迫りくる死霊侍の軍勢
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■シリーズシナリオ
担当:橋本昂平
対応レベル:11〜lv
難易度:難しい
成功報酬:10 G 85 C
参加人数:8人
サポート参加人数:-人
冒険期間:10月03日〜10月08日
リプレイ公開日:2008年10月19日
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●オープニング
――まあ、よく見れば物騒な事もあるもので?
かつてこの村では戦いが起きた。源徳軍と、伊達軍の戦闘である。
ある年におき伊達軍が勝利を収めたその戦いは熾烈を極め、江戸の地方にもその戦火は伸びる。今は埋葬され祀られている『彼ら』は生前、その地方に出兵し伊達の軍勢と戦っていた者達だ。
戦争ともなれば一番わりを食うのは一般市民だ。戦う術も持たない市民たちは理不尽にも命を奪われ財産を奪われ尊厳を奪われる。軍規は整っていようが末端の兵にまで行き届いているとはいえず、どこかしらでやはり略奪や虐殺が起きるものである。
源徳の部隊は寡兵であったものの、守るべき民のため、伊達の大軍と死力を尽くし戦った。
多くが傷付き命を落としていったが彼らに後悔はなかった。侍としての志、忠義を掲げる彼らに恐れるものは何もない。
だが‥‥‥守られる民の方はそうではなかった。
戦う力もない。それとは無縁に生きる彼らにはただただ恐怖するしかなかった。
この戦国乱世の時代、敗戦国の民がどうなるかなど、悪い意味で曲解しているものも多い。
大抵人間良いことより悪いことの方が信じるものである。
「許さぬ‥‥‥。許さぬぞ‥‥‥」
この辺り西洋だろうと華国だろうと共通している。精神的に鍛えられていない兵など野盗と何ら変わるところはないのだ。
「許さぬ‥‥‥。許さぬ‥‥‥!」
勘違いされている敗戦国の民の処遇といえば、財産は奪われ男は奴隷、女は‥‥‥
下手に戦う術も知識もない民にとって、それは真実のものと信じていることもままある。
そして、その村ではそれが真実とされていた。
「許さぬ、許さぬ‥‥‥!」
源徳の兵たちに感謝と激励として宴を催した村の民たちは、出した料理に毒を盛った。
全身が毒に蝕まれ鎌や鋤、鍬が振り下ろされる。死に切れなかった侍が見たのは、伊達の軍団に恭順する守るはずだった民の姿‥‥‥
村人たちも罪悪感はあったのだろう。戦後、彼らは村外れに墓を作り徳の高い僧を呼びその魂を弔った。
だが、あまりにも強い憎悪と理不尽は侍たちの魂を変質させ、その地に縛り付けたのだ。
時は過ぎて墓を貫き天を指す腕。
白い触れれば朽ちそうなその腕は、それでもなお力強い覇気に満ちている。
数多の墓が盛り上がる。
兜、頭骨、胴丸、肋骨、具足‥‥‥。
既に白骨となったその身に生前の武具を身に纏い、生前学んだ軍略で統率する。
長とおぼしき骨は、腐り朽ちつつあるも荘厳さを失わない武者鎧を纏う。
「ユルサヌ‥‥‥。ユルサヌ!」
侍の長は刀を振り目前の村へ突きつける。
「ユクゾ! ミナゴロシニセヨ!」
『オォォォォォォォォ!!!』
慎ましく日々を生きる村へ、死霊侍の軍勢は進軍する。
依頼を受けた冒険者たちはただちに村へ急行した。
凄まじい数の死霊侍が攻め立てていると聞き、装備を充実させ、冒険者によっては戦闘可能なペットも引き連れ現地に到着した時は村の半分は壊滅状態になっていた。
川を境に二分割されていた村だけあって、橋を壊して進軍を止めたのだ。その場しのぎだろうがそれが幸いした。
村人達は寺にこもり助けが来るのを待っている。伊達の兵隊に救援を願ったものの、公的機関だけあって手続きなどの影響ですぐにこれないらしい。
寺の住職曰く、彼らを埋葬している墓に何かがあるとのことだが‥‥‥
冒険者は村人たちに何らかの違和感を感じるも、村の防衛を始めた。
●リプレイ本文
生前の『彼』は真面目で勤勉だと評判があった。
人柄もたいへんよく、部下に限らず多くのひとに慕われ、侍・一般市民と区別せず訳隔てなく接した。頼られれば力を貸し、自らが頼らなければならない状況にあっては自分に厳しく独力で何とかしようとした。その際『彼』の友人は水臭いと苦笑し協力を申し出でて、恩を受けた者はそれを返そうと尽力した。人がいいだけに利用されがちなこともあったが‥‥‥他人から愛される、そんな人物だ。
侍としての実務能力も非常に優秀であり、記録上戦死扱いとなった『彼』の死を多くの者が悲しんだ。
それだけに、今の『彼』を生前を知るものが見たら信じないだろう。
憎悪と殺意に付き動かされている姿を。
『彼』はたとえ他人に利用されようと笑い飛ばしていた。
『彼』は失敗を頭ごなしに罵らず、反省点を見抜き解決策を本人が気付くよう、言葉巧みに誘導していた。
『彼』は何より平和を愛し暴力に訴えようとはしなかった。
だから‥‥‥
「工作部隊ヲ編成シ直衛ノ部隊ト共ニ進軍。邪魔者ガオル様ダガ蹴散ラセ。渡河後、一気ニ攻メ落トス!」
空洞の瞳が見るのは丘の上の寺。その手に握るのは見知らぬ刀。
「邪魔スル者ハ全テ敵ダ! アノ愚者諸共皆殺シニセヨ!」
遥か上空。鬨の声を上げる死霊侍たちを三つの影が見つめていた。
偵察から戻ったチップ・エイオータ(ea0061)と陰守森写歩朗(eb7208)を出迎えたのは突貫で作り上げた櫓から、弓に矢を番えたアイーダ・ノースフィールド(ea6264)だった。二人を確認したアイーダは矢を弦から外し仲間たちに帰還を伝える。
近くにいた村人に見張りを変わり彼女も仲間の下へ。突然の建築作業を強いられた村人は冒険者たちを恨めしそうに見るも櫓に。死にたくはない。判断は冒険者に任せるといった以上、文句は言えるわけがない。
死霊侍が工作部隊を編成していること、今にも渡河を行い進軍が可能であることをチップと森写歩朗はした。
「まあそれにしても、普通の死人憑きとかならともかく死霊侍が徒党を組んで、っていうのは珍しいのかもしれないわね」
どうしたものかしらねとセピア・オーレリィ(eb3797)。ジャパンに渡りそれなりに立つが、やはり西洋人なだけあってその辺りの知識は疎い。
「でも化けて出るなら普通の死人憑きになっててほしいよな。使命は忘れてるくせになんでしっかり生前の剣術やら何やらは覚えてるんだか、厄介この上ないぜ」
「そうね。馬鹿正直に階段を登ってきてくれる敵だけならいいけど、アンデッドのくせに統率が取れているのなら、斜面から伏兵を登らせてくる事も十分考えられるわ」
人間や命のある生物と違い死者――アンデットには疲労がない。種類にもよるが既に生物としての機能が停止し、死体や骨で動くアンデットの動力と呼べるのは強烈な憎しみや恨みなのだ。
故に目的――生者を襲うことに一切の躊躇もせず、そして生物ではないことが利点となり、疲労や生物的な弱点に囚われることもない。アンデット故の弱点を得てしまうのだが――それは聖職者や冒険者を覗いては脅威とは呼べないだろう。
日向大輝(ea3597)は少年ながら数多の修羅場を生き抜いてきた、今世紀最強と謳われる志士。そしてアイーダも豊富な経験を持っているだけあって目の前の脅威をしっかりと受け止めていた。
アイーダはウサミミを揺らして言った。人間、どんなシャレにならない状況だろうと、空気を読むことを覗けば余裕がなければいざという時に失敗するものだ。
「疲労を知らないアンデッドなら険しい斜面と高い塀でも時間をかければ越えることは十分可能なはず。もしそんな敵が来た時には、弓矢を使える私が上から射落とすのが一番だと思うの」
「面倒ごとは好かん。死霊侍が現れれば叩き潰すだけだ」
まあそれも正論。シンプルかつ明快に答えるのは荊信(ec4274)。豪放磊落と世間で評判だが地面にめり込んでいる鉄の巨大槌、大公の戦鎚を振るうに相応しい男‥‥‥漢らしいセリフである。邪悪から守る仁王像のような男だ。
思慮深い冒険者も入ればシンプルイズベストな冒険者もいる。戦場にはとても不似合いな雰囲気を醸し出す、御陰桜(eb4757)はのんびりと言った。
「ん〜‥‥‥、死霊侍の軍勢から村を護り切ればイイのね?」
その『イイ』はどんな意味デスカ?
冬も近いのに彼女とその周囲だけ春爛漫。名前の如き桜色のロングヘアー。肌を隠すのが原則目的である筈なのに逆方面を強調している露出具合。白い肌がシンボウタマリマセン。既に必殺魔剣の領域に到達したたわわとゆーかデビル仕様の暗黒魔乳。
ナンパも極めつくしたらこうなるかもしれない。斬った張ったの戦場だというのにその緊張感もブチ壊し、色んな意味で思い残すことが盛りだくさんに残ってしまいそうだ。発言の一つ一つがアレに勘違いしてしまいそうな、サキュバスが見たら「やあ、同胞!」とフランクに声をかけるに違いない。桜は気だるげに言った。
「あたし憂さ晴らしで‥‥‥微塵隠れで掻き回すつもりよ」
「それならおいらは援護するよ。でもあの数だ。折りを見て退いたらアイーダさんと共に援護に回る。空から見たけど、確かに側面からも攻めることは出来そうだよ」
「ま、ソレはソレとして」
チップが言って、桜が合いの手を打った。
「なんか裏がありそうなのよね。死霊侍の群れが、あんな軍隊のような指揮も統率も取れて攻めてくるなんて怪しいとは思わない?」
「言われてみればそうだよな。民を守って戦った侍が、民を襲うなんて浮かばれないにもほどがある。伊達に負けたのがよっぽど無念だったってことか‥‥‥?」
「村人は何かしたのかしら? もしそうだとしたら、相当恨まれてるわね」
大輝もアイーダも、志士とナイトという職業上思う所があるのだろう。とはいえだ。考えるのは事を終えた後からだ。森写歩朗はまとめに入る。
「どうやら狙われる訳もありそうだが、ひとまずは生きている者たちを助けよう。落ち着いたら原因の糾明、これでいいな?」
一同拒否の声はない。それから寺の周囲にトラップの設置に道返の石など、アンデット対策のアイテムは多い。数は負けても質とそれを十二分に活かす知識と経験と道具は恵まれている。対抗するには十分だ。
「自分はリーダー格の死霊侍を狙いに行く。頭を潰せば残りは烏合の衆だ」
統率が取れているからこその弱点だ。少数で相対するなら数少ない逆転の要素。
「瑞香殿、頼む」
「わかりました」
無我の杖を掲げ呪文を唱えていく。レジストデビルの魔法が一同を包む。
「それでは私は戻らせて頂きます。まだ、講堂に怪我人もたくさんいらっしゃるので」
何か変更があればお知らせ下さい、と琉瑞香(ec3981)。僧兵であるが術に長けている彼女は、後方支援と負傷者の治療を担当。村人にも多くの怪我人がいるので今こうして抜け出している暇もない。
森写歩朗はグリフォンにチップはフライングブルームに跨り先行し、セピアが続いていく。防衛を専属で担当する四人はそれぞれの作業と持ち場に散っていくが――セピアと同道する筈の桜は村人を捕まえて物陰に引きずりこんでいた。
「あの死霊侍のことなんだけど、ナニか恨まれるようなコトでもシたの?」
村人二十代男性は見事に撃墜された。
戦闘の基本は兵の数を揃えること。作戦も大事だが第一にか数を揃えることが重要だ。
たとえ個人の能力が高く局所的に優勢だろうと、それが軍そのものの勝利に繋がるという訳でもない。
実際『彼』は冒険者を脅威と見ていなかったし特別対抗手段を講じることもしなかった。だが寡兵だからこそ出来ることも在る――ナイトであるセピアは難色を示していたが全体の作戦に乗った。
やはり職業柄正攻法を好むのだろう。
寺に残った仲間たちがトラップと防衛手段を完成させるまでの時間稼ぎ。聖譚曲の名を冠する愛馬を駆り死霊侍に突貫。
「ハァッ!」
十字架の槍が死霊侍をなぎ払う。十字架を象っているだけに魔性の者には必殺の力を秘めているのだろうか。
聖槍が貫く。
セピアを援護するようにチップの矢が、桜の微塵隠れの爆発が轟くが彼女の表情は晴れることはなかった。
聖槍を逆手に持つ。
突きの攻撃を一転、横殴りに切り替えた。
「やはり突きの攻撃は効果が少ないようですね」
オラトリオに指示を出し速度を上げる。目の前の死霊侍。通り抜けざま、殴り打ち砕く。
胴丸や鎧を着ているとはいえ相手は骨の魔物だ。骨の所々空いた隙間は槍の穂先を通過させダメージを与えられない。チップの射掛ける矢も同じで、桜の起こす爆発が数少ない戦果を発揮していた。
桜の四方八方から、死霊侍が迫る。
包囲戦術。生前の戦略を覚えているのだろう。一匹一匹が互いに邪魔にならないよう等間隔を空け刀を振り上げる。
隠れる場所もない。だが桜は余裕。
「あんた達に同情シなくはないけどけど」
桜は知っていた。
寺から出る前村人に聞き出した情報。この手のアンデットの行動理念と推測される事情。気が重くなる話しだ。
――士気が落ちるかもしれないわねぇ?
忍者的にこの手のものに耐性があるかもしれない桜は黙ってることにした。事情を話すのはことが終ってからでもいいだろう。
とにかく今するべきは、
「死人は死人らしく寝てなさい」
数え切れない刀が貫き切り裂くその刹那、轟く爆音。桜を基点とした爆発は今切り込もうとした死霊侍たちを粉砕する。
槍も矢も通じない相手だが爆発そのものに耐性はない。
術の効果により瞬間移動。体勢を整えるがそこに別の死霊侍の一団が取り囲む。
桜は戦闘が始まってからこれを繰り返していた。
強烈な爆発により敵の戦線を崩す。
人間や生きている魔物には爆発の視覚効果と音だけで十分に揺さぶりをかけられただろう。だが相手は死霊。そして元は死を恐れない侍だ。退く事を知らない敵に、不敵の笑みを絶やさないが桜は消耗しつつある。
(―−マズイわね。そろそろ回復しないと)
忍術も無限に使えるわけではない。使い続けた微塵隠れの術は、確かに効果を発揮したがその分のMPを消耗する。
逡巡の隙を死者の侍たちは見逃さなかった。
『オォォォォォォ!!!』
迫る刀身。死霊侍たちも桜を最優先に倒す敵と判断したのだろう。死霊侍の攻撃を巧みに避けていくがそれに続いてくる、雪崩のような死霊侍の数。
「――冗談じゃないわ!」
なけなしのMPを消費して微塵隠れの術を使い瞬間移動。見渡す限りの死者が雪崩のように自分へ襲い掛かるのだ。常人なら‥‥‥ベテランの戦士ですら身が竦むだろう。
だが死者の妄執は止められるものではない。死霊侍は桜への攻撃の手を緩めない。
桜はある種の覚悟をした。
そして、幸運の女神は彼女に微笑んだ。
「やらせないだよ! クイックシューティング!」
パラという種族特徴が功をそうしたのだろう。低身のチップは死霊侍に気付かれることなく側面に回り射掛ける。矢の攻撃でも眉間などの頭部を狙えば話が違ってくる。技の特性から命中に問題があるものの、突然の攻撃により死霊侍はたたらを踏んだ。
そこに追撃するニ匹の忍犬。桜のペットだ。
特殊な鍛錬を受けた忍犬は死霊侍を恐れない。そして主の危機を見過ごすわけがない。
口にくわえたクナイで死霊侍で勇敢に立ち向かう。そこへ戦闘馬の突貫が死霊侍を吹き飛ばした。槍を前に固定したセピアだ。
聖槍を掲げる。
「浄化してあげるわ‥‥‥ピュアリファイ!」
聖光が死霊侍を包む。清めの魔法はアンデットに対し必殺の効果を持つ。浄化された仲間を見て脅威がまた一つ増えたと判断した死霊侍たちは一同を取り囲み様子を窺う。見れば川を渡り始めている死霊侍も出始めている。
セピアは周囲の警戒をしつつチップに言った。
「そろそろ潮時ね。合図をお願い」
大将首目掛け一人突撃している彼にも知らせる必要がある。
チップは村から失敬した鏑矢を空に放った。
生前優秀だったとしても、さすがに空からの攻撃は想像もしていなかった。
武器を魔獣の短剣に持ち替えた森写歩朗。レミエラ効果によりソニックブームを空から放ち続ける。だが無目的にしているわけではない。相手は大将首。空を進む都度、死霊侍の姿が増してくる。
眼前には骨の大軍。嫌な光景だ。そして見つけた。
「その首貰った!」
グリフォンに命じ死霊侍をかき乱す。地面に降り立った時の彼の手には一振りの刀が握られていた。
姫切。アンデットスレイヤーの効果を持つ名刀だ。
「邪魔だ! 散れ!」
直衛の死霊侍だろう。他のそれより身なりが立派なそれを眼にも留まらぬ早業で切り伏せる。
達人を超越したその剣技。森写歩朗はレンジャーだが本職の侍を凌駕する剣技の使い手だ。さすがお隣を守ってそうな苗字の人なだけはある。
精神を集中する。近づいてきた死霊侍が爆散。微塵隠れの術だ。
そしてその移動先、『彼』の背後。
「これで終わりだ!」
姫切の一閃。避ける暇もない。だが、
「――何!?」
割って入る一体の死霊侍。勘のいい死霊侍もいるということか。
その一瞬の攻防で『彼』の壁となる死霊侍たち。好機を逃した森写歩朗はこのまま押し切ろうかと逡巡したが鏑矢の音が撤退を知らせた。
「ここまでか。出来ることな仕留めて置きたかったが‥‥‥!」
背を見せ撤退。空のグリフォンに合図し跨った。
道坂の石の結界は死霊侍の動きを大きく鈍らせた。そして瑞香の仕掛けた魔除けの風鐸、死霊侍の進攻方向は制限された。
「負傷された方や手伝いの出来ない方は講堂に避難して下さい。アンデットはホーリーライトの魔法には近寄れません」
講堂の前には瑞香が陣取り、数少ない抜けてきた死霊侍に対抗している。
「彷徨える哀れな死者に永久の眠りを‥‥‥ピュアリファイ!」
ここに来るまでにダメージを負っていたのだろう。ピュアリファイにより一撃必殺。何故なら――
「ハハハハ! 此処はな、生きようとする奴の進むべき道だ。貴様等の様な死人の踏み居る余地は無い!」
戦槌が粉砕撲滅。死霊侍を蹂躙する。
「それを許せぬと言うのなら全力で懸かってこい! 華国の壮士、荊壮蒼の名にかけて叩き潰してやる! そのまま叩き潰されて冥土に帰りやがれッ!」
猛将とは彼のことを言うのだろう。門の前に立ちはだかり迫る死霊侍を打ち砕く。その姿、彼の英雄ハンカイのようだ。
そして大輝のファイヤートラップにより抜けることの出来た死霊侍には十分な力も残ってない。
「まだまだ! 朽ちた鎧も錆びた刀も骨ごと砕いてやる!」
大輝のハンマーが死霊侍を叩き潰す。
アイーダはその中で一体の死霊侍の姿を捉えていた。
後方で指揮する一体の死霊侍を。
「破魔矢使ったのは勿体無かったけど、討たせてもらうわよ」
ホーリーボウに矢を番える。
狙いを付けて、放った。