【疾走眼鏡娘】風切る剣
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■ショートシナリオ
担当:はんた。
対応レベル:8〜14lv
難易度:やや難
成功報酬:4 G 15 C
参加人数:8人
サポート参加人数:-人
冒険期間:12月23日〜12月28日
リプレイ公開日:2007年01月02日
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●オープニング
鼻歌交じりに男はギルドにやってきた。随分と上機嫌な様子だった。
カウンターに立つと、彼はペンとインクを借り、自ら依頼書を書き出す。鼻歌を止めないまま書き綴り、終えたそれを受付の係員に差し出して見せた。
男は正装だが、襟をはじめてして各所、随分と着崩され‥‥あごに生える髭は整えられておらず‥‥身なりからしていい加減な男に思える。係員は、書類を入念にチェックした。
(「‥‥やっぱりいい加減な人じゃないっ」)
ため息をつきながら、彼女は依頼主に言い及んだ。
「マルグリッドさん、依頼書にいい加減な記述はご遠慮下さい。冒険者が困ります。チャリオットもグライダーも貴重なゴーレム兵器です。それを『好きなように編成して』なんて――」
「いい加減なんて、そんなことはない」
鼻歌を止め――しかし機嫌の良い表情のまま――男は言った。
「その記述に偽りはないんだよ」
ギルドに依頼書が張り出された。整ったスペルのそれは、書き主と対照的。
内容は王都から西へ進んだ位置にある荒原へのモンスター退治、及び現地調査。
ここは、この季節でも比較的温暖という事と、広大な土地と言う事くらいしか把握されていない。どんなモンスターがいるかなどは、噂程度の情報しかない。
貿易行路にもならず、対した資源もなさそうなこの荒野はその存在を半ば無視され続けていたが、ここになって、その土地の方向からモンスターの侵攻があり、その調査と退治が依頼になった運びである。
「噂のモンスターはホーンリザード。頭に角が生えたトカゲで、時折後ろ足で立ち上がり素早く走り回る事がある。角があるんで、それを活かした突進攻撃なんかが強力だ。しかも群れをなすそうなので、そのつもりで」
言うのは依頼主、マルグリッド・リーフ。無精髭をかきながら、話を続ける。
「というわけで当依頼に、フロートチャリオット二機、ゴーレムグライダー六機までの貸し出しが許可された。編成は冒険者各位に任せるよ。多分ホーンリザード以外にもモンスターがいると思うんだけど、その時は、まぁ適当――いや、臨機応変に頼むよ」
なんだか整っていない格好の男だが、これでも一応、フロートシップの船長だったりするから、世の中わからないものだ。
未知の要素がある‥‥とはいえ、広い土地なのでチャリオット、グライダーの練習も伴えそうだ。
因みに、あくまでも許可が下りている、というだけで、無理に全てを使う必要もない。
依頼書を眺めるのは、天界人の女性。黒のセーターにジーパン。黒髪のセミロングと、黒縁眼鏡。
比較的、地味な格好の女性である。
(「そういえばこの前、ゴーレムについて色々聞きました。なんでも、人型ロボットのことだけじゃないみたいで‥‥」)
今見ている依頼はどうやら、噂のゴーレム機器に触れる機会がありそうな依頼。
(「でも、私の出来る事と言ったら‥‥」)
現在練習中の射撃の腕前は、まだまだ初級レベル。その他に役立ちそうな特技と言ったら、自動車の免許くらい。魔法、ゴーレム操縦については、興味は持っているものの、正直未知の技術であるそれには、中々手が出せずにいたり‥‥。
(「また、冒険者の人達に色々と聞いてみようかな‥‥。もし何だったら、見学とかでも‥‥」)
野元和美21歳。まだまだ方向性が定まらない。
●リプレイ本文
「わしにグラダーやチャリオットを出させたんぢゃから、お主が何もしない訳は無かろう? 例えば、消耗品の援助など‥‥」
「も、勿論ですよ、卿」
こっそり貴族同士の与太話があったりするのだが、この辺で割愛する。
荒野を目指す、フロートチャリオット。運転しているのは天界人の女性だった。
「どうでしょうか? 最初より上達してきた様に見えますけど」
「そうですね‥‥最初よりは」
と言いつつ、まだ緊張感を残しているのは野元和美。傍らで音無響(eb4482)が操縦の手ほどきを行っている。
「基本は日本で車を運転するのと変わらないはずですよ。浮かべたイメージが直接伝わる分、慣れたらこっちの方が楽かも。和美さんは免許あるし、想像力も豊かだから乗ってみればきっと上手くなりますよ」
「え、えと‥‥想像力云々は、まぁ、否定しません」
「あ! いえアノ‥‥お、俺も手伝いますから一緒に頑張りましょう!」
「は、はい‥‥」
何だかチャリオットの運転よりぎこちない様子の二人を微苦笑しながら、アリオス・エルスリード(ea0439)が見つめていた。
「野元はオーデ卿にチェスで勝てるくらい頭が良いのだから、きっと技術の飲み込みも早いだろう」
「アリオスさん、その節はお世話になりましたっ。‥‥まぁ、そうだといいんですけど。逆に体を動かすのは苦手ですし‥‥」
「それなら、ウィザードに代表される精霊魔法使いにも向いていると思う」
彼は更なる提言を加えるも、和美には『魔法使い』と言う言葉が今更ながら、どうにも現実離れしていて釈然としない様だった。
「和美ちゃん、この操縦って結構疲れるでしょ?」
専門知識外だから深く言えないけど、と前置きを言ったうえで、無天焔威(ea0073)が和美に聞く。
「あ‥‥そういえば確かに、不思議と車の運転なんかより疲れが‥‥」
「どうやらこれの操縦にも体力使うみたいなんだ。技術はともかく長時間維持できないなら魔法かな」
「魔法、ですか‥‥」
只今和美の頭の中では、某眼鏡の少年が箒に跨って飛びまわっている。
それくらい、和美にとって魔法は、非現実的な存在であった。
「ま、何をするにしても多少は体力あった方がいいわよー」
気軽な声色のままで、フォーリィ・クライト(eb0754)はクレイモアを持ち上げてみせて言った。しかも、片手で持ち上げて。
背丈はそう自分と違いが無い彼女が、どうしてまた2mにも及ぶ大剣をあの様に扱えるのか‥‥和美にとっては魔法よりフォーリィの怪力の方が不思議に感じたかもしれない。
自分と彼女の、体格の違いとは‥‥と、和美は考える。背丈は自分と同じ位‥‥むしろ、少し自分が高い気もする。腕も筋骨隆々といった感じではない。
‥‥となると。
和美は、己の黒セーターへ視線を落とした。
(「違い‥‥やっぱり胸が――」)
「野元。何か凄く見当違いな事を考えていないか?」
「え!? そ、そんな事は‥‥ありますけど、まさか、アリオスさんも魔法使いですか?」
「‥‥違う」
対人鑑識の知識を持つアリオスは、咳払い一つした後、前方を指差す。
「どうでもいいが、前を見ろ」
前方には、むき出しの岩石。
「カズミ、避けて避けてー!」
フィオレンティナ・ロンロン(eb8475)の叫び。急旋回したチャリオット内で転倒した彼女の顔は見えないが、叫びからしてその表情は推し量るに易い。
そうしてなんとか岩との正面衝突を避けられたチャリオットは、擱座した。
「まぁ、これは車で言うエンストみたいなものです」
「‥‥すいません」
苦笑いの響に、心底申し訳なさそうな和美。岩と衝突して機体全壊‥‥など、ドジっ娘ですむレベルではない。
「どなたか、お怪我はありませんか? 何事も、初期段階の処置が大事です」
応急手当キットを取り出し、周囲の仲間を見渡すエリス・リデル(eb8489)。因みに、自身の頭上にある膨らみには気づいているのだろうか。
そのタンコブの上‥‥上空に、弧を描く影。ゆっくりゆっくり、グライダーが舞い降りてきた。
「何やら賑やかで楽しそうですけど、大丈夫ですか?」
グライダーから降りたシルビア・オルテーンシア(eb8174)は、いたずらっぽい笑みを浮かべながら歩み寄ってきた。
何か曖昧に言う和美にはあまり深く触れないで、シルビアは指差す。
「この方向、まっすぐ行けば今回依頼された場所である荒野に出ます。言われた通り、ホーンリザードらしき存在が確認できました」
敵の名を聞いて、僅かばかり瞳を揺らした和美。そんな彼女の表情を見た焔威であったがその場ではあえて、言わなかった。
シルビアは続ける。
「丁度いい‥‥なんて言ったら不謹慎ですけど、この辺で今日は野営としましょうか。もうじき陽精霊がお休みになる頃です」
いつの間にか、天を染めるは夕の色。じきに、空は月精霊の舞台と移行するだろう。
スレイン・イルーザ(eb7880)が乗っていたグライダーもこちらに向かってきて、無事に着陸する。
そうして、まだ空に朱が残っているうちに一同は簡易テントを組み始めた。
(「何コイツ。警戒心薄いなー。きっとこいつら、トカゲ達の格好の餌だろうね」)
食料調達に出た焔威は、程なくして獲物を発見。渡り鳥だろうか、群れをなしている。
(「さっき兎も見たけど、和美ちゃん慣れていなそうだし、獲るのは鳥肉にしようかな」)
ちゃっちゃと狩をしながら、焔威は思う。
(「‥‥そうだよ。和美ちゃんはまだ色々と、慣れていないんだよなー」)
「さて、ご飯の仕度でも‥‥って、アレ? エリスさん、それは?」
フォーリィは、食料を取り出していたエリスに問う。
「依頼人の方が食料を提供してくれました。年末総決算で予算が余って、羽振りがよくなったのでしょうかね」
肉の乗った、なかなか逞しい(?)内容の弁当である。まぁ、タダで食料が提供されるならそれはそれで‥‥と、フォーリィは曖昧に頷くに終わる。
戻ってきた焔威の収穫をこれに足せばこの依頼期間中、食べ物には困らないだろう。
「とりあえず今回は折角の機会なのでゴーレムに触ってみると良いだろう。結局選ぶのは野元だからな」
食事中、ちょっとした雑談の感覚でアリオスは話し出したのだが、和美の表情は、まるで師事を受けるそれだ。
「ただ、この世界には恐獣に代表される強大な敵がたくさんいる。ある程度絞って技能を鍛えないと抗する事は難しいと覚えておいてくれ」
「何にでも手を出していたら、器用貧乏になってしまう可能性も‥‥という事ですね。ありがとうございますっ、アリオスさん」
深くお辞儀をする和美、「礼に及ぶ事じゃない」とアリオスは苦笑と共に返した。
「そういえば、あれから漫才の練習はしていますか? 漫才は万国共通、お笑いは世界を救うのです」
という事で、エリスと即興の漫才をし始める和美。ノリノリのエリスはまぁいいとして、やはり和美の動きはたどたどしい所が残っている。
「敵とチャリオットで戦う時に正面は避けたいですよね。何か群れの注意を上空からひきつけるようなことができればいいのですが」
自身の輪郭を指でなぞりながら、シルビアは言う。勿論雑談ばかりではなく、戦いに備えて作戦も練っている。
「焔威の獲ってきた肉を使って誘導出来るかと。俺は優先するのはチャリオット操縦のつもりだが、人数の調整次第ではどちらにも回れる。尤も、航空技術はまだ浅いので、無理は出来ないが‥‥」
そうした話し合いの声も静まり、やがて交代の見張りを残して就寝となる。
「和美さん、こ、これ‥‥折角のイブだから、少しクリスマスっぽい事をと思って‥‥」
消え入りそうな声で、響は和美に差し出したのは‥‥珊瑚の指輪と香水。赤と白のリボンが、クリスマスを髣髴とさせる。
そう、そういえば天界では、この日はそういうイベントのある日。
「え? あ、あのこれって‥‥?」
「めっ、迷惑じゃないといいけど‥‥」
暫くの沈黙の跡に、切り出したのは和美だった。
「ぇと、今回は‥‥ちょっと‥‥あ、あの、プレゼント自体はすごく嬉しいですよ!? でもその‥‥クリスマスと言ったらプレゼント『交換』じゃないですか。だから、一方的に貰うのはどうかな? ‥‥って、思いました‥‥」
しどろもどろになって言う和美。和美にとって響は、サンタクロースではない様だ。
だとしたら、何なのだろうか?
陽精霊の恩恵で空が色付き始める時間――すなわち、朝――素早く身支度を整えた冒険者達は出発。
チャリオットを走らせていけば、いよいよ、冒険者達は舞台へと躍り出る。
偵察のシルビアが、グライダーの高度を下げてチャリオットに近づいてきた。彼女の指は数字を示す――5と。
「さて、来たわよ〜。皆、準備できてる?」
相変わらず、軽くない武器を気軽な口上のまま片手に構えるフォーリィ。
「‥‥ああ、さくさく撃破していこう」
既に2本の矢を番えているアリオス。
「よーっし、とっかげ退治だぞーっと♪ カズミ、今回も頑張ろうね!」
「ええと、じゃあ私は‥‥とりあえず、不慣れな操作で足を引っ張らない様に頑張ります」
ポジティブなフィオレンティナを見習ってほしい位の、後ろ向きな目標の和美。
そうして前方から見えてくるシルエットは‥‥段々と鮮明になってくる。
「て、敵が近付いて――」
和美の語尾を掠め取ったのは、二筋の銀光と、疾風。
首筋に二つ鏃を埋め込まれ、更に衝撃波によって吹き飛ばされたホーンリザートは、その自慢の角の間合いに入る前に屠られた。
アリオスとフォーリィは抜かりなく、次の標的を見据える。
「やっぱり、天界の人達ってすっごい! よーっし、私も!」
フィオレンティナは言葉に憧憬を含めて意気込む。大きく振り被って振り下ろされた彼女のハルバードは、その斧部で、接近してきた敵を切り裂いた。
しかし、揺れる足場に運悪く重心を揺るがされた彼女は、武器の重さによろけてしまう。敵は、一撃では死に至っていない。短槍に匹敵する角が、チャリオットへ向けられていた。
「ひーん、ホムライ助けてー」
「戦場では、諦めない事が大切なんだよー」
焔威の槍がホーンリザードに二つ風穴を作るとそれ動かなくなり、そのまま後方へ消えた。
「こいつで一区切りか」
あと一歩でチャリオット内に入る位に組み付いてきたホーンリザードをスレインのサンソードが貫き、更に袈裟に斬る。唸りをあげた喉には矢が刺さり、トカゲは落ちていった。
「シルビア機の誘導で敵が集中している。あそこに近付いてくれ」
「はい!」
再装填しながらアリオスは目標を指示。
肉を下げながらゆっくりとグライダーで飛行するシルビアの下には、ホーンリザードが群がっていた。
チャリオットは、一旦減速して旋頭すると、目標目掛けて再びスピードを上げてゆく。それに伴い、吐き出す息も、風景も‥‥すぐさま後方へ流れていった。
風が冷た――いや、痛い。
「よーし、そのままガンガンスピード上げてー!」
「は、はい!」
刺す様な寒風など気にも留めず、身を乗り出すフォーリィ。その構えを見て、そして耳に入ってきた詠唱の声を聞いて、メンバー中一番身長の高いスレインがシルビアに向けて両手を翳す。気付いたシルビアは一瞬、それが何か考えたが‥‥指が折られていく様を見て、それを手信号と判断した。
5‥‥4‥‥3‥‥2、1――今ッ!
グライダーを上昇させその場を離脱したシルビア。その下では、魔力によって作られた重力の波がホーンリザード達を襲っていた。
グラビティーキャノンを放ったのはエリス。その効果に、運転しながらも和美は驚きで目を点にする。
「これでぇ! 吹き飛べーー!!」
剣風に咆哮を混ぜフォーリィがランスを横薙ぎにすると、群れはソードボンバーに飲み込まれる。既にアリオスに射られていた敵は、その段階で既に致死だ。
焔威とフィオレンティナが追い討ちをかけて、それでも生き残っていた者には、空からの一撃。
響は短槍をしまい込んで、己がとどめをさしたホーンリザードにチラリと目を向けた。
(「俺達だって‥‥やるしかないんだ」)
仲間達の空の目になるべく、彼もシルビアを追う様に上空を目指した。
「皆さん、反応です!」
「休憩らしい休憩も、とらせてくれないのね」
魔法によって敵を感知したエリスの知らせ。シルビアは嘆息しながら苦笑を浮かべ、グライダーへ乗り込んだ。
「野元。行けるか?」
「だ、大丈夫ですよ〜。もぅ、バッチリ休みましたから」
アリオスに返答する和美は、明らかにおぼつかない足取り。
「スレイン、操縦変わってあげて」
「了解だ」
「焔威さん!? わ、私大丈夫ですっ」
「じゃ、真っ直ぐチャリオットまで歩いてみてー」
「は、は〜ぃ‥‥」
これは、ひどい千鳥足。
「和美ちゃんは、休んでいていいよ。今の和美ちゃんは戦力として数えないよ〜‥‥人どころか人以外の生き物を殺した事も無いでしょ」
「そ、そうですけど‥‥私だって!」
衝動的に反論したものの、それ以上、焔威に返す言葉の無い和美。
そんな彼女などお構いなしに、ホーンリザードが突っ込んできた。焔威は和美を下げ、襲来者と対峙する。
その角が届く前に、両手の武器で相手の双眸を貫き潰した焔威。
のた打ち回る一匹のトカゲを指差し、彼は言う。
「あれ、殺せる?」
「え‥‥?」
歯切れの悪い、和美の声。黒の瞳は、ホーンリザードと焔威を行ったり来たりして定まらない。敵は弱ってはいるものの‥‥まだ息はあり、それは和美目掛けて跳躍してきた。
「‥‥今のあなたに必要なのは、『正しい選択』じゃない」
が、しかしスレインの繰り出した刺突がそれを阻む。
「迷わない事だ」
そう静かに言って刃を引き抜く。ホーンリザードはもう動かなくなった。
「皆さん、急いでチャリオットに乗ってください。何か‥‥酷いモノが来ますよ」
おっとりとしたまま言うエリスであったが、その指差す方向にあるのは、ホーンリザードの何倍もの巨躯のトカゲ‥‥つまりそれは恐獣!
「あれは、相手が悪過ぎる‥‥スレイン、発進してくれ」
全員の乗車を確認するとアリオスは言い、チャリオットが急発進する。途中にもホーンリザードがいたが、エリスとフォーリィで対処。すると‥‥。
「あちゃー、共食い。いや‥‥食物連鎖、かしら?」
転倒したホーンリザードが、後ろから来た恐獣に食われていく様子を見て、思わず呟くフォーリィ。
しかし、そんな強大な恐獣もチャリオットの機動力には敵わず、程なくして振り切ることになる。
「大型恐獣と思われる姿を確認、か」
依頼主、マルグリッドは報告書を読み続ける。それに不満の色は無い。ホーンリザードの撃退数そのものは上々であるし、そもそも予想外の敵として出てきた相手のタチが悪すぎる。逃げるという選択肢、これは間違いではない。
「では‥‥ゴーレムの手配かな?」
マルグリッドは、椅子から腰を上げた。