古代戦隊ハニレンジャー

■ショートシナリオ


担当:橋本昂平

対応レベル:フリーlv

難易度:普通

成功報酬:0 G 78 C

参加人数:9人

サポート参加人数:3人

冒険期間:11月09日〜11月14日

リプレイ公開日:2006年11月15日

●オープニング

 江戸の街は広く大きい。
 源徳公が治めるこの地には、ちょうどジャパンの中心辺りにあるせいか、各都市に向かうそれぞれの旅人達がそれぞれの理由で立ち寄り、それぞれの事情を持ってまた旅立ち、また、定住する。
 人の縁はどこで繋がるか判らない。ある時通りすがった誰かが、ある時いがみ合った者同士が手を取り合う事もまた縁。
 人の世と縁はまさしく青天の霹靂。全く何が起こるか判ったものではない。



――遠い異国の地で、レミングの群れの進路上に町や村があろうと、遠い異国の海でバイキング達が暴れていようと、広い目で見れば案外世の中平和なものである――





 時は神聖歴X年。ジャパンは危機に陥っていた!
 遥か遠き異界の地より現れたセイヨウ帝国軍。異界の技術と悪魔の技術を融合させたかの帝国軍に、ジャパンの国々は敗戦を重ね、この国の民は恐怖と絶望の淵をさまよい続けていた。このまま悪魔の手先達に滅ぼされるのを待つだけなのか? ジャパンの諸侯は異界の力に屈するだけなのか?
 人々の心の中に諦めが生まれようとしたその時、彼等は現れた。
 太古の時代より受け継がれし神秘の力。
 その名は――古代戦隊ハニレンジャー!




「‥‥‥‥‥‥‥‥‥」
 依頼で演劇をする事になった冒険者達の一人は、改めて原作本のあらすじを読んで思いっきり脱力した。何度も思うが、古代戦隊ハニレンジャーって何だ?
 もの凄くというか、どこから突っ込めばいいのだろう。セイヨウコマンダーやハニセイバーはまだいい。前者はセイヨウ帝国の戦闘員で後者はハニレンジャー全員共通の武器。長さからして小太刀状のものだ。
 まあそれは本当にいいとして、古代合体やらハニキングとかは何だ? 埴輪同士が合体? 理解できない。全く理解できない。ざっと台本読み直してみたものの、元々が子供向けらしいしそういうものだろう。
 今回新しく開店する商店の宣伝の為、彼の店の出した案はヒーローショーをやろうとの事だ。店に客が集まる理由は色々あるが、子供にせかされて客がやって来るというのも理由の一つ。元々が子供向けのお菓子を中心に様々な菓子を取り扱う店だ。子供受けしておくのも悪くはないだろう。
 そういう訳で、お子様、それも血気盛んでヒーローに憧れる男の子に人気のある『古代戦隊ハニレンジャー』のショーをする事にした。頭が痛くなるのは何故だろう?
 演技者が新たな問題になったものの、それは冒険者に頼む事にした。冒険者は様々な修羅場を潜り抜けている者もいるし、武芸に長けている者もいる。シナリオを含め普通に役者さんに頼むより、そういう冒険者に頼んだ方が迫力があると踏んだからだ。
 いざすぐ隣に設営してある舞台で披露するのは五日間。最初が肝心という事で、初日が一番派手になるらしい。さすがにハニキングだなんて超巨大埴輪は用意出来ないが、とりあえず受けた以上依頼を果たそうもとい役を演じきろう。
 冒険者は突っ込みたい衝動を抑えつつ練習に戻った。

●今回の参加者

 ea1274 ヤングヴラド・ツェペシュ(25歳・♂・テンプルナイト・人間・神聖ローマ帝国)
 ea4137 アクテ・シュラウヴェル(26歳・♀・ウィザード・エルフ・ノルマン王国)
 ea5603 ユーウィン・アグライア(36歳・♀・ナイト・ジャイアント・モンゴル王国)
 ea5936 アンドリュー・カールセン(27歳・♂・レンジャー・人間・イギリス王国)
 eb4757 御陰 桜(28歳・♀・忍者・人間・ジャパン)
 eb5401 天堂 蒼紫(30歳・♂・忍者・人間・ジャパン)
 eb5402 加賀美 祐基(30歳・♂・志士・人間・ジャパン)
 eb5532 牧杜 理緒(33歳・♀・武道家・人間・華仙教大国)
 eb8219 瀞 蓮(38歳・♀・武道家・人間・華仙教大国)

●サポート参加者

ユーシス・オルセット(ea9937)/ 神哭月 凛(eb1987)/ アルマ・フォルトゥーナ(eb5667

●リプレイ本文

 晴れた空の下。開店を迎えた店に隣接した舞台で、瀞蓮(eb8219)はスタッフや店員と共に開店イベントを手伝っていた。ヒーローショーでは司会をやる事になっているが、どうせだからイベントも含めやってもらう事になったのだ。さすが見た目美人でナイスバディな蓮。大きなお友達に特に人気が出て台詞棒読みな所が逆にいいらしい。
 そして芸人一座の公演が終って、
「ふはははははははははははは! ふは〜〜はっはっはっはっはっはっはっはっはっはっは!」
 空に響く大哄笑。舞台裏から颯爽と、無駄に煌びやかな衣装に身を包んだバカが現れた。
「余こそは欧州の闇より出でし刺客。胆威申請用紙を手にする為、ジャパンの地を侵略せんと吸血怪人ラ・イレイザー見! 参!」
 色んな角度で効果音が挿入されそうに、アタマ悪そうなもとい独特のテンションヤングヴラド・ツェペシュ(ea1274)がポーズ決めて颯爽と現れた。
「ヤングヴラド殿よ。打ち合わせではまだ後の筈じゃ。今出てきてどうする」
「その辺りは問題なし! 悪の組織で連係プレイが出来てないのはもはや様式美であるゆえ、そもそも我が輩は相談などしていないのでこれはこれでよし!」
 よくない。蓮はため息をついて、
「これ以上暴走されると困るのでな‥‥‥。潰させてもらう」
 かなり本気と書いてマジな具合に構えた。
 何か違う方向に向かっている気がするが、
「おねーさん頑張ってー!」
「アタマ悪いセイヨウ帝国の怪人なんてやっつけてー!」
「蓮たんハァハァ」
 一部スルーして、小さなお目々をきらきら輝かせる子供達。蓮みたいに強そうでスタイル抜群なとっても美人なおねえさん。小さく純真な子供心を捕まえて話しませんよ。
「うぬぅ! 我が輩には胆威がかかっておるのだ! 邪魔をするならば容赦はせん!」
 ヤングヴラド本人が邪魔をしているような気もするし、個人的な事情はどうでもいい。ヤングヴラドもとい吸血怪人ラ・イレイザーは、
「出でよセイヨウの精鋭達! セイヨウコマンダー召喚!」
『セーイ!』
 舞台袖からわらわらとハードでGな恰好の変質者が現れた。西洋と思われしぴちぴちな衣装を身に包んでいるが、集団だとあまり変に思わないのはいかがなものか。
「悪人などに情けはかけん! 潔く散るがいい!」
 どっちが主役だ。蓮は十二形意拳の技を駆使しセイヨウコマンダーは超秒殺。「おねーさんかっこいー!」の子供達の声援を背に受けて、「こういうのも悪くないのぅ‥‥‥」と感慨にふけったがそれがいけなかった。
「フ‥‥‥。押されているな」
「む。誰じゃ!」
 場の空気にあてられて、すっかりヒーロー気分な蓮。新たな敵の出現に身構えた。
「セイヨウ帝国軍が一人、黒騎士ダース・テンドール」
「同じくジークフリート。人呼んで『鋼のジィク』」
 コーホーコーホーと実は息苦しいだけのダース・テンドール役の天堂蒼紫(eb5401)とジークフリード役のアンドリュー・カールセン(ea5936)。二人とも被っているみたいにクールな感があるから悪役が板に付いている。
「ダース・テンドールにジィク! まだ我が輩は負けておらぬ! 下がっておれ!」
「フ‥‥‥。手下共を全員倒された者の台詞とは思えぬな」
「肯定だ。戦いは数が基本。いくら個人の能力に優れようとも手勢を失っていれば何もできまい」
「やかましい!」
 ラ・イレイザーは強がるも二人の言う事も最もだ。ラ・イレイザーは二人をけしかけた。
「そこまで言うならお前らも手伝えい! 戦いは数が基本なら、手伝うが道理であろう!」
 違いない。ジィクは声高らかに、
「出でよ、セイヨウコマンダー!」
 わらわらと、舞台袖からセイヨウコマンダーが現れた。さすがに分が悪い蓮は観客席の子供達へ呼びかける。
「皆の者! こんな時こそ、海の向こうの暴君たちからこの国を守る正義の味方を呼ぶときじゃ。さあ、わしに続いて声を張り上げるが良い。助けてハニレンジャーーー!!!」
 かなりノリノリだ。いい感じにハイになっているんだろう。子供達も、
『助けてハニレンジャーーー!!!』
 大気を震わす大声音。近くの役所は一瞬事件かと思ったらしい。





『古代の神秘を此の身に受けて、輝く我らのハニワ魂! 古代変身! ハーニ・ハニ・ハニーワ!』
 舞台から響く声。それぞれの衣装を身に付けた四人の戦士は颯爽と現れた。
「そこまでよセイヨウ帝国軍! あたし達が来た以上、もう好きにはさせないわ!」
 燃える赤きハニワの戦士。ハニレッドこと牧杜理緒(eb5532)が見得を切る。
「その通りだ! 悪人相手には容赦しねえぜ!」
 性格的には赤な立ち位置な、ハニブルーこと加賀美祐基(eb5402)。専用武器もしっかり剣でさらに赤っぽいが、そこは作品によって色々ある。
「落ち着いてブルー。激情に身を任せてはセイヨウ帝国軍の思う壺よ」
今にもブッ込み特攻しそうなブルーを抑えるハニパープルことアクテ・シュラウヴェル(ea4137)。出来の悪い弟をたしなめる様な感じだが、ハニレンジャーは美女四姉妹と末弟の男の家族ものの一面もあるから別に間違ってない。
「その勢いでハニコマンダーを奪われなければいいのだがな」
 クールぽくしてるけど、実はギャグ担当なハニホワイトことユーウィン・アグライア(ea5603)。変身アイテム兼エネルギー源のハニコマンダー。奪われたら大ピンチだ。
 彼女達四人を見据え、ダース・テンドールは不敵に笑う。
「フ‥‥‥。四人しかいないではないか。ハニピンクはどうした?」
「ピンクがいなくても、セイヨウ帝国軍なんてあたし達でも倒せるわ! みんな、いくよ!」
 レッドの言葉に、
『ハニセイバー!』
 と見事にハモッて全員同時にハニセイバーを抜き放つ。
「面白い‥‥‥。行け! セイヨウコマンダー!」
『セーイ!』
 突撃するセイヨウコマンダー。しかし烏合の衆のセイヨウコマンダーなんかに負けるハニレンジャーじゃない。次々にハニセイバーの前に打ち倒された。
「やってくれる‥‥‥。ならばこの鋼のジィクが相手だ!」
 ハニホワイトへジィクが襲い掛かる。
「くらえ! ジィクスピアー!」
 殺傷力を抑える為に刀身部分に細工したスピアを振り回す。ハニホワイトはハニセイバーを巧みに操りそれを捌く。
 というかそこは格闘能力がものを言う。どちらかというと遠距離戦が得意なジィクは一瞬の隙を付かれジィクスピアーを弾き飛ばされた。
「まだだ。まだジィクスピアーをやられただけだ!」
 どこかで聞いた台詞だ。
 割と本気と書いてマジで戦っている二人を他所に、残りの古代戦士はダース・テンドールを追い詰めた。
「フ‥‥‥。中々やるなハニレンジャー。だが、まだ爪が甘い」
「それは負け惜しみでしょうか。 ですが見逃してあげませんよ」
 ハニパープルは不敵に笑うダース・テンドールへハニセイバーを突きつける。
「フ‥‥‥。これで勝ったと思っているから爪が甘いのだ! ラ・イレイザー! 今だ!」
「ふははは! ハニレンジャー、この子供達に傷を付けられたくなかったら今すぐ武器を捨てるのだぁ〜!」
 数人のセイヨウコマンダーと共に子供達を人質に取ったラ・イレイザー。親御さん達には事前に伝わっているものの、子供達は本気で泣き喚いている。
「おのれセイヨウ帝国軍! 司会のお姉さんまで人質に取るとわ!」
 役にハマリこんでいるのはいい事だ。ブルーは怒りに身を振るわせた。
「フ‥‥‥。それ以上抵抗するなよ。したら、わかるな?」
 ダークセイバー――黒塗りの木刀――を手にダース・テンドールはハニレンジャーへ迫り来る。ダークセイバーの一閃がハニレンジャーを打ち倒した。
「ハニワめ、しねえ!」
 迂闊に手を出せないハニホワイトへ、ジィクは必殺奥義。
「くらえ! ジィクブリーガー!」
 もといサバ折り。地味に痛い。そんなハニホワイトを捨て置いて人質へ歩み寄る。
「これがセイヨウ帝国に逆らった者の末路だ。判ったらセイヨウ帝国に忠誠を誓うがいい!」
 子供達は本気で怖がっている。そんな中、一人の大きなお友達が、
「――いいえ。遠慮するわ」
 セイヨウコマンダーを張り倒した。
「何者っ!」
「古代変身! ハーニ・ハニ・ハニーワ!」
 ハニコマンダーで変身もとい人遁の術。本当は子供に変化しようと思ったけど体積の関係で一般人に化けた御陰桜(eb4757)、ハニピンクだ。
「みんな、子供達はもう大丈夫よ。巻き返すわよ!」
 子供達を捕まえていたセイヨウコマンダーを倒し仲間へ呼びかける。五人は一列に並び、
「迅速果敢! ハニレッド!」
「熱血驀進! ハニブルー!」
「知的可憐! ハニパープル」
「疾風一閃! ハニホワイト!」
「変幻自在! ハニピンク!」
「あふれる勇気を埴輪に込めて! 古代戦隊――」
 埴輪のフルフェイス。それぞれ五色の古代兵士を模した戦闘服。レッドに続き、
『ハニレンジャー!』
 演出の大爆発。スタッフの魔法関係の能力者が魔法の出力を間違えたのだろう。スタッフ達は華麗に吹っ飛んだ。
「ハニナックル! 超埴輪拳!」
「百鬼夜行を斬りまくる! ハニSブレード、スタッグスラッシュ!」
 レッドとブルーの必殺奥義。ラ・イレイザーを超粉砕。
「ハニファイヤーウイップ!」
「ハニシュリケン!」
 ハニパープルとハニピンクがダース・テンドールを打ち倒し、
「さっきのお返し! ハニスナイパー!」
 ハニホワイトのハニスナイパーがジィクを狙い打つ!
「フ‥‥‥。今日のところはここで引き上げよう。だが、次はないと思え!」
 結構ボロボロなセイヨウ帝国軍の面々は捨て台詞。正義の五人組の大勝利!
「みんな、応援ありがと〜」
 ピンクの言葉で子供達の声援は更に超音波みたく。そんな子供達の応援がある限り、ハニレンジャーは負けない!



 戦え! ハニレンジャー。
 負けるな! ハニレンジャー。
 頑張れ! 古代戦隊ハニレンジャー!