迎え撃つために
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■ショートシナリオ
担当:はんた。
対応レベル:1〜5lv
難易度:やや易
成功報酬:1 G 62 C
参加人数:8人
サポート参加人数:4人
冒険期間:06月30日〜07月05日
リプレイ公開日:2005年07月04日
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●オープニング
ここは冒険者ギルド。連日幾人もの人間が訪れる場所。
「いやぁ、まったく参ったものだよ。倉庫はやられるし、見張りは負傷するし。無駄な損失は出さないがモットーなのだけどねぇ。‥‥とまぁ、愚痴を言ったらその時に戦ってくれた用心棒達に失礼だし、いつまでも過去の事をウダウダ言い続ける事こそ無駄だと思う。そういうわけで、今日ここに来たわけなのだよ」
「それで、結局、どんな依頼をお出しになりに来たんでしょーかね、アンタは」
「依頼人に対してなかなかぞんざいな扱いをしてくれる冒険者ギルド係員だね、キミは。まぁいい、早速話を始めようか」
男の長い言葉にも、係員の失敬な言葉遣いにも、お互い特に深く言い及ばない。知り合いなのだろうか。
今回の依頼は、三十代中頃のとある実業家からだ。男は、大富豪とまでいかないものの、それなりの規模を有しているようだ。
その男は言うには、先日屋敷に賊が入り、食料、金、等を盗まれたとのこと。少人数だったためそれほど多くは盗られなかったものの、やはり捕まえる事は出来なかったとなれば、無視はできない。
「‥‥で、だ。これを機会に屋敷の、警備のありかたを見直そうかと思うのだよ。盗人はもちろんだけど、最近では死人憑きや黄泉人とかの妖怪が派手に動いているようで、なにかと物騒だからね。今のところ行っている防犯対策といえば、剣客が提灯持ってうろつくぐらいの事しか、していないからね。そこで、冒険者達から色々な案を聞こうと思うのだよ。こういう事に協力的な人間だって、たくさんいるのだろう?」
「まぁ、たくさんいるかはわからんけどな。じゃあ、それで依頼を出すぞ」
係員は依頼人の方を向かず、さらさらと紙に依頼内容を書き綴っている。
「ああ、それともし叶うのならば、知識の深さよりも、むしろ関心や真剣さ溢れる人間を集めて頂きたいな。そういった人間には、こちらもしっかり応対させていただくからね。いやぁ、冒険者っていうのはどういう考えを持っているか―」
「わかったわかった。じゃあとにかく、依頼出すからな」
係員は長話を途中で止め、そして手際よく諸手続きを済ませていった。
●リプレイ本文
「ようこそ我が屋敷へ。とりあえず粗茶ではあるが、どうか遠慮なくいただいてくれ給え。ああ、粗茶と言いつつも、使っている茶葉は―」
お茶に対する説明をし出したのが、今回の依頼者の坂田という男である。最初から軽快なペースで喋っている。
「(あと五分は話し続けそうだ)」
ライト・エアリオン(eb2951)は、そう胸中で呟き、頬杖をつきたい気持ちであった。
そして十五分後、やっと『屋敷の警備に関して』の話題が出てくる。
「じゃあキミ達からの意見が聞こうか。さ、遠慮なくどうぞ」
「では‥‥まず、坂田さんは今回盗賊の被害にあったわけですが、それに対してどう思っていますか?」
聞き疲れた様子を見せず、綺麗な姿勢のまま話を切り出す佐竹政実(eb0575)。
「運が悪かった、というのが正直な感想かな」
「私はまず、精神的な備えが足りないと思います」
坂田がほう、と呟き、続く言葉を促す。
「不測の事態にすぐに対応できるような心構えがなければ、襲撃時の対応が遅れてしまいます」
「(今まで一度も防犯について考えたことがない。良い機会だ。皆の考えに耳を傾けるか)」
お茶を啜りながら、グレン・ハウンドファング(eb1048)は、この機に自らの意識も高めようと、真剣な様子で聞いていた。
「ここの敷地だって、ただの箱じゃないのだ。色々物が置いてあるし、死角が沢山あるのだ」
明るい口調ながら、淡々と事実を述べていく所所楽苺(eb1655)。
「そういった所を泥棒は見つけるのが得意だと思うし、そういう場所を見落としてるから被害にあっちゃったんじゃないかと思うのだ」
「うむ、そうだね。これからは要所をよく調べ、見回る剣客に死角を理解してもらったうえで、警備にあたってもらうことにしよう。ああ、勿論私もしっかり理解するよ」
それにしても、軽快に動く舌だ。その様子を見て懸念したライトは言う。
「その調子で、ポロっと蔵の金の事なんかを、他人に言わないようにな」
椿為朝(eb2882)も言葉を続けて、情報の重要性を説こうとする。
「些細な情報からでも、蔵の中身を知られる可能性もあります。蔵の金やそれらの情報を取り扱う際には、気をつけてください。決して口の滑らすことのないよう‥‥」
二人の言葉を受ける坂田は、苦笑しながら言った。
「金銭が絡む事には常々留意しているが、これからは今まで以上にその意識を高めることにしよう」
「まぁ、意識の持ちようで結果が違うものになることはよくあることと思います。これを機会に、防犯に対する認識を改善してみてください」
所所楽柚(eb2886)がそう言って、坂田は頷く。
冒険者が言わんとしているのは意識の問題。坂田はまず、防犯意識を改める事を誓った。
哉生孤丈(eb1067)は、錠前による施錠について自分なりの意見を考えていた。知識は、孤丈の知り合いである陸堂明士郎から事前に、習える範囲で習っている。
「まず、錠前は一つではそれが破られればそれでお終いなんで、最低二つ以上付ける事をお勧めするねぃ」
孤丈の、錠前を複数用意する案には佐竹政実(eb0575)も賛同している。
孤丈は、更に続けた。
「それと、錠前は強度を高め―」
「確かに二個なら、開錠にかかる時間は単純に二倍になるわけだからね、いい時間稼ぎにはなるだろう。そしてそれが壊されにくい錠前なら尚更安心だね」
坂田は、孤丈がまだ途中だというのに話し出してきた。
「しかしそうなると、どうしても気になってしまうのが出費面だ。錠前の量が二倍、ということはかかる金も二倍。それが凝った物になれば、更に出費は嵩んでしまう」
「(警備に、支出はあっても収入はないからな。管理者側としてはなるべく金をかけたくないのが心情か‥‥)」
話を聞き入れながら、グレンは自らもその意見について思考する。
孤丈は途中で話を折られたわけだが、それでも押し負けなかった。
「それでも、鍵作りの職人に頼んで仕掛けを施してもらった物を使うべきだと思うけどねぃ。盗人に侵入されたらそれこそ、出費云々の問題じゃあ済まなくなる、と、俺が坂田殿の立場だったら考えるんだけどねぃ。」
髪をかきあげながら「う〜む、それも尤もだ」と呟く坂田。後頭部をかきながら、坂田は再び喋り出した。
「錠前の件、とりあえずは、増やす案のみを採用させてもらおうかな。それにしても」
そこで坂田は一旦言葉を止め、ぐいっと身を乗り出し孤丈に近付いて言う。
「錠前をかける場所等ではなく、かける錠前その物についての意見とは、なかなか興味深い。いやぁ、そういう意見が出ると、この場を設けた甲斐があったと思えるね。そもそも錠前は、かけたらもうそれで安心し―」
「とりあえず、唾がかかりそうなので、顔を離してもらえるかねぃ」
お返しのつもり‥‥かどうかは定かではないが、今度は孤丈が、坂田の話を途中で止めた。
乗り出した体を元に戻した後も、話を続ける坂田。
「(それにしても饒舌ですね、坂田さんは)」
議論であがった内容を書き留めながら、坂田の勢いに柚は感嘆すらしていた。
先程から坂田とずっと話し合っているのは、パレット・テラ・ハーネット(eb2941)。
「なるほど、つまりキミ達としては、賊の侵入経路の把握と罠の効果的な配置を重視するべき、という事かな?」
時偶ライトも、その中に入ってはみるものの‥‥、
「手薄になりそうな場所に警備の連中を配置する等といった警備体制をとる必要があるな」
「それだけではありませんよ〜。まず鳴子に使う材料ですが―」
パレットは、坂田に勝るとも劣らない調子で話していく。他のメンバーも理解しえる内容と速度であるが、いかんせんその会話量が圧倒的。坂田の勢いについていけるパレットに、周囲は舌を巻いていた。
「(さて、そろそろ私も話し出すか)‥‥ちょっと失礼。先程からの討議とは少し話題がズレるが、財産の管理について私なりの案を言わせてもらえないだろうか」
グレンが新しい話題を振ると、坂田は「ああ、どうぞ」と促した。
「用心棒等を雇って仰々しく警備しているから、逆に狙われるのではないかな」
「つまり用心棒を用いない方法が思いついた、ということだね。是非聞かせて欲しい」
「賊の盲点を突いて、河原にでも掘っ立て小屋を用意し、そこに金品等隠しておくのはどうだろうか
「ん、つまり財産の在り処を擬装するというわけだ」
「ああ、好きこのんで盗みに入る者もいないだろう」
「しかし、もし誰かに漁られたら時、無防備というのは少々心許無いね」
グレンは、実体験も交えつつ話していった。
「‥‥まあ、飢えた挙句少しの食料目当てに忍び入る者もいたからね」
そしていよいよ、罠の話題になってきた。
「冒険者のキミ達には、こういう知恵をつい勝手に期待してしまうのだが、さて、どうだろうかね?」
坂田は声を弾ませて尋ねてきた。どうやら罠の話題に、一番関心があるようだ。
「予め纏めた物があります。これをどうぞ」
柚から差し出された紙を受け取り、坂田は通覧していく。
・鳴子(侵入を告げる仕掛け)
・偽者利用
・鍵を増やす
・依頼人だけに泥棒の侵入がわかる仕掛け
・捕獲用の罠
「ん? 『評判を利用した精神的防波堤』‥‥これは、どういった内容かな?」
坂田が尋ねると、それに答えるのは為朝。
「『あの家の主人は出来たお人だよ。何かあったら手助けしてやりたいものだ』と思わせるよう、普段から行動をしておけば、盗人が屋敷に入ったのを見つけても、知らぬ存ぜぬではなく番屋に駆けつけてくれひいては被害を出さずにすむでしょう」
「周辺住民との関係が、防犯の目になる、と。しかし良い評判をたてるというのも、なかなか難しいものだよ」
すると為朝は、気さくに笑顔を浮かべて言った。
「世間の評判を良くするなんて簡単なものです。近所で吉事があれば酒の一つでも送れば、それで案外変わるものですよ」
「ふむ‥‥。まぁ、そうだね。身近に出来る事から、取り組んでいくとするよ」
そうして、気が付けば日が暮れるまで、話し合いは続いていた。
次の日、冒険者達はそれぞれ作業をしていた。
苺は、数人を引き連れて屋敷の死角探しをしている。
パレットは戦場における工作作業に関して専門的な心得を身につけていたので、罠の設置を手伝っていた。
「ふぅ、こんな感じかな〜」
鳴子を付け終わり、誰にいうわけでもなく呟くパレット。そこに‥‥、
「うん、そんな感じでいいと思うよ。しかも、設置する場所の色、ここなら芝の色に染めた物を使い、その隠蔽力を高めるとは芸が細かいね」
「まぁ、こだわりがある罠の方が効果高いと思いますので‥‥って、何でここに坂田さんがいるんですか?」
隣には、いつの間にか坂田がいた。
「仕事もたまには息抜きが必要なのさ。私も少し手伝いたいのだけど、どうかな? 個人的に、罠の事に関して色々習いたいのだが」
「教えてもいいですけど、仕掛けをうっかり喋って周りに広めたら意味がなくなってしまうので、注意して下さいね」
「はは、これは手厳しい。そういえばライト君や苺君にもそれを注意されたね」
「警備が厳重でも仕掛けが巧妙で複雑でも、管理する側が怠慢だったらそれらは殆ど無駄に終わってしまいますよ」
「ああ、わかった。肝に銘じておくよ」
そうして坂田邸の警備は、冒険者の案を取り入れ改良された。
その後まだ盗賊が侵入した話は聞いていないので、罠の効力は、実証には至っていない。
しかし、最近の噂に耳を傾けてみれば、とりあえず、『評判を利用した精神的防波堤』の策は、うまくいっているようである。