限界バトル叩きつけたら傷付いて当然です

■ショートシナリオ


担当:橋本昂平

対応レベル:フリーlv

難易度:普通

成功報酬:0 G 78 C

参加人数:7人

サポート参加人数:-人

冒険期間:02月26日〜03月03日

リプレイ公開日:2007年03月06日

●オープニング

 江戸の街は広く大きい。
 源徳公が治めるこの地には、ちょうどジャパンの中心辺りにあるせいか、各都市に向かうそれぞれの旅人達がそれぞれの理由で立ち寄り、それぞれの事情を持ってまた旅立ち、また、定住する。
 人の縁はどこで繋がるか判らない。ある時通りすがった誰かが、ある時いがみ合った者同士が手を取り合う事もまた縁。
 人の世と縁はまさしく青天の霹靂。全く何が起こるか判ったものではない。



――遠い異国の地で、レミングの群れの進路上に町や村があろうと、遠い異国の海でバイキング達が暴れていようと、広い目で見れば案外世の中平和なものである――






「見つけたぞ狼藉者め!」
 草木も眠る丑三つ時。身なりの立派な若侍は刀を抜いて目の前の男に突きつけた。
 年の頃は二十前。元服を向かえ大人として世間の荒波に揉まれているだろうが、その表情から判る様、まだまだ血気が盛んで落ち着きという言葉とは縁が遠いようだ。
 彼は自分と相手の距離を読み、いつでも斬りかかれるよう刀を上段に構えた。
「我々侍に対する度重なる狼藉ッ! 志半ばに倒れ、果てていった同胞達の恨みを思い知れ!」
 ――剣術。否、あらゆる武芸の基本は足腰にある。
 彼は前に一歩を踏み込んで疾走する。
 指先に込めた力は草鞋を通し力強く地面を踏みしめた。
 まるで世界から逸脱するような錯覚。瞬間、彼は風になった。
「せいやぁぁぁぁ!!!」
 剛斬。
 一刀に全てを賭けあらゆる一切を断ち斬る修羅の剣。その名は示現流。
 鍛えぬき、数多の豪傑達と武を競い技の応酬しあったその剣は、風を斬り空を裂き、大地を両断する剛の剣。
 二の太刀を必要としないその剣は、一刀の元に全てを斬り捨てる事が可能な程、研ぎ澄まされ寸分違わず疾風の如く駆け抜ける。
 ――だが、達人の二つ名で呼ばれる者となれば、そこから生まれる隙が命取りとなる。
「な、何ぃ!?」
 痺れる両手。いつの間にか消えていた刀。そして背後に周り込まれ自由を奪われる。
「放せッ! 俺をどうするつもりだッ!」
「どうするつもりと言われても‥‥‥今更知っているだろう?」
 瞬間、駆け抜ける戦慄。
「放‥‥‥殺せ! いっそ殺せ!」
 彼は無駄だと理解しているも必死に身体をばたつかせる。
 だがまんりきのように締め付ける強力。情報通り屈強な肉体を持つ狼藉者にはびくともしない。
 狼藉者はより一層力を込め彼の腕を捻り上げる。一瞬、腕が軋む音がした。
「殺しはしない‥‥‥。お前が大人しくしていれば満足させてやろう‥‥‥」
「う、うわぁぁぁ!!! やめろーーー!!!」
 一気に剥ぎ取られる。ほんの刹那の瞬き。若侍は生まれたままの姿になった。
 帯で後ろ手に縛られる。
「威勢のいい男は俺の好みだ。それでこそ楽しみ甲斐があるというもの」
 決闘やそういう類を除いた場合、侍は打ち倒した相手の刀や槍とか、武器を持ち去っていい暗黙の了解がある。
 そもそも武器は消耗品だし手入れも手間暇がかかる。それに殺し合いをした訳だし、勝った側からすれば――いい訳も建前も立て放題だが――戦いさえしなければ武具に欠損はなかった訳だから、その代わりとして頂いてもいいではないか。そんな理由だ。
 狼藉者からすれば――命を狙われる理由は彼に十分あるが――治療費として若侍の物品を頂ける。そもそも若侍は命を狙おうとして返り討ちされたのだから自分の身を好きにされても文句を言えない。
 膝を立てられ正面から地面に叩きつけられる。口に砂が入り、まるで犬のようだ。
「殺せ! こんな屈辱を受けるぐらいなら、いっそ殺せ!」
「そんなに死にたいのなら、俺の長太刀で死なせてやろう!」
「よせーーー!!!」
 狼藉者の下の身に生えている、長くそそり立つ熱く脈動する黒い『長太刀』。数多の強豪を屠ってきたであろうそれは、新たな獲物を突き貫かんと菊の蕾を押し当てる。
「やめろ。やめてくれ。金が欲しいならいくらでもくれてやる! だからそれだけはやめてくれ!」
 未だ咲く事を知らない、というか出来るなら一生涯開花する事を求めない花の蕾は、獣のように猛狂い烈火の如く荒ぶる長太刀によって今にも乱れ咲かんとしていた。
 まさに、常夏の熱気を受け止める向日葵の如く‥‥‥
「何も怖がる事はない。痛みは一瞬、後に残るは突き抜ける萌風‥‥‥」
 蕾に熱く生暖かい長太刀が押し付けられる。
 瞬間、全身から吹き出る冷や汗。生物としての――男としての本能が警告する。
 ソコカラサキハミトメズ――
 しかしそれが逆効果だ。拒絶する身体は異物を防ぐ為全身を強固に固め外へと通じる道を締め付ける。
 だが長太刀は蕾を刺し貫こうと憤る。
 いくら守りを固めようとここまで接近を許せば意味がなくなる。
 長太刀は最後の砦を突き破った。
 瞬間、白い閃光が走る。
「ア、ア―――!!!」
 蕾が刺し貫かれた。





 後日、依頼を承ったギルド員は思いっきり机に突っ伏した。
「あんたが呆れるのも判るけど、頼むよ。冒険者都合してくれないか?」
「‥‥‥まあ、依頼として取り扱うには構いませんけど」
 カウンターに向かい合っているのは、源徳軍蓮山大隊揮下浅生中隊中隊長の浅生友孝。彼もまあ、頼みに来た依頼についてどうかと思ってるしちょっとしかめっ面だ。
「ですけどこういうのって軍内で内々に処理しません? 外部に洩れたらそれこそ軍の威信が」
「いや、確かにそうなんだけど」
 友孝はたっぷり間を置いて、
「鍛え抜かれた軍の侍が、変質者に襲われて貞操を奪われたなんて身内にも言えないだろう?」
 それこそ重苦しく言い切った。
「しかも、襲われた連中はどいつも腕が立つし‥‥様とか‥‥殿とかの部下なんだよ。身内に調査させても上司の面子とかもあるし、させるにさせられないんだよ」
「お侍さんて大変ですね」
 部下の恥は上司の恥。その上偉い人は裏で色々やってるしそれが原因で失脚したり出世に支障が出たりするのだ。偉い人は大変だ。
「こう言うのもアレだけど、金を積めば冒険者は何でもやってくれるし腕も立つじゃないか」
「身も蓋もないですが、一応は」
 どんな仕事にも守秘義務というのはあるし。友孝は小さく付け加えた。
「それに、掘られた連中って皆達人レベルの実力者だからな‥‥‥」
「‥‥‥はい?」
「偶然かもしれないけどさ、掘られた皆は達人級の使い手でな、生半可な奴じゃ逆に返り討ちにあいそうなんだ」
 調査報告書によれば、ジャイアントで屈強な肉体を持つ巨漢。名前はアベタ・タカカーズとか。男前らしく一種独特の雰囲気を持っているらしく、会えば本人と判るらしい。
「冒険者なら色々な術に精通してるし何とかなるだろ。万が一があれば自己責任という事で」
「適当な。そんな事で冒険者が集まると思ってるんですか?」
「そこは上手く隠して集めてくれよ。依頼を受けた時点で内容を教えてさ、そうしたらもう断れないだろ?」
 こんなのに江戸の治安を任せているのが激しく不安だ。
「本当は俺にどうにかするよう一任されてたんだけどさ、掘られたら嫌だし、頼むよ? な?」
「どうなっても知りませんよ」
 ギルド員は適当に要点をぼかした依頼書を張り出す。
 目的の相手は昼夜問わず(人気のない状況が多いが)いい男を見つけると襲うらしい。
「ま、冒険者の(男の)一人は掘られるかも知れないけどさ、これ以上被害が出なければいいから」
 ものすっごく他人事な言い方だ。

●今回の参加者

 ea0046 志羽 武流(34歳・♂・志士・人間・ジャパン)
 ea0443 瀬戸 喪(26歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 eb0908 リスティ・ニシムラ(34歳・♀・ファイター・ハーフエルフ・イギリス王国)
 eb3496 本庄 太助(24歳・♂・志士・パラ・ジャパン)
 eb4802 カーラ・オレアリス(53歳・♀・僧侶・エルフ・インドゥーラ国)
 eb9708 十六夜 りく(28歳・♀・忍者・人間・ジャパン)
 ec1071 阿倍野 貫一(36歳・♂・浪人・人間・ジャパン)

●リプレイ本文

 新たな被害者が出たという報せを聞いて、冒険者は診療所に訪れた。
 ちなみに心療科。今回の依頼は事件は内容が内容なので、被害者は心療科と肛門科のどちらかに入院していた。医者曰く患者が急増して売り上げが倍増して喜んだらしいがそんな事はどうでもいい。
 冒険者達は見事餌食になった浅生友孝を見て軽く引きつっていた。男陣が。
「『長太刀』で後ろから一突き、か。ひどいな‥‥‥」
 布団被って丸まっている友孝を見下ろして本庄太助(eb3496)は呟いた。
「ああ。しかし、長太刀で腕の立つ武士を幾人も倒してきたとはな。何て奴だ」
「そうだね。俺達も犠牲にならないように気をつけないと。向こうに稚児趣味でもなければいいんだけど。というかそうあってほしいな」
 ついキュっと尻穴に力を込める。太助は結構腰が引けていた。
「実力のある侍を打ち倒してきた相手だ。子供に無体を働くような輩ではあるまい」
「身体が小さいとしまりがいいと本で読んだ事あるから」
 ぽっと頬を染める十五歳。どこのしまりがいいのかと問い詰めたい。
 何か微妙に話しがかみ合ってない気がして志羽武流(ea0046)は疑問符を浮かべた。
「それより、『掘られる』とはどういう意味だ? 犯人は武芸者なのだろう?」
「え? あなた、それ本気で言ってるの?」
 カーラ・オレアリス(eb4802)は尋ねた。
「本気も何もそうに違いないではないか。被害者はどれも腕に覚えのあるつわものばかりなのだから」
「それはそうかもしれないけど‥‥‥」
 カーラは一瞬躊躇って彼に耳打ちした。少なくともこんな公衆の前で言う事じゃない。
「掘るって事はね‥‥‥」


 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥


「そ、そういう事なのか!? それは一大事だ!」
 顔面蒼白尻固め。居合いで有名な夢想流みたく速攻マッハで硬い臀部を押さえた。
「厄介な依頼を引き受けてしまったな。俺も犠牲になるやもしれぬ‥‥‥」
 何せ相手は達人クラスの実力者すら破った(直接戦って、ではなかろうが)程だ。まだ未熟な武流では敗北必死かもしれない。
 軽く血の気が引いてる中、阿倍野貫一(ec1071)が申し出た。
「それなら拙者が貞操帯を作るでがんす」
「それはありがたい!」
 武流は貫一の手を握り締めた。
「是非頼む! この際履き心地なんて贅沢は言わない!」
「全力を尽くすでがんすよ」
「それなら俺も」
 太助も便乗する。同じ男として守りたい一線だ。
「あなたは頼まなくてもいいの?」
 カーラは瀬戸喪(ea0443)に尋ねた。
「僕は結構です。むしろ望む所です」
「‥‥‥はい?」
「そういうのは個人の趣味だと思うけど、本気?」
 冗談でしょ? と言いたげな表情の十六夜りく(eb9708)。
「世の中にはそういう趣向の人もいるという事ですよ」
「なら別にいいけど‥‥‥」
 個人の趣味、と言われても正面きって言われればさすがに正気か疑うものだ。りくは友孝を見てため息をついた。
「まあともかく、依頼は何とかするにしても、前の依頼に引き続き浅生中隊長ってどうにもダメなイメージが。自業自得よね」
 違いない。
 友孝は鬼のような速攻マッハで跳ね起きた。
「自業自得とか言うなよ! 一族の顔に泥を塗っちまったんだから!」
「人任せにするから。仏罰では?」
 カーラが冷たく突っ込んだ。
「やかましい! こうなったら依頼追加で俺の傷付いたハートを癒させてもらうぜコンチクショウ!」
 友孝が襲い掛かった。
「ちょ、ちょっと! どこ触ってるんです!」
「男に汚されたハートを癒すには女体が必要なんだよー!」
 最低だ。
「こ‥‥‥この! ビカムワース!」
「うぉ!?」
 黒の力が友孝の生命力を奪い取った。
「お、お前‥‥‥。軍人にこんな事していいと思ってるのか?」
「女性を無理矢理襲う殿方に情けをかける必要はありません!」
「あ、後でとっ捕まえて色々凄い事してやる!」
 そんな事を言う余裕はあるようだ。
「友孝! 生きてるか!?」
 襖をすっ飛ばして友孝の同僚の笹山式子が飛び込んできた。
「診療所に運び込まれたと聞いて来たの‥‥‥だが!?」
 ずびしと固まる。
「式子か‥‥‥。助かった。このエルフ捕まえてくれ!」
「やかましい!」
 鉄拳が友孝に突き刺さった。
「な、何しやがる!」
「五月蝿い! 人が折角心配して飛んできたのに、女性を襲うとは何事だ! それでも源徳の侍か!?」
「それ以前に男だよ!」
 逆ギレか。
「男なら何をしてもいいと言うつもりか! 人がどんなに心配してたか知らないくせに、お前がどうしてもって言うなら私が‥‥‥って、違う!」
 式子は自前の鞭を取り出して、
「仕置いてやる! 覚悟しろ!」
 冒険者達はとばっちり喰らう前に逃げ出した。







「ぎゃーーー!!!」
 夜の帳を悲鳴が切り裂いた。
「あの声は‥‥‥太助さん!?」
 辺りを巡回していたカーラとりくは悲鳴を頼りに駆けつけた。
 しかし時既に遅し。見るも無残に咲き散った太助がホホ濡らして嘆いていた。
「太助さん、大丈夫ですか!?」
 見るからに『事後』と判るのにカーラは安否を尋ねる。というか無事であってほしい。
 小刻みに震える太助。哀れすぎてどんな言葉をかけるべきか判らない。
「もう‥‥‥。もうお婿にいけない‥‥‥!」
 男としてはそういうものかもしれない。りくは汗を拭って呟いた。
「女に生まれて本当に良かった〜」
 安堵するも大抵『このテの事件』で被害に会うのは女性だから他人事ではないと思う。
「不謹慎ですよりくさん。でも、確か阿倍野さんが貞操帯を作るとか言ってましたけど‥‥‥?」
 カーラは疑問符を浮かべた。確かに先日、貫一がそんな事を言っていた筈だ。その後の修羅場でどうなったか知らないけれど。
「ああ。結局『越えられない壁』とやらで出来なかったみたいだよ?」
 物陰からひょっこりリスティ・ニシムラ(eb0908)が現れた。
「越えられない壁?」
 カーラが尋ねた。
「あの浪人、鍛冶の経験があると言ってたが、ないよりマシといって程度だろう? 鉄屑集めて作ろうにも知識も技術も足りないし」
 違いない。
 それはそれとして、リスティは太助を一瞥して言った。
「いやいや。男同士ってのも面白そうだと思ったけど、最後まで出来るもんだねぇ」
「まるで終始見物してたような言い方なんですが」
「まるでも何も、見物してたんだけど?」
 それが何か? とでも言うようにリスティは言い切った。
「なかなか興味深いもの見れて満足だねぇ。これから一杯付き合わないかい?」
「今依頼中なんですが」
「囮連中が喪の所に誘導していってるんだろ? あの男、結構な使い手だから何とかするだろ」
「だからって放っておくわけにはいかないと思いますけど」
 泣いている太助もそのままにする訳にもいくまい。
「今後は同好の趣味の者同士、あたしらはあたしらで好きにやろうじゃないか」
 唸る豪腕。カーラの細腕を超拘束。
「リ、リスティさん?」
 女の身とはいえさすがファイター。基本的な体力やら筋力やらが全く違う。
「あたしは百合なもんでねぇ。早速楽しもうか!」
 ぎらりと光る両眼。まさに獲物を狙う鷹のそのものだ。
「では!」
「え? え? えぇぇぇぇぇ!!!???」
 凄まじい埃を上げて引き摺られていくカーラ。きらり、と星が流れ落ちて何となくりくは敬礼した。どうなったか知らないけど。というかどうもあってほしくないけど。
 とりあえず、
「太助さん。大丈夫ですか?」
 泣いている太助を介抱する事にした。診療所に連れて行こうか。
「太助さん?」
 様子のおかしい太助を覗いてみると、
「認めたくは無い認めたくは無いけど‥‥‥」
 恋する乙女の如く頬染めて、
「凄かった。ぽっ」
 唸る鉄拳。りくは太助を殴り飛ばした。
「‥‥‥うん。そうだね。こういうのは寝覚めが悪いから記憶が飛ぶまで殴り倒すか」
 拳を振り上げる。能面フェイスでマウントポジション。
 かるーく血の雨が降った。




 ――ここに、ある意味男のプライドを賭けた戦いが繰り広げられたりられなかったりするかもしれない。
「ウインドスラッシュ! ウインドスラッシュ!」
 突き出した手のひらから魔風の刃が放たれる。相手は全裸の猥褻物陳列罪。当たれば致命傷は間違いない。
 しかし、
「鍛えぬいた我が『長太刀』の前には無力!」
 全力疾走するアベタは自前の長太刀を上手く塀に引っ掛けて方向転換。避けきった。
「マジか!? つーかよく折れないもんだな」
 長太刀と称するだけあって無駄に硬いのだろう。同じ男としては羨ましい限りだが極めてお世話になりくないじゃなくて一品(?)だ。
 囮は多い方がいいと言うべきじゃなかった‥‥‥! とにかく本気と書いてマジと読むぐらい全力疾走しながら武流は後悔した。
 そこへ同じく逃げ回っていた貫一がずっこけた。
「貫一殿!」
 飛び掛るアベタ。


 〜〜ここからあまりに見苦しい描写が続きますので比喩的表現にてお送りします


 ホールド
 スマッシュ
 スマッシュ
 フェイントアタック
 ポイントアタック
 ポイントアタック
 ポイントアタック
 バーストアタック
 ところてん



「お願いでがんす! 武士として、腹を切らしてくれがんす! むしろ死なせてくれがんす!」
 日本刀引き抜き切腹準備。無理もない。
「早まるな! 悪い夢と思えばいいだけだ!」
「嫌でがんすーーー!!!」
 彼はきっと、似たような被害にあった女性の何よりの味方になれるに違いない。
「やれやれ。散々ですねぇ」
「喪殿!? 頼む。貫一殿の仇を討ってくれ!」
 漢泣き。仇討ちを頼むのはおかしくないが、状況が状況だし何かが微妙に間違っている気がする。
「構いませんが。ドSなので普通で満足できなくなるかもしれませんよ?」
「構わない! 犯罪者に情けをかける必要はない!」
「ではそういう事で」
 同じ同性愛者。趣向が同じだとそういうのも察するのだろう。闇夜に消えて‥‥‥


 明後日、その手の事件はぱったり息を潜めたらしい。