メイドさんプロデュース大作戦!
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■ショートシナリオ
担当:橋本昂平
対応レベル:フリーlv
難易度:普通
成功報酬:0 G 78 C
参加人数:8人
サポート参加人数:4人
冒険期間:06月08日〜06月13日
リプレイ公開日:2008年06月15日
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●オープニング
江戸の街は広く大きい。
現在、独眼流の名で知られる伊達政宗が治めるこの地は、戦後の事後処理で何かと忙しいがそれなりにかつての活気を取り戻していた。
立ち寄る旅人や商人は、源徳時代とは勝手が違ったりそもそも伊達家に支配権が移った事も知らない者もいるがそれなりに日々を過ごしていた。
人の縁はどこで繋がるか判らない。ある時通りすがった誰かが、ある時いがみ合った者同士が手を取り合う事もまた縁。
人の世と縁はまさしく青天の霹靂。全く何が起こるか判ったものではない。
――遠い異国の地で、レミングの群れの進路上に町や村があろうと、遠い異国の海でバイキング達が暴れていようと、広い目で見れば案外世の中平和なものである――
『はいけい このごろあつくなってきてますがみなさんどのようにおすごしでしょうか。
ねねこはとおい伊豆の地にてメイド仙人さまの弟子になってまいにちメイドしゅぎょうをがんばっています。
こちらは巫女さんがおおく、おししょうさまはごうにはいればごうにしたがえで巫女さんメイドじゃヒャッホォーウ! とさけんだりしてます。なんでもメイドさんはどんなしょくぎょう、シチューエションにもはいぶりっどにゆうごうし、ゆうごうもとのアクションもメイドアクションとしてとりいれることがかのうとか言ってますが‥‥‥まだまだみじゅくもののねねこにはよくわかりません。しゅぎょうぶそくですね。
もうしばらく伊豆で修行をつづけます。やなぎていのみんなもがんばってください ねねこより かしこ』
メイド喫茶柳亭。店長のお牧は伊豆の某所から届けられた手紙を読んで大げさに頷いた。
「ねね子ちゃん、しばらく音信不通だったから心配してたけど、修行に頑張っていたのね‥‥‥」
「いえ、色々突っ込む所はあるのですが、そもそもメイド修行とは何ですか? それにメイド仙人とか変態のニオイがするのですが」
天を貫くウサ耳、まんまるキュートなウサ尻尾のオプション装備、ウサギ仕様の大人なメイドさん、ラー・ミアは胡散臭げに言った。
高い身長といいオトナなスタイルといい、ハンティング対象なウサギメイドより狩る側のネコメイドの方が似合いそうな按配である。アミタイツでボンテージ仕様のメイド服で、鞭なんて持たせたら完璧な気がするがそんな事はどうでもいい。
例によって例の如く、いつもの通り変態を軽く受け流していたラー・ミアは一緒に休憩にやってきたセイ・スイと小夜叉と共にだらしなくごろごろしはじめる。
外では一縷の隙もない特殊部隊仕様のメイドさんでも楽屋裏ではこんなものである。
「うーん。なんかいやな気がするね」
「‥‥‥ええ。いつものパターンからすると‥‥‥この手のネタを前にして‥‥‥店長はロクな事を考えないタチですが‥‥‥」
適当に茶をしばき始めるセイ・スイと小夜叉。二人もこの店で働き続け、店長の行動パターンはある程度読めてきたのだ。
実に休憩を満喫している三人組であるが、そもそもこの三人は当初の目的を忘れてはいないだろうか?
一部地域の問題でしかないのかもしれないが、人間を始め多くの種族が隆盛を誇っているこのご時世、魔物は討伐対象として肩身が狭い。とはいえ魔物も生活がある以上、やはり人間を襲うなり街を襲うなりと‥‥‥それなりにやらなければならないのだ。
だがやってしまえば人間側から討伐されてしまう。しかし襲わなければ生きていけない‥‥‥。そこでこの三人は考えた。
人間社会に生活の場を移して、そこでこっそり頂くものを頂こうじゃないかと。
そうして種族の違う三人組み、蛇女郎のラー・ミア、精吸いのセイ・スイ。幼い夜叉の彼女等はこうしてメイド喫茶で働いているのだ。何故メイド喫茶とかの辺り、自分らの種族特性をよく把握しているものである。
だが魔物とはいえやはり乙女。魔物娘三人組みはそこはかとなくいやな予感が駆け巡る。
「メイド修行‥‥‥そうね。やってみる価値はあるかも」
「うーんと、店長?」
「決めたわ! これより我が柳亭は新人メイドの育成を始めるわ!」
我が意を得たりと慎ましい胸をはるお牧。また何かやるのかと三人はうなだれた。
「あのー店長さん? 新人育成って、普段からやってるものとちがうの?」
「おおいに違うわ。違いすぎよ!」
お牧さんは仰った。
「皆の夢と希望が詰まったメイド喫茶。そこで働くメイドさん。日々の苦行に身も心も疲れ果てたご主人さまを笑顔一発で癒すメイドさんのメイドスキルを習得するのはとても難しいじゃない?」
「いえ‥‥‥変態の皆さんが勝手に萌えてくれますが‥‥‥」
というかメイドスキルなんていつ習得しただろうか。そもそも勝手に妄想されてるのだが。
「そんなメイドさんを教育するのは一苦労。タイプの決定やメイドアクションに必殺メイドアピールの習得も合わせれば覚える事たくさんあるよね」
「それはそうだけど、さいごのほうわけのわからないことになってないかなぁ」
当然聞いてない。
「ならばいっその事、教育そのものをイベントに回せるわよね。アルバイト希望の娘もそれなりに来てるし、今度江戸市中に支店を出す予定もあるし良質のメイドさんを短期間で調達するいい機会だわ!」
「‥‥‥聞くまでもないけど、それをどうかするのは私たち?」
ラー・ミアは頭抱えて突っ伏した。
「モチのロンよ! 細かい事は面倒だから貴女達に全て任せるわ! メイド喫茶柳亭、メイドさんプロデュース大作戦開始よ!」
経営者として一番タチの悪い人物である。
「いくら面倒だからってバイトに任せるのはどうかと思うけど、とりあえず任された以上はどうにかしようか」
勤務を終えて夜の居酒屋。魔物の三人娘は今後の方針を決める為話し合う事にした。魔物だからなのか知らないが、女性的に地味すぎる衣類なのに見栄えが悪くなる所か、その人とは思えない美貌をとても引き立てている。そもそも魔物なのだが、まあそれはそれだ。
適当に酒やツマミをしばいてまとめに入る。
「えーと、メイドさんコンテストは一週間後、内五日はメイド育成で六日目は自由行動含む小物・衣装の調達。最終日はコンテストね」
「‥‥‥何かどこかで聞いたスケジュールですが‥‥‥」
「さあ? 今のご時世、お嬢さまを三ヶ月でプロデュースできるんだし、冒険者を教育係で雇うんだから一週間もあれば出来るんじゃない?」
「そのきじゅんがわからないなぁ?」
「大丈夫よ。冒険者はどんな難事でも万事解決してるじゃない。第一、リフィちゃんやサクラとか、臨時でしかメイド働きしないのにトップ5に入るメイドなのよ? バイトとはいえ常勤のこっちとしては面子が立たないんだけどね‥‥‥」
魔物的にどうかと思うが、自分の仕事に誇りを持つのはいい事である。
「まあ、今はそんな事はどうでもいいわね。冒険者一人が新人一人を担当するもよし、新人複数を冒険者一人が、その逆もまたと――その辺りは冒険者に任せるとしようか」
「あとごしんじゅつもひつようじゃないかな」
「‥‥‥そうね‥‥‥。襲ってくるご主人さまから‥‥‥自分の身ぐらい自分で守れるようにならないといけないしね‥‥‥」
業務内容を疑いそうな台詞である。
●リプレイ本文
本音を言えば彼はとても嬉しい。いち男として、自分以外女性しかいないというものは何とも形容しがたい高揚と興奮を覚えるものである。
普通なら居心地の悪さを感じるというものの、誰も彼もが美少女・美女で、所謂ハーレムのようだ。店長がきれいどころのみを集めた、と豪語しているだけに華々しく、何より、彼女達からすれば『男の眼がないから』との事でなかなかスリリング事もやってのけている。これで男がいると淑女のようになるから女性というのは不思議なものである。
だがそんな事はどうでもいい。
自分も美少女としてカテゴリされているリフィーティア・レリス(ea4927)は、例によって例の如く、頭を抱えていた。
「新人の教育という事で来てはみたんだけど、やっぱり今回もメイド服を着せられたか‥‥‥」
江戸某所のとある一軒家。今回のイベントの練習場所としてあてがわれたそこに新人アルバイトと教育係の冒険者達はいた。
それぞれ担当の相手に新人教育を行うなど、接客関係を覚えると思っていた新人達は、頭に疑問符を浮かべつつ、グローブを手にサンドバックを叩いてたり木人くんを相手に蹴り技の練習をしていた。
一通り型や技を教えたリフィーティアはそれを眺めつつどーすっかなーと遠い目だ。
「百歩譲って俺が女顔というのは認めよう。細身だし背もあんまり高くない‥‥‥。だけど、ちょっと手伝いしてただけなのに知らない間に上位にランクされてるって何なんだろうな。俺この先どうなってくんだろう‥‥‥」
ほう‥‥‥っと零れる艶やかなため息。
天女の羽衣のようなきらめきと流れ落ちる長い銀髪。エメラルドをあしらったかの如く青い瞳。雪女を連想させる白い肌に妖しく色づいた小さな唇。まるで数々の恋愛譚として語られるニンフや美の女神のようなそういう現実離れした類の美貌である。道を歩けば百人が百人振り向くような『男性』だ。
そう、リフィーティアは男だというのに、その構成する全てがほぼ女性のそれなのだ。しかも小町だとか美女の代名詞が霞むほどの。きっと神様が性別を間違えたに違いない。
ツンデレメイドとして定着している、スーパー美少女を地で行っているリフィたんは、今回もロクな結果にならないだろうなぁとため息を付いた。
変態どももそうだが今回依頼を共にする冒険者は何かと濃いからだ。
「愛あるご奉仕は乙女の秘密! メイドローズ!」
「強い愛情は結びつき! メイドアジサイ!」
「あなただけを見つめています。メイドヒマワリ!」
「忍耐と心意気。あなたを信じています。メイドハナショウブ!」
「汚れなき清純の美、皆をひきつけるこの魅力! メイドスズランスイセン!」
びしっと決めポーズ。
『メイド戦隊ホワイトプリム!』
轟き唸る魔法力で大爆発。彼女等ら五人の担当、柳花蓮(eb0084)の演出だ。花蓮は僧侶で神聖魔法の使い手。どうやったものか知らないが、そこは魔法の奥義でどうにかしたらしい。
彼女は戦隊ものとして鍛える事にしたのだ。
「‥‥‥グッジョブでした‥‥‥上出来です‥‥‥」
漏れ出す暗黒闘気にアヤシク光る両のマナコ。経験上分かりやすい物を好むと結論付けた結果らしい。個性化という事でそれぞれ花と色で分けのほか各種小道具とか、まるで本職のような仕事振りである。
「ククク‥‥‥。普通とはすなわち個性が分かり難いという事‥‥‥個性が分かり難ければご主人様達はついてこれません‥‥‥。すなわち戦隊化なのですよ‥‥‥」
そういうものらしい。
「個性化は実験ですから分かりやすく‥‥‥。赤は熱血・元気良く‥‥‥青はクールに冷静に‥‥‥黄色はマイペースで美味しい物大好き‥‥‥。ククク‥‥‥各々自分の役目を確り把握して下さい‥‥‥」
はいっと元気よく返事するメイド戦隊。花蓮の暗黒闘気に当てられたのか疑いなく頷く。
だけどこっちはまだマシな方だ。
「みんな似合ってるわよ♪」
普通に接客を教えているところまではよかった。だけどそこから先、御陰桜(eb4757)曰く『臨界点を超えない様に上手く焦らす方法』が致命的にダメだった。どこのホステス?
「さっきの練習の通り、ご主人さまの期待を最大限に膨らませつつ自分のペースに持ち込むのよ? 練習相手の様子を思い出してごらんなさい。獣娘としての特性を最大限に活かすのよ」
ふさふさ尻尾の犬耳メイドとすらり尻尾の白猫メイド。カスタマイズされているメイド服は所々布面積がアレ仕様で、スカートとソックス辺りの絶対領域が凄まじく絶妙だ。女の武器で数多の男を(たぶん)弄んできた桜は男心を惑わす手段をよく心得ている。
「ボク達も負けてられないね♪」
「はい、おねえさま(はぁと)」
サキュバス道‥‥‥ならぬ桜道を知らぬ内に歩んでいる桜担当のアルバイト二名と、その犠牲になったサポートのゴールド・ストームと石動巌を眺めつつ神山神奈(ec2197)は隣のトリコにした新人メイドを愛でつつ言った。
「変態さんが来たら、足を踏み出して相手の爪先踏んでそのままの勢いで相手の鼻と口の間目掛けて打ち込むと効果的だよ♪ 後は‥‥‥男の人の弱いところ、こことかね♪」
「あん、もう。おねえさまったらぁ‥‥‥」
自主規制で甘い声を上げる新人メイド。メイド服が着崩れてたり神奈の指使いや舌がアヤシク蠢いているがきっと何でもないと思う。きっとそうに違いない。
「後は鞭辺りを使えるようになると‥‥‥って、これだとメイドじゃなくて女王様になっちゃうか」
「おねえさまがそう言うのなら、わたし‥‥‥」
いやいやしているけど喜んで‥‥‥悦んでいる?
何ともドキドキならぬけしからん事になったのは昨日、神奈の一言から始まった。
『まずは基本の接客からかな? 一つずつ手取り足取り教えていくね♪』
『よろしくお願いします』
神奈の担当したアルバイトは非情に出来が良かった。それにかなりの美人さんだ。
だからか知らないが、ちょっとした悪戯心が働いた。神奈嬢、冒険者にして現役の遊女で芸妓色香一代。つまりそういう事なのだ。
『んふふ〜♪ ご主人様を悩殺する方法も覚えないとね☆』
『はい?』
背後に回り秘孔を貫く。意識だけ残して全身麻痺になったアルバイトをずるずる引き摺っていく。
『夜の悩殺テクニッ‥‥‥じゃなくてご奉仕を教えないとね♪』
『い、いぃぃぃぃやぁぁぁぁ!!!』
ぽとり菊の花。本人曰くこれはあくまで悪戯なんですよ。
「‥‥‥‥‥‥」
何かが激しく間違っているような気がするというか、この手の事に関わりすぎて判断力が低下しているリフィ。桜と神奈はくたばっているゴールドと巌へアルバイトを練習再開とけしかけた。
妄想世界と冥府魔道とは縁遠い二人には生き地獄。
「ぎぃぃぃやぁぁぁぁぁ!!!」
絶叫が轟いた。
男二人の悲鳴をBGMに、セピア・オーレリィ(eb3797)は担当メイドへ指南を続けていた。
最初は技を見せ、メイドがそれを模倣する。腕運び脚運び、未熟な点は指摘して、いまや新人メイドは木人くん相手にとはいえ見事な連携技を見せるようになっていた。
崩拳一発。粉砕する。
「うん。きっかけはともかく、新人さんをしっかり教育しようというのは悪くはないわよね。護身術を仕込めれば変態の毒牙にかかる確率も減らせるし」
「調子に乗るご主人様にはキツいオシオキも必要だ。愛情は時に痛いという事も理解させないとな」
他のメイドと違い、余計なカスタムも小道具も身につけず、王道仕様の十七夜月風(ec4855)。だが彼女は忍者。忍者は死んだ方がマシと言ったほどの訓練を受けているというし、メイドで清楚に決めているがやはり修羅なオーラが滲み出ている。桜も同じ忍者であるが、あっちは人間というかサキュバスというか、オーラの系統が違う。
風は素人でカタギ相手に訓練は手を抜いていると聞いてるが、そもそも手加減の基準が違う職業の人。担当のメイドは軽く気絶している。ひとまず休憩という事で捨て置いた。
「メイドはいいなぁ。自分でなるのもいいが見ているだけでも実にいい。忍者でなければ永久就職したいところだ」
「この国でメイドと言ってもね‥‥‥。とりあえず柳亭では勝手に盛り上がってくれるご主人様たちではあるけれど」
メイド=突撃な連中だ。いや、萌えに関係する全てに突撃しているのだが。
そこへやけに若々しい声が飛んでくる。
「まー、割と年配らしいうちの経験上で言わせて貰うと」
赤毛黒瞳の侍、九烏飛鳥(ec3984)。三十の、ぶっちゃけておばさんであるのだが、十四歳以前の記憶のない彼女は、それが原因で精神年齢が若返ったのか明るい性格が関係しているのか知らないが、それが外見に出てもの凄く若く見える。二十代、十代後半と言っても差し支えない容姿なのだ。美容本でも出せそうだ。
「そもそもこういう店に来る男っちゅうのは萌えに来とんねん。だから、どれだけ男を萌えさせるかにかかっとるんや」
それはそれで違うと思う。
「おたくはどう思う?」
風に尋ねた。
「決っている。メイドは服装に非ず、その精神と奉仕こそがメイドなのだ!」
修羅メイドは仰った。
「メイドと言えば慈愛と奉仕の心。主人となるものを心身ともに支えることが必要になる。どんな辛いことがあっても、自分は主人とともに身を投げるくらいの気持ちが必要だ。それは本業とバイトでも変わりない。そして、だからこそ時には鬼となることも必要だ。つまり、甘! ツン! デレだ!」
「なるほど。つまり、例えば巫女服ならこれを着た場合の言葉遣いは清楚っぽく丁寧なんがいいかってことやね」
その通りだと言う風へかぶりを振る。
「王道がダメだと言う気はない。ハマってる方がええ言うんもおるし、ギャップがあるんがええと言うんもおる。千差万別、人それぞれ。どれがええか何てうちらで決めれるもんやない。やから‥‥‥客に決めて貰うんがいっちゃん手っ取り早いんやないの?」
「主人とて人の子、主人の数だけタイプがある‥‥‥つまり、そういう事か‥‥‥」
何か通じるものがあったのだろう。何か間違っている気がするが気絶している担当のメイドを叩き起こす。お仕置きが怖いのだろう、泣きながら鬼のような形相で木人くんを殴りまくっている。
そしてもう一人、木人くんを殴っている、セピアの教育相手のメイドさん。アイシャ・オルテンシア(ec2418)。
「あたたたたたたっ!」
どこぞの世紀末救世主みたく木人くんを殴りまくっている。さすが戦いの専門職の志士。拳筋が全く見えない。
「本格的に相手を制圧する術まで仕込むには時間がないと思ってたけど、その心配はなかったわね」
「メイドさん、憧れますから! ここはなんとしても立派なメイドさんになれるよう頑張ってみたいと思いますし!」
「今までの経験上、実力でいくら打ちのめしても変た‥‥‥ご主人様達は怯むどころか盛り上がるから、むしろ徹底的にした方がいいかも」
「これでも元騎士として貴族としての教育はある程度受けてます。なのでそれを踏まえて、王道たるメイドさんを!」
必殺コンボを叩き込み爆散する木人くん。イギリス出身だし貴族出身らしいしメイドに関する知識は他より豊富だろうが、本場メイドさんはそういうものだろうか?
リフィ以外はこれに全く疑問を抱かないまま、こうして当日を迎えた。
「リフィたん大好きだぁぁぁぁ!!!」
コンテスト当日。やっぱり例によって例の如く、変態の皆さんはリフィたんへダイブした。
「予想はしていたけど今回もか! 何度も言うが俺は男だぞ!」
「またまた冗談ばかり。本当はそうやって俺らの気を引きたいんだよね?」
「某にんじんのお店は男装の女の子とにゃんにゃんだし、つまりリフィたんは男装したいって事なんだよ」
「ボーイッシュなリフィたんも大好きさ!」
「焼くぞお前ら!」
「フフフ本当に照れ屋さんだネ」
「今回のコンテストの為に、こんな練習をしてくれたんだよ。そして今から実戦してくれるなんて俺達幸せ者さ!」
『いいか? 夜の奉仕はこうやって‥‥‥こうするとご主人さまは喜んでくれるんだ』
『は、はい‥‥‥。ん‥‥‥』
「リフィたん! そんなキミに一生付いて行くさ!」
「誰がするか! サンレーザー!」
「アウチ!」
唸る指先疾る熱線。変態達を焼き尽くす。
「どいつもこいつも変な妄想ばかりしやがって! される方の事を考えてみろ! そもそも俺は男だーーー!!!」
轟き唸る精霊力。少なくとも男はメイド服にニーソックスは付けないと思う。というか素で似合いすぎている。ガーターを付けてくれと懇願されたが、そこはダンコ拒否した。
真っ赤になったリフィたんの担当したメイドさん。
「リフィ先輩って大胆‥‥‥」
「お前も本気にするなーーー!!!」
再び轟き唸る精霊力。いつものお約束である。
まあともかく、コンテストは進行中。
「いらっしゃいませー♪ 新人メイドのアイシャです。どうぞ御贔屓にしてくださいね♪(はぁと)」
アレ的に危険なオーラを放っている神奈の担当メイドに対し、らぶりー全開で対抗するアイシャ。誘惑系のスキルは持ち合わせてなく、甘え倒すのが彼女の戦法だ。
まだ強力なライバルはいる。桜の担当した獣っ娘メイドツインズだ。わん娘アクションににゃん娘アクションを駆使し、更に首輪(アレ用の傷があまりつかないやつ)付きであざとい事この上ない。いや、あざといのは悪いことじゃないんですよ? 美少女が、獣仕様の女の子が、首輪付きで鎖はともかく、「ご主人さま‥‥‥」と上目遣いで見上げてくるのを想像してみよう。こちらが獣になりますよね? 否定はさせませんですよ。
まあともかくそんなこんなのメイドコンテスト。
「メイド戦隊ホワイトプリム!」
精霊力が大爆発の花蓮の担当の五人組。
「それなら俺達は悪の怪人だぜ!」
「つまり突撃していい大義名分があるという事なのさヒャッホォーウ!」
我先に突貫していく変態の皆さん。こんなのばかりだから萌えは誤解される訳なのだが、萌えとは冥府魔道の修羅の道。躊躇っては萌えは遠退いていく。ゲットできる内に手を伸ばすべきなのだ。
とはいえ変態達のやっている事は普通に犯罪。常識は環境によって変わるものだが、返り討ちしているメイドさん達もその辺り薄れつつあるのだろうか。
「ふふふ。コンテストも上手く進んでいるし、ついで獣耳派でも立ち上げて、ねね子ちゃんに協力できる体制でも作っとこうかしら?」
‥‥‥進んでいるのか?
「コンテスト終ったらメイドさん何人か捕まえて遊ぼうかなー♪」
満足げな桜と指をアヤシゲに蠢かす神奈。二人から溢れる非常識すぎる色気のオーラは、あまりに強力すぎて一種の結界のようになっている。まるで霧の中にいるようでよく見えない――否、脳が認識できないのだ。
ちなみにコンテストの優勝者はリフィたんに決まった。‥‥‥何故?