疑惑の村

■ショートシナリオ


担当:橋本昂平

対応レベル:11〜lv

難易度:難しい

成功報酬:11 G 94 C

参加人数:8人

サポート参加人数:-人

冒険期間:12月12日〜12月18日

リプレイ公開日:2007年12月31日

●オープニング

――まあ、よく見れば物騒な事もあるもので




 とある村がある。村というには少し規模の大きい、中央に川を挟んだ北区と南区に分かれた村である。
 今、その村は非情に険悪な空気に満ちていた。北と南、両方に死人が出、その犯人を互いに相手の区の者だと両区は主張しているのだ。
 元々北と南は対立していたらしい。喧嘩なんて日常茶飯事らしい。何かあれば相手側を疑うのは理解できる。死人が出ている時点で穏やかな話しではないが、まあよくある事だろう。
 両区の村人の不信感は募り続け血気のある若者連中は鎌や鋤を手にカチコミに行くぞ、なんて声も聞こえ始める。
 さすがに村長は危機感を抱いた。
 事態の解決の為、冒険者に調査を依頼したのだ。
 一通り調査を終えた冒険者はある不審点に気付いた。月が気味の悪い綺麗な夜だ。
「‥‥‥何だ? 証言がおかしい?」
 冒険者は首をかしげた。金髪の目立つ若い英国人のファイターだ。
 一日をかけて北と南を回った彼は幾つかの『証言の食い違い』を整理する。もしかしたら、自分達を有利にする為に偽の証言をしているかもしれないからだ。
 しかし‥‥‥
「どう考えてもおかしい気がするな。そもそも犯行を目撃した人物がいたというのに、何故、犯人が犯行を行ったと思われる時刻に既に死んでいるんだ?」
 北区での事件だってそうだ。南区の人物――熊吉だったか――が北区での犯行時刻に彼の遺体が南区で発見された。北と南で起こった事件は、一日の差と人気のあまりない場所等の違いがあれどどちらも似たような状況だ。
 状況はまあともかく――彼はふいに思い出した。
(まさかな。ここはジャパンだぞ)
 ありえない、と頭を振った。国によって動植物の生態系が違うように魔物の生態系も随分変わってくる。
 自分とそっくりの人物を見ると数日の内に死ぬという。
 それこそどこにでもある様な話しである。だがそれに該当する魔物は存在する。その魔物は対象に化ける事が出来、外見だけではなく各種能力同等のものを得るらしい。確か名前は何と言ったか――
「西洋の魔物がいる筈がない」
 彼は言い切った。彼はそう思っている。
 幼少の頃に読んだ物語。仲間や村人が次々に魔物に摩り替わっていく、主人公が疑心暗鬼になるあの物語の結末はどうだっただろうか。物語が進んでいく過程で多くの死人が出た事がよく覚えている。
 何故かそれが気になって仕方ない。虫の知らせとも知らずに。
 かさり、と物音が聞こえた。
 村人だろうか。考え事に気を取られていたとはいえ、素人に背後を取られたなんて恥かしい。
 彼は苦笑して何用かと尋ねようとして――表情が凍りついた。
 中肉中背の長身。皮の鎧を身に纏った金髪の目立つ青年だ。自分と全く同じ顔の『それ』は振り上げた剣を――
「ドッペル――」





 後日、江戸から冒険者達が出立した。目的は先任の冒険者含むとある村の殺人事件の調査である。

●今回の参加者

 ea2127 九竜 鋼斗(32歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea3597 日向 大輝(24歳・♂・志士・人間・ジャパン)
 ea4026 白井 鈴(32歳・♂・忍者・パラ・ジャパン)
 ea7901 氷雨 雹刃(41歳・♂・忍者・人間・ジャパン)
 eb3701 上杉 藤政(26歳・♂・陰陽師・パラ・ジャパン)
 eb5885 ルンルン・フレール(24歳・♀・忍者・ハーフエルフ・イスパニア王国)
 ec1064 設楽 兵兵衛(39歳・♂・忍者・人間・ジャパン)
 ec2786 室斐 鷹蔵(38歳・♂・浪人・人間・ジャパン)

●リプレイ本文

――後任の冒険者一行が村に訪れた頃には、死者は村の両区を合わせ十名を越えていた。



「何が冒険者だ! ただの役立たずじゃないか!」
 村長宅へ挨拶と引継ぎの通達と、事件の聞き込みに向かった九竜鋼斗(ea2127)と氷雨雹刃(ea7901)を迎えたのは、物々しい武装に身を固めた村人達の罵倒だった。
「あれからどれだけの人間が殺されたと思ってやがる! 俺達の北区だけでも六人だぞ!」
「前任の冒険者はデカイ口叩いたくせに殺されやがった。どうせ南区の奴等がやったに決ってるんだ」
「それとも何か? 冒険者ってのは弱くてもなれるものなのか? ファイターのくせに戦いも知らない村人に殺されるなんてとんだ戦士さまだな!」
「‥‥‥‥‥‥」
 鋼斗は歯がみした。彼ら村人の言い分も最もだろう。諍いがあるとはいえ、同じ村の仲間達が殺され、それを解決しようと訪れた前任の冒険者が殺された。
 村人達とて冒険者に期待していたのだ。
 状況からしてお互い相手が悪いと考えているものの、事件そのものが要領を得ない。噂に聞く冒険者なら何とかしてくれると思ったのに――
「ふん。どうせやったのは南区の連中が決ってるんだ。お前達なんかに任せるよりこのまま俺達が解決してやるさ!」
 手に抱えた刀や桑を掲げ吼える村人達。彼らは報復として南区を襲う為、村長へ許可を得に来たのだ。
 このような地方の村は村長が権力者のようなもの。この辺り伺いを立てる所、まだ理性が残っているようだ。
 村人達を宥めようと鋼斗は言葉を尽くす。今の彼らは、大義名分があればすぐにでも決行するだろう。
 そして、それを受けた南区の村人も。
 現状ならまだ取り戻せる。だが、やってしまえば最後まで、どちらか一方が滅ぶまで――
「威勢がいいのは結構だがもう少し待ってくれ。まだ犯人は南区の村人と考えるのは早計だ」
 犯行を可能とする手段を考えるなら、村人が行ったと断定するのにはまだ早い。
「もう戯言はたくさんだ! 南区の連中を吊し上げればいいだけだ!」
 ‥‥‥村人以外の、第三者の存在も考えられるのではないだろうか?
 今まさに村人達が飛び出そうとした時、
「‥‥‥ぬるい。ぬるいぞ貴様等‥‥‥」
 ドスの効いた低い声。貝のように沈黙を守っていた白蛇丸――氷雨雹刃――が口を開いた。
「貴様等さっきから息巻いているが、その程度で調子に乗るな。報復というのなら(中略)このくらいの事をするとでも言ってみろ!」
「ヒィッ!」
 竦み上がる村人達。目的の為なら手段を選ばないのが忍者だ。言った事がかなり怖すぎる。
 白蛇丸は一気に畳み掛ける。村長へ言った。
「事件についてはこちらで調査を行う。事が済むまで南北の行き来はせず、日が落ちたら全員、朝まで家を出るな」
「村長! こんな奴等の言う事なんて聞かなくてもいいじゃないですか!」
 頷いた村長へ村人達はかみつく。白蛇丸は別に構わないぞ、と前置きする。
 名前の如く白い肌に三度笠の奥に隠れた鋭い瞳。まさに獲物に襲い掛からんとする蛇そのもの気配を纏い――
「命が惜しければな」
 トドメの一言で黙らせた。
 村人達の説得を終えた二人はそれぞれ村へ散っている仲間達へ伝え、自分達も調査に向かった。
 聞き込みとまだ埋葬の終ってない死体の検分、そして遺品の類を見て、前任の冒険者と同じく幾つかの不審点を抱いた。
「外部の犯行かもしれないな」
「だが忍びの仕業にしては妙だ。狙いが読めぬ」
 白蛇丸は頷く。彼は事件内容からして忍者の仕業だと思っていた。
 だが『現物』を見る限り、忍者が行ったとする割には酷く雑な傷跡だ。忍者なら、対象を効率よく『処分』する手段と知識も兼ね備えているだろうに――
「‥‥‥魔物の仕業か?」
「どちらにしろ一人とは言え、冒険者が殺されている。村人以外、まぁ村に手練がいるなら話は別だがな」




「犯人は、変装か幻術を使ってると思うんだ」
 村の北区。ある程度聞き込みを終えた日向大輝(ea3597)は同行している仲間に自分の推理を語る。同じ北区を回っていた鋼斗と白蛇丸と情報を交換しあった際、彼らも大輝と似たような推論に達していた。
 犯人が誰にしろ、犯行が証言通りに行われているのなら考えられる手段はそれだろう。
「でも、幻は相手がいることをわかった上で送らないといけないから今回は違うかな。他人に化けられるって線で考えた方がいいと思う」
「確か熊吉とか申したか? 北で殺しをやった時には既に南で死んでおったというのは」
 呆れ顔で尋ねたのは室斐鷹蔵(ec2786)。確かに、殺人が目撃されたのにその人物が犯行時刻には死亡していたなんて呆れる話だ。しかし――
「して、其奴は今何処に居るか? まさか逃がしたのではあるまいな」
 犯行そのものを行った人物はどうしているのだろうか。
 鷹蔵が言っているのは熊吉に化けた者の事だろう。その後起きた事件も、死亡したと思われる人物が犯人とされている。それらに化けた犯人の所在は付かめていない。
 見て回った所、村には忍びや魔法の使い手はいない。第三者の存在が浮かび上がる。
「事件が続いている事を考えると、まだ村にいるって考えた方がいいと思う」
 大輝は言った。
「犯行時は他の誰かに化けて罪を着せるのはいいけど、問題はそれ以外のときだ。ずっと隠れてるわけにもいかないし、村人になりすましてって感じかな」
「それも難しいぞ。いくら化けたとはいえ、このような小さい村では本人と鉢合わせする事もある」
「うん。だから誰か一人をこっそり殺して死体を隠してそいつになりすますか、変身相手を固定しないでその時々でどんどん化けてうまくごまかしてるのかの二つかな」
「かなり厄介な相手だな‥‥‥」
 鷹蔵は舌打ちした。
 例え相手がとてつもないつわものだろうと相対すれば対抗策は見えてくるものだ。
 だが今回の相手は姿そのものが見えてこない。正体の掴めない相手ほど恐ろしいものはないだろう。
 彼はかつての依頼で思いもよらない強敵と戦い一刀の下に斬り伏せられた。今回の相手も‥‥‥それほどの使い手なのだろうか?
「事件前に態度が変わったり様子が変だったり、事件前後に姿を消したりした人がいないかを聞いてみよう。それと、事件以外で事件の時みたいにいる筈の無い人も。これだけ事件が続いているんだ。何か知っている人がいる筈だ」
 鷹蔵を促し再度聞き込みへ向かった。




 ――一方、南区。北区では冒険者は冷たい扱いを受けていたものの、南区では好意的に受け入れられていた。
「あなたの探し物はあの辺りにある筈だ」
 即席の占い小屋で村人を占っていた上杉藤政(eb3701)は尊大に答えた。
 彼の周りには人垣が出来ている。藤政の占いと、白井鈴(ea4026)の忍術を合わせた軽業で南区の村人から歓心を得る事に成功したのだ。
 このような村では娯楽に飢えているし占いも楽しむに充分たるものだろう。失せ物探しは精霊魔法のサンワードを使っている辺り占いではないが、タネを明かす必要もないし結果を出しているので問題はない。
 今なら聞きだせるかもしれない‥‥‥。藤政は尋ねた。
「事件について聞きたいのだが、被害者の生前の評判はどうだったんだ? 変わった行動をしていた等知らないか?」
「変わった事かぁ‥‥‥。そう言えば、寅次郎が殺される前あいつと話したけど、妙に余所余所しかったな。いつもは騒がしいぐらいなのに随分大人しいというか人見知りしているみたいだった」
「考えてみればそうだな。熊吉のやつだって、北区の連中と喧嘩して以来、どうしてもな理由がない以外は絶対に行こうとしないのに」
「普段から北区の文句を言ってた奴だからな。行く時だって先日から散々文句を垂れていたのに、今回は無かった所か一度もその話しはしなかった」
 なるほど、冷静に考えてみれば彼らも不審に思う所もあったようだ。今まで一方的に――同じ村の仲間が殺されたので当然だろうが――相手を疑っていた。
 例え決定的に相手が疑わしい事だとしても、水を差す第三者がいれば場を考え出すものである。
「何か真新しい情報はあった?」
 山になった村人の隙間を縫って鈴が顔を出した。
 藤政が占いを始める際、彼は情報収集に散っていたのだ。
「僕が聞いた回った所、被害者の死亡時刻に近い場所でその人物を見たって聞いたよ」
「やはり別の第三者の犯行の線が濃厚だな」
「それじゃあ犯人は人遁の術でも使ってるのかな。僕忍者だし、それぐらいしか思いつかないんだけど」
「犯人が何ものかはともかく、北にいる仲間に知らせておこう。――よし、この文に得た情報を纏めた。届けてくれるか?」
「獅子丸!」
 鈴の足元からわふん!と吼える声がした。忍犬の獅子丸。名前的に突っ込みたい気がするが――ともかく彼のペットの犬だ。鈴は一言二言言い含めると獅子丸を送り出した。
「そう言えばあいつは誰だったんだ? 定平のやつ、後で聞いたら死んでいた筈なのにこの間見たぞ」
「ほう。その話をもう少し詳しく――」
 これは中々に貴重な話だ。藤政は続きを促そうとしたが、
「占い師さんよ。そんな陰気な話聞くよりもっと占ってくれよ。ああそうだ。占ってほしいやつがいるから付いてきてくれないか」
「おい、玉和!」
 しびれを切らした一人の村人は村人達の声を無視し藤政を引き摺るように連れて行く。まるで、聞かれたくない話でもあるように。
 追いかけようとした鈴に村の子供達が声をかけた。パラ故に小柄と彼の童顔から子供達に妙に懐かれたのだ。
「鈴ちゃん。こいつが話したい事があるってー―」
 そう促された子供は青い表情で震えていた‥‥‥




「なるほど、確かにおっかしぃですねぇ」
 南区の一角。一通り情報を集めた設楽兵兵衛(ec1064)はのんびりと言った。
 広場の片隅で彼は同行しているルンルン・フレール(eb5885)は、調査の際に手に入れた前任の冒険者の遺品を調べている。
「普通なら在り得ない事がこの村で起きている、それは間違いないようですが‥‥‥さて」
 それだとこの村で活動する動機がイマイチですねぇと呟く。
 北区で調べていた際に仲間達から聞いたものを含めた情報と南区での調査結果。推測した結果、彼も第三者の仕業と結論付けたのだ。
 だが‥‥‥
「争いを煽るなら、もうちょっと効果的な標的がいそうですがね」
 矛盾を解決する理由はいくらでも用意出来る。人遁の術を使う忍びかもしれない。
 しかしこのような村で活動する必要はあるのだろうか?
 兵兵衛の言う通り、争いを煽るならもっと人口の多い街中や要人を狙った方が効果的だ。
「化けた上で本能のように人を殺害する。なんなんでしょうねぇ、これ」
 ルンルンは残されたメモ帳や手記を読み解こうと必死だ。眉間にしわを寄せて唸っているが‥‥‥
「読めません‥‥‥」
 ため息と共に呟いた。
 手記やメモ帳は英国の言葉で書かれていた。前任の冒険者は英国人だから当然だろう。血のようなもので書きなぐられた、『D』から始まる言葉は重要な気がしてならない。
 そうこうしている中、兵兵衛は村の子供達と鈴を見つけた。どうしたのだろうか。子供達は皆青ざめている。
 兵兵衛に尋ねられた鈴はもう一度話してくれるよう子供に頼んだ。
「ぼく見たんだ。四日前の夜、銀色のオバケが定平おじさんに化けておじさんを殺したのを‥‥‥」
「銀色の‥‥‥化けた?」
 手記に眼を落していたルンルンははっと顔を上げた。
「もしかして、それは――」
「大変だ! 玉和が死んでいる!」
 村人の叫び声がルンルンの声を遮った。
「確かその人って‥‥‥」
 聞き覚えのある名前だと鈴は首を傾げる。
 村人を占っていた藤政。占って欲しいものがいると連れて行かれて、連れて行った男の名前は――
「上杉君が危ない!」




「サンレーザー!」
 歪曲し集中された太陽光が走る。藤政の指先から放たれた陽の精霊魔法は『彼自身』を大きく逸れ家屋を焼いた。
 そして迎え撃つ藤政もサンレーザーを放つ。
 藤政は家屋の影に隠れ直撃を避けた。
「よもや魔物とは。単独行動しないとあれほど‥‥‥!」
 あの時あの男――魔物を疑うべきだった!
 藤政と、藤政に化けた魔物が光の閃光が交互に放つ。戦いの音を辿り仲間達が駆けつけた。
 これで勝てる! 連携し一気に畳みかけようとするが、
「世の中妙な生物もいるものですねぇ」
 兵兵衛はのんびりとのたまった。
「あっ、私聞いたことありますよ、もう一人の自分を見たら死んじゃうって伝説もあるくらい有名な‥‥‥ドンペリだかドンガバチョって怪物」
 ルンルンものんびりとのたまった。
「西洋の魔物ですか?」
「ジャパンもこれだけ違う国の人が来てるんです、きっとお引っ越ししてきたんですよぉ」
 はっはっはと楽しげに笑う二人。藤政は鈴と彼の忍犬と協力し化け藤政と戦っていた。
「龍丸! 獅子丸!」
 鈴の指示の下二匹の忍犬が攻め立てる。
「!」
 牙の一撃が虚空を薙ぐ。化け藤政はインジブルの魔法で姿を消したのだ。
「逃しましたか‥‥‥」
 気が付くと陽が沈みかけていた。不利を悟ったのだろう。陽の精霊魔法の効力が落ちる時間帯なのだ。




「抜刀術・瞬閃刃!」
 夜の帳を備前の刃が斬り裂いた。白刃煌く深夜。鋼斗の備前長船は雹刃を捉えた。
 夜間警備に出ていた鋼斗と白蛇丸。そこでもう後が無いと悟ったドッペルゲンガー――ジャパンで変魔と呼ばれる魔物は白蛇丸に化け二人を襲った。白蛇丸は忍犬に仲間を呼ばせに走らせている。
「斬り裂け! 閃刃!」
 気合一閃。夢想流、そして鋼斗独自の解釈で繰り出される技は雹刃を刻んでいく。
 だがオリジナルである白蛇丸とて忍法と回避の技に長けている。それと同じ技を駆使し雹刃は防戦を繰り広げている。
 忍犬が先行する。
「忍法、疾走!」
 外套と三度笠をパージ。黒装束姿となり白蛇丸は駆け抜ける。
 忍犬のクナイが隙を作り白蛇丸は正面に現れる。
「微塵!」
 突き出された小太刀を爆発を持って防ぐ。瞬間、背後を取り突き刺した。
 たたらを踏む雹刃。そこへ六人の冒険者が駆けつけた。一斉に得物を抜く冒険者達。
 雹刃は大輝へと姿を変えた。
「俺ってあんなのか? ち、小っちぇ!」
 突っ込む所は違う気がするが、化け大輝は斬りかかる。見かけは子供でも達人の剣。大輝は自分と同じ、凄まじい剣の技に押される。
「それじゃ、わたくしもへぼなりに援護させて頂きますか」
「仕留める!」
 兵兵衛が十手とホーリーナックルを。鷹蔵が魔剣を手に斬りかかる。剣術では大輝に劣る二人だが、達人三人を相手に化け大輝は追い込まれていく。
 そして、大輝の小太刀が偽者を貫く。
 金髪の忍者は巻き物を取り出した。大気中の水分が氷結する。
「ルンルン忍法氷柩の術です!」
 放たれるアイスコフィン。氷の棺は変魔を封じ込めた。
「これで、村人さん達に証拠として見せて退治するだけですね」
 多くの死者を出した事件はこうして結末を迎えた。