伝説になりたい!

■ショートシナリオ&プロモート


担当:刃葉破

対応レベル:1〜5lv

難易度:普通

成功報酬:1 G 35 C

参加人数:8人

サポート参加人数:3人

冒険期間:09月02日〜09月07日

リプレイ公開日:2006年09月04日

●オープニング

 やっぱり夜は危険な時間。
 どんな危ない人が出てくるか分からないんですもの。
 ―――――キャメロットに住む少女、ジェニファーの言葉。

 そして危険な夜がやってくる。
 どこからか生暖かい風が吹く。
 もしも勘が鋭い人ならば、すぐに家の中に篭るだろう。
 だが勘が鈍い人は‥‥残念な事になるだろう。
 そして、そこにいた男は‥‥残念な人だった。
「う‥‥まだそれなりに暑い時期だってのに‥‥寒気が」
 男は自分の体を抱え、ぶるぶると体を震わせる。
 その寒気はいわゆる悪寒といったものだが、男はその時は気づく事ができなかった。
「やぁ!」
 そして、後ろからの声と共に男の肩にポンと置かれる誰かの手。
 その手は妙に筋肉質で、ごつごつしていた。
「な!?」
「君、いい体してるね! 伝説になってみないかい?」
 男が振り向くと、そこに居たのはやはり筋肉質な男。
 輝かんばかりの笑顔で、日の光の下ならば白い歯が光っていただろう。
 しかし、筋肉質の男は何故か上半身が裸で、妙にテカテカしていた。
 これ以上無いってぐらいの不審人物である。
「なななななななな!?」
「おや、我々に選ばれた事が嬉しすぎて動揺しているようだね?」
 勿論、動揺した理由は目の前に怪しい人物が現れたからなのだが。
 ざっざっざっざっざっ‥‥。
 そして、半裸男と似たような格好をした男達が歩いてその場に集まってくる!
 先ほど半裸男が言った『我々』という言葉を考えるに仲間なのだろう。
「ひぃぃぃぃぃ!?」
「ハッハッハッハ。それじゃあ、伝説になる資格があるかどうか、改めて確認させてもらうよ!」
 キラーンと半裸男の汗が光り、それと同時に周りの半裸男達が可哀想な男に覆いかぶさっていく。
「ぎゃぁぁぁぁぁ!!!!」

「残念ながら‥‥彼もまた、資格者ではありませんでした」
「そうか‥‥残念だったな」
 憔悴しきった顔で地面に倒れ伏してる男のすぐ傍で、半裸男達が話をしていた。
 倒れている男はやっぱりというか服を脱がされていて、体中が妙にテカテカしていた。
 何が行われたかなんてのは‥‥知らない方がいいのだろう。
 最初に現れたリーダー格と思われる半裸男が周りを見渡す。
 そこに立っていたのは、同じく半裸の男達が5人。
「さて、我が国の英雄といえば誰だ?」
「はっ、色々おりますがやはりアーサー王かと」
 リーダー格の男の投げかけた言葉に1人の男が答える。
「そう、アーサー王‥‥彼は偉大な人物だ。伝説となる事は間違いないだろう」
「はっ! そして彼に付き従う円卓の騎士‥‥。彼らもまた、伝説になるでしょう」
「そうだ。‥‥そして、男として伝説になりたいというのは至極当然の事!」
「イエス! イエス! イエス!」
 リーダー格の男が上げた声に、周りの男達は手を上げながら口々に賛成の言葉を叫ぶ。
「だからこそ! 我々も伝説になる為に! 彼らを倣うのだ!!」
 一際強く叫ぶリーダー格の男。更に場は狂気に包まれる。
「我が名はラーアー! 伝説となるべく、裸の騎士団を従える者なり!」
 誰かまともな人がこの場を見れば思う感想はこうだろう。
 馬鹿だ、と。

「はい、そんなわけでまた馬鹿というかそういう類のが現れたので、退治しちゃってくださいねー」
「だから、どういうわけですか!?」
 そしてやっぱりギルドに裸の騎士団の討伐依頼が持ち込まれるわけである。
「あ、そうそう。裸の騎士団が現れたなんて馬鹿な噂がアーサー王達の耳に入ったら気分を害すると思うから、気をつけてね」
「こんな変な集団の噂なんて、とっくに町中に溢れてますよ!」

●今回の参加者

 ea4676 ダイモン・ライビー(25歳・♀・クレリック・人間・イギリス王国)
 ea4910 インデックス・ラディエル(20歳・♀・クレリック・人間・イギリス王国)
 ea5931 黒 者栗鼠(38歳・♂・ファイター・ドワーフ・華仙教大国)
 eb2020 オルロック・サンズヒート(60歳・♂・ウィザード・エルフ・イギリス王国)
 eb3671 シルヴィア・クロスロード(32歳・♀・神聖騎士・人間・神聖ローマ帝国)
 eb5296 龍一 歩々夢風(28歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 eb5868 ヴェニー・ブリッド(33歳・♀・ウィザード・ハーフエルフ・フランク王国)
 eb6415 エルファリア・ユーグリッド(18歳・♀・神聖騎士・エルフ・イギリス王国)

●サポート参加者

マリー・プラウム(ea7842)/ ライツ・リミテッド(eb0637)/ フレイア・ケリン(eb2258

●リプレイ本文

●嵐の前触れ
 雷雲轟く空模様。まるで何かが起こるのを暗示しているようであった。
 日も沈み、本来ならば星明りで照らされるところだが、黒雲が空を覆っていた。
「‥‥ぁぁ、主よ‥‥なんだか色々間違っちゃってる人たちが出没してます」
 慈愛神へと祈りを捧げる乙女、インデックス・ラディエル(ea4910)。
 今回、彼女達が討伐する対象は裸の騎士団‥‥言うまでもなく変態である。
「アーサー王陛下の名を出し、円卓の誉れを驕るとは‥‥‥愚か者として伝説にしましょう」
 そんな裸の騎士団を討伐する気満々なシルヴィア・クロスロード(eb3671)。
 彼女は笑っている。笑顔なのだ。鬼気迫る雰囲気ではあるが。
 そんな彼女と同じく変態狩りに燃えてる少女がいた。
「変態さんを狩って男の人の貞操を守るのがボクの使命! というわけで今回もがんばるんだぞい!」
 そう使命の炎を燃やしているのはダイモン・ライビー(ea4676)。
 カマ狩りの使徒とかそんな感じだが、お年頃の少女の青春をそればっかりに燃やしていいのだろうか。
「う〜ん、ここが霧と紳士と変態の都、キャメロットですかぁ。来たばっかりで右も左もわかりませんねぇ」
 きょろきょろと周りを物珍しそうに見ているのは黒者栗鼠(ea5931)。
 彼は男である。ドワーフの男である。33歳の男である。
 そんな彼だが、美少女のお面をつけている。ぶっちゃけ彼も変人とかそういう類にしか見えなかったりする。
「いきなりキャメロット冒険者ギルドの伝統と格式のロマン輝く筋肉男性グループ退治ですかッ。これは腕が鳴りますねぇ」
 その上変態退治をキャメロットギルドの伝統と誤解していた。そんな伝統を持つギルドはどの国にも無い。
「半裸族のくせに『裸の騎士団』を名乗るなんて笑っちゃうね! ここは俺が真の『裸の騎士』ってやつを連中に見せてやるよ!」
 と言ったのは龍一歩々夢風(eb5296)。
 真の裸の騎士とは一体何なんだろう。そんな彼は月影のマントで全身を隠していた。
 そのマントの中身は‥‥いや、後々分かる事なのだ。今知らなくてもいいだろう。
「おぉぉ‥‥」
 そしてよぼよぼとした老人のウィザード、オルロック・サンズヒート(eb2020)。
「うーん、色んな面白そうな人たちがいるのだわ」
 個性豊かな面々を見て呟くヴェニー・ブリッド(eb5868)。
 敵だけではなく味方も変な人ばっかりなのだが、全然うろたえていない。
「ぁぁ、主よ、主よぉ!」
 殆ど泣きながら天に祈るインデックス。
 彼女は生暖かく見守るような視線を感じたような気がした。

●敵も味方も変態ばっか
 ラーアーがあらわれた!
 はだかのきしだんたちがあらわれた!
 コマンド?

 そんなこんなで見るからに怪しい裸の騎士団達が現れたのだ。
 相変わらずテカテカ光ってる。汗か、汗なのか。
 その時、オルロックの目が光り、すくっと立ち、手を天に掲げる!
「勇者よ! 今こそ、かの魔剣を手に艱難辛苦を乗り越え、危機に立ち向かうのじゃぁ!!」
「伝説好きな人達なら‥‥この伝説の名工ヒトミ・メノッサ作とも言われる魔剣に興味を‥‥え、え?」
 敵の興味を引こうと厳重に封印が施してあるエロスカリバーを地面に置こうとしているインデックス。
「‥‥ぁぁ、龍一さん! そんな処を持ったら」
 だが、オルロックの言葉に触発されたのか、龍一がそのエロスカリバーを手に取る!
「おまえらが『裸の騎士団』だって? 半裸のくせに何が裸だ! 結局全裸になる勇気ないだけなんじゃん!? いいかぁ? よーく見てろよ! これが真の『裸の騎士』って奴だ!」
 エロスカリバーを手に取りながら羽織っていたマントを脱ぎ捨てる龍一! その下はやはり‥‥全裸だった。
 エロスカリバーのお陰で大事な所にピンクのもやがかかっているのでギリギリセーフだ。アウトな気もするが
「ぬぅ‥‥なんと凄まじい裸パワー!」
 よく分からないが裸の騎士団達は全裸の龍一を見て慄いてる。
「えぇい! 俺達も負けてられん! 脱ぐぞ!!」
 対抗意識を燃やしてか、半裸から全裸へとシフトしていく裸の騎士団。
「ここはこの国の流儀に乗っ取って私も脱ぐべきですね。以前読んだ本にこう書いてありました。ここ紳士の国では生まれたまんまの姿となって筋肉を披露しながら戦うのが最も美しく、華麗であり、名誉あることなのであるとッ!」
 言いながら者栗鼠も脱いでいく。勿論そんな流儀は無い。その本の著者はイギリス人に全力で謝るべきだろう。
「さぁ、勇者よ!」
 脱いでいく男性陣を見ながら、それを導くようなポーズを取るオルロック!
 そしてポーズを取ったオルロックは‥‥やはり全裸だった。
 大事な所を両手に持ったお盆で隠している、一体どこの宴会芸なのだろう。
「裸パワー200‥‥300‥‥まだ上がる!? くっ、何としても騎士団に入れたいものだな!」
 全裸になってしまった冒険者の男達3人を見ながら叫ぶラーアー。
 そんなラーアーの叫びを遮るかのように数少ない善良人が名乗りを上げる!
「界隈を愉快な噂で満たし、あまつさえ円卓の誉れを奢るとは! 蒼銀の騎士、シルヴィア・クロスロードが成敗する!」
 叫んだのはシルヴィア! その名乗りにより、一同の視線がシルヴィアに集中する!
「あ。‥‥くっ、こんな変態達に微妙な名乗りをあげてしまうなんて‥‥」
 はっと我に返ったシルヴィアはその名乗りを上げてしまった事に激しく後悔する羽目になったが。
「ふふ‥‥本当に面白いわ」
 敵も味方も変態ばっかの変態ワールドを見ながらほくそ笑んでるヴェニー。
 ラーアーは7点、龍一は9点とか妙な事を呟いている。
「誰が一番危険かしら。何気にオルロックさんとか大穴じゃないかしら」
 そんな採点されても、その、なんだ。困る。
 そしてこんな場には合わないであろう木が一本、生えていた。
 街中にあるので違和感があるのだが、周りの人達が違和感のありまくる存在なので逆に目立たなくなっていた。
「うーん、マッチョは趣味じゃないんだけどなー」
 そう、その木の正体はミミクリーで変身したライビー。
 趣味じゃないとか言いながらドキドキワクワクしていた。ってか趣味って何だ。
「ゴメンナサイ。ヤッパリ、コノはなしナカッタことに」
 魔境に足を踏み入れた事を悟ったインデックスはこの場から離れようと考える‥‥が。
「行くぞ、皆! 裸の騎士団の意地を見せてやれ!!」
 ラーアーの檄! そしてつっこんでくるテカテカの全裸軍団!!
「ぅわ〜ん、主よぉ〜!」
 泣きながら、この場を離れる事ができない事を悟るのだった。

 そして始まる、煌く汗が飛び散る暑苦しい戦闘!
「さあッ、いざ華麗なる狂宴をッ!」
 と全裸の者栗鼠が言いながら裸の騎士団の1人と殴り合っていたが、まさに狂宴であった。
 シルヴィアはシルヴィアで鬼気迫る表情で裸の騎士団達を蹴り飛ばしている。
 剣を使いたくないらしい。気持ちは分かる。
「この邪悪を滅する神の御業でぇ!!」
 インデックスがホーリーを唱える。邪悪な者にしかダメージが及ばないその術は、しっかりと裸の騎士団にダメージを与えていた。
 慈愛神的にも、やつらはアウトなのだろう。
「やってるやってる」
 エロスカリバーを構えたまま攻撃に参加せず見守っている龍一。
 エロスカリバーを奪われないようにということである。
 そんな龍一のピンクのもやがかかっている部分にバーニングソードを付与するオルロック。
「漢のエクスカリバーは‥‥常に燃えておらんとのう」
 違う、何かが違う。
「さて、そろそろね。ど〜れおしおきだべ〜」
 謎の採点を終えたヴェニーはヘブンリィライトニングを唱える。
 黒雲から雷が落ち、全裸の男に次々と落ちていく!
 微妙に味方の全裸男も巻き込まれている気がしたが、気にしないのが吉だろう。
 そして木に変身して狂宴を堪能――いや、様子見をしていた彼女もついに動き始める!
「それは男の人の危機に呼応して出現し、男の人の危機を消滅させて、また消えていく存在。ありえざるべきそこにある者。夜明けを呼ぶ騒々しい足音。人が目を閉じる時に現れて、人が目を開く時に姿を消す最も新しき伝説。貞操の最終防衛機構」
 ダイモン・ライビー。カマ狩りの使徒。
「忘れたとは言わせない。知った風な口もきかせない。変態さんが溢れるその時にはライビーたんが現れる。それがルール!」
 その登場に、全員呆気に取られてライビーを見る。
 その隙を逃がさないという風にライビーがすかさずラーアーに向けて魔法を唱える!
「くらえ! 神の拳! ゴッズハンド! てんちゅー★」
 ディストロイが今、ライビーから放たれる!
「あぁぁぁーっ!!」
 そしてその魔法は‥‥ラーアーを‥‥。
「今だ! 食らえええ! 伝家の宝刀『エロスカリバー』!」
 急所を押さえながら呻いてるラーアーに向けてエロスカリバーを構えながら走る龍一。
 そして思いっきり‥‥振り下ろす!!
 その攻撃がラーアーに対してのとどめとなり、ラーアーはぱたりと地面に倒れた。
「ぐはっ‥‥!! ってか、我らの影が薄くないですか‥‥微妙に」
 相手が濃すぎたのだ、諦めてください。
「倒した倒した‥‥ってのわぁ!?」
 ラーアーを倒して一息ついた龍一をも巻き込むファイヤーボム!
 その火球で辛うじて立っていた裸の騎士団達もダウンする。
「すべてが萌えつきる‥‥危機は去った。じゃが‥‥いつまた第二・第三の変態があられるとも‥‥」
 そのファイヤーボムを放ったのはオルロック。しみじみとしている。でも全裸。
「既にここに現れてます!」
 相手が老人でも容赦はしない。シルヴィアがオルロックの後頭部をがつんと殴って意識を奪う。
 変態相手には容赦はしない。
 起き上がってきた龍一や者栗鼠にもシルヴィアはしっかりと制裁を加えるのであった。

「ぅわ〜ん、主よぉ〜!!」
 天からの視線は‥‥依然、生暖かい。