【北伐戦駆】最期への進軍
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■ショートシナリオ
担当:はんた。
対応レベル:8〜14lv
難易度:やや難
成功報酬:4 G 98 C
参加人数:3人
サポート参加人数:-人
冒険期間:11月17日〜11月22日
リプレイ公開日:2009年11月29日
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●オープニング
勝利とは、何だろうか。華々しく決闘で相手を討ち取る、敵軍の一団を殲滅する、敵国を滅ぼす‥‥。
何も、勝利は兵士だけの特権ではない。意中の異性の心を奪う、富を増大させる、名誉を手に入れる‥‥列挙に暇がない。
万民が望む『勝利』であるが、それの形は一つではないのだ。
「おい、外套もう一枚くれよ。こっちのは毛がボロで秋風すら堪える」
「物は大事に使わないとな」
この、恐獣に跨るカオスニアンの強盗達にとっては、生存することが勝利であった。そう言った意味で言えば、彼らは前(さき)の戦いによって勝利を収めたところ。乾いた返り血にのせいで著しく防寒性が落ちたマントを捨て、着込む新しい外套はその戦利品である。移動中の商人を襲い、駆けつけた護衛には射ながら後退し、退却。護衛の中には卑怯者と罵る者もいたが、勿論屁でもなかった。
「それにしても、冷えるな」
外套の紐を締めながら呟くそのカオスニアンは、ナイル・アバラーブと名乗っていた。一団の首領である。
「時期だからな、当然だろう」
傍らの男が笑いながら応えた。
‥‥が、果たして本当に季節だけのせいだろうか。
(「今日の勝利が明日の敗北に繋がらないとは、限らない」)
「最終的に勝利するのは、我々さ」
口笛を吹きながら、中年の男がいった。
「負け惜しみは恥の上塗りですよ。結局、自分の部隊が取り逃がしたカオスニアンの討伐に、冒険者の手を借りる破目になっただけでしょう」
辛辣な物言いは、ギルド受付嬢。しかし中年の男は敢えて言い返さず、大きな地図を卓上に広げた。
「まず、王都がここ」
「言われなくても分かります」
それを指差しながら、男は説明を始める。
「で、ここから上に行って‥‥この前に戦闘があった地域が、ここ。で、そこでは逃がして奴らを北上させた‥‥するとどうだ?」
「‥‥西側に、山脈の始まりが見えますね」
「そうさ。西に山脈、東、南側から追撃していけば奴らは更に北上せざるを得ないわけだが‥‥そうすると、時期に北の海に突き当る。その辺りまで来れば寒冷の地域。奴らが馬代わりに使っている恐獣も、そこまでくれば活動力が大分鈍る。更に街や村も少なくなり、奴らの資源も底を見せるというわけさ」
「こちらの都合と別の方向へ行く可能性だってありますよ」
「周辺地域に部隊を展開させてある」
言われ、受付嬢は悔しそうに押し黙る。
「‥‥机上の論はそれで結構です。じゃ、チャッチャと依頼の申請をして下さいっ」
苦笑しながら、男は依頼書を書き綴って行った。
今回の依頼は、カオスニアン一団の討伐である。北へ逃げていった賊をそのまま後方から追撃する形で、更に北へ追い込む。撤退させるだけで目的の達成とするが、可能なら、これを捕縛または始末する。
一団は10〜15人程と推定され、いずれも恐獣に騎乗している。
尚、今回の戦場になると思われるは地域は泥濘地で、王都から現地まではフロートシップで冒険者を運ぶが、以後の移動や戦闘における足は冒険者自身で用意する必要がある。
保存食、射撃用の通常矢、スリング用の石などの戦闘消耗品については依頼主側にて負担。
――依頼主:王宮所有フロートシップ船長 マルグリッド・リーフ
受付嬢が論戦をするには、相手が悪かった様だ。
●リプレイ本文
煌きの正体が爪の刃だと分かった次の瞬間、それは既に相手へ肉薄していた。
爪は空を切る。一回、二回。
三度目のそれが放たれるも、大きく体を逸らされて、叡智の爪は小汚い蛮族を仕留めそこねるに終った。
直撃を避けた、ナイル。しかしその顔に余裕は、無い。
手に持つ手斧もどきが、まるでその機能を果たしていない。つまりはナイルが全く攻撃に転じていない、転じる事が出来ていない。烈の攻撃を避ける事で精一杯だからだ。
「あの時に‥‥」
風烈(ea1587)の呟きは、穏やかささえ感じさせる。
「あの時に逃がした借りを返そう。今、ここで」
「会わない間に、口先だけは滑らかになったらしいじゃないか」
薄ら笑いを浮かべながら、ナイルは願っていた。どうか自分の手を濡らす冷や汗が顳にあがっていない事、そして‥‥自分達がさっさとこの化物から逃げられる事を――
泥濘む足場という事くらいしか特徴が無い土地。烈やベアトリーセ・メーベルト(ec1201)は浮遊の魔力を内包する盾を持ち合わせていた為、機動性に別段危機意識を持つ必要がなかった。音無響(eb4482)の左手にウィングシールドは無かったが、比較的軽い装備である為、致命的な問題にはならなそうだ。問題といえば‥‥響がつれているフロストウルフを、依頼の後にしっかり洗ってあげなくてはいけない事くらいか。純白の毛並みに、汚泥はひどく目立って仕方が無い。
とは言え数の上では敵に分がある為、気を緩める事無く一行は進んでいた。
それにしても葉が色を脱し寒風と共に人々の足元を転がる季節というのは、幾分風景に寂寥感を印象付けるものである。
そんな物寂しい泥濘の一帯に人とも馬ともならざる足跡は、この地に存在する唯一の装飾品。こんな殺風景な泥濘地帯に浮かんでいる恐獣の足跡というのは、音無の目にはまるで、葬式用のスーツに組み合わされたパステルカラーのネクタイの様なものだった。余りにも際立ち、余りにも場違いな自己主張だ。
当然、それに気がつけない程の魯鈍な人間は冒険者の中にはおらず、足跡を手がかりに進路を特定し、カオスニアンの一行を見つけたのはそれから間も無くの事となる。
弓矢で相手に先制は取られたものの、烈が従えるジニールが高速詠唱でストームを放つと、矢はちりぢりになってやがて地に落ちた。
――しかし、それは難しいかもしれない。余裕の無い思考の中、ナイルは思った。
本来、こんな人間など、ナイル自身も相手にしたいとは毛頭思わない。しかし、既に二組の恐獣とカオスニアンが汚泥に伏している。そして、烈自身も特定の敵に執拗するより戦力全体に被害を与えんが如く立ち回っている。状況が転換するまで、誰かがここでこの化物の相手をして引き付けなくては、団は瞬く間に瓦解する‥‥ナイルにとっては苦渋の選択だった。
「(かと言って、あの風使いを始末しないと厄介で仕方がない。どうするか‥‥)」
突如、ナイルの思考を遮ったのは鋭利な爪。必殺の威力を以って迫るそれを、身を捩り、皮一枚だけ切らせてやり過ごす。
「こんな俺達だが、人間様のお得意な、慈悲と思いやりで見逃しちゃくれないか」
「愚問‥‥」
烈は即答する。
「このまま俺達を北へ押し上げる寸法だろ? 逃がしてくれれば僻地に引きこもって、大人しくしておくさ」
「愚問。お前をみすみす見逃がす理由にならない」
まるで取り付く島も無く烈は応える。
「何故そこまで戦う。何故そこまで、強くなろうとする?」
「愚問‥‥ッ、お前の様な輩から、自分の仲間や大切な人を守りぬく為だ」
「どうだか。俺が目の前に見えるのは、己が腕前を試す為なら魔王さえ殺す『人ならざる者』だ。窮屈な人間の振りに飽きた頃、こちら側にいても不思議じゃない」
烈は攻撃の手を休めぬまま、全くその攻勢を緩めぬまま、だが――微かに眉を動かした。
背後からの、気配。
動物的とも言える直感の反射で、烈は左足を軸に半回転する。刹那、烈の胴を掠ったのはカオスニアンの持つ槍だった。回避で生じた勢いをそのまま拳に乗せ、烈の突きは巨漢の胴にぶちこまれる。ナイルの舌打ちが、彼の背後から聞こえた。
「烈さん!」
加勢するべく駆けだしたベアトリーセであったが、割って入ってきた別のカオスニアンに行く手を阻まれる。
「目の前の男を無視とは、つれないもんだぜ。レディ」
「失礼。多勢で無勢に襲い掛かっている様な卑劣漢の中に、『男』がいるとは思ってもいなかったもので」
歯痒さは胸中にしまいこみ、あくまで面には余裕と微笑のみを浮かべて、ベアトリーセは目の前に現れたカオスニアンに三又槍の穂先を向ける。手に持つ漆黒の刃が、文字通り殺人的な速度で相手へ迫る。しかしカオスニアンは篭手で受け流し――否、槍そのものを殴りつける様にして強引に弾いた。男は一気に踏み込むと、空いたベアトリーセの胴に目掛けて片手剣を奔らせる。
凶器が貫いたのはベアトリーセ‥‥が、一瞬前までいた空間。
「男を自負するだけあって、腕前は相応な様ですね」
「そちらこそ。女だったらもっと淑やかに、脆く、さっさと死んでほしいもんさ」
「生憎、生涯最後のお付き合いが貴方なんて冗談でもキツいから‥‥出し惜しみは、ここまでです」
「虚勢とは、淑やかじゃあないぜ」
「何時まで梃子摺ってやがる!!」
叫ぶ様なナイルの声に合わせて、敵後方から矢が飛来する。
「風華‥‥」
呟く様にして、烈。再びジニールが高速詠唱でストームを放つと、1本、2本と矢は力なく散っていくに終る。
「愚行を繰り返すな」
「どうかな。愚行かどうか!」
風神とは言え、その精神力は無尽蔵ではない。事前に烈が渡しておいたソルフの実をジニールが口に運ぼうとした瞬間、その手に銀の鏃が刺さっていた。先程の射撃は、囮か。
痛覚と不意打ちに、ジニールは驚きを隠せずにいた。
怯んだ事から効果があったと判断し、ナイルがジニールの方向に指差し指示を出すと、幾本もの銀光がジニール目掛けて飛んでいく。致命傷では無いものの、その射撃のせいでジニールは魔法の手を休めてしまう。
後衛から一人、更にナイル自身がジニールへ向けて恐獣を走らせる。
「行かせるか!」
「てめぇよそ見してんじゃねぇ!!」
ナイルを引き止めんとする烈だったが、胴に一撃を与えた先程のカオスニアンは、その巨体相応の生命力を有していた。騎乗している恐獣の牙、そして巨漢の槍が今、同時に烈へ襲いかからんとする。
「退いてもらうッッ!!」
咆哮と共に踏み込むと、烈と敵の一瞬で間合いは一瞬で無となる。大きく開かれた顎『そのものに』、渾身の一撃を放つ。上顎を軽々と貫いた鉤爪は、勢いを落とさぬまま、貫いた恐獣の頭ごと騎乗者に食らいつく。まさしく、文字通りに、必殺の一撃となった。それはなんと非常識な風景だろうか。しかしその膂力、速度、威力のどれもが凡そ考えられる『人間の攻撃』を超越している烈の一撃ならば、むしろ当然の結果であった。
亡骸には見向きもせずに、再び烈はナイルへ素早く距離を詰め、まずは恐獣の足を切り裂き機動力を鈍らせる。
「お前を行かせる訳にはいかない」
「しつこい奴だ」
再び烈と対峙するはめになったナイルは、うんざりとしながら言った。
しかし、もう一体、駆け出してきたカオスニアンについては、流石の烈でもどうしようもない。
カオスニアンはジニールに向け、槍を構えながら一直線に接近する。白銀の穂先は、鈍く、無慈悲な輝きを携えていた。
が、しかし、恐獣は突然ふらつくと、糸が切れたマリオネットの様相で倒れこむ。
「やらせはしない!」
恐獣から降りざるを得なえくなったカオスニアンは、声の方向を向いた。
「もうこれ以上、お前達によって悲しむ人を増やすわけにはいかないんだ!」
音無、響。
彼が高速詠唱でスリープを放ち、恐獣の意識を奪ったのだ。
「邪魔をするな!」
汚泥を撥ねながら、カオスニアンは大振りの攻撃を放つが響はこれを七桜剣で受け流し、空いた懐へ斬撃を加える。
「トリさん急降下‥‥ハルは冷たい息っ!」
ホワイトイーグルとフロストウルフは、響に指差されたカオスニアンを敵として認識する。フロストウルフによる冷気の息吹をまず繰り出し、それで生まれた隙をホワイトイーグルが空中から攻撃する。
「ええい鬱陶しい!」
が、しかし相手もただやられるだけの木偶ではない。槍を突き上げてホワイトイーグルを迎撃する。大鷲はその体を赤く染め、数枚の羽根を地に落とした。
「トリさんを、よくも!」
響が桜色の刀身を振う。それはカオスニアンの槍と打ち合い、つばぜり合いとなる。
「やりやすいヤツからやるってのは、当然じゃねぇか!」
「お前!」
「鷲如きに、熱くなってんじゃねぇよ」
「なら、こちらの鷲も相手にしてもらいましょう」
声は、ベアトリーセ。それが聞こえたとほぼ同時に飛来した爪の奇襲に、カオスニアンは忌々しさを露にする。
それは確かに鷲だった‥‥上半身だけ。
カオスニアンの男にグリフォンが爪で攻撃した時、すでにベアトリーセが間合いにいた。
「さっきまでお前は、グレッズと戦っていたんじゃないのか」
「先程お縄にした彼、グレッズと言うんですか。素敵な名前じゃないですか、顔に似合わず」
微笑みながら言うベアトリーセに、男は不審がった。
「おかしな言い方は止せ。それじゃあまるで、あいつがお前に負けたみたいじゃ――」
「それではお見せ致します、あなたのお友達が見切れなかった技を」
男の声を遮り、ベアトリーセは黒槍を構える。
「おもしれぇ、‥‥やってみやがれ!」
叫び、駆け出したところで男は気が付いた。
いや、知覚したと言った方が正確か。ベアトリーセが持つ黒い槍がほんの少しだけ翳む様に瞳に映り、見えにくく感じたのだ。
(「何のまやかしかしらねぇが、見えないってほどじゃな――」)
漆黒の、閃光。
男が認識出来たのは、そこまで。
視認限界を超えた速度域、更に重みを加えられて放たれた一撃を、男は防御する術を持っていなかった。
「異国の抜刀術です。どうやら彼方も、あまり眼は良くなかったみたいですね。尤も、彼方がたのリーダーには、通用するか微妙ですが」
「ベアトリーセさん、ベアトリーセさん‥‥相手はきいていないみたいです」
「え、利いていない? それは不覚です」
「いえ、『聞いて』いないみたいです。出血で気を失っているみたいですが‥‥息はあります」
「そうですか、では彼も一緒に縛りあげて捕らえましょう」
と、ベアトリーセと響の遣り取りが終った頃、後方から更に、騎乗カオスニアン達が現れる。
増援か、と危惧した烈だったがその心配は運良く的を外す。
「良く早く戻ってきてくれた! 先頭に続いて撤退するぞ! 負傷している者以外は弓の手を休ませるな!」
ナイルが指示を出すと、カオスニアン達は一斉に撤退していった。退却しながらも、後方へ向けて弓を放ち続けているので、完全にその姿が見えなくなるまで、冒険者達は気が抜けない状態が続く。
そして暫くすると、辺りは――まるで音すらもない様な――何もない静かな泥濘の一帯に戻った。
「逃走して、いきましたね」
「後から来た者は、逃走の進路を探りに行っていた斥候だろう。何はともあれ、方向は北だ、ウィングシールドの効果もそろそろ時間が来る。俺達にとっても、頃合だ」
響に頷きながら烈は、そう話す。深追いはしない。単純な戦闘力で言えば、驕りを抜きにして考えてもナイルに勝る実力が自分にあると烈は思っていたが、兵法面では油断が出来ない。斥候に罠を張らせていた可能性もある、無策で追うのは愚行の極みだろう。
「何にせよ、敵に被害を与える事も出来ましたからね」
見渡しながら、ベアトリーセが言う。ジニールの強風は相手の矢を妨害するのに大いに役に立ったが、相手の物資を吹き飛ばすと言う副次損害も齎している。それに加えて、捕虜も捕らえている。これ以上、求めるものもないだろう。
「手当て、手伝って頂きありがとうございました」
「なに、君達の上げた戦果に比べれば微々たるものだ。少数でありながら目覚しい働きをしてくれた。感謝するよ」
帰りのフロートシップ内で、響のホワイトイーグルは治療を受けていた。幸い傷は浅く、敵の武器には特に毒も塗られていなかった。数日経てば、羽根を広げて風を切る事が出来るだろう。
「船長、捕虜の具合はどうか」
烈に問われると、今回の依頼主でありこのフロートシップの船長でもある男、マルグリッドは心配無用、と切り出し答える。
「別部屋に錠をかけて封じてある。拘束も見張りもぬかりはない。脱走はおろか、暴れさせもしないさ」
「静かなのが逆に気がかりだ。確かこの船に乗せる頃に意識を取り戻した後は、よく喚いて、ここまで声が響いていたはずだ」
「‥‥そういう事か」
全てを口にしなくても、烈が何を言わんとしているのかマルグリッドには分かった。彼等の沈黙が体力の消耗からならいいのだが‥‥何らかの方法で自害した可能性も、無くはない。
マルグリッドは部下の一人に指示を――
「皆様お揃いですね。今回はお疲れ様でした」
――出そうとした丁度その時、部屋にベアトリーセが入ってきた。
「ああ、お疲れ様だね。君の話も聞いている。異国の妙技で、敵をしとめたらしいじゃないか。‥‥ん?」
話している最中、マルグリッドはベアトリーセが手に持っている、見知らぬ物の存在に気がついた。黒色で、片手に収まる不可思議なデザインの物‥‥興味本位で彼は尋ねた。
「その手にあるのは何かな? 随分珍しい物だ」
「あ、これですか? 天界の便利アイテムらしいのですが‥‥なにぶん使い方がよく分からなくてですね」
後ろで、烈と響がひそひそ話をしていた。
「以前、どこかで聞いた事がある‥‥あれはスタンガンという、天界のアイテムじゃなかったか。たしか、小さな雷を発生させて、相手にショックを与えると言う‥‥」
「ええ、正しくその通りです」
朗らかな笑顔を浮かべたまま、ベアトリーセは話を続ける。
「このツマミを少しいじって、それで‥‥ココを押したら、このように小さな雷が出まして、捕虜に宛がって数回使ったら気絶しました。どうやら『運良く』使い方が合っていたみたいです」
「そ、そうかね。それは良かった」
微笑を携えたまま、スタンガンのスイッチを押しバチッ! バチンッ! と鳴らすベアトリーセに何か感じたのか、マルグリッドは思わず苦笑いを返す。
後ろでは、まだヒソヒソ話が続いていた。
「僕も、ベアトリーセさんがちょっと小悪魔な性格って事は知っていましたが‥‥」
「あれでは『小』どころではない様な気が‥‥」
イヤイヤそんな事は無い。落ち着きのある性格、魅力的な容姿、更に女性らしくアクセサリー好きと来ている。そんな麗しき女性が、『大』悪魔な訳がない。
ベアトリーセサンハ、カワイイデスヨ。