【長屋の姉妹】立ちはだかるモノは‥‥

■ショートシナリオ


担当:はんた。

対応レベル:1〜5lv

難易度:難しい

成功報酬:1 G 48 C

参加人数:7人

サポート参加人数:-人

冒険期間:08月22日〜08月28日

リプレイ公開日:2005年08月28日

●オープニング

 長屋の一室に二人、姉妹が住んでいた。その妹の方は、薬草師を生業としていて、名前を早苗と言う。
「その湿原には、貴重な薬草がいくつも生えているらしいの」
「そう。で?」
 姉と思わしき女性は、笠を編みながら妹の話を聞いていた。
「でも、そんなに薬草が咲き乱れているにはワケがあるの。なんとその辺には不気味な大蛙や獰猛な鷹とかがたくさんいて、さらには最近、鎧や金棒を装備した山鬼の戦士も見受けられるんだって。つまり、すごく危険で、とてもじゃないけど気軽に行けるような所じゃないの」
「そう。‥‥で?」
 彼女は内職から目さえ離さずに言う。
「つまり‥‥、その〜‥‥」
 口篭る早苗。彼女は以前、姉の承諾無しに家の財布の口を解き、その金で冒険者を雇うという事件をおこした。それが姉にバレたとき、『それなりに』痛い思いをした。
「そんな危ない所だったら、冒険者を雇えば良いでしょう?」
「‥‥え?、い、いいの」
 姉による激しいスキンシップ(主に拳による)を思い出し中だった早苗に、その言葉は予想外だった。こうもすんなり許可が下りるとは。
「何も、私は『冒険者を雇うな』と言っているわけではないのよ。勝手に家財を持ち出すのような事じゃなければ、ちゃんと貴方の話だって聞くわ」
 溜息交じりに言う彼女。
「ありがとう姉さん! それじゃ、早速行ってくる!」
 膳は急げ、そう言わんばかりに早苗は全力疾走。今の彼女の頭の中には、急がば回れ、という言葉は存在しない。
「‥‥夏バテという言葉が存在しないのかしら、早苗には」
 思わずけだるくなる夏の午後。姉妹の姉である女性、扶美は内職をしながら呟くのだった。


 某所、そこはある盗賊のアジト。
「くそッ! 暑ィ! 暑いってんだよッくそが!」
 自分の鬱憤を近くの木々にぶつける男。容姿もさることながら、その粗暴な行いを見れば、誰もが彼を人目で悪漢と理解できるだろう。
「最近、やけに荒れているな、フレッガのやつ」
 ジャイアントと思われる大男が、小声で、傍らにいた男に話しかける。彼は対照的に、少年を思わせる背丈だ。
「ああ、この前、冒険者達にしてやられたからね。復讐に燃えるとかは別にいいんだけど、ここまでくると、正直、ウザったいね。ただでさえ暑苦しい気温だってのに」
 少年はダルそうに言った。
「ああ、くそ! 畜生が!」
「‥‥おい、どこへ行くフレッガ」
 フレッガと呼ばれたその男は、急にアジトの外へと歩き出した。彼は振り返りもせずに言う。
「気晴らしにその辺のモン殺してくるんだよ! 商人でも歩いていたら、ついでに金目の物奪ってきてやらぁ」
 彼の勝手な行動を戒めようと、立ち上がりフレッガを追おうとする大柄の男。一方少年の方は、無関心なのだろうか、立ち上がる素振りすらみせない。
「アウディー、孝太郎、追ってこい。ついでに、稼げるようだったら仕事の一つでもして帰ってきてくれ」
 奥に座していた男が二人に命令する。
「わかった」
「うわぁー。フレッガと組むのはもうこれで、マジ勘弁だぜ」
 大柄の男は表情を変えず、少年の方はいかにも『嫌々』といった面持ちで、その男の声に従い、フレッガの後を追った。


 ここは冒険者ギルド。受付でギルド係員と話しているのは、薬草師の女性、早苗。
「‥‥ということで、冒険者数名、護衛にお願いします。あ、今回も、ちゃんと書いてくださいね『出来るだけ若くてカッコイイ人で』って!」
「はいはい。一応な、一応。俺が書き忘れなければなー」
 夏の暑さに耐え、書類を作成しながら早苗の言葉に応じる係員。(「これでコッソリ、筋肉質の壮年戦士推奨なんて書いたらどうなるだろうなぁ」)なんて内心思ったりもしたが、筋骨隆々な野郎達が結集した暑苦しい風景をイメージしたら、そんな出来心は吹っ飛んだ。
「それじゃあ、よろしくお願いしますね」
 そう言って、早苗は帰っていった。今から『若くてカッコイイ人』に会うのが楽しみなのだろうか、彼女は終始笑顔だった。
「‥‥しかし、この辺って言ったら、多くの敵との遭遇が予想できる危険な場所。こんな所の護衛だ、いらん制約は記述しないでおこう」
 係員は結局、書類に『若くてカッコイイ人推奨』とは書かなかった。

●今回の参加者

 ea8445 小坂部 小源太(34歳・♂・志士・人間・ジャパン)
 eb1530 鷺宮 吹雪(44歳・♀・志士・人間・ジャパン)
 eb2033 緒環 瑞巴(27歳・♀・陰陽師・人間・ジャパン)
 eb2313 天道 椋(35歳・♂・僧侶・人間・ジャパン)
 eb2613 ルゥナ・アギト(27歳・♀・ファイター・人間・インドゥーラ国)
 eb2690 紫電 光(25歳・♀・志士・人間・ジャパン)
 eb2704 乃木坂 雷電(24歳・♂・神聖騎士・人間・ジャパン)

●リプレイ本文

「早苗ちゃーん久しぶり☆ また凄い所に薬草取りに行くんだね。いつも偉いなぁ」
「また会えたね瑞巴ちゃん。今回もよろしくねー!」
「相変わらず、元気な妹さんですね」
 明るく早苗に話しかけているのは緒環瑞巴(eb2033)。鷺宮吹雪(eb1530)は、そんな二人を見て、柔らかい口上で呟いた。
「危険な所のようですが、無事に採って帰れるといいですねぇ」
「あー椋ちゃんだっ。すっごい久しぶりっ」
 琵琶を片手に、飄々として弦を弾く天道椋(eb2313)に飛び込んで抱きつく瑞巴。年齢相応に元気である。
 ソレを見て、そーいうノリで自分も小坂部小源太(ea8445)に飛びついてみようかと考えた早苗だったが、早苗の横に『ぴったり』とついて護衛する紫電光(eb2690)の無言のプレッシャーには勝てなかった。
「敵だ! 向こうから大きな蛙!」
 そんな中、警戒していたルゥナ・アギト(eb2613)は叫ぶと、見えた大蛙に向け駆け出す。
 子供の背丈もありそうな大蛙、不気味な声で鳴くと獲物を捕らようと長い舌を放った。
「そうは、させないんだから!」
 舌が早苗に届く前に、光が十手で弾く。瑞巴がムーンアローで牽制し、小源太が刃を振り下ろす。鳴き声よりも不気味な音を出した蛙が痙攣していると、ルゥナが止めを刺した。
「空からもだ。油断するなよ」
 乃木坂雷電(eb2704)が言い放つ。空を見上げると、鷹が飛び舞っていた。
 弓を構える吹雪と、詠唱をする瑞巴。
 矢とムーンアローに両翼を射抜かれ、不安定に急降下した鷹は雷電に一撃を与えたが、切り墜とされた。
「バイブレーションセンサーの反応がまだある。来るぞ!」
 雷電の叫び通り、大蛙が次々と姿を現してきた。
「が、頑張ってくださいねー!」
 光に護衛されながらも後方で声援を送る早苗。冒険者達は彼女を守るべく、敵に向かっていった。

 敵の数は多く、それに比例した疲労がたまる。全員泥のように眠‥‥るわけにもいかないのが冒険者である。夜は交代しながらの見張りだ。
「交代ですよ、瑞巴さん」
 目を擦りながら辺りを見渡している瑞巴に、小源太が話しかけてきた。
「え、もうそんな時間? じゃあ、後はよろしく〜」
 瑞巴が向こうに行ったのを確認してから、先程瑞巴と見張りをしていた涼が言う。
「悪いですね、気を使ってもらって」
 小源太は二人の体力面を鑑み、早めに交代を促してきたのだ。
「まぁ、そういう時はお互い様と言うことで」
 そうして涼も下がり、小源太と光が見張りについたのだった。
 
「ふ〜、大量大量ー! ‥‥大量過ぎかも」
「ちょっと欲張っちゃったかな、早苗ちゃん」
 早苗と瑞巴は顔を合わせて苦笑する。
 噂通り多くの薬草が自生していた。採れた薬草の量は十分‥‥いや、十二分であった。
「軽佻浮薄だな」
「え?」
「浅はかなさまを表す言葉だ。過積載で自滅したら元も子もないだろ」
(「むむむむ〜」)
 雷電の言葉の通りなので言い返せない早苗。
 だがその言葉とは裏腹の行動。早苗の籠に手をかけると、雷電はそれを代わりに持ったのだ。
「あ、‥‥どうもありが―」
 早苗の語尾は、突然の電光によってかき消された。
 向かってきた電撃に対して盾を構える小源太。しかし間に合わない! 小源太を焦がす匂いと共に、目の前から男が姿を出す。
「あー! おまえたち、かたな盗もうとした!」
「何かと思ったら冒険者、しかもあの時の女かよ。丁度イイっ、ぶっ殺す相手にはな!」
 小振りな剣を手に、男は叫んだルゥナに肉薄する。その軽装に相応しい素早さでルゥナに斬りかかる―前に、男はルゥナから離れた。
 放たれた舌は空を切る。周りに、大蛙。それは更にルゥナを狙ったが、避けられ間もなく拳を見舞われる。
 再び間合いを詰めようとする男だったが、それは彼を狙う吹雪の射撃が許さなかった。
「くそったれが! うざってェ!」
「ウザったさは、お前もイイ線いってるよフレッガ」
 男の仲間と思わしき二人、そのうちの小柄な男が呟いた。
「やっと追いついたら、目の前には獲物と大勢の邪魔者。さて、どのように仕事をするか」
 もう一人の男は大柄の男だ。ジャイアントと思われる。
「別にこちらには争うつもりは無いんですよ。腕の立つと噂の貴方たちに仕事の依頼をしたいだけなんですがどうでしょうか?」
 会話の流れから、自分達との戦闘が目的ではない事を判断した涼は、交渉を切り出した。他のメンバーは、フレッガと呼ばれた男を警戒しつつ、大蛙に応戦している。
「鷹も現れて、こちらは手一杯どす。涼はん、交渉はお願いしますえ」
 京言葉で言って吹雪はストームを放つと、暴風は鷹達を吹き飛ばした。
 因みに、フレッガと呼ばれた男とそれを呼んだ少年の特徴は、ルゥナが事前に話していた『以前戦った強い賊』に合っていた。大柄の男は、どうやら『居合い抜きの男』とは別人らしい。
「こいつらがどれ程のものなんだろうな。冒険者っては交渉に値する腕前かどうか‥‥」
「以前冒険者と戦った時、利久がいながら奴等は誰一人死ななかった。腕はまぁ、それなりじゃないかな」
「ほぅ、なるほど。じゃ、宜しく話してこい、孝太郎」
「了ぉ解。‥‥てなワケだ。まず『依頼をしたい』って所から聞こうかな、手ぬぐいの兄ーちゃん」
「現況が現況です。ここで我々、魔物、この二つを相手にして無駄に消耗するするもの馬鹿らしいくないですか?」
「無駄な消耗をしない方法ってが、その『依頼』って事?」
「金子はご要望に沿えるように努力しますので。それとも、俺達の相手がしたいですか? 腕は立つようですが、数的不利をどう覆します? 怪我は治しますけど痛いですよ」
 それは涼が言い終えると同時。大柄の男が手にした斧を、涼に向けて一気に横に薙ぐ!
 斧は涼の首、その寸前で止まった。服の襟は少し切れている。
「数で勝てると思っているのか、お前? どっちが『上』で話し合いをしているのか、教えてやるか?」
 大柄の男は口の端を吊り上げながら、涼を睨む。
 随分長く感じた数秒。‥‥涼がようよう口を開いた。
「『切れ味の良い斧』ですね」
 飄々そう言いのけて斧を手でどかした。
「‥‥はっはっは! こいつはなかなか肝が据わってやがる。無理な額は望めなそうだな」
「アウディー、交渉しているのは俺だ。お前はちゃんと敵の相手しろっての」
 大柄の男、アウディーは「はいはい」と言って、大蛙に向かっていった。

 交渉は、『21Gと若干のアイテムでこの一戦』と、決まった。
「けっ、なんでクソ冒険者共と共闘してんだ。あいつらをさっさと殺した方が‥‥」
「ぼやくな。俺は『益』を考えた最善の策をとった。間違った行動じゃない」
 話しながら、フレッガと孝太郎は戦っている。
「ん〜、あの人だけ、何か感じ悪いなぁ。憂さ晴らしなら、モンスター相手にすればいいのに」
「前もそうだった、あいつ。柄が悪い、口が悪い、おまけに戦い方が卑怯」
「私、ああいう優しくなさそうな人だけは、どーしても駄目なんだよね〜」
 後ろから聞こえるティーンの婦女子(瑞巴、ルゥナ、早苗)の声に、キレそうになるフレッガ。
「なんか派手な奴が出てきたな。フレッガ、キレる暇あったら、あいつまでの道を開きな」
 アウディーが指指し促した先には、ジャイアントの彼に勝るとも劣らない体躯の持ち主がいた。二本の角と、大きな金棒を携え、体には鎧。山鬼の戦士だ。
「あれは21Gじゃ引き受けないから、お前ら相手しろよ。露払いならしといてやるから」
一方孝太郎は、顎で促す。
 フレッガはスクロールを広げてライトニングサンダーボルトを放ち、焦げた大蛙を孝太郎が薙刀で切り裂く。
 態度は失礼だが、ちゃんと山鬼への道を切り開いている。
 更に鷹が向かってきたが、吹雪のストームによってその飛行を妨害し、瑞巴が月色の矢で撃った。
 ルゥナは獣のような咆哮をあげると、真っ先に山鬼に飛び掛る。拳打が打ち込まれるものの、山鬼を止めるには至らない。お返しと言わんばかりに繰り出される金棒。それは身を翻すルゥナを確実に捉え、出血させる。
「止めろ! 俺が相手だっ、鬼!」
 雷電の刃を、掠りながらも避ける山鬼。荒削りながらも確かな技術を以って山鬼は金棒を振る。
「―ッ! 遼さん、お願いします」
 雷電の前に割り込んだ小源太が盾で金棒を受け止め、言う。後ろにはスクロールを広げた涼がいた。
 スクロールはシャドウバインディング。それは、山鬼の自由を封じた。
 その隙に、小源太の大振りの一撃が襲う。重さを乗せたシールドソードの刃は、山鬼の体に一本の縦線を引くと、そこから派手に出血した。
「くっ‥‥‥‥いい加減に沈みやがれ!」
 雷電によって袈裟切りにされる山鬼。
 そうして間もなく山鬼を倒し、他の敵も一掃した。


「では、これが約束の物です」
 それを受け取る賊。差し出された三つのアイテムを見て、フレッガが顔をしかめる。
「なんだこりゃあ? 使えそうなのは盾くらいじゃねぇかよ。馬鹿が、ナメてんのかお前!?」
「馬鹿はお前だよフレッガ。まだ京では俺達の手配書回っていないんだから、売ればいいだけだろ」
 孝太郎は、いい加減疲れたふうにして言った。
「たしかに売ればいいな。しかし‥‥」
 アウディーはアイテムの中から真珠のティアラを手に取ると、小源太に、ほいっと投げ返した。
「それはなんか脆そうだ。崩れたり傷が入ったりで値打ちが下がるような面倒なものはいらん。それは、そこの嬢ちゃんにでもやっとけよ」
 太い指は光を指差して言った。
「その代わりと言っちゃあ何だが、そこの金髪の嬢ちゃんの持っている酒をくれねえか? うちに無口で無愛想な剣士がいるんだが、そいつが結構な酒好きでな」
 瑞巴は言われるがままに日本酒を渡した。
「さて、じゃあ貰うモンも貰ったことだし‥‥くらいな!」
 フレッガは突然剣を振り下ろした。小源太はそれを盾で防げたものの、戸惑っていた。
「なんて顔してやがる? 賊相手にマトモな交渉が出来―」
 言い終える前に、フレッガは気絶し、その場に崩れた。後ろに、スタンアタックを放ったアウディー。
「賊でも、通す筋ぐらいは持っとけよ馬鹿」
 孝太郎はうんざりしながら言った。
「じゃ精々頑張ってくれ。俺たちは賊だから、次に会うときは敵だろうがな」
 アウディーはフレッガを背負い、言う。そして三人は去っていった。
「何あの不意打ち! 頭にくるなー!」
 早苗はフレッガの事を言って、頬を膨らましていた。
「事なきを得た。と言うことで気を取り直し、薬草採りに行きましょう。早苗はん、私達は最後まで御付き合いしますえ」
 吹雪は微笑すると、まるで子供宥める様にして言った。

 その後も幾度か敵に遭遇しつつもそれを撃退する。
 そうして、貴重な薬草を沢山採って、一行は帰路についたのだった。