の英雄が100人の兵を倒す時代は終わり、1人の兵が1人の英雄を倒せる時代。
(「最終的には伝説に聞くメギドの火、か。それが何を招くか‥‥この国をどう変えるか‥‥」)
いや、そんな事を考える必要はないだろう。
なぜなら、今の自分は――この国に剣を向けているのだから。こんな自分にだったらそれが向けられるのは喜ばしい事ではないか、と。
「あんたはこの襲撃の失敗を願っているみたいだが、その場合王妃はどうなるんだ。王妃を守るために反逆するけれど、自分を倒して止めてくれって、王妃はどうなってもいいって言っているようなもんじゃんか。騎士道以前に人道に立ち返れ」
槍を振るいながらの、リルの言葉が聞こえる。
手足を狙っているようなそれだが、特定の場所を狙う技術を持ってないからだろうか。それを避けるのは難しい事ではなかった。
この囲いから抜け出す事は無理ではないだろうが、目の前の騎士少女に隙を見せるのは絶望的だ。彼女の剣が恐ろしいからである。
「――嫌な時代だ」
「何か!?」
また騎士少女の剣を受け止める。このままではジリ貧‥‥そう判断し、攻勢に出る。
1回限りの賭けでもある。狙いはエクター。
右手に持つ剣を彼女に向けて振るい―――
「!?」
やはり、それを受ける為に構えた。それを利用して、本命の盾での一撃を兜の顎の辺りに上手く当てる。
どうやら上手く当たったようで、エクターの膝が折れるのが見える。気を失ったのだろう。
「この土壇場であの技か‥‥やるじゃねぇか」
フェイントアタックEXにポイントアタック、そしてスタンアタックの合成といったところだろうか。
エクターの膝が折れるのが見えるが、デビルの殲滅を終えたマナウス達がラーンスへと向かう。
何人かがエクターを介抱し、残りがラーンスへと立ち向かう。
まず打ち込むはグラディだ。彼としても今までのラーンスの行動に色々思う所があるのだろう。
だが―――私情は挟まずに今はただ一人の騎士としての誇りを持って。
「だからっ、退けない理由は我々にもあります! そのために俺は、貴方を止めてみせる!」
「退けない理由など‥‥誰にでもある!」
ラーンスが吼えた。
次の一閃はグラディの鎧を隙間をすり抜けての、一撃だ。
だが、それは決定的な隙にも成り得る。今までは防御に比重を置いていたからリースフィアの攻撃をしのぎきれていたのだ。
目の前の騎士少女がその隙を逃すまじと、剣を振るう。
「あなたは私に嘘をついた‥‥結局、なによりも王妃が大事だった!」
剣が腹を鎧ごと切り裂く。しかし、それよりも言葉の方が大きなダメージであったかもしれない。
「ぐっ!? そう‥‥結局は、そう、だったんだろうな‥‥」
自分は何がしたかったのか、何を思っていたのか‥‥。様々な理由付けをしようとして、結局は何に縛られていたのか。
「やれやれですぅ、たった1人を幸せに出来れば多くの人の幸せはどうでも良いと思っているのですかねぇ」
エクターを介抱しているエリンティアの言葉に自問自答する。自分が剣を振るうのは何故だったのか、と。
―――正義の騎士を目指していた。
強きを挫き、弱きを助ける。騎士の中の騎士、理想の騎士。純粋に強さを求めていた。
いつからだっただろう。自分が『第一の騎士』などといった風に呼ばれるようになったのは。
円卓の騎士となり、イギリス王国最強と呼ばれるようになり、それでも満足していなかった。
真の騎士とは、常に前を向いているものだと思ったから。自分の騎士道に従い戦っていた。
―――いつからだろう、自分の騎士道が、歪んでいたのは。
自分の正義はいつから――――
「くっ‥‥‥」
気を失っていたエクターが目を覚ます。
それを見て、他の冒険者達が彼女をカバーするように動く。
―――今の自分に、彼らのような仲間はいるだろうか?
「1人、か」
「‥‥最強でも独りではダメでしょう?」
自分の呟きの意味を察したのか、シェリルがエクターを回復させながらこちらに顔を向ける。
「あぁ、確かにそうだ‥‥私には頼れる仲間はいない」
「誰も今のあなたを信じる人はいないですよぉ、あなたは自分から皆の信用を裏切ってしまったのですからねぇ」
またもやエリンティアの言葉が刺さる。
自分は何故孤独の道を歩んでしまったのだろう。頂に上った筈の自分は、何を見ていたのだろうか。
「俺も色んな奴見てきたつもりだけどあんた程白けるのは居なかったな、言葉に重みも説得力もまったく感じねえ」
「‥‥自分でもそう思う。ふっ、もうちょっと早くそういう忠告を聞けていたら、な」
そういう忠告をしてくれる仲間がいたら―――。
立ち上がったエクターが剣を構える。
「ブッ飛ばせ、エクター!」
怜の‥‥仲間の声を背に受けて。
今の私の背には、何も無い。
孤独の騎士は地に倒れる。
●騎士の今後
戦いは終わった。
倒れたラーンスだが、捕縛した後に魔法で死なない程度まで回復させる。
この後、王の元へとエクターの手によって連れていかれるとのことだ。
「‥‥何故、アロンダイトを振るわなかったんですか?」
戦いの最中気になっていた事をリースフィアが問う。
「――王に捧げた剣を、王に向ける事はできんだろう?」
「今更で、しかも屁理屈だな」
「そう言われては返す言葉も無いな」
くい、とラーンスの服の裾をエクターが引っ張る。
「ん、分かった。‥‥行こうか、エクター」
「‥‥はい、兄様‥‥‥」
困ったようにエクターを見るラーンス。それはそうだろう、今から自分を連れて行こうという騎士がずっと泣いているのだから。
「まったく、王の元に行くまでには泣き止むんだぞ」
「‥‥はい」
罪人の筈のラーンスから歩き始める。とても‥‥ゆっくりと。
エクターは、彼の服の裾を掴みながら、ただ泣き声を押し殺していた。
ラーンス・ロットの今後は王に託された。
王がどのような判断を下すかは、今はまだ分からない。