バーニング!

■ショートシナリオ


担当:橋本昂平

対応レベル:1〜5lv

難易度:普通

成功報酬:1 G 62 C

参加人数:5人

サポート参加人数:-人

冒険期間:06月27日〜07月02日

リプレイ公開日:2008年07月12日

●オープニング

――まあ、よく見れば物騒な事もあるもので?




 事の発端は彼の何気ない一言から始まった。
 六月後半、夏の盛りではないとはいえ暑くなった今日この頃。杉下次郎丸は褌一丁というとても男らしい恰好だ。自分を異性として見てないのか‥‥‥それはそれで癪に障るのだけどこちらも同じ襦袢一枚でセクシー(だと思う)なこの恰好。腐れ縁相手とはいえ実はむちゃくちゃ恥かしいのだけど脱がなきゃやってられないぐらいの暑さというか熱さ。夏の訪れを実感できるものである。
 まあそんな事はどうでもいい。
「僕は巨乳の女の人が好みだなぁ」
 どういう流れでこんな話になったのか知らないけれど、ほんわかと言いやがった次郎丸がとても気に入らなかった。
「だってぷるぷる揺れるじゃない? あれには男の夢と希望と浪漫が詰まっててさ、動くたびに揺れるんだよ。これでもかと自己主張をするんだよ。きっと『私を見て』ってアピールしててさ、触るとすっごく柔らかいんだよなぁ触ってみたいよなぁ」
 女の子の前で言う台詞か。そもそもコイツに浮いた話なんて聞いた覚えがない。
「うん。やっぱり女の子は胸が大きくないとね。ちよみは小さいからダメだね。僕が揉んで育ててあげようか?」
 ぶっちーん。わたしの中で盛大に何かがブチ切れた。
 この鬼そのもののような暑さだ。ついつい思いついたことを言ってしまうのもしょうがないと思う。
 だから、わたしもついのたまってしまった。今思えば脳がいい感じに茹っていたのだろう。
「だったら――育ててみる?」
「は?」
 気が付くと押し倒してホールド。覆いかぶさっていた。
「次郎丸が言ったんじゃない。揉んで育ててあげるって」
「ええっ!? あ、いや、それは場の流れというか言葉のアヤというか」
「男の子に二言はないの。どうなの? 揉むの揉まないの?」
「ちょ‥‥‥ちよみ!?」
 次郎丸、可愛いな。
 親しい友人や兄弟の類が違う女の話をしていたらむかつくじゃない? 別に次郎丸のことがどうとか、じゃなくて何か気に入らない。それだけ。だから困らせてやるだけだよ。
 わたしはもっと身体を密着させた。
「ねえ‥‥‥どうなの? わたしのこと、嫌い?」
「嫌いとかそんなことじゃなくて、やばいよ! 色々危険だよ! 汗で襦袢透けてるし、それに秘密の先端突起が危険!」
 もう。何だかんだで見てるんだね。
「次郎丸のえっち。でもね――」
 どうせこいつにそんな度胸はない。
「――次郎丸なら、いいよ?」
 気のせいだろうか。次郎丸の瞳の色が変わった気がした。
 ある意味助かったような気もしないでもない。襖が開いて鈴山美晴隊長がやって来た。
「どうだ。レジュメは出来――」
 ソニックブームが部屋もろともわたし達を吹き飛ばした。




「このアホ共が! 仕事を放っておいていかがわしい行為など‥‥‥武士の風上におけん!」
 場を移してとある一室。刀を抜いたまま、美晴隊長は仁王立ちでわたし達を鬼そのものな眼光で見下ろした。
「別に不純異性交遊をするなとは言わん。だが、時と場所を考えろ!」
 していいんですか不純異性交遊。
 くどくどお小言を言ってくれてる隊長。次郎丸は縮こまってはいはい返事してるだけだ。情けない。こんなんだからわたしはね‥‥‥。
 だけどここまで言われる筋合いはない。風紀を乱す云々言ってるけど、隊長自身が乱しまくってるじゃないか。
「そうは言いますけどね、隊長。隊長だって他人のこと言えないじゃないですか」
 だからわたしは言ってみることにした。
「ほう、どういう事だ?」
「どういうも何も、毎日毎日正春くんといちゃついてるのはどこの誰でしたっけ?」
「! 別にいちゃついてなどおらん。気のせいだ」
 今動揺しましたね?
「気のせいですか。なら、この間、正春くんの着物を抱きしめてふんふんしてたのも気のせいですか?」
「な――何を言っている!」
「いやいや、偶然見かけたんですよ。着物を抱きしめてたと思ったら、何かいやらしく悶えてましたし『正春‥‥‥』なんて呟いて。別に文句なんて言ってないんですよ? 隊長にとって正春くんは可愛くて仕方ないでしょうし、着物を部屋に持ち帰っていったい何を」
「奥義・三日月覇斬剣!」
 剣風一陣。必殺剣がわたし達を襲う。
「ふふ腐ふふ? 何を言っている? 別に私は正春の着物を持ち帰って○○○なこととか×××なこととか△△△なこととかしてないぞ!」
「‥‥‥したんですね」
「はっ! 誘導尋問か。普段真面目に鍛錬してないと思ったら、こんな事ばかり‥‥‥」
「隊長が自分でバラしたんじゃないですか」
「こうなれば生かしておけん。せめてもの情けだ。苦しまないようひと思いに斬り捨ててくれる!」
 他人の話し聞いてない‥‥‥。
 これはいかん。追い詰めすぎた? わたしは刀に手をかける。勝てるなんて思ってないけど‥‥‥と救いの手がやって来た。
 美晴隊長の弟分にしてわたし達の同僚、立川正春くんだ。
「ねーちゃん。刀を振り回してどうしたの?」
「ま、まままま正春!? 何でもない、何でもないぞ!?」
 何でもありそうな慌てっぷりですね。それじゃあ疑ってくれと言ってるようなもんですよ。
 だけど微妙に何かがずれているというか、濃すぎる友人の影響を受けている正春くんは気に留めなかったようだ。
「そうだ。ねーちゃん、俺の着物知ってる? この間から見つからないんだ」
「さ、さあ? 知らないな?」
 隊長の部屋にありますね。
「ああ、それなら隊長が」
「ふん!」
 気合一閃。正春くんの死角を突き小柄が投擲された。わたしは鞘に収めたままの刀で何とか弾く‥‥‥てかマジで投げやがった!
「正春。着物なら後で私も探そう。今は二人に仕事について話があるから席を外してくれないか?」
「うん。わかったよ」
 にっこり笑って部屋を出て行く。うん。確かに可愛いね。隊長が道を踏み外すのも判るかも。次郎丸とは違う魅力ってやつかな。
 正春くんの気配が完全になくなって隊長は振り向いた。羞恥に震え、刀を収めている。
「話しが脱線したな。これ以上ボロを出す前にペナルティを課す」
 自覚はあったんですね。
「戦場跡に源徳の兵が出たと報告を受けた。恐らく偵察部隊と思われる。杉下次郎丸、柳田ちよみ、偵察部隊を調査し、状況によればこれを撃破してこい!」




「次郎丸のバカーーー!!!」
 死人憑きをなぎ倒しわたしは叫んだ。
 場所は戦場跡。かつて我らが伊達家と源徳家が戦闘を行った場所だ。事前の情報収集によると、ここでは怨霊やら悪霊やらの姿がよく見られたらしい。
 そこで察するべきだったんだ。
「次郎丸のバカ! 巨乳が好きなのはしょうがないけど、魔物でも盛るなんて盛りすぎよこの猿!」
「しょうがないだろ! おっぱい大きかったんだし、遠目だと人間にしか見えないじゃないか!」
 開き直りやがったよこのおばか。
 現地に辿り着いて調査中、ある女性が姿を現した。
 着物を着た、戦場跡に不釣合いな美人さん。しかもおっぱいはでかい。巨乳というか魔乳。
 その名は――精吸い。魔物だ。
 どうも誘われたらしい。次郎丸を追っていくと、周りには死人憑きの群れと死霊侍。囲まれてしまった。
 精吸いは姿がないということはただの誘い役なのか。
 だけどこの状況、どうするか。
「一応、追う前にのろしを上げておいたけど、冒険者達気付いてくれるかな‥‥‥」
 依頼で同伴を頼んだ冒険者達の救援を祈るばかりだ。

●今回の参加者

 eb3797 セピア・オーレリィ(29歳・♀・神聖騎士・エルフ・フランク王国)
 ec0997 志摩 千歳(36歳・♀・僧侶・人間・ジャパン)
 ec4808 来迎寺 咲耶(29歳・♀・侍・人間・ジャパン)
 ec4859 百鬼 白蓮(28歳・♀・忍者・人間・ジャパン)
 ec5122 綾織 初音(26歳・♀・侍・人間・ジャパン)

●リプレイ本文

 屋敷に戻ったら絶対にシメてやる。
 死人憑きの群れを相手に結構傷だらけになりながら、わたしは背中合わせのアイツに思いっきり悪態をついた。
 一匹の死人憑きを相手にしていても、横から他の死人憑きが襲ってくる。余計な事を考えてる暇なんてないんだけど、ピークが過ぎるとその辺りどうでもよくなるのかな。我ながら余裕があるらしい。
 ‥‥‥いや、他にストレスの元凶があるからだ。それに認めたくはないけれど、命の危機よりそっちの方がわたしとしても重要なのだ。
「おねーさま方とキャッキャウフフするまで死ねるかぁぁぁぁ!!!」
 次郎丸、刀を振りかぶって気合一閃。見事死人憑きは真っ二つなんだけど、
「おれは死なん! 死なんぞぉ! 偶然を装ってボインタッチする為に!」
 暗黒闘気が轟き唸る。一瞬死人憑きや死霊侍と同質の気配を感じたのは気のせい?
 ああもう、むかつくな。普通女の子の前で他の女の話しなんてする?
 冒険者と顔合わせした後だって、四人の美人さんと一緒だって幸せだとか、しかも四人ともおっぱいが大きくてこれはもう狙わないといけないとか、セピアさんと百鬼さんの恰好は危険すぎて犯罪だとか、次郎丸だって男の子だからそういうのに興味あるのは仕方ないとしても‥‥‥せめてそういうのは男の子同士でしてほしい。無神経にもほどがある。確かにあのおっぱいは同性のわたしでも羨まし‥‥‥いやいや、若いわたしにはまだ未来がある。そういえば唯一の男性冒険者の綾織さんにそっち方面の話しで絡んでいたな。嫌がっていた、という事は真面目な人なんだろうな。
 ギルドでは全員女性冒険者だと聞いていたけど都合が付かなかったのだろうか。‥‥‥いや、綾織さんよく見ると所々女性的なオプションやら身に付けているけど‥‥‥やっぱり違うな。男の人みたいな顔してるし声だってハスキーだ。服装についてもそういうのがあるって聞いた覚えがある。間違えたら失礼よね。‥‥‥男の人、だよね‥‥‥?
 だけど今はそんな事はどうでもいい。
 わたしは刀を大きく振って死人憑きの接近を防ぐ。今は戦いに集中しないといけない。そして絶対に次郎丸をシメてやる! 何か判らないけどムカつくし!
「ちょっと、ちよみ!」
 誰かが呼んでいる? 気のせいかなと思って、肩を叩かれわたしが呼ばれたと気付いたのは少し遅れてからだった。
「な、何よ次郎丸。今あんたと話してる暇なんて」
「前! 前見てちよみ!」
 はあ? 戦いに不似合いな生返事をして振り向くと、
「――あ」
 刀を振りかぶった死霊侍。
「やば――」
 訓練の賜物だ。骨の身体のどこにそんな力があるのか、凄まじいスピードで振り下ろされる刀にあわせ、わたしは身を守るべく防御の体勢を取る。
 だけど不意を疲れたのか単に技量の差か、見事に吹っ飛ばされて次郎丸共々転がりまわる。
 いつかみたく次郎丸を押し倒してるけど周りには死人憑きの群れと死霊侍。我先にと向かってくるさまに、わたしたちは絡み合った身体をもっと絡ませてうごめく。手放してしまった刀は少し離れててそれを取ろうと手を伸ばして次郎丸そんなところ触るなぁぁぁぁ!!!
「ひっ!」
 後々、これはどんな意味で言ったのか自分でも悩む事になる。
 次郎丸の手はアレ。全方位死人憑きに死霊侍は刀を大上段。
 逃げる余裕はない。
 死霊侍は刀を振り下ろそうとして、そこへ死人憑きの陣形に大きな穴が穿たれた。
 飛び出したきた光珠から死人憑きは逃げようと蜘蛛の子のように散り、死霊侍も火を恐れる獣のように飛び去る。
 そこへわたし達を護ろうと颯爽と駆け死霊侍へ西洋槍を手にセクシー女性。少なくとも戦いに向いた恰好をしようよ。次郎丸、しっかりと大きく開いた胸元と背中をガン見してたよ?
 聞こえる黄色い悲鳴。
「セピアたんだーーー!!!」
 軽く殺意が沸いた。





 この戦いの後、杉下次郎丸はこう語る。
『冒険者? ええ、評判どおり大きなおっぱいの女性たちでした。あれは武器――いえ、戦略兵器ですね。一歩動くたびに局地的大地震を起こすあの極大のおっぱい群。あの前には無敵の剣豪だろうと軍団だろうと敵うはずもありません。だってあのおっぱい、ひと揺れするたびに問答無用で視点を奪い去るんですから。それにあんなに大きいのだからきっと挟』
『次郎丸のばかーーー!!!』





「いやいや。それにしても賑やかな2人組だね」
 ホーリーライトの輝きとピュアリファイの浄化効果により次郎丸とちよみを取り囲んでいた死人憑きの包囲陣は崩れ去っていく。怨念と不浄の力を宿す死霊たちは、聖なる神の奇跡たる神聖魔法の前に為す術もなく消滅していく。
 各個撃破されていく死人憑きを見て一息つける余裕を得た来迎寺咲耶(ec4808)は呟いた。熟練冒険者のセピア・オーレリィ(eb3797)と同じく神聖魔法の使い手、僧侶の志摩千歳(ec0997)の活躍により多くの死人憑きは姿を消している。
 だが全て倒しきったわけではない。最後まで気を抜かないように――
「乳祭りサイッコォォォォォゥ!!!」
 次郎丸がもろてを上げて大喜びしていた。
 セクシーメイドドレスである意味危険なビジュアルになっているセピアとビキニアーマーのような忍者衣装の百鬼白蓮(ec4859)。
 まあアレだ。
 この手の服はとても女性的な魅力に恵まれている女性にこそ最大限な効果を発揮するもので、両名はとてつもなくそれに恵まれている。だってもうしまっちゃうんですよ? セピアたんはシルバーに近い白髪に処女雪のような透き通る白い肌。燃え盛るクリムゾンアイはその白さとあいまって凄く人を引き付ける力を窺わせる。どこか深窓の令嬢を思わせる印象と同時に力強い戦士という相反するギャップを持ち、それは神聖騎士なのに悪魔的に育ったお胸さまにも該当しますよね。大人しそうな反面、ボディはとってもデビール。男の色んな意味での浪漫衣装、セクシー仕様のメイド服でもう、性的に大魔王でごさいます。
 白蓮たんもいい勝負だ。髪や肌の色の辺り、まるでお人形さんを地で行っているセピアに劣るものの、こちらはジャパン伝統職業によって保管している。
 それは彼女がくのいちだということだ!
 流派や忍者集団によって活動内容・方針も変わるが、説によると忍者は諜報や情報活動に特化しているとも言う。そしてそれには女性が極めて有効なことも。
 基本的に権力者は男性が多い。ならば色仕掛けはかなり有力な手段である。あれよこれよと遊女もびっくりな、忍び的に秘密な技を持って対象を誘惑し篭絡するさまは世の殿方の皆さんの妄想で評判だ。真偽はどうあれというか、女性たちから鬼ののような冷たい眼で見られようと特に妄想激しい思春期の若者にはそれが絶対なのですよ。
 忍者ということで黒一色のセクシー衣装に暗黒魔乳。合わせ技一本で記号を見ても妄想するお年頃の次郎丸少年にはたまらんのでごさいますですよ! ヒャッホォゥ!
 他にも着物で身を固めているがそれをとっても押し上げるお胸さまの持ち主が二人。
 つまり超おっぱいの女性ばかりで男が二人(次郎丸視点では)。これなんて春画本?
 次郎丸はアホみたいに食いついた。
「綾織さん! 俺、生きててよかったですよ! もう眼福です!」
 全身から色んな汁を垂れ流しながら狂気しまくる次郎丸に綾織初音(ec5122)は超引いている。
「見てくださいよ! 見渡す限りおっぱいの山、お乳のカーテンです! これはきっと普段業務に励んでいる俺に仏様がゴホウビを下さったのです!」
「そ、そうか。それは良かったな」
 男というものは皆こういうものなのだろうか?
 男なら女性のような顔は神秘的に見えたりもするだろう。だがその逆はどうだろう? それに洗濯‥‥‥他の冒険者たちに比べて未発達なお胸さまはふくらみはあるのかというか、好む恰好からして初音は男に間違えられることが多い。だから次郎丸が自分を見て暴走することないだろうと思っていたが、何かとても怖かった。
(暴走している次郎丸をからかおうと思っていたがオレの直感が関わるなと言ってるな‥‥‥。つーか後ろの視線が痛い)
 暴走している次郎丸は気づいてないが、同類と思われている初音はちよみからの軽蔑の視線が鬼のように痛い。次郎丸へとは違って初音には侮蔑やら落胆の視線だが、物理的に痛いなんてどれほど恨みを込めてのやら。
 このままでは生命的にいけない。とりあえず場を和まそうと当初の目的を果そうとする。
(そうだな。とりあえずちよみをからかって‥‥‥)
 痛いのは当然だった。
 振り向いた先、千歳の口車に乗せられたちよみが軽く刀を刺していた。





「微妙に振り向いて貰えない気持ちは判るわ。さあ、ヤんでる世界にご招待♪」
 初音VSちよみ。どこぞの糸目な人でも思い出しているのだろうか。暗黒闘気を漏らしつつ、千歳はちよみをけしかる。
「うおおおお!? 何だ、敵はオレじゃなくて死人憑きだろ!」
「次郎丸をセクハラの道へ誘う変態はわたしが叩っ斬る!」
「オレが!?」
「ちよみちゃん頑張って♪ ギルドで初音さんがが次郎丸くんに変なコト吹き込んじゃってねぇ」
「何を言ってるんだお前はぁぁぁぁ!!!」
「デストローイ!」
 鬼のようなというか鬼そのもので刀を振り回すちよみ。夜叉とはこんなのを言うのか――初音は文字通り必殺の技を避けまくり千歳へ突撃する。そんな初音をすぱーんと軽く受け流して凄い剣幕で問われた。
「だって‥‥‥色々と気の利かない鈍感さんには、お仕置きが必要なんじゃないかなって思わない?」
「オレまで巻き込むなよ!」
「あの娘の気持ちは判るのよ。目がいってるのが他の女じゃないからまだ私はいいけど‥‥‥女としては、色々と凹むものがあるわよね‥‥‥」
「人の話は聞け!」
「戦闘後に二人を弄ってみようと思うの。雰囲気が変わるかも」
「姐さんに手を出すなこの変態!」
「うぉっ!?」
 刃が掠める。髪が数センチはらりと‥‥‥いかん、眼がイっている。
「お前もか! お前もそんなにきょぬーが好きか! どいつもこいつもおっぱいおっぱい言ってこの変態どもめー!」
 暗黒闘気が轟き唸る。
 もう本能レベルで理解した。
 口で言っても理解しないと。なら同じ危険なら度合いが低い方に行くべきだ。それに死人憑きの数は減っているしそもそもの目的は次郎丸とちよみの救援。建前的にも言っておく必要があるものだ。
 逃げ‥‥‥死人憑きへと向かいながら初音は叫ぶ。
「さっさと脱出しろよ! 死にたくない(オレが)ならな!」





「しかし何ゆえ次郎丸殿はあのような場所に向かったのだろうな」
 セピアと咲耶と共闘しつつ白蓮は呟いた。咲耶のオーラパワーによる付加効果によりアンデットへ強力な攻撃力を得た白蓮は、劣る戦闘能力を回避の技で補い、堅実に死人憑きを打ち倒していた。
 刀と小太刀を巧みに操る咲耶もまた、それは気になっていた。
「ちよみの話しからすると、魔物に誘われたらしいけど‥‥‥まさか囲まれて救出しないといけなかったのは驚いたわね」
 姿を発見したと思ったら数え切れない数の死人憑きの群れに囲まれていたのだ。
 しかも首領と思われる死霊侍にトドメを刺されそうになっていて、助けるのが後少し遅れていたら危なかった。
「源徳の侍と聞いてはいたけど、その亡霊か。義経公の家臣に加えられた今、大手を振って伊達侍からの依頼を受けるのもどうかと思ったけど、亡者と化していたなら仕方がない。武士として、きちっと引導を渡してやるのも情けかね」
「うむ。それは同感なのだが」
 聞こえる黄色い悲鳴と全身を舐めるような生暖かい視線。
「次郎丸殿の我々へ対する目付きが何とも言えぬのは気の所為で御座候か?」
 移動期間中、それはもう自然に手裏剣を投げようとしましたよ。
 死んだ方がマシな修行と評判の忍者の白蓮は、鍛え抜いた視力や聴力やら殺気というかアレな気配を感知をしまくったようですよ。
「ヒャッホォゥ! お胸さまが揺れまくってサイコウです!」
「次郎丸のばかーーー!!!」
 自分に都合が悪いことはスルーな女性専用スキルで聞き流し。
「しかし二人を見ていると伊達家家中は非常に賑やかそうだ。これを纏める政宗公は凄いな」
「ええ。賑やかな2人組だね」
 頷く咲耶。こんな家臣ばかりではなかろうに。
 他人事みたくのたまっている二人の前へ一陣の風が過去った。
「さてと、(オレが死にたくないから)始めるぜ!」
 今回が初依頼の、後衛に回っていた初音が刀を手に死人憑きへ突撃していく。その表情は必死だ。まるで何かに追われているようで‥‥‥その原因がやってきた。
「次郎丸を悪の道に誘う悪漢め! 斬り捨ててやる!」
 夜叉といい勝負のちよみ。そして、
「おねーさま方にいい所みせてキャッキャウフフする為に活躍してみせるよーう!」
 蛇女郎のいいターゲットになりそうな勢いの次郎丸。駆け抜けざま、もちろん咲耶と白蓮の胸元を見ましたよ。
 刀と槍。怨念が込められし刃に聖槍の穂先が火花を散らしている中に三人は突貫した。
 同時に死人憑きを相手にしていたこともあって、決定打を打てなかったセピアはこれが勝機とばかりに次郎丸を捕まえた。
 外見はともかく暦年齢では人生経験豊富な彼女は、次郎丸のような男をどう扱えばいいのか知っている。まあ胸やらお尻やらを見られ続ければ判るものであるが。
 腕を組んで、大魔王なおっぱい――大魔乳を揺らしながら、腕にあててむにゅっと潰れて――耳元へ甘ったるい声で囁いた。
「もし、活躍したら、ね‥‥‥?」
 囁くヒミツな呪文。
 思春期以下略な次郎丸には刺激が強すぎましたよ。
 何かが切れ、何かのスイッチが入る音がした。
「おっぱおーーー!!!」
 突撃する青少年。
 おぱおぱ叫びながら突っ込んで、どこぞの学生か。
 呪文を唱える。ピュアリファイが発動した。





 戦闘後、江戸へと帰還する為に治療と伊達の将校への報告用の証拠品を回収していた冒険者たちは各々行動を取っていた。
 逃げ回る初音に追うちよみ、ナニヤラ危険に暴走している次郎丸に、彼女たちに任せておけないと踏んだのだ。
 治療を終えたセピア。次郎丸は異様に爽やかスマイルでやって来ましたよ。
「セピアたん! 約束通りキャッキャウフフさせて下さい!」
 活躍したら○○○させてア・ゲ・ル(はぁと)と囁いたセピア。男はこういうのには命をかける。次郎丸は見事に必殺のチャンスを作り上げた。
 それなら約束通り、彼の後ろの夜叉の姿を確認して。
「ほら、おいで次郎丸君」
 両手を広げて遮るものは何もなし。大魔乳が誘ってございます。
 男なら! 漢なら! 突撃あるのみさ!
「セピアた〜〜〜ん!」
「人の気も知らないで、次郎丸のばかーーー!!!」
 轟き唸る必殺剣。ちよみの刀がぶちのめす。
「ふふっ。ヤキモチでぶちのめされる内に、ちよみさんの愛情に気付けばいいんだけどね」