掃除の大切さ

■ショートシナリオ&プロモート


担当:刃葉破

対応レベル:フリーlv

難易度:普通

成功報酬:0 G 65 C

参加人数:8人

サポート参加人数:3人

冒険期間:09月07日〜09月12日

リプレイ公開日:2006年09月11日

●オープニング

「こ‥‥これは‥‥!」
「むぅ‥‥確かに放置していたが、ここまで酷い事になってるとは‥‥!」


それはある晴れた日の午後。
「今日は天気もいいので、あの別館のお掃除もしちゃおうと思うんですけど」
「うむ、天気と掃除がどう結びつくかは分からんがいいだろう」
 話しているのは30代後半の男性と20代後半ぐらいの女性。
 男性の方は一般人に比べて結構良い服を着ていた。
 そして女性の方はメイド服。
 つまり、2人は主人とそれに仕えるメイドである。
 主人の男性はいわゆる貴族であった。とはいってもそんなに大きくない家柄なのだが。
 2人がいる所はその貴族の男性の屋敷の一室。
 くつろいでる主人に、メイドはお茶を入れながら先ほどの提案をしたわけである。
「えぇ、それで‥‥。私、ここに仕えてから一度もあの別館に入った事無いのですが‥‥」
「そうだろうな。俺もこの家を継いでから一度もあの別館に入った事が無い」
「‥‥マジですか?」
 そんな会話を続ける2人。
 とても長い付き合いだからなのか、2人の会話はとても気さくなものであった。
「あぁ、特に行く必要が無かったからな」
「これは‥‥思っていたより難航しそうですね」
 むむ、と唸るメイド。それを見た主人は。
「ふむ、それじゃあどうせだし俺も付き合うかな」
「ご主人様がですか!? いえいえ、汚れますし!」
「何、どうせ暇だし構わんさ。それにもしかしたら捨てられたら困るものがあるかもしれん」
「そこまで言うのでしたら‥‥」
 と、しぶしぶ答える風に言うメイド。だが、実際その顔はあまり困ったものではなく、むしろ嬉しがっていた。
「よし、じゃあ行くか。鍵はどこだったかな」
「あ、私取ってきますね」
 そしてメイドが別館の鍵を取りに行き、2人は別館へと行く事になった。

 ギギギギ‥‥‥。
 屋敷から少し離れていた所にある、あまり大きくない別館の扉が開く。
 相当放置されていたためか、別館の扉は中々開かず、2人がかりで押してやっと開いたのだった。
「ゴホッ! ゴホッ!」
「ケフッ‥‥コホッ!」
 一歩足を踏み入れた瞬間から咳をしまくる2人。それも仕方ないだろう。
 何せそこらじゅう埃まみれなのである。
 軽く歩くだけで埃が顔のところまで舞い上がってくるのだ。
「これはひどい」
「まったくですね‥‥」
 2人は埃を吸いすぎないように、予め用意していた布を口に当て、歩き始めた。
「とりあえずここの部屋の様子を見てみましょう」
 メイドがそう言い、廊下にある扉の1つを開ける。
 ギギギ‥‥。
 やはりスムーズには開かなかったが、先ほどの扉ほどでなくメイド1人でも十分開ける事ができた。
 そして2人の目に入ったのは‥‥。
「えーあー‥‥ドラゴンでも暴れたんですかね?」
「うむ、きっとそうに違いない。そうじゃないと説明がつかん」
 勿論そんなわけはなく、放置されていたから荒れた部屋となっていたのである。
 その荒れっぷりは凄まじく、本棚のようなものが倒れていて、書物があちこちに散乱していたり。
 床板は何枚も剥がれていたり、蜘蛛の巣や埃も勿論の如く大量に。
 一体元が何だったのか分からない木の破片。汚れていて何が何だか分からない物体。
 とにかく荒れていた。その上‥‥。
 カサカサカサ‥‥!
「きゃぁっ!?」
「おっと」
 メイドの足元を何かが音を立てて通り過ぎる!
 それに驚いたメイドは思わず後ずさり、主人に抱きとめられる事となった。
「あうあうあうあう、今何かが何かがー!」
「あー、分かったから落ち着け落ち着け」
 鼠だったかもしれない。もしかしたらあれというか、あのあれだったかもしれない。
 カサカサカサカサという音は静まる事なく、むしろ多くなっている。
「‥‥一度撤退するぞ!」
「は、はいー!」
 そして2人はその別館から逃げ出したのだった。


「えーと、つまり‥‥掃除の手伝いをしてほしいってことですね」
「はい、そういうことになりますね」
 場所は変わってギルドの受付。
 受付係の青年と相対するのはあのメイドである。
 あの後2人はとてもじゃないが掃除できないと判断、ギルドに手伝ってもらう事にしたのである。
「さすがにいつまでも放置して、これ以上悪化させるわけにもいかないので」
「‥‥見なけりゃずっとスルーできたでしょうに」
 ボソと呟く受付係の青年。
「大人はいつまでも逃げる事ができるものじゃないですよ」
 それを聞いたメイドは自分より些か若い青年に言うのだった。

●今回の参加者

 ea3179 ユイス・アーヴァイン(40歳・♂・ウィザード・人間・イギリス王国)
 ea7694 ティズ・ティン(21歳・♀・ナイト・人間・ロシア王国)
 eb0132 円 周(20歳・♂・陰陽師・人間・ジャパン)
 eb0771 タウルス・ライノセラス(35歳・♂・ナイト・ドワーフ・イギリス王国)
 eb2628 アザート・イヲ・マズナ(28歳・♂・ファイター・ハーフエルフ・インドゥーラ国)
 eb3310 藤村 凪(38歳・♀・志士・人間・ジャパン)
 eb6179 リドル・リンカー(39歳・♂・神聖騎士・人間・イギリス王国)
 eb6580 シャクナ・ヴァラーヤ(29歳・♀・レンジャー・人間・インドゥーラ国)

●サポート参加者

ミッシェル・アリアンテ(ea4539)/ 桐沢 相馬(ea5171)/ フィリッパ・オーギュスト(eb1004

●リプレイ本文

●顔合わせ
 晴れ晴れとした雲ひとつない良い天気。
 この日の天気はメイドが掃除をしようと決めた日と同じような天気であった。
 そして、その掃除を実行する日がついに来たのだ。
 ギルドの依頼を受けた8人の冒険者が依頼者の貴族の屋敷へと訪れる。
 一行は応接間へと通され、その屋敷の主である貴族とメイドと対面していた。
「依頼を受ける時に聞いていると思いますが‥‥かなり荒れています」
 メイドがお茶の用意などをしている間に、主人が今回掃除の対象となる別館の説明などをしていく。
「掃除‥‥部屋を片付ける事だな。大がついているがさほど違いはないだろう‥‥問題ない」
 話を聞いてポツリと呟くアザート・イヲ・マズナ(eb2628)。
 ちなみに彼は今回のような大掃除は初めての経験らしい。
「どうやろうなー。ギルドに持ち込まれるほどの大掃除なら‥‥問題無しとはいきそうにない気がするなー」
 それに答えるように言う藤村凪(eb3310)。実際、彼女の言う通り簡単にはいかないだろう。
「お掃除お掃除〜 張り切っていきましょ〜」
 そんな会話を聞いてユイス・アーヴァイン(ea3179)も気合を入れる。
 ‥‥のんびりしているように見えるが、これでもちゃんと張り切っているのである。多分。
 そして部屋をきょろきょろと見回す1人の少女、ティズ・ティン(ea7694)。
 彼女は実際は12歳なのだが、身長の低さや童顔などでそれより低い年齢の子供にしか見えない。
 だがそんな彼女はメイドを生業としており、応接間の掃除が行き届いているかのチェックをしていたのだ。
「それなりに綺麗だけど、もう少し丁寧に掃除した方がいいよ。あっ、でも、イギリスのメイドって貴族の令嬢だから、そこまで必要ないか」
 一般人が見ると掃除が行き届いてるように見えるのだが、家事の達人の彼女から見たらどこかに穴があるのだろう。
「肝に命じておきます。‥‥あ、ちなみに私はイギリス人ではありませんので」
 答えるメイド。確かに彼女の年齢から考えると貴族の令嬢の修行には見えないだろう。
 また、ティズはゲルマン語しか話せない為、ゲルマン語で話しかけていたがメイドの返答もまたゲルマン語であった。
 これも彼女がイギリス人ではないという証だろう。
 そんなこんなで説明などが一区切りついたのだ。
「さてと、気合を入れてそうじをしようか」
 リドル・リンカー(eb6179)が言いながら立ち上がり、一行は別館へと向かったのだった。

●放置するとこうなります
 別館の前に着いた一行。
 ユイスはブレスセンサーのスクロールを広げ、館の中に何がいるのかを調べてみる。
「はてさて〜 何かいそうな感じではありますけれど、本当に何かいるんでしょ〜か?」
 クスリと笑いながらブレスセンサーを発動させるユイス。
「うーん、虫や小動物みたいなのが‥‥とにかくたくさんいますね〜」
 こういう時に出てくるのは鼠やいわゆるGが相場だが、ユイスはそれらをまったく怖がっていないようだ。
 そうこうしてる間に凪は予め用意しておいた掃除用具を他の仲間にも渡していく。
 全員が口に布をつけて埃対策を済ませたところで。
「開けるぞ‥‥」
 自身の仕事は肉体労働だと決めているタウルス・ライノセラス(eb0771)が扉を開けていく。
 メイドと主人が2人がかりで開けた扉も、彼の力なら1人で開ける事ができた。
 ギィィィィ‥‥‥。
 開く扉、そして。
「はや♪ 雪みたいに積もってるわ‥‥。凄いなー」
 凪の言った通り、埃で廊下が真っ白に染まっていた。
 一行が歩くたびに埃が舞い、視界までもが真っ白になる。
「こほっ‥‥換気しなきゃな。えーと、窓は‥‥あった」
 その凄まじさに軽く咳き込んだシャクナ・ヴァラーヤ(eb6580)は廊下の窓に手を伸ばし、そこを開ける。
「本当、酷いですね‥‥」
 円周(eb0132)や他の仲間たちもそれに続くように窓を開けていき、空気を通していく。
「初めての依頼ということで簡単そうなものを選んだが‥‥結構骨の折れる仕事になりそうだな」
 廊下の段階でこの凄まじさという状況を知ったシャクナは軽く冷や汗をかきながら溜め息をついたのだった。
「とりあえずはこの部屋からか‥‥」
 事前の説明によると一番大きい部屋の扉の前に立つ一行。
 その扉を開けたらそこは‥‥。
「廊下なんかと比べ物にならないな‥‥」
 リドルの言葉通り、とにかくやばかった。まず目に入るのは白。雪国かと見間違うほどだ。
 かといってそれは勿論雪ではなく埃である。
 部屋に乱雑に置かれている物全てが埃を被ってるが故に、部屋全体が白くなっているのだ。
 やはり空気の入れ替えが必要という事で、窓をあけていく一行。
「‥‥とりあえず、ある程度運べる物は外に運んじゃいましょう。そうしなければ埒があきません」
 周が言い、周りの者の通訳を通じてそれが他の仲間にも伝わる。
「そうだな‥‥さすがにな」
 ダウルスが重い家具(らしきもの)を持ち、外へと運び出していく。
 他の者達も共同で家具を外に運びだす。
 現状だと埃を落としても舞ってしまってその対処が大変、ということでまずは掃く事に。
 ユイス、ティズ、凪、シャクナは箒を使い、埃をある程度固めていく。
 周、タウルス、リドルは外に運び出した家具などの埃を落としたり、水拭きなどをしていた。
「‥‥‥俺は、何をすればいい?」
 このような大掃除は初めてのアザートは戸惑い、何をすればいいのか分からないようだった。
「うーん、じゃあこの集めた埃を外に捨ててくれるかな?」
 家事の達人であるティズの指示。それに従い、アザートは埃を外に捨てに行く。
 そしてある程度床の埃を取り除いたところで、本格的な掃除を始めていく。
 ユイスはフライングブルームを使って空中に浮かび、普通では手が届かない天井付近の掃除もしていた。
「一応箒なワケですし〜 お掃除にも使わないともったいないですよね〜」
 凪は凪である程度綺麗になった所を雑巾で拭いていく。
 ティズも家小人のはたきという面白いように埃が取れるという道具を使ってどんどん埃を取っていく。
「うぅん、やっぱり、掃除は綺麗になってたのしいな」
 そんなティズの様子を見たアゾートは。
「何度か目にしたことはあるが……ティズのそれは何だ?」
 と、家小人のはたきへの疑問を浮かび上がらせる。
「これはね? ‥‥‥ん?」
 ティズが説明しようとした時‥‥カサカサと何かが床を這うような音が!
「話に聞いた‥‥何かか!」
 すかさず箒をダガーに持ち換えるシャクナ。
 窓からの日の光に晒された何かの正体とは、そう!
 黒光りする虫‥‥G! あえて名称は書かない!
 アゾートはどこからかハリセンを2本取り出し、1本はティズに渡し、もう1本は自身の手に。
 カサカサカサカサ‥‥!
 音はどんどん増えて、大きくなっていく。1匹見かけたら30匹というが、本当にそれぐらいいるだろう。
「こ、これは‥‥多いなぁ」
 箒を構えながらGの大群を見て冷や汗をかく凪。
「だが、それでも‥‥駆除しなければ未来は無い!」
 ちょっとかっこいい事を言いながらハリセンでGを叩いていくアゾート。
 勿論、叩ければGは一撃で死ぬだろう。‥‥だがGは素早いのだ。
「うわっ!?」
 空を飛んでシャクナに向かってくるG。言いようも言えぬ嫌悪感からシャクナは思いっきり後退する。
 同じようにティズにもGが飛ぶが‥‥。
 キラーン☆
 まるで居合いのようにハリセンを振るうと、Gは見事に叩き落されていた。
 そんなティズの目はまるでモンスターと戦う時のように鋭くなっていた。
「大変ですね〜」
 あまり大変じゃないような口調で箒でGの対処をしていくユイス。
 そうして一行の活躍によりGの数はある程度減っていくが‥‥やはりまだ多い。
「援軍が来てくれれば‥‥」
 そう誰かが呟いた時! しゅたっとG退治の救世主がこの場に現れたのだ!
「にゃ〜ん」
 猫である。どっからどう見ても猫である。
 猫の名はCURAIN。リドルのペットの猫である。
 G対策になると思って放していたのだが、見事にGを退治していく!
「よし、このまま一気に殲滅するでー!」

 部屋の中でGとの戦いが繰り広げられている時、外では運び出した物を綺麗にする作業が行われていた。
「ほぅ‥‥‥」
 運び出したある箱の中に入っていた石像にタウルスは見入ってた。
 そんな所に掃除の様子を見に屋敷の主人がやってきた。
「首尾はどうかね?」
「まぁまぁかと。‥‥中が騒がしいが、多分Gの対処だろう」
 主人の質問に答えるリドル。
 周は言葉が通じないのでせっせと汚れを落とす作業に集中しているようだ。
「ところで、必要な物と不用品との区別をしてほしいのだが‥‥。不用品はエチゴヤで売るなりとか」
 とリドルの提案。
「とはいっても俺は鑑定の専門家じゃないからな。明らかなゴミ以外は保持しておいて、後日鑑定人に鑑定してもらう事にするよ」
 つまりは捨てるもの以外はとりあえず全て必要品という事なのだろう。
「成る程、ではそういう方向で整理するか」
 そんなこんなで作業は続く。

●書いてないけど色々ありました
 そうして3日かけて大掃除を完璧に終わらせた一行。
 本当に色々あったんです。部屋を覆いつくすGとか雪崩のように崩れ落ちる家具とか踏み外れる床板とか。
 だがそれらを全て乗り越えて! 綺麗になったのだ!
「さて、掃除も終わった事だし、酒場で御食事でもいかがですか?」
 という周の提案。
「‥‥‥ふむ」
 酒好きであるタウルスも賛成するかのようにうなずく。
「そうなるだろうと思って‥‥ほら!」
 ティズが両手に色々なおいしそうな料理を持ってその場にやってくる。
 勿論ティズお手製の料理である。湯気も立っていて、作りたてのようだ。
「おいしそうですね〜。では、いただきましょうか〜」
 次々と運ばれる極上の料理に、皆舌鼓をうつのであった。