トライアングル・ソード
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■ショートシナリオ
担当:はんた。
対応レベル:8〜14lv
難易度:難しい
成功報酬:5 G 97 C
参加人数:10人
サポート参加人数:1人
冒険期間:06月03日〜06月10日
リプレイ公開日:2007年06月21日
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●オープニング
大きな翼を持つかの者は、その地の王であった。
ひとたび両翼をはためかせれば、自分の支配領を一望できる。
今日は油の乗った肉が食べたい、そんな事を思えば眼下の深緑へ急降下して手頃なオークを摘んでくれば事足りる。
ピラミッドの頂点、文字通り無敵。昼夜に区分なく一抹の不安さえない。
一体の森はかの者にとって庭園であり、食堂であり、宮殿であった。
だが、侵略者は何の前拍子も無くやってきた。
侵略者は、大きなトカゲ‥‥いや、この際は『巨大な』と言うべきか。
大きなトカゲ達は、王の食料を食い荒らし、王が好んだ風景を薙倒しながら闊歩し、我が物顔で森を侵していった。
王は、玉座を揺るがす者達を許さなかった。
「隊長、討ち漏らしになっちまうとは珍しいね」
ニヤニヤとしながら言う傭兵風の男、アーキン・レゥグに対し、彼は別段深いの意を浮かべず――恐らく、慣れているのだろう――に答える。
「運用する部隊の練度と、現地の敵戦力に大きな見積もり間違いがあった。これは私の責任だ」
彼は卑下する風でもなく、ただ事実としてそう言った。この男、マルグリッド・リーフは過度な自戒に沈んで責任逃れをする程の無能者ではない。地図を取り出して説明に入る。
「しかし、恐獣達の進行方向から鑑みるに、恐獣達はここの森に引っかかる」
「なんで言い切れます?」
「森には多数のオーク種生息が確認されている。湖からの水源もある。飲食に十分過ぎる環境だ。荒野出身の彼らにはまさにパラダイスさ、ただし‥‥」
「ただし?」
「その地にはオーク以外に唯一、厄介な存在がいる‥‥ロックバードだ。今回の目的はあくまでも討ち漏らしの恐獣を始末することだが、自分の領域に足を踏み入れるものについては、区別なく襲いかかってくるだろう」
「ロックバード‥‥」
復唱して言うアーキンの脳内には今、巨大な怪鳥のイメージが浮かんでいるところだ。ロックバードと言えば、恐獣を凌駕する巨体を有する鷲で、成長を遂げたものは国内でも限定された土地でしか目撃されていない貴重種だ。冒険者達のペットにこれの幼いものが存在するが、日々狩りに勤しみ十分過ぎる環境で成熟したこのロックバードとは、別物と思っていた方が無難であろう。
曰く、熊程度なら楽に持ち上げて食料にし、フリートチャリオットを凌ぐ速度で飛翔する‥‥とか。
アーキン自体、ロックバードと遭遇した事がないので、なかば伝説を相手にするような感覚だった。
「ここに現状、他の部隊に差支えがない範囲でのゴーレムと冒険者を投入する。モナルコス4機‥‥それと、アルメリアの諸元が図書館に記載されたな、あれの運用にも滞りの無い様に手配しておこう」
伝説を相手にするのだ、マルグリッドは彼の権利で揃えられる物は全て揃えるつもりでいる。
「なるほど。それで隊長、そんなのここで私に話しても、ギルドで話さないとただの二度手間じゃないですか?」
「アーキン、ギルドに向かって受付のお嬢さんとお話してくるのと、怪鳥・恐獣のお相手してくるの、どちらがお好みか?」
「‥‥いつの間にかサボり癖がつきましたかねェ、隊長」
「数機のゴーレム達を現地まで運ぶんだ、怠け者扱いしなくてもいいだろう」
フロートシップ船長は、ギルドに行く暇もないらしい。冒険者の選択によっては、フロートシップは輸送艦に加え、巡洋艦、計2隻も用意しなくてはいけないから。
●リプレイ本文
「ゴーレムやフロートシップの手配だけでも、有り余る厚遇です。ここで更なる無理は請えませんよ」
「すまないな。ま、キミの腕ならその一本でも十分に戦えるさ」
そんな会話をマルグリッドと交わしているのはカイ・ミスト(ea1911)。グライダーランスは特殊な槍であるので、すぐに調達は出来なかった、との事。勿論マルグリッドがこれ以上の出資を出し渋っている可能性もある。
「その辺から、ランス適当に買ってくれば良かっただろ」
アーキンがイチイチ横槍を入れてくる。
「それだと、片手では取り回せないので‥‥」
「女みてェな細い腕をしているからだ。もっと鍛えろ肉を食え」
人の事を言えない腕で肩を叩くアーキンに、カイはとりあえず苦笑をしておく。
「ありゃ、アーキンは来ないのー?」
残念そうに言うのは、フィオレンティナ・ロンロン(eb8475)。アーキンは今回ギルドまで使いっぱしりに過ぎないので、依頼には不参加。
「俺は俺で別の仕事があるからなァ」
そう言う彼ではあるが、不思議と勤勉なイメージが湧かないのは、にやけたその顔のせいだろう。
「アーキンさん、そんな下手な芝居を。本当は付いてきたくて仕方が無いクセに‥‥でも、私にはわかっていますから、安心して下さい」
「だから、近寄るんじゃねぇ天界人! さっさと行きやがれ!」
「きゃー、ドメスティック・バイオレンスですーだれかたすけてくださーい」
意図は不明だが、まさも恥らう様な仕草のエリス・リデル(eb8489)を、ぞんざいに扱うアーキン。いつも人を皮肉るばかりのアーキンに、エリスはなかなか珍しい表情を出させる。
「偽装布等その他ゴーレム運用の諸準備について、感謝している。騎士の名誉に恥じぬ働きをしてくるつもりだ」
横の痴話喧嘩をよそに涼しい顔のシャノン・マルパス(eb8162)。彼女は、そうマルグリッドに感謝の意を表していた。
「凡そレディに似つかわしくないボロ布であるが‥‥役立ててほしいね」
マルグリッドが用意したのは、貧民街から剥いできた様な粗末な布。薄汚れた物だが、シャノン達が使うにはOD色に染まったそれらが、丁度良い。
「ところで、今回は新たに実践投入される機体があると聞いていたが。なんでも冒険者がその開発の一端を担ったと‥‥」
「実は、私も詳しく知っている訳ではないっ」
「おい‥‥」
言い切ったマルグリッドに、シャノンは青眼を尖らせる。
「わ、私も専門家じゃないんでなぁ。ま、操者が一人で、かつ生存率が高く、機動性を持ったバリスタと思ってもらって構わないと思うよ」
生存率、これは戦争中の国にとって重要ファクターである。嘗てカオスニアンの射手に辛酸をなめさせられたスニア・ロランド(ea5929)は、それに大いに頷く。
「グライダーが安価高性能でもこれの量産が優先されるでしょうね。鎧騎士の生き残り易さが違うから」
黒髪の女騎士が思うのは、虎への報復か、痛めた愛騎への愁いか。
「ま、その辺の話は酔っていないカルロさんに聞いてみると正しい答えが返ってくるかも。さて準備が整ったかな。さすれば我が船にご招待だ」
佇むは鉄の巨人、見上げるは赤の瞳。
「ついにこれが実戦の機会を得た。貴殿には、思い入れの深い一機であろう」
「えぇ、故に期待と責任感‥‥両方が入り混じって、複雑な心境ですわ」
同じ依頼に参加していたからこそグレナム・ファルゲン(eb4322)は知っているが、果たして他に知る者がいるだろうか。マルグリッドすら知りえない情報かもしれない。
「アルメリア‥‥あなたの初陣に勝利を捧げてみせるわ」
ジャクリーン・ジーン・オーカー(eb4270)。彼女こそが、アルメリアのテストパイロットを務めたその人である。
さて、フロートシップ(不適と思われるペットは船内で留守番)を降りて現地の土を踏んだ一行であるが、程なくして敵と出会う。
敵、と言っても物理的なそれではない。
「この天気、こいつもハードな相手になるかもな。ずっと木陰で過ごせればいいけど、そういうわけにもいかないし」
眉に滲んだ汗を指で拭い、アッシュ・ロシュタイン(eb5690)は呟いた。6月の今はまだ『爽やかな汗』のレベルであるが、もう暫くで『嫌な汗』の時期がやってくる。そういう意味では、この森は季節の先駆者であった。
「恐獣、んでもって更にロックバード登場の可能性。‥‥焦がすのは胸だけで十分だね」
焼けた肌の狩人、パトリアンナ・ケイジ(ea0353)もそう言って、陽精霊に悪態をついてみせる。勿論、口元と一緒に警戒心までもを緩める様な真似はしない。彼女は隊列先頭にて警戒しながら獣道を進み、時折エリスから受け取った水分を喉に通す。
(「水が、美味い。早く帰って竜騎士を飲みた――」)
物音、揺れる茂み。余計な思考を中止して、パトリアンナはその先に警戒心を走らせる。
パトリアンナは後方に掌を差し向け、もう片手で、スニアに人差し指で合図を送った。
この先、射るべし。
鉄弓が弦を弾く音に間隙なく続いて聞こえてきたのは、醜い豚の鳴き声。
「出やがったぜ、豚の御仁だ。どうする?」
「追いかけられたら厄介かもしれません」
カイはランスに握りを確かめながらそう返し、アッシュは剣を鞘から抜きながら言う。
「血の匂いでアロサウルスをココに引き寄せられるかもしれない」
「了解しました」
言葉を言い終える前に、疾駆するカイ。狙いは先程射られたオーク。愛馬プロヴィデンスは主人を背に、蹄で地を蹴る。太い脚が生む瞬発、まるで一陣の風が如き速度に達したランス突撃。
鈍重な豚ではそれを避ける術など、持ち合わせているはずもなく。
貫いたまま槍を払い、カイはそのまま相手を打ち捨てる。オークは胴に出来た穴からどす黒いそれを垂れ流し、痙攣していた。多分、放っておいても死ぬ。
周囲にいたオークが一斉にカイに襲い掛かる。しかしカイの手綱捌きは卓越したもので、ここが戦いの場だというのに美しくすらある。粗野な豚共がとても触れられるものではなかった。
オークはアッシュにも飛び掛かるが、彼が上衣を翻しながらステップを踏めば、難無く避けられる。手にした長剣で相手の胴を薙ぎ、それを避けられないオークを見ながらアッシュは思う。つくづくこいつらは『餌』でしかないモノなのだ、と。
(「さて、どちらが先に来るでしょうか」)
敵を射抜きながら、スニアがそう考えていると突拍子も無く、何かが大地を揺らした。
(「振動? 豚鬼の新手‥‥そんなわけはない」)
木々がへし折られる音が、聞こえる。
「皆さん、ターゲットが来ました! 陣形の展開を!」
強く弦を引きながら、声を上げるスニア。アロサウルス、今回の標的が現れたのだ。
「偽装解除‥‥」
その時。山が、動いた。
「響、行きまぁぁーす!」
偽装を引き千切りながら、石巨人は立ち上がる。操縦者、音無響(eb4482)。彼に続きグレナム、フィオレンティナもゴーレムを起動させ、一斉に剣を振り下ろす。
頭脳は巨体に比例していなかった様だ。完全に不意を付かれたアロサウルスはなす術も無く大剣を打ち込まれる。
それでも反撃に体勢を整えようとする恐獣。
「そうは‥‥させん!」
この勢いを逃す手は無い。グレナムは間髪無く容赦無く、二刀目を放つ。切っ先は、まるで膂力を誇示すかの如く掲げ上げられ、そこから一気に振り下ろされる。
大振りの刃、先程よりも大きなど動作、大きな隙――、
――だが、避けられない。被っている傷が、大き過ぎる。
アロサウルスの思考はそこで止まった。
モナルコスの集中攻撃は早くも一体の恐獣を仕留めるが、その喜びに浸る暇を相手は与えてくれなかった。耳を劈く奇声を上げながら、他の恐獣が突進してくる。その数、1、2、3‥‥。
衝撃が来てから、モナルコスはその方向に盾を向けた。揺れる操縦席の中で、舌打ちをするグレナム。
同じ苦悩を、響も味わっている真っ最中であった。ゴーレムの剣を振るうが、正面にいるアロサウルは巨体に似合わぬ俊敏な動きでそれらを避ける。
「くっ‥‥グライダーと比べると反応が鈍い」
重装甲、故の速度の低さ。どうしようもないモナルコスの泣き所が、今になって実害として顕著なものとなる。この機体では、操縦者達のスキルに追いつく動きは出来ないのだ。
「響さん、グレナムさん!」
馬上から、思わず叫ぶカイ。
続くアロサウルスの攻撃が、更にモナルコスの装甲をひしゃげさせてゆく。しかしグレナムは、敵にやられるためだけに、そこに立っているわけではない。
(「これで、意識は完全にこちらにある。今だ!」)
「「射て、アルメリア!」」
アロサウルスの横っ腹に1本、2本。
刺さっているのは、矢だ。それも、人間が弾けるサイズではない。
激痛に叫びを上げてながら横を向くと、シャノンとジーンの乗る鉄のゴーレムが2機、偽装を解いて巨大な弓を構えていた。
頭をこちらに振るうアロサウルスを見て、ジャクリーンは舌打つ。この機体が白兵戦に向かない事は十二分に心得ている。
恐獣の進路を遮ったのは、フィオレンティナな剣。
「押さえられんの一瞬だけかもしんないけどっ!うおりゃー!」
巨剣がまるで蛇のように軌道をうならせ、恐獣の動体視力を凌駕した。フィオレンティナの踏み込みは浅いが、ゴーレムによる剣撃というだけで充分大きな傷となる。
無論、致命傷に至らなかった場合は反撃されるが。
「うわぁああっ! キョ〜ウ、た、助けてー!」
「フィオさん大丈夫ですか!」
フィオレンティナを押し切らんばかりの勢いの、怒り狂ったアロサウルスに、響が割って入ってカバーする。
この状況、非ゴーレム者は一体でも恐獣を引き付けたい所ではあるが、
「畜生‥‥鳴いて泣いて、死ね。豚に出来る事はそれくらいだろうが」
撲刀で豚頭をぶちかましながら、パトリアンナは凡そ『天界の救世主様』に似合わぬ言葉を吐き捨てる。当方、気が長い方ではない。
「クソ、こいつら! 逃げるか戦うか、どっちかにしてくれ!」
アッシュの言う様に、周囲のオークの状態は混沌としている。逃げる者と戦おうとする者とが入り混じってこれほどまでにも無く、邪魔だ。スニアの射撃も届くのだが、それでも依然として恐獣は、目立つゴーレムから気を逸らそうとはしない。単射では、インパクトに欠ける様だ。
ならば戦力を集中させるまで。
「足元を狙えば怯ませる程度は可能でしょう‥‥巨大恐獣に効果があるかは微妙ですが」
恐獣目掛けて放たれたエリスのグラビティーキャノンは、恐獣への傷とは別の成果を生んだ。それは、オーク達の転倒。
恐獣までに出来た一本道。オークを轢き、踏み潰し、カイとスニアが馬を走らせる。
そして、アロサウルスの足指を一刺し。恐獣もそこに神経が集中しているのだろうか、一瞬、ゴーレムを意識から外して目線を落とす。爬虫の瞳に映ったのは、黒髪の騎士が二人。
と、矢。
次の瞬間、網膜を貫く痛みに苛まれるアロサウルス。暴れる恐獣の尾に巻き込まれカイは吹き飛ばされてしまうが、そこでスニアは何とか回避する。彼女は馬に鞭打ち馬に甲高い鳴き声を上げさせた。恐獣の意識はスニアへと移った、文字通りに目の仇だ。
スニアの回避力と機動力なら、囮として十分な働きが出来るだろう。その1体をグループから引き剥がす事に成功した彼女は、次の矢を番え後方を向く。
その時だった。
陽光が遮られ、何か不自然な風がスニアの長い黒髪をかき乱す。
指で自分の髪を除(よ)けてスニアが見たものは、鳥。‥‥鳥? 広げた翼がゴーレムの数倍はあろうソレを、鳥と呼ぶのが果たして適正だろうか。彼女が一瞬そんな現実逃避をするくらい、ロックバードというモノは御伽じみていたのだ。
そんな者の急降下を直撃したのだから、勿論アロサウルスは無事ではない。巨体は引き裂かれ、あとは中身を垂れ流すだけのだらしのない物と化した。
その隙に、スニアはアッシュとパトリアンナが手招きする方向へ急いで向かう。
「何がロック『バード』だい。あんなの恐獣なんかよりも恐ろしい獣だよ」
「なんだったら、餌でも放り投げて餌付け出来るか試してみたらどうだい?『投げレンジャー』さん」
アッシュは、逃げ惑うオークを指差しながら、話す。
「ふん、人型のそれを何mも投げ飛ばせる様な超人は一人しか知らない」
「一人知っているのかよ」
「ああ、ウィルにね」
ゴーレムに恐獣に、巨鳥。そんな場に人間が事が馬鹿らしく思えてくるのも無理はない。
木々に隠れる人間達には目もくれず、ロックバードは恐獣とゴーレムの方向へ飛ぶ。
「わ! 違うよー、こっちじゃないってばー!」
ロックバードの目標は、フィオレンティナのゴーレム。
「く‥‥致し方無いか」
シャノンのアルメリアがロックバードを射る。当たらないが、問題無い。当てる必要は無い、少しでも撹乱できれば僥倖。ジャクリーンも射撃を繰り返すが、こちらはアロサウルスを狙う。
射撃の支援を受けながら、モナルコス達は下がってゆくと、戦況はアロサウルス対ロックバードの構図になっていく。
残ったアロサウルスは2体、どれも手負いなのはジャクリーンのアルメリアの功績だ。彼女が今回、一番安定した戦力となっている。
しかし手負いと言っても、アロサウルスも伊達で恐獣と呼ばれていない。手数ではロックバードに勝り、ましてや今は陸戦。利は恐獣にある。
翼が恐獣の爪で引き裂かれるが、それでもロックバードは猛然と反撃し、やがてアロサウルスは息絶える。
しかし、最後に残った恐獣の顎が羽毛に赤を滲ませる。
「もうこれ以上は‥‥止めろーー!!」
見学を決め込む予定‥‥だった響は飛び出した。いてもたってもいられなくなったのは、何故だろうか? 彼の棲家に飼われている若いロック鳥と、このロックバードが重なったのだろうか?
とにかく、こうなったら音無響は省みない男。がむしゃらの連撃が、アロサウルスを沈める。
「ふぅ‥‥は! ま、まずい!!」
じーっと、まるで射抜くようなロックバードの目線。改めて見るとこのロックバード、何という巨体。
巨体がフワリと舞う。
事態に備え、アルメリア2体が弦を引く。
しかし、ロックバードは響に向かわず、全く別の方向へ低空飛行。
何が何やら分からない一行は暫く呆然として、そのうちにロックバードが戻って来る。
そこで、エリスは気がついた。
「なるほど。ロックバードにカーペットを引かせるとは流石です」
ロックバードの通った跡は、大きな道が出来上がっている。それはフロートシップの方向に伸びる。ここを通れば、草や蔦に鬱陶しい思いをする事はないだろう。
「はは、レッドカーペットじゃなくて、グリーンカーペットって言った所かな?」
各人の損傷具合を鑑みる。決して諸手を上げられる戦果ではないが、今くらいは充実感を持ってそのカーペットを踏んでも良い