貞操防衛大決戦!

■ショートシナリオ


担当:橋本昂平

対応レベル:フリーlv

難易度:普通

成功報酬:0 G 78 C

参加人数:8人

サポート参加人数:-人

冒険期間:02月10日〜02月15日

リプレイ公開日:2007年02月18日

●オープニング

 江戸の街は広く大きい。
 源徳公が治めるこの地には、ちょうどジャパンの中心辺りにあるせいか、各都市に向かうそれぞれの旅人達がそれぞれの理由で立ち寄り、それぞれの事情を持ってまた旅立ち、また、定住する。
 人の縁はどこで繋がるか判らない。ある時通りすがった誰かが、ある時いがみ合った者同士が手を取り合う事もまた縁。
 人の世と縁はまさしく青天の霹靂。全く何が起こるか判ったものではない。



――遠い異国の地で、レミングの群れの進路上に町や村があろうと、遠い異国の海でバイキング達が暴れていようと、広い目で見れば案外世の中平和なものである――




 二月。まだまだ冬の寒さが身体を突き刺す中、源徳軍所属蓮山大隊は領内の湖に来ていた。
 兵達は野営の準備をし、彼女は上官らしく奥に引きこもり焚き火の前だ。
「さ、寒い‥‥‥」
 金のかかった兜に具足に武者鎧。そしてマントに豪奢な槍。武器にそういう無駄な装飾とか細工とか求めるのもどうかと思うけど、それなりに階級や地位のある者は自らの証明の為にそういった装備を整えなければならない。
 まあそれなりの恰好をすればそれなりに命を狙われる事になるのだけど、指揮官の所在をはっきりさせておかないといざ戦場では困る。世の中にはでかでかと『愛』の兜飾りをしている武将もいる。まあその辺りは個人の趣味だろう。
 そんな訳で大隊を抱える蓮山玲香も随分ご立派な装備をしている訳だが、焚き火の前でネコのように丸まっているので威厳も何もなかった。
「大隊長。野営の準備ももうじき終わります。演習の用意をしたいのですが、使用兵装の種類と数をお教えください」
 玲香ほどでもないがそれなりの装飾の装備。蓮山大隊所属、笹山中隊中隊長笹山式子だ。
 式子は玲香に尋ねた。
「あー。別に適当でいいわよ」
「大隊長。管理職は何もしない方が平和といいますけれど、大隊長は何もしなさすぎです。野営の準備も下の者に任せきりで申し訳ないと思いませんか」
 式子はため息をついた。
「思うわけないわよー。私みたいな優秀な上官には優秀な部下がつく者なの。私が皆の仕事取る訳にはいかないじゃない。というか私のする事ってないみたいなー?」
「ありますよ。管理職には管理職の仕事が。まあ絶対やらないと思ってましたから私がしましたけど」
「ありがとね。出来る部下を持って幸せだわ♪」
「いや、仕事して下さいよ」
「やだ。寒いもん」
「子供ですか大隊長は」
 さすがにムカついた。式子は近くにあった桶を掴んで水をぶっかけた。
「あー! 式子ちゃん何するのよ。火が消えちゃったじゃない!」
「消したんですよ。仕事をしてもらわないと部下達に示しがつかないのですが」
「ぶー! したくないったらしたくないもん!」
 どこのお子様だ。最近どうも言動が子供じみている。それでも○十代か。
「はいはい。寝言は寝てから言ってください。只でさえ他の部署から舐められてるんですから遊んでいる暇はないんですよ」
 確かにここの所蓮山大隊は仕事と呼べる仕事をしていない気がする。勿論軍隊である以上活動をしていない方が平和でいいに決まってはいるのだが、この大隊はどちらかというと前線で出撃より主に拠点防衛に力を発揮する。
 上州での騒乱やその他諸々の戦争にも出動しなかったし、その事が原因で他の部隊や将から陰口を叩かれているが、分野が違うし防衛任務に付いている以上文句を言われる筋合いはない。とはいえ言われてしまうのは世の中の無情さというやつだろう。
「もう少し大隊長がしっかりしてくれれば我々も陰口を叩かれる事もないでしょうし、遊んでいる程暇はないのですよ? 挙句の果てには給料泥棒と言われる始末ですし、大隊長はしっかりして下されば‥‥‥」
 それこそ不満はあるのだろう。過去振り返ってみれば星の数ほどあるしロクな事がなかった気がする。
「では訓練内容は私が決めさせてもらいますよ。ちょうど湖の近くですし、水上での戦闘を想定して舟を用意させます。まあ小規模な海戦訓練というやつですか」
「うぬぬぬ‥‥‥」
「装備は木刀や棍で、仮想敵として私の中隊と友孝の中隊とを戦わせます。よろしいですね?」
 一瞬玲香を見てため息をついた。
 さすがにムカついた。
「判った! 判ったわ! それでオッケーだけど、オマケを付けましょうか!」
 玲香はちょうど近くにいた一般兵、浅生中隊の足軽達に叫んだ。
「今日の演習で玲香ちゃんを制圧した人には、式子ちゃんと○○○したり△△△したり×××する事を認めるわ!」
「だ、大隊長!?」
「更に□□□したり凹凹凹したり◇◇◇するしてもオッケーよ!」
「ちょっと待ってください! そんな壊れ――じゃなくて勝手な事というかセクハラですよ!」
「フフフ。何を言うのかしらね。私は知ってるのよ。夜な夜な友孝くんの事を考え」
「ふん!」
 大抜刀。必殺の居合いが避けられた。
「殿中よ殿中よ〜♪」
「うるさいです! というか何でそんな事を知ってるんです!」
「何でって、あんなに声が大きければ聞こえるわよ。声を押し殺してるようだけど」
「そ、そうだとしても! 皆の者がそれに乗るとは思いませんよ! 何たって栄えある源徳公の兵達ですし」
「ふっふーん。そうかしら」
 眼で先ほどの足軽達を促した。
 すると、
「よっしゃー! 皆で頑張るぞ!」
「ああいう強気な女性を押し倒したい!」
「サイタマ!」
 最低だ。こいつら最低すぎる。
「き、貴様等アホな事言うな!」
「大隊長、さっきの言葉に嘘偽りはないですね? 俺等気合入れますよ?」
「勿論本当よ。私は嘘は言わないわ」
「では早速皆に伝えてきます! 笹山中隊長、せいぜい御武運を!」
「黙れ! そっちがくたばりなさい!」
 足早に駆けて行く足軽達。式子は刀を抜いたまま玲香に詰め寄った。
「大隊長‥‥‥。何てこと言ってくれたんです。大変な事になったじゃないですか」
「別にいいじゃない。この寒さだし、皆も気合が入っていつもの三倍の力とやる気を出してくれると思うわ」
「それじゃあ困るんですけど!」
「お陰様でいい暇つぶしになるわ〜♪」
「冗談じゃありません!」
 欲望(アレの)に染まった男ほどタチの悪いものはない。さすがにというか尋常じゃないほどの戦慄が走る。しかも軍隊は基本的に男所帯で女っ気は極めて少ない。
「嫌なら式子ちゃんが勝てばいいじゃない。一応、式子ちゃんとこには冒険者がいるんだし、なんとかなると思うわ。それにいい加減煮え切らないし、友孝くんにわざと負けるのもいいかもねー♪」
「他人事みたいに言わないでください!」
 かくして人生最大の危機が訪れた?

●今回の参加者

 ea0276 鷹城 空魔(31歳・♂・忍者・人間・ジャパン)
 ea4734 西園寺 更紗(29歳・♀・浪人・人間・ジャパン)
 ea8703 霧島 小夜(33歳・♀・浪人・人間・ジャパン)
 eb1044 九十九 刹那(30歳・♀・侍・人間・ジャパン)
 eb5532 牧杜 理緒(33歳・♀・武道家・人間・華仙教大国)
 eb8219 瀞 蓮(38歳・♀・武道家・人間・華仙教大国)
 eb8856 桜乃屋 周(25歳・♀・志士・人間・ジャパン)
 eb9708 十六夜 りく(28歳・♀・忍者・人間・ジャパン)

●リプレイ本文

 それぞれ陣形も組んで戦術も練り、やって来ましたよ天王山。
 源徳軍蓮山大隊所属、笹山中隊中隊長笹山式子は、それこそ人生最大の危機に陥っていた。湖の上に浮かぶ源徳印の小舟群。掲げる旗は同じではあるが、今にも決戦の様相を見せていた。
 互いに離れてはいるとしても肌を突き刺すこの感覚――まあそれだけなら過去の文献に記されているような合戦のようでもあるし、源徳軍の勇猛さを知らしめるようではある。しかし、
「全く、とんだ思いつきもあったものよのう」
 舟に揺られながら瀞蓮(eb8219)は呟いた。時折聞こえる鬨の声。水の揺れによる錯覚もあるだろうが、遠くに布陣している浅生中隊の咆哮は、時折大気をビリビリ振動させてそれこそ修羅の軍勢のようだ。
「普通の演習だと思っていたのですが、これは‥‥‥」
 九十九刹那(eb1044)も小舟の舳先に立って遠くを伺うが、全身からそれこそ鬼のような脂汗を流れていた。
 あくまで浅生中隊の目的は式子だ。
 とは言ってもこの状況、陣営、叩きつけられるある種の指向性の熱気。
「私の女としての直感が逃げろと言ってるんですけど」
「まあ‥‥‥、確かに」
 同じく冷や汗垂らしながら十六夜りく(eb9708)は頷いた。
「式子さんにとって正真正銘人生最大の危機よね。万が一負けたらお嫁に行けなくなるというかなんというか。何とかしなくちゃ」
 同じ女として思う所もあるのだろう。この場にいる女性陣は結構真剣な面持ちで向かいの小舟群を睨み付けている。
 何となく、場の雰囲気だけ言えば合戦と言えなくともない。過去の歴史を紐解けば、数多の英雄達が武勇を競い知力を尽くした決戦も、今の彼女達達が抱く心境と同じかもしれない。それはそれで嫌だけど。
 とは言っても今日のそれは演習だ。
「何つーか‥‥‥上も下もどーしよも無いやつらばっかじゃねーか」
「じゃねーかー♪」
 冒険者の中で唯一の黒一点。忍者の鷹城空魔(ea0276)はため息を付いた。依頼の内容からしてどうも居心地が悪いのか、どこかそわそわしている。
 そんなご主人さんの心境を知ってか知らずか、ペットの風のエレメンタルフェアリーは空魔の近くをふわふわ飛んでのんきに言葉尻まねている。全くどうでもいいが、見ただけではちみっちゃい幼女をペット扱いしてご主人呼ばわりさせている変態だ。世界の敵だ。
 他所様に迷惑をかけなければ、空魔がペドでロリで『そういう』プレイに無上の悦びを感じようが個人の趣味だ。誰にも後ろ指を指されるいわれはない。
 まあそんな事はどうでもいい。
「なああんた。同じ男として情けなくないか?」
「え、私か?」
「ああ。俺達冒険者の中には異人さんもいる事だし、このままじゃジャパン男児が変態だって思われちまう。ここは一つ、あいつらの根性を叩きなおしてやろうぜ!」
「‥‥‥ああ。そうだな」
 オットコ前なハンサムフェイスにハスキーボイス。イギリス風味な衣装に身を包む桜乃屋周(eb8856)は苦虫を噛み潰したようにため息をついた。
「笹山中隊長には同情する。上司に恵まれないと中間管理職は大変だな」
「そうだよなー。あいつら、ジャパン男児ならジャパン男児らしく、女の所に通うとか夜這いに精を出すとかすればいいのにな」
「‥‥‥おい」
 まあ、それがジャパンの古くから伝わる文化ではあるが。
「ああそうだ。この演習終ったら宴会するみたいだけど、血の気多い奴捕まえて色町いかね? 金については大丈夫。俺の忍びテクで大隊の経費にするから」
「‥‥‥‥‥‥」
「あ、いや。別に俺が行きたいっていうんじゃねえよ? あいつら暴走しているし、発散するのも必要だろ? 俺等はあいつらがケモノにならないよう監視。まあ、ついでに便乗するかもしれないけどな!」
「びんじょ〜びんじょ〜♪」
「‥‥‥‥‥‥」
 空魔を汚い物を見るようにねめつける。
 えらく男前だが周はこれでも一応女だ。さすがに男に間違われるのも慣れたらしいが、さすがにこういうのは引く。
 とまあそんなこんなで演習開始を知らせる鏑矢が射られた。





「その首もらったぁぁぁ!!!」
「笹山中隊長はどこだぁぁぁ!!!」
「女体! 皆で一緒に女体を貪り尽くすんだぁぁぁ!!!」
 鎧袖一触一撃必殺。湖を切り裂かんばかりに突き進む浅生中隊の小舟群はそれはもう見事に笹山中隊の軍勢をなぎ倒していた。
 目指すは笹山式子ただ一人。その未成熟にも艶やかな肢体、強気な女性の純潔を無理やり奪う為、今浅生中隊の心は一つ! 立ちはだかる障害など叩き潰す! というかこいつら真面目に仕事しろよ!
「あうあうあう‥‥‥」
「改めるでもないが、とんでもない状況だな」
 水面を裂き地を駆け抜けるように向かってくる浅生中隊。作戦通りに部隊を展開させてはいたが、男の煩悩は無限大。予想以上の進軍スピードで迫ってきていた。
 中央には大将の式子の舟。このままだと陥落はは目に見えている。
「不味いな。兵を割く以上ある程度の不利は予想していたが、再編を急がないと挟撃所かこのまま呑まれる」
「困る‥‥‥それは困る!」
 女としての本能が式子に今すぐ逃げろと叫び続ける。いつも口にしない弱音がそれを証明していた。
 霧島小夜(ea8703)は近くの伝令を飛ばし突撃の態勢を整える。例え先発部隊と挟撃に割いた部隊との挟撃に間に合わなくとも只でやられる気は毛頭ない。
「安心しておけ。式子もこんな形で操を奪われるのは辛かろう。想いを募る浅生友孝に捧げたい。違うか?」
「それはもち――って少し待て!」
「怒るな。大事なのは雰囲気だ。何とかこの場をしのいで見せるとしよう」
 そうでないと自分も奪われる、敵の目的は式子ではあるが、場を支配しようとするこの空気。はっきり言って自分も危険だ。
「りく。火遁の術の用意をしろ。合図をしたら使え」
「了解。威嚇でいいわよね?」
「牽制になれば十分だ」
 はっきりと舟と兵の数が判る距離まで近づいてくるまでそう時間はかからなかった。小夜のように数多の修羅場を潜り抜けた武神とて心が挫けそうになる。
 この震えは武者震いかそれともいち女としての恐怖か――否、気概だけでも負ける訳にはいかない。
 気持ちを奮い立たせる。夢想流の名、呼ばれしいくつもの二つ名にの下、一人の女として欲望に支配された男達に負ける訳にはいかない。
 木刀・降雪を掲げ声高らかに宣言。
「全軍突撃! 浅生中隊を殲滅しろ!」
 鬨の声が響き渡る。
 二つの源徳軍がぶつかった。





「行きますえ、一閃!」
 不慣れな足場。されど揺れを見極め踏みしめ木刀・暗黒を走らせる。修行の果てに達人の域に到達した佐々木流の技は次々と足軽達を打ち倒していた。
 西園寺更紗(ea4734)は死屍累々と横たわる足軽兵をかき分け突き進む。
「雑兵に用はありまへん。大将の浅生友孝はどこどす?」
 抜き去り様足軽を薙ぐ。
「――!」
 刹那、友孝の姿を捉えた。舟の上を駆け抜ける。
 目の前の小舟群。群がる足軽兵。最短距離はこのまま直進。だけど足軽達に阻まれる。
 こうなれば電撃戦。大将を制圧すれば後はどうにでもなる。
 無数に突きつけられる棍と振り下ろされる木刀の嵐。研ぎ澄まされた直感。感じる殺気。達人と呼ばれるまでに鍛え上げられた優良視力と回避の技がその全てを無力と化す。
 その姿、まさに風神。
 跳躍。
「友孝殿! いざ尋常に勝負!」
 二振りの木刀が交差した。




 演習が始まってたった半刻。既に戦局は決しようとしていた。
「もう浅生中隊に戦力と呼べるほどの数は残ってないわ。今後は敵一艘に対しこちらは必ず倍以上の戦力で当たって! 一艘は正面、残りは左右から挟んで!」
 足軽達に指揮を下す牧杜理緒(eb5532)。一時浅生中隊の猛攻を受け壊滅状態に陥っていた先発部隊を回収し、主力部隊との挟撃に成功していた。
 先発部隊の生き残り――そもそも演習だし誰一人死んでもないが――の更紗はたった一人敵の渦中にいるが、彼女ほどの剣の達人ならそうそう討ち取られる事もないだろう。このまま戦況を有利なまま維持し続ければ勝利は間違いない。更紗を支援するのも可能だ。
 理緒は一艘の船に指揮を飛ばした。
「貴方達は負傷者の救援。勝ったら無礼講の宴会だから、皆にあまり無理をしないよう伝えてね!」
 この状況。既に勝った様なものだ。理緒の元々の生業は漁師。舟の扱いや波を読む術に長けている彼女は、少ない戦力を使いうまく立ち回って見せた。
 寡兵ならではの戦略。主力の突撃に合わせ突っ込んでいった浅生中隊を、後方から挟み込む様に一艘、また一艘と沈めていた。
「いやいや。ここまで素直だといっそ潔いわー。疑いもせず突っ込んでくれたおかげで何とか挟撃に持ち込めたわよ」
 相手の進軍スピードには驚いたものの、何とか作戦通りに進んでいる。安堵の声もこぼれるものだ。
「『相手が勝ち誇ったとき、既にそいつは敗北している』。華国の老将、条星の言葉だ」
「ん? 小夜さん?」
 いつの間に来たのだろう。式子と小夜の乗った小舟が接舷していた。
「油断するな、と言ってるんやろ。油断が元で逆転される事もあるさかい」
「更紗さん。それは‥‥‥浅生さん?」
「ええ。大将もこの通り倒してきたさかい、後は残りの連中を倒すだけだけど最後まで気ぃ緩めたらあきまへんよ」
 確かに彼女らの接近に気がつかなかった。これが敵だったら討ち取られてたかもしれない。
 そんな戦慄が走っていると、絹を裂くような声が響いた。
「貴方達を相手にするくらいなら、山鬼を相手にした方がマシですーーー!!!」
 木刀・暗黒を振り回す。パカーン、と気持ちいい音と共に足軽を殴り飛ばした。
 着込んでいる巫女服はもう乱れに乱れ、結構凄い事になっていた。
「殿方なんてっ! 殿方なんてっ! もう全力で叩き潰します!」
 怒っているというか泣いている。軽く恐慌を起こしていた。
「刹那さん、落ち着いて‥‥‥」
「刹那、気持ちは判るがそういきり立つな」
 空魔と周は何とか刹那を落ち着かせようとするが血が上りきっている刹那は聞いてくれなかった。
「落ち着けって出来る訳ないでしょう!? 襲われかけて、黙ってる女はいませんよ! どうせ殿方には判りません!」
「いや、私は女‥‥‥」
「ジェーノサーイド!」
 飛び掛ってきた足軽をなぎ倒す。聞いてくれなかった。
 生き残った浅生中隊の足軽達は、それこそ幽鬼のように立ち上がり彼女等を取り囲んだ。
「ふふふ‥‥‥もう笹山中隊長をおいしく頂く事は出来ない‥‥‥」
「残念だが、こうなったら代わりにお前ら三人を食う!」
「ちょっと待て! 俺と周さんは男だぞ!?」
 空魔は突っ込んだ。
「誰がお前と言った!」
「さすがに男色の趣味はない!」
「狙ってるのはそこのエレメンタルフェアリーだ!」
 血走った瞳×二桁。
「わーん! こわいよー!」
 空魔のエレメンタルフェアリーは空魔に抱きついた。
「もう女なら何でもいい! ちっちゃくてもいい!」
「そこの周とかいう男も! 何か女の匂いがするし!」
「もうね? 我慢できないんだ! 例え男だろうと食っちまうから!」
 追い詰められた者ほど恐ろしいものはない。


「何というか、兵供が夢の後、っていう言葉がしっくりきますね‥‥‥」
 演習が終っての宴会。獣欲に身を任せ暴走しつくした浅生中隊のなれの果てを眺めながら刹那は呟いた。
「浅生さんも奴隷ですからねー、もう好きに料理しちゃってくださいねっ♪」
 理緒は式子に友孝の処遇を任せた。頬を染め上げる式子。何を考えた。
 いいようにこき使われまくる浅生中隊。まあ男の煩悩に身を委ねた結果だ。