【護送眼鏡娘】思いとお願い
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■ショートシナリオ
担当:はんた。
対応レベル:8〜14lv
難易度:難しい
成功報酬:4 G 15 C
参加人数:8人
サポート参加人数:-人
冒険期間:02月16日〜02月21日
リプレイ公開日:2007年02月26日
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●オープニング
●眼鏡娘は苦悩する
ここは冒険者ギルド。本日も色々な依頼が張り出されている。
腕っ節に自信ありげな戦士は強敵を求め依頼書を眺め、また初老のウィザードは、自分の知識を活かす場を求め依頼を物色していた。
そんな中、端のテーブルに腰掛け、頭を抱えながら悶々と悩んでいる女性が一人。普通、依頼を求めてギルドに来ると言うのに、一体何しているのだろうか。
(「うーん、冒険者として生きるって‥‥難しい事なのかも‥‥」)
悩める彼女は天界から来た女性、野元和美。天界人なら黒縁眼鏡でいて華奢、地味な服装の彼女を見て『図書委員』と言う単語をイメージするだろう。事実、高校では図書委員であったが。
そんな彼女の悩み‥‥それは自分の在り方。
彼女はこのアトランティスに召還され、成り行きで冒険者になったのだが‥‥その方向性は定まっていない。
今までいくつかの依頼に参加してきた。しかし自分の意思で、何か決断を下す様な事は少なかった。
ある依頼で、傷を負ったモンスターを指差し一人の冒険者が彼女に問うた。
「あれ、殺せる?」
不確かな決意は、戦いにおいては命取りである。曖昧な心で生き残れるほど、戦場は甘くない。
もしかしたら、その時の言葉が、彼女を今まで延命させたのかもしれない。
(「あー‥‥、何であの時、まごまごしたんだろう私‥‥。出来る出来ないくらい、スパっと言えばいいのにぃ〜」)
頭を抱えながら、更にテーブルに沈む彼女。ここは依頼を求めてくる場所、冒険者ギルド。ハタから見たら、彼女はどうみても不審人物である。
「貴女の名前は確か‥‥カズミ」
そんな不審人物に声をかける、一人の少女。銀の髪は前が切り揃えらられ、控えめに装飾してある身なりからは清楚な貴族をイメージさせる。まぁ、現に彼女は貴族令嬢なのだが。
(「あ‥‥、えーっと確かこの人は、以前社交パーティーの会場で会った人‥‥」)
貴族令嬢ルティーヌ・ポーラス。彼女はギルドに依頼の申請に来ていた。
●只今張り出された依頼
貴族令嬢の護衛依頼。
依頼期間は5日間。期間中の食料、宿営機材は参加冒険者持ち。
2日目から4日目の計3日間は林道を通る。この林道に最近、野盗や狼の出現が報告されている。注意すべし。
依頼主であり、護衛の対象でもある令嬢、ルティーヌ・ポーラスは17歳の淑女である。くれぐれも粗相の無い様に。
●年下のお願い
「お恥ずかしい話ですが、友好の輪が狭い身でして。知っている人間がいてくれるだけで気分は大分楽になります。カズミがこの依頼に参加してくれると‥‥個人的には嬉しいです」
能面の様な変化の無い顔とは正反対の、感情的なルティーヌの言葉。
和美は人に頼まれると断れない性格。ましてやそれが年下となれば尚更。
「は‥‥はい、わかりました。私この依頼、請けます。私に出来る事は限られますけど‥‥なるべく、頑張ります」
「無理の無い範囲で、お願い致します。それでは、依頼当日に会いましょう」
野元和美21歳。
■天分
高め:器用、直感、知力
低め:体力、敏捷、精神
●戦闘スキル
・射撃:初級上位
・回避:初級中位
●一般スキル
・地上車:専門下位
・天界知識万能:初級上位
・家事:初級上位
・話術:初級中位
・踊り『社交』:初級下位
・書道:初級下位
心も実力も未熟。しかし、道はまだまだ続いている。
●リプレイ本文
幌の中から出てきたのは、物静かそうな銀髪の少女。
「皆様始めまして、ルティーヌ・ポーラスと申します。この度は依頼を惹き受けて頂き感謝しております。不調法者ではありますが依頼間、どうか宜しくお願い致します」
恭しく頭を垂れる依頼主、ルティーヌ。その振る舞いは見た目以上に大人な印象を見る者に与えてる。
「護衛依頼ですね。宜しくお願いしますルティーヌさん。それと‥‥」
返礼を済ませ、エリス・リデル(eb8489)は人差し指を依頼主の胸元に向けた。ルティーヌはそれが何を指すかわからず、まごついているところでエリスが近付きそれの調子を直した。
直したのは、彼女のブローチの傾き。若干斜めになっていた。
「これは‥‥本当に、不調法者となってしまいましたね。すいません」
表情はそのままだが申し訳なさそうに声を小さくする彼女に、エリスは軽く微笑んで言う。
「お気になさらずに。何なら、斜めのままでも結構です。私はエリス、どうぞ気軽に『エリスお姉様』と呼んで下さい」
「ルティーヌさん、こんにちはっ」
ルティーヌに声をかけてきたのはティス・カマーラ(eb7898)。いつも変わらぬ快活な様子で彼は話しかける。
「この前のパーティは楽しかったな。今回も宜しくね」
「ええ、以前はお世話になりました。今回もまた、宜しくお願いします」
「あ、私もいますよー」
知り合いなら幾らか気安いのか、ティスと和美には僅かながら頬を緩ませながら、ルティーヌは応じていた。は思う。きっと依頼主は初対面には緊張するのだろう、と見てアンドレア・サイフォス(ec0993)は彼女に話しかける。
「はじめまして、アンドレアと言います。私もいつ無作法をはたらくか分かりませんが‥‥、お互い、堅くならずに参りましょう?」
「そう言って頂けると‥‥助かります。外に出る機会、事あるごとに父から『家名を貶めてくれるな』と言われていましたので‥‥」
「ルティーヌ殿は厳格な家柄が出身と言う事ですか、道理で聡明な方に見えるわけです。貴族の令嬢と農民上がりの芋戦士とやはり、違う方の様ですね」
「芋戦士なんて事、ありません。アンドレア様も一人の天界人の騎士として私は見ています」
「『様』は要りませんよ。堅くならずに、参りましょう?」
「‥‥そうでしたね」
苦笑しながら、アンドレアは思う。こうした、取り留めの無いやり取りで幾分か緊張が解れれば良い‥‥と。
冒険者や以前からの知り合いである和美へ挨拶を終えた後、シルビア・オルテーンシア(eb8174)がそうルティーヌに会釈。
「ルティーヌさんも和美さんのご友人だそうで、よろしくお願いしますね」
友人の友人、その友人の‥‥人の輪とはつまる所こういう事か。そんな事を考えていたルティーヌに羽根を近づいてきたのは、小さな女の子の妖精。
「シフール、ではありませんね」
「エレメンタラーフェアリーで、名前はサーシャ。元気な子だから道中退屈せずに済みますよ」
「っすよー♪」
(「‥‥かわいい」)
どうやらお気に召された様だ。安心し、アレクセイ・スフィエトロフ(ea8745)は馬車の方に向かった。
「さてと、か弱き女性の護衛ですからね。あまりストレスを感じさせない様に任務を遂行しましょうか。馬車の具合、どうです?」
アレクセイに問われたフォーリィ・クライト(eb0754)は、鞍等の按配を見て、満足そうに頷く。
「躾もしっかりしてるし‥‥これなら不自由しなさそう」
借り物の馬車だが、質はそれなりのものである様だ。
道中、和美はフォーリィから乗馬の手解きを受けていた。馬に関してフォーリィは達人の域、きっと和美が得られる物は大きいだろう。
馬車の中では、シルビアと音無響(eb4482)が、お互い集めた情報を照合中。
「事前の報告等を鑑みるに、この地点はまだ襲撃の恐れがありませんね」
「ですので、和美さんも安心して馬術を習えるでしょうね」
「シルビアさん! お、俺はそう言う意味で言ったわけじゃなくて――」
「『そう言う意味』とは、どう言う意味でしょう?」
「う、ぇぇと‥‥」
シルビアに聞き返されると、それはそれでバツが悪そうに口籠る響。
「お互いが思いを溜め込むだけだと、仕事にも影響するからね。それぐらいなら夫婦になってくれた方が、お互いの力を補完しあえて良いことになるんじゃないかな?」
「ティ、ティスさんっ!?」
ティスの言葉は響をこの上なく動揺させた。この抜群のタイミングで介入してくるティスは、好奇心と言う点において非常にパラという特徴が顕著に現れている‥‥そんな事を思いながらソフィア・ファーリーフ(ea3972)は上品に微笑んだ。それにしてもティス・カマーラ、凄い事をサラっと言ってしまう人である。
「もどかしさの中にもお互いを想い合う、そんな恋を私も体験してみたいです。あ‥‥勿論プラトニックな意味で、です」
「貴族の令嬢であっても、想い慕う事に罪悪はありませんから」
無表情のまま恋する乙女な台詞のルティーヌがどこか可笑しくて、思わずアンドレアは傍らにて笑みを浮かべてしまう。
「と、とりあえず、和美さん悩んでいたみたいな様子が伺えたから、出来ればその相談を‥‥」
馬車内は盛り上がり、時折その言葉は外にも漏れ‥‥その度に目を泳がせたり眼鏡の位置を直したりする和美であった。
時は夕刻。何滞りなく一日目の経路が過ぎていって良かった‥‥そうアレクセイは安堵しながらも明日に備え怠る事無くナイフの手入れ。灯りの反射が、アレクセイの顔を照らす。
一方、和美の方はというと‥‥
「目を閉じて集中すると、不思議小人達がハイホーと出てきて頼んだことをやってくれる、そんな感覚です」
「う、うーん。ちょっと判ら――」
「なるほど。流石エリスお姉様の説明は判り易いです」
「え、今のでわかったんですか!?」
女三人寄れば、何とやら。エリス、和美、ルティーヌが、精霊魔法の話で盛り上がり中。
「魔法に興味あります? お時間頂ける様でしたら基礎からの説明しますよ?」
「あ、すいません。お願いします」
そこに、ソフィアが加わってくる。
「地水火風陽月、精霊さんと仲良くなってお願いを聞いてもらう様なものです」
ソフィアの教え方もなかなか心得たもので、和美は和美で素直に聞いているので、学習の効率は良い。
「魔法は危険も伴うし、悪用したら大変な事になっちゃうけど、便利なものには違いないからね。何も考えずに空を飛ぶのは楽しいよ?」
「好きなものこそ上手なれ、と言うのは魔法にも言えるでしょうね。ティスさんの言う様に、自分の興味や好みからまず踏み込んでみてもいいかもしれません。私は、大好きな植物さん達とお話したいな〜、と思ってたら、気付いたら地の魔法使いになってましたよ」
「地の魔法、ですか。それってどんな物があるのですか?」
「それでは、一からお教え致しましょう」
ソフィア達の魔法講座は、夜更かししない程度で続いた。
魔法は、境界を越えた会話さえ可能する。
(「貴方の枝を折ったのは誰?」)
(「‥‥狼」)
(「それは、いつ?」)
(「‥‥少しだけ、前」)
木への語りかけを終えたソフィアは、得られた情報をアレクセイ、シルビアに伝えた。
二日目、依頼はここから来襲される可能性が高まってくる。それ故、彼女ら三人を先行偵察に出る形をとっている。先行偵察と言う事であれば当然、馬車とある程度の距離を置く必要がある。
「狼、か‥‥。まぁ盗賊相手なら、女性3人を見て油断してくれれば僥倖ですけどね」
この作戦は、先行3人が襲撃を受けても逃げ切れる機動力、もしくは仲間と合流するまで堪えうる持久力がなくてはならない。この中で一番小回りの利くアレクセイは、重要なポジションにいると言えよう。
一行は、緊張を孕んだまま歩を進める。
結局この日は2匹ばかり狼が現れたが、先行組が処置し、別段大きな消耗もなく戦闘を終えた。
陽は落ち、晩。
見張りにティス、響、和美で出ているのだが、ティスは(気を利かせて?)少し離れた所で警戒に当たり‥‥つまり響と和美で二人きりのシーンとなっている。
暫く沈黙が二人を包んだが、俯き加減の和美に対して、響が静かに口を開いた。
「何だか‥‥悩みがあるみたいですね。多分、この間の依頼の事ですよね」
言われると――図星なのであろう――和美は一瞬肩を揺らし、深い溜息を吐く。感情が判り易い女性である。
「‥‥やっぱり、そう見えます?」
そうして彼女から、滾々と胸の内が語れる。
「うーん、和美さんは日本にいた時、何か目指してるものありました?」
「‥‥ぇ?」
「俺、世界は変わっても、今迄の夢を大事にしていればいいんじゃないかって思います。俺も最初は戸惑ったんだけど、色んな人に出会って、結局目指す夢との接点で冒険者してますから。せめて、出会った皆位は守りたいって思ったのも強いんだけど。和美さんにも出会えたし‥‥」
「あ‥‥わ、私も。響さんに会えて、良かった‥‥て思っていますよ」
「俺も戦うのは怖いし、一年以上たつのにまだ迷います。だから、焦る必要はないですよ、だって俺達はいつだって一人じゃないから。徐々に自分らしさの中から答えを出していけばいいかなって、でも、それでもまだ迷う時は‥‥俺が側にいます」
そう言って、微笑を浮かべる響。普段は女性に見間違える様な顔だが、その時の和美には、少しだけ違って見えていた‥‥かもしれない。
「あの‥‥」
「わぁあ!?」
申し訳なさそうに声をかけてきた、シルビア。彼女に脅かす意図はなかっただろうが、響は狼狽して思わず声が裏返ってしまった。
「そろそろ見張り、交代の時間ですが‥‥お邪魔してしまったでしょうか?」
「「いえいえ! 交代ですね」」
和美と響は声を揃え、そそくさと退散していった。
女性陣の天幕内でも、和美の話題は続いていた。
「‥‥貴女は貴女のままでいる事が重要なんじゃないでしょうか? 確かにこの世界に馴染む事も必要ですが、染まりきってしまったら‥‥元の世界に戻ったとしても、心が戻れないんじゃないかと思います」
そして、アレクセイは加えて自分が持つハーフエルフ故の不安についても吐露した。いつか自分が、無感情のまま凶刃を誰かに向けてしまうのではないか‥‥と。
(「アレクセイさんにもそういう不安、あるんだ‥‥」)
「和美の行く道は和美次第だろうけど‥‥、もし命のやりとりする依頼を受ける方面に進むなら覚悟持たないとだめよ。重さに負けてためらわれたら自分と仲間を危険に晒すわけだから」
幾度もの戦場を乗り越え、剣を振るったフォーリィだから尚更、その言葉には強い意味が込められていた。和美は頷きながら、それらを胸に刻む。
「まぁ、急ぐわけじゃないしじっくり考えたら良いんじゃない? ‥‥話は変わるけど和美ってあたしを注視する事あるけど聞きたい事あるなら答えるわよ?」
「‥‥あ、えぇーっと、その‥‥とりあえず、普段、何食べています?」
聞いてどうするつもりなのだろうか、と。
兆候が見えたのは、3日目の昼過ぎ。
「皆さん、狼が5匹‥‥近いです」
先行組。ソフィアは小声で仲間達に伝えた内容は、バイブレーションセンサーによって感知した内容だった。
敵は、近い。
ソフィアはフォーリィから借りたセブンリーグブーツを履いている。一時撤退の準備は、出来ている。
あとは、どちらがスイッチになるか‥‥。
「襲撃? 盗賊!?」
「いえ、狼です」
後退してきたのはソフィア。狼に囲まれる中、シルビアとアレクセイが何とか道を開いたのだ。
「よし、ちょっと飛ばすわよ! それと‥‥ロロ!!」
フォーリィは自分ペットのイーグルドラゴンパピーに何か命令した後、馬車の速度を上げる。間もなく敵が見えてきた。行組と戦っている狼と、その後ろになんと盗賊達が構えていたのだ。
「この機に乗じて‥‥いや、もしかして狼を使役している? どっちにしても‥‥好き勝手にはさせないよ!」
ロロによる陽の光線と、ティスの雷閃。特に、ティスが放ったそれは専門の域に達している精霊魔法。致命傷ではないものの、盗賊の男を退けるに至る。
更に、加えてエリスのグラビティーキャノン。これらを受けて、立っていろという方が無理な注文だ。
盗賊の配列に、穴が開いた。
「和美! もう馬車、操れるわね!?」
「は、はい。基本的な事なら、大体‥‥」
フォーリィは、和美手綱を渡す。
「じゃ、これ握って。このまま、突っ込むわよ!」
「はい、って‥‥ぇぇえ!?!?」
かくして馬車は、突貫した!
盗賊陣を突破して、一気に先行組と狼に接近する。
「てぇぇええええいっ!」
フォーリィは跳躍しつつ振りかぶっていた剣を、横に薙ぎ斬る。彼女の咆哮と共に放たれた剣風は、炸裂しながら狼を巻き込んだ。彼女が加われば、狼程度なら敵ではないだろう。
「舐めやがって‥‥上等な馬車だ。中に貴族がいるだろうぜ、引っ張り出して人質にしろ!」
男の叫び声は、嫌でも馬車の中に聞こえてくる。
ルティーヌの表情は変わらぬまま‥‥彼女の肩が震えた。
その冷静は、装い。見取ったアンドレアは彼女に微笑む。
「御無礼を。皆が蹴散らすまでの辛抱ですから」
雑談の時の様な、気さくな笑みで。
「さぁ俺の後ろに!」
響は構えて盗賊達と向き合う。依頼人と、そして和美に敵を近づかせない為。
アンドレアも、前を向く依頼主に仇なす、敵を倒す為。
奇声をあげて、盗賊が切りかかって来た。手にした鈍器は勢いよく振り下ろされる。が、それはヘビーシールドによって弾かれる。それによって生じる僅かな、相手の間隙。
刺突。
逃す事無く伸びたアンドレアのトライデントは、容赦なく盗賊の体内に潜っていった。アンドレアが盗賊に向ける顔は、一人のファイターとしてのそれだ。
しかし多勢に無勢‥‥こんな時に、精霊魔法は役に立つ。ソフィアのアグラベイジョンが、相手の動きを鈍らせる。彼女ほど魔法に習熟していれば、専門レベルの魔法でさえ、印無しで成就出来る。
攻め入るもの対して、アンドレアと響で対処し、術士達がそれを援護していた。
己の不利が段々理解してきたのだろう、攻めあぐねて――そんな盗賊の視界に金髪が煌き、人影が‥‥。
男の意識は分断され、その場に倒れた。気絶へ誘うスタンアタック。放ったのは、アレクセイだ。
狼の方は片付いたようだ。狼に対処していたメンバーが雪崩れ込むと、結果、挟み撃ちの様な形となった。
こうなればもう、この戦いの結果は予想するに難(かた)くない。
「皆様のお陰で、無事でいられました」
かくして、ルティームは傷も乗り物酔いも無く目的地へ着けた。一行は旅の無事と、分かれ惜しさを口にしながらも‥‥解散していった。
(「できれば今度も、護衛を雇いたいですね。危険な道では、なくても」)
そんな事を思いながら、ルティーヌは皆を見送った。