馳川更紗は幸せを掴めるか? 温泉編

■ショートシナリオ


担当:橋本昂平

対応レベル:フリーlv

難易度:普通

成功報酬:0 G 78 C

参加人数:8人

サポート参加人数:1人

冒険期間:11月02日〜11月09日

リプレイ公開日:2006年11月09日

●オープニング

 江戸の街は広く大きい。
 源徳公が治めるこの地には、ちょうどジャパンの中心辺りにあるせいか、各都市に向かうそれぞれの旅人達がそれぞれの理由で立ち寄り、それぞれの事情を持ってまた旅立ち、また、定住する。
 人の縁はどこで繋がるか判らない。ある時通りすがった誰かが、ある時いがみ合った者同士が手を取り合う事もまた縁。
 人の世と縁はまさしく青天の霹靂。全く何が起こるか判ったものではない。



――遠い異国の地で、レミングの群れの進路上に町や村があろうと、遠い異国の海でバイキング達が暴れていようと、広い目で見れば案外世の中平和なものである――





 メイド喫茶柳亭。冒険者達の手によって閑古鳥が大合唱をしていたかつての甘味処は、今は江戸屈指の名(迷)店になっていた? 和洋折衷なこのお店。妙に落ち着かない感もあるが、西洋のお屋敷とはこんなものだろう――なんて来客達は納得している。慣れれば別に気にも留めるような内装でもない。
 そんな店の一角。
 和洋折衷で妙に落ち着かないとはいえそれなりに煌びやかな店内。逆にコモンな客はどうしても浮いてしまうが、生まれながら人を使うのが当然な環境で育った者にとっては例え異文化な場所でも違和感なんてさほどないものだ。
「とまあそういう事で、今度皆で温泉旅行に行こうと思うの。もう更紗の分も店に予約入れてるから予定があったら潰してね」
 そう言えば、と優雅に紅茶を飲んでいた秋山蘭は思い出したように言った。
「‥‥‥えっと、突然何を言っているの?」
 更紗は至極真っ当に突っ込んだ。腰まで伸びた長い金髪。エメラルドのような青い瞳。遥か遠い異国の地より旗本馳川家の養女として育ってきた更紗は、見た目を見事に裏切って、熱い番茶をそれこそ縁側で日向ぼっこを楽しむようなジャパン人の年寄りにように啜った。
「だから温泉旅行よ。聞こえなかったの?」
「聞いてないのも当然じゃない? 更紗はいつも高槻くんの事しか考えないんだからさ」
 黒曜石のような黒髪が印象的な高田雅美に工藤浅香は相槌を打った。ショートカットの似合う活発そうな少女だ。違いない、と蘭は頷いた。
「ちょ、何を言っているのよ! 別にボクは慎一郎の事なんて、そ、その‥‥‥」
「全く。いつもいつも色ボケれて羨ましい事で。私達はそんなに好く事の出来る相手はいないというのに」
「それも毎度毎度恋の相談までさせられる。いい加減進展してほしいわ」
「悪かったわね‥‥‥」
 更紗は三人を睨み付けた。
 まあ、今の今まで上手く行った試しは全くない。というかもっと仲良くなってあわよくばもう一歩進んだ仲になりたいのに、どうして素直になれないんだろう?
 更紗は番茶をもう一度啜ろうとして、
「いっそ『がばっ!』『ちゅっ!』『合体!』でもしてくれた方が色々楽なのにね」
 思いっきり吹いた。
「ちょっと待ちなさい! あ、浅香。あんたは一体何を言っているのよ!」
「別に変な事言ってないけど? 好きあって付き合えば、最終的に二体合体白装束の主力が全軍突撃するんだし」
「あ、ああああああ浅香ァァァ!!!」
「ちなみに主力ってのは」
「やかましい! それ以上は言うな!」
「うるさいのは貴女よ。見られてるわよ」
「‥‥‥‥‥‥」
 赤面して、更紗は苛立たしげに座った。
「ほら。このクッキーでも食べて落ちつきなさい。ああ‥‥‥クッキーに番茶は合わないわね。そこの貴女。何か適当な飲み物を四人分持ってきて頂戴」
 かしこまりました、と一人のメイドがしずしずと下がる。何というか、随分様になっているものだ。更紗達この四人。全員旗本のお姫様で家来や親の部下達が自分を持ち上げている環境で育ってきた関係上、人を使う事に何一つ躊躇いはない。一般人からすれば羨ましい所か軽く殺意が沸きそうだ。
「少しは落ち着きなさいな。というか、こういう店なのに番茶はどうかと思うわ」
「うるさいわね。ボクはこれが好きなの」
 ジャパン人の鑑ね、と蘭は悪戯っぽく笑った。
「で、結局何で温泉なのよ」
「ああ。忘れてたわ」
「忘れないでよ」
 更紗は番茶を飲み干した。
「ほら。私達お姫様って何かと自由がないじゃない? 外出するにしてもお付の者も一緒で‥‥‥いい加減気分も滅入るわ」
「その割にあんた達は好き勝手やってるじゃない」
 更紗も同じじゃない? これは雅美。
「まあ、気分転換も兼ねて、お忍びで皆で温泉に行こうという話しよ。それぞれ泊りがけの習い事だの何だので言い訳つけてさ」
 お嬢様は大変なのだ。
「私達含めて十五人。さすがに人数が多いから馬車で行こうと思うわ。更紗に借りた西洋の書物に載ってたものを参考に、職人に作らせたの。見よう見まねで作ったものらしいし本場のものに比べると多少の見劣りはするでしょうけどね」
「その時点で既にお忍びじゃないと思うのは気のせいかな?」
「気のせいよ」
 言い切った。
「‥‥‥まあ、判ったわ。それで何でボクも?」
「更紗には良い話しと思うわ。そこの温泉。古くは千年だか百年前から続くものらしくて、一番のウリは入った恋人同士が必ず結ばれるって言う『恋の湯』。折角だから高槻くんと入ったら?」
「んなっ!?」
「そんでもって高槻くんと合体?」
「浅香! あんたは黙ってて!」
 いい突っ込みだ。蘭は無視して言った。
「そういう訳で女の子だけで行くのも何かと危ないし、貴女と高槻くんにはついでに護衛を頼みたいの。それに人数も多いから冒険者にも依頼しようと思ってるわ」
 更紗は少し不機嫌そうにねめつけた。
「別にいいけどさ、あんた達だって十分に強いじゃない。身の丈ほどの野太刀や槌や斧振り回すくせに」
「私達も一応女ですから。それに最近じゃないけど、温泉覗く河童の方もいらっしゃると聞きますし」
 確かに嫌に違いない。
 更紗はため息をついて頷いた。





「とまあ、そういう訳で慎一郎には護衛を頼みたいの。勿論ボクの言う事断るわけないよね? 予定があったら潰してね」
「え? 更紗、突然何を言ってるの?」
 至極真っ当に、慎一郎は答えた。それにしても何処かでしたようなやりとりだ。
「突然って、さっき言った通りよ。それにさ、慎一郎だってこないだ言ってたじゃない。今度休みを強制的に取らされたって」
「まあ、そうだけど‥‥‥」
 話しを聞くと既に自分の分も予約に入っているらしい。費用は護衛をしてくれる、という事で出してくれるらしい。
 とはいえ、連休にはこれといった予定がないにしても突然は困る。
「まあいいじゃない。女の子に全然縁のない慎一郎が、女の子にお近づきになれるチャンスなんだよ? 折角だからこの機会を活かしてみたらいいじゃない。もしかしたら可愛い娘と仲良くなれるかもね!」
 本当はそうなったら困るんだけど。更紗はそっぽを向いてそれでいて何かを期待するような瞳を慎一郎に向けた。
「うん‥‥‥。それもそうだね‥‥‥」
 慎一郎は何か算段を整えて、
「よかったらさ。誰か可愛い女の子紹介してくれないかな? 俺もさ、実は彼女ほしいって思ってるし‥‥‥って更紗、どうしたの?」
 慎一郎にとっては普通に思った事言っただけだ。だけど、
「慎一郎の‥‥‥慎一郎の‥‥‥」
 溢れる怒気。いつものパターンで察した気配。慎一郎は何故かやばいと思ったけど、
「慎一郎のばかぁぁぁぁぁぁ!!!」
 盛大な平手が炸裂した。

●今回の参加者

 ea2139 ルナ・フィリース(33歳・♀・ナイト・人間・イギリス王国)
 ea4734 西園寺 更紗(29歳・♀・浪人・人間・ジャパン)
 eb0084 柳 花蓮(19歳・♀・僧侶・エルフ・華仙教大国)
 eb4757 御陰 桜(28歳・♀・忍者・人間・ジャパン)
 eb5532 牧杜 理緒(33歳・♀・武道家・人間・華仙教大国)
 eb7651 柊 蓮慈(26歳・♂・志士・人間・ジャパン)
 eb8219 瀞 蓮(38歳・♀・武道家・人間・華仙教大国)
 eb8565 クナウ(21歳・♀・チュプオンカミクル・パラ・蝦夷)

●サポート参加者

ゴールド・ストーム(ea3785

●リプレイ本文

 何だかんだ言って、馬車内は女性ばかりだ。今回の温泉旅行は参加者がやんごとなき家のお姫様ばかりで。暴漢以前にそういった理由で襲ってくるかもしれない相手からの護衛もしなければならない。ならば護衛は見た目からいかつい男の方が効果的ではあるもののそうそう上手くいかないものだ。
「温泉なんて故郷ぶりですよ。楽しみだなぁ」
 なんてウキウキ気分なチュプオンカミクルのクナウ(eb8565)。もう一台の馬車に乗っている、参加冒険者唯一の男性、柊蓮慈(eb7651)以外は冒険者全員女。それこそ知る人には知れ渡ったり江戸の一、二を争う実力者がいて心強いものの、どこか不安げな気持ちを隠せない依頼人の秋山蘭。とはいえ、一緒にいてひきつけを起こしそうな強持てより、同性の方がお嬢達にはいいかもしれない。
 とまあそういう訳で、冒険者含めれば結構な人数がいるもので、事前に用意していた馬車に二つに分けて入った。慎一郎と蓮慈はそれぞれの馬車に。いざという時もあるだろうし男がいた方が――言い回しによれば女性差別になるが――心強い。
 つまりだ。見渡す限り女性の中でたった一人男がいる。慎一郎も蓮慈も見た目は悪い方ではないし、慎一郎は女顔で童顔などちらかというと可愛い系の男の子。おまけにこの状況はハーレム状態。鈍い朴念仁でもどうしても顔がにやけてしまうものだ。
「高槻さん。お話しは伺っていますが、こうやって顔を合わせるのは初めてですね。護衛依頼を受けた者同士、よろしくお願いします‥‥‥にゃ?」
 頬を染めて上目遣い。とっても素敵な美少女に(暦年齢はともかく)そんな顔されたら大抵の男はドキがムネムネで、慎一郎は声が裏返ったのも気付かず柳花蓮(eb0084)に尋ねた。
「は、初めまして。どうして語尾がにゃ、なのかなぁ?」
 身に付いた職業病。メイド喫茶柳亭でバイトをしているらしい花蓮は、『そういう設定』のまま答えた。
「バイトで働いてる喫茶店で接客の練習の為に、普段から語尾ににゃをつけなさいって言われてるんです‥‥‥にゃ」
「そ、そうなの! タイヘンだね!」
 ぽ、と頬を染める花蓮に慎一郎のハートは十六ビート。過去を振り返ると幼馴染みに振り回されまくってたし、「何かいいなぁ‥‥‥」とつい和んでしまう。近くで鬼のような殺気を飛ばしている更紗に気付いてなんかいませんよ。
「それにしても、世の殿方に刺されそうな展開どすなぁ。所で気になる女子はいますん?」
 輸入された珍しい動物かの如く、それぞれの馬車でちやほやされまくる慎一郎と蓮慈。やんごとなき家のお嬢様は下手をすれば異性と関わる事がないから話しかけたりしてるのだ。ああちくしょうめ。
 他人の色恋の話しほど面白いものはない。西園寺更紗(ea4734)(以後西園寺)は尋ねた。正直答えの程はどうでもいい。
「気になる女の子? そうだなぁ‥‥‥。この間『めいど喫茶』っていう所に初めていったんだけど、あれはネコ耳ヘアバンドかな? まるで直に生えているようだったけどそんな人いる訳ないしってともかく、ネコ耳なメイドさん可愛かったよ。それに、季節亭ってよく行く店なんだけど、そこのお春さんとお夏ちゃんも実はってぶちぃ?」
「ふぅーーーん‥‥‥。青春真っ只中だねぇ慎一郎」
「さ、更紗? ど、そうしたの?」
 おそるおそる、更紗へ微笑んだ。何かが、盛大に、ぶち切れた音がしたし。
「ううん。別に。慎一郎だって男の子だし女の子に興味があるのは当然だから色々目移りするのは当然と思うよ。確かにねね子ちゃんは可愛いし季節亭の店長さんは何かエロい身体してるし店員さんは可愛いからね。慎一郎が気になるのも仕方ないよ。ていうか一度死んでよ」
 絶対零度すら生ぬるい冷たい視線。やっぱり慎一郎は何で怒らせたか判ってない。
「そ、その更紗。よく判らないけどごめんだよ。だからさ、機嫌直して」
「うるさい。黙ってよ」
 他の女冒険者やお嬢様達にちやほやされる度、慎一郎は生きた心地はしなかった。





「助平は男の宿命かもしれぬが、これはちと度が過ぎぬではないか?」
 御陰桜(eb4757)と共に戦場でこそ真価を発揮するトラップを設置した瀞蓮(eb8219)は、改めて死屍累々たる猛者達を見てため息を付いた。
 どこで聞いたのか知らないが、美女美少女ばかりが温泉に浸かりに来たと知った覗きもとい漢達は、まさしく男死にをせんばかりに輝く桃源郷へと目指し倒れていった。
 さすが江戸に知れ渡る名声を持つ忍者の桜。彼女中心に仕掛けたトラップは、見事漢達を撃破していった。
 とはいえだ。それでも這い上がる英雄はいる。
 どんな辛い事が起きようとも、希望さえ捨てなければきっと未来は開ける。
 志を燃やす方向が激しく違ってるが、とにもかくにも英雄達は約束されたい希望法へ一歩また一歩登っている。
 数は多いし桜がいれば春花の術を使えば効果的だが、いないものはしょうがない。
「さてと、ゆるりと温泉を楽しみたい身としては迷惑千万じゃし、何より仕事じゃ。恨み言ぐらいは聞いてやる故、全力を持って叩き潰させて貰おうかの」
 とりあえず近くにいた英雄へ鳥爪撃を叩き込んだ。






 お湯をぶくぶくさせて恨めしげというか羨ましげというか、ルナ・フィリース(ea2139)は負け犬気分で護衛対称を睨み付けるもとい眺めていた。
「‥‥‥ぅぅ‥‥‥はぁ‥‥‥」
 自分の粗末にも程がある双丘に手をあてて見下ろして、お嬢達の立派にも立派すぎる二つの丘を見てまたため息を付いた。
 さすがやんごとなき家のお嬢様。食べている物が違うのだろう。十五歳前後が大半を占めているというのに、皆が皆素敵なスタイルを身に付けている。ちなみに更紗は論外で。
「皆さーん! しっかり護衛するから存分に羽目を外してね!」
 温泉に響く牧杜理緒(eb5532)の声。色んな温泉のあるこの旅館。それぞれ冒険者の護衛を引き連れつつ思い思いの温泉へ浸かりにいっていた。そして偶然この大温泉に全員集まったという訳だ。
 見渡す限り裸の美女に美少女達。極楽浄土に違いない。
「いやー。最初はどうかと思ったけど、一緒に入るのも悪くないね。護衛も出来るし」
 肩まで使ってのんびりと、幸せ顔の理緒。湯治という訳でもないがこれはこれでいい。
「確かに、温泉に連れて行って貰える上にお金まで稼げるなんていい依頼よねぇ」
 名前の通りに頬を桜色に染めている桜。当初の目的の護衛なんて忘れて、すっかり景色を堪能したり温泉を楽しんでいた。しかもこの大温泉は美容にいいらしく、すっかり気に入ったらしい。
「桜さん、もう少し真面目にやりましょうよー」
 と、これは理緒。そういう自分だって溺れるが如く温泉を堪能している。
「護衛? そんなの適当にやってればいいわよ」
「まあそうだね。あたしも仕事を忘れてのんびりしようかなー」
 こいつらいい性格している。
「ええ。記録係りも簀巻きにして捨て置いたし大丈夫よ」
「簀巻き‥‥‥って、記録係りの人に恨みでもあるの?」
「恨み? ふふっ。どうかしらね」
 刹那凄惨な笑みを浮かべる桜。何やったんだ記録係り。
 二人がそんなやり取りをしている中、長風呂しすぎてのぼせたクナウの看病をしていた花蓮と西園寺が浸かりにやってきた。暦年齢はともかく見た目がようじょ(?)花蓮はともかく、ばいーんでぼいーんな西園寺を見てルナはまた鬱状態。おまけにこれまたスタイル抜群な蓮も入ってきて、ルナは余計に泣けてきた。
「いらっしゃいお三方。ところで西園寺さん、どうして湯浴み着なんて着ているの?」
 女ばかりなのに。
「それは乙女の秘密で。色々あるんどすよ」
 かの有名な念仏温泉の二つ名がある温泉は湯浴み着着用が義務付けられているし、宗教的な意味合いもあるかもしれないし色々あるのだろう。
 それはそれでいいとして、ぶつぶつ言っているルナと温泉を楽しんでいた蓮は、何かの気配がしてそちらへ向かった。




 切り立った断崖絶壁。桜が仕掛けた戦場で真価を発揮する鬼のようなトラップの数々を潜り抜け、数多の強敵(とも)達の骸――死んでないけど――を越え、頂上付近まで上り詰めていた。
「もうすぐ‥‥‥もうすぐ夢の国へ! 桃源郷へ! 散っていった強敵達の為にも、俺はまだ散る訳にはいかないッ!」
 護衛を忘れてこの男。蓮慈は燃え盛る本能のままに身を任せていた。ようは覗きだ。初心者冒険者とはいえ、そこは栄えある神皇陛下の手足たる志士というか下半身で動く男というか、異様なまでの逞しさを発揮している。
 伸ばした手が頂きを掴んだ。
「どうして覗きなんてするんです?」
「そこに女湯があるからだ!」
 どこぞの登山家か。登り切った後、急に変に感じて顔を向けたら、シルバーナイフ片手のルナと蓮。二人とも大きな手『たおる』なる布で身を覆っている。
「これだけでも眼福です!」
「判りました。とりあえず落ちましょうか?」
 シルバーナイフが煌いて、ルナの鬼のような斬撃やら蓮の必殺コンボを喰らって一人の勇者が落っこちた。




『この者覗きにつき』の張り紙を張られて水車小屋の水車に縛られてぐるぐる回る蓮慈を他所に、クナウと世間話をしていた慎一郎はどうせだから恋占いをして貰っていた。最初は遠慮していたけど、そこは女の子に興味のあるお年頃。何だかんだで興味がある。
「とりあえず、あそこの温泉に入ると恋愛運あがるそうですよ。いってみたらどうですか?」
 ちなみにその温泉の名は『恋の湯』。事前に冒険者達が手を加えて看板は隠されている。
「それより皆の胸、大きくて重そうなのに浮くんだね! 驚いたよ」
 男兄弟が多かったらしくそういう手合いの話しにはとんと疎いらしい。クナウは普通に話しているものの、慎一郎にしてはどう答えたらいいか判らない。
 そして恋の湯へ向かった慎一郎。似たような事言われて先に浸かっている更紗と見事鉢合わせて、命の危険な意味で胸がドキドキしたらしい。