メイド戦隊ホワイトプリム!

■ショートシナリオ&
コミックリプレイ


担当:橋本昂平

対応レベル:フリーlv

難易度:普通

成功報酬:0 G 78 C

参加人数:5人

サポート参加人数:1人

冒険期間:07月09日〜07月14日

リプレイ公開日:2008年07月27日

●オープニング

 江戸の街は広く大きい。
 現在、独眼流の名で知られる伊達政宗が治めるこの地は、戦後の事後処理で何かと忙しいがそれなりにかつての活気を取り戻していた。
 立ち寄る旅人や商人は、源徳時代とは勝手が違ったりそもそも伊達家に支配権が移った事も知らない者もいるがそれなりに日々を過ごしていた。
 人の縁はどこで繋がるか判らない。ある時通りすがった誰かが、ある時いがみ合った者同士が手を取り合う事もまた縁。
 人の世と縁はまさしく青天の霹靂。全く何が起こるか判ったものではない。



――遠い異国の地で、レミングの群れの進路上に町や村があろうと、遠い異国の海でバイキング達が暴れていようと、広い目で見れば案外世の中平和なものである――





 メイド喫茶柳亭。かつて閑古鳥が大合唱していたこの店は冒険者たちの手により大きく姿を変えた。
 和風の内装を洋風に、外観を変えるにはお金が足りなかったからその辺り適当に。だが変わったのは店だけではない。
 それは絵画に描かれ神話に姿を現す天使たち。
 それは地獄に住み魔と欲望に生きる悪魔たち。
 それは見るもの全てを和ませる妖精たち。
 その名はメイドさん。
 身体に安らぎを、俗世に穢れてしまった魂を浄化してくれる最高のヒーリング技能を最高の奉仕技に融合させた乙女である。
 基本黒一色のロングスカートのワンピース。純白のエプロンドレスは二心無しを知らしめる、忠義を示すドッグタグ。頭に添えられたホワイトプリムは主の感謝の気持ちを知らせるパロメーター。
 その名はメイドさん。世間の荒波に揉まれ、苦しみ、絶望する主たちを微笑みと共に癒し、明日への活力を与えくれる聖女たちへの称号である。
 メイド喫茶へのリニューアルにより柳亭は多くの客が足を運ぶようになった。
 それだけ身も心もすり減らしてる戦士たちが多いのだろう。街とは生活とは戦場と同義なのだから。
 メイドさんたちもただテンプレートのメイド技を披露しているだけじゃない。月ごとのイベントや出張メイド喫茶を出張ったりと癒しを求める戦士たちは多い。
 今回もそんなイベントを巡る一幕である。
「愛あるご奉仕は乙女の秘密! メイドローズ!」
「強い愛情は結びつき! メイドアジサイ!」
「あなただけを見つめています。メイドヒマワリ!」
「忍耐と心意気。あなたを信じています。メイドハナショウブ!」
「汚れなき清純の美、皆をひきつけるこの魅力! メイドスズランスイセン!」
 びしっと決めポーズ。
『メイド戦隊ホワイトプリム!』
 轟き唸る魔法力が大爆発。リハーサルは問題ない。
 かつて柳亭で行われた新人メイド教育イベント。その際雇われたとある冒険者の案により、メイドさんを戦隊化しないか? というアイディアが採用された。
 ジャパン伝統芸である五色の戦士たちが悪の組織に立ち向かうヒロイックストーリー。それにメイドさんがプラスされたらどれほどの破壊力を示すだろう。
 メイド仙人はこういった。メイドさんはどんな属性やシチューエションともハイブリットに融合する究極の萌えジョブだと。
 そう。メイドさんに不可能はないのだ。毎日有象無象のご主人さま群がセクハラ攻撃するほどに。
 そんでもってセクハラされまくっているメイドさん。外面菩薩内面夜叉という言葉があるように、楚々スマイルの反面、相当キていた。なので今度のイベント、メイド戦隊ショーの大義名分のもと編態どもに報復しようと企んでいる。
「リハーサル終了! 演劇は完璧ね、これで後は本番を待つだけだわ!」
「ええ、毎日毎日毎日セクハラの嵐。仕事だから笑顔で流しているけど実は相当ムカついてるって思い知らせてやるわ!」
「遠回しにたしなめても変に解釈するし調子に乗ってくるものね。少し痛い目にあってもらわないと」
 刀型メイド武器、メイドセイバーを振り回す。模造刀を改造したものを使用するのだが、やっぱり本物志向を目指すべきよね? のメイドさんの一声で彼女らが用意したものを採用することになったのだ。光具合といい刀身の鋭さといい、本物の刀にしか見えないのだが‥‥‥彼女等いわく刀的なものらしい。詳しく突っ込まない方がいい気がする。
「演技指導に冒険者も来るし、殺陣も教えて貰わないとね。それはもう、殺というだけに本気でタマとれるぐらいに!」
「変態どもに鉄槌を!」
 掲げるメイドセイバーの刀身が本物の刀のように煌いた。





 後日のメイド喫茶柳亭。休憩室で三人のメイドさんが打ち合わせをしていた。
 今回のメイド戦隊ショーで悪のご主人さま軍団、『アクゴシュジン』に襲われるメイドさん役の三人である。
「さて、どうにも死亡フラグ立ってる気がするのは気のせいかしら?」
 高い身長お胸さまを中心にステキなナイススタイル。ナイフのような鋭い眼つきは苛められたくなるような衝動を感じてしまう、アミタイツと鞭がひどく似合いそうなメイドさん、ラー・ミアだ。
「‥‥‥例によって例の如く‥‥‥貞操の危機がしますね‥‥‥」
「ていうかいつもこうだからそのあたりどうもかんじないなぁ」
 生気の感じない不健康そうな気もしないでもない、独特のトーンのメイドさんのセイ・スイ。労働法に引っかかりそうな幼女メイドの小夜叉。特に小夜叉聞き捨てならない台詞をのたまったが柳亭ではそれがデフォルトだ。
 だがそんなことはどうでもいい。現在とあるアクシデントでイベントの進行に危機が訪れつつある。
「だけどまあ、バイトの皆が食中毒で倒れるとはね。隊長管理なってないわ」
「‥‥‥それは人間だから‥‥‥」
「そうだね。なつといってもじょうおんでほうちしていたさしみ食べておなかこわすってやっぱりにんげんってひんじゃくだねぇ」
 練習の景気ずけといって差し入れされた刺身×たくさん。高級品だからって大喜びのそれは、練習が終った後食べようということになった。だけど通常業務に加えイベントの練習。自然、放置されそれを食べたメイドさんたちはこの三人を除く鬼のような速攻の勢いで腹を下したのだ。そして急遽冒険者にお鉢が回り――
「ふふふ。やはりにんげんなんてひんじゃくひんじゃくぅ! スペックてきにわたしたちまものの方がうえなのですよ!」
 声高らかに小夜叉。
 彼女が言うように、この三人は魔物だったりする。
 世界には多くの種族が存在する。それらは国を作り軍を作りそれぞれがそれぞれのやり方を生活を営んでいる。
 このジャパンとて今は群雄割拠の時代。そして魔物は人間側にとって悪の象徴。下手をしなくても攻撃の対象であり、土地の権力者や冒険者の手により棲家を追われ続けている。
 だが魔物にしても生きていかなければならない。
 それぞれの魔物は考えて考えて――少なくともこの三人は人間社会に生活の場を移し、頂くものを頂こうということになった。
 ラー・ミアは蛇女郎。セイ・スイは精吸い。小夜叉はお子様の夜叉。そのまんますぎると返って疑われないものである。もちろん人間に変装しているのだが。
「それにしても小夜叉ちゃん元気ね。いいことあったの?」
「どうほうにあったんです。しちやにいいエモノがいるからいっしょにどうってさそわれたんですけど」
 その日は仕事があったからと小夜叉。
「どうほうにまけてられません! セクハラしまくるぜんりょくをもってへんたいどもをせんめつぼくさつめっさつです!」
 何かずれている気がする。

●今回の参加者

 ea5979 大宗院 真莉(41歳・♀・志士・人間・ジャパン)
 ea8714 トマス・ウェスト(43歳・♂・僧侶・人間・イギリス王国)
 eb0084 柳 花蓮(19歳・♀・僧侶・エルフ・華仙教大国)
 eb4757 御陰 桜(28歳・♀・忍者・人間・ジャパン)
 eb5522 フィオナ・ファルケナーゲ(32歳・♀・バード・シフール・フランク王国)

●サポート参加者

ゴールド・ストーム(ea3785

●リプレイ本文

 メイド喫茶柳亭。ショーの練習ということで、敵役の男衆とそれを率いるドクターことトマス・ウェスト(ea8714)は他所に用意された舞台で目下練習中。
 いつもセクハラの嵐が耐えず、真っ当な客がほぼ訪れないと評判のこの店は、珍しくセクハラの声が聞こえない。
 というかこれが普通だ。メイドさんたちは勤務以来初めての平穏な日々を過ごしていた。
 舞台の下見から帰ってきた大宗院真莉(ea5979)は外出用メイド服から業務用メイド服に着替えてホールに出た。
「少々様子を見て参りましたが、あの様な場所で寸劇とは変わっていますね」
 消耗品の補充をしようとトレイに抱え移動中。妖気を発しながら柳花蓮(eb0084)がラー・ミアたち襲われるメイド役に三人組に指導しているのを見かけた。
「戦隊物‥‥‥それは戦うヒロイン‥‥‥。敵味方を問答無用で魅了する存在に貴女たちはならなければならないのです‥‥‥」
 自分の発案のメイド戦隊。それが好評を得てまさかのイベント化だ。花蓮の気合も入るものでいつも以上に妖気を漂わせている。
 大気が歪み花がしおれ、ラー・ミアたち特殊な人種の皆さんにはとても見慣れている、異形っぽいナニカが花蓮の周りをうごめいているのだけど。蟹座の人の技で勢いよく燃えそうだ。
 暗黒メイドさまは仰った。
「ククク‥‥‥。興行が成功なら例えご主人様に死に‥‥‥怪我人の一人二人出ても許されます‥‥‥。精一杯頑張りましょう‥‥‥」
 頷く周囲の魑魅魍魎。
「しかしあねさん! わたしたちもへんしんするのはいいとして、そちらのえんぎはじしんありません!」
「というか年齢的に恥かしいわね」
 元気よく挙手する小夜叉と渡された新しい台本を読むラー・ミア。それには彼女たち三人がメイド戦士に変身して冒険者たちと共闘する様が書かれていた。
「無問題です皆さん‥‥‥。最初と最後が綺麗で‥‥‥メイドの笑顔があれば途中何があろうとOKですククク‥‥‥」
 カスタムタイプの巫女装束型メイド服にネコミミとホワイトプリム。個人的には巫女さん属性には狐耳は鉄板だけどだからこそ萌えるのだがこれもいい。というか妖気を漂わせ魑魅魍魎の皆さん侍らせてどこかの化け猫王女にしか見えないのだが。
 だがそんなことはどうでもいい。
 衣装が完成しましたよ、と通りがかった真莉に衣装用メイド服を渡した。
「さ、さすがにこれは恥ずかしいですのですが‥‥‥」
 胸の上部分を大きく切り取って、胴周りはカットされたヘソだし仕様。そしてスカートも限界ギリギリで短いというかスカートの意味を成してない。
 結構危険な仕様だった。
「ククク‥‥‥。何を言うかと思えば‥‥‥これでもまだまだ布が多い方ですよ‥‥‥」
 これは桜さんのですが、と却下された衣装を取り出した。
「これに比べればそれはまだ服の体裁は保ってますが‥‥‥」
「‥‥‥ええ。わたくしが間違ってました。そもそもこれは服、ですか?」
 メイド服的な布を摘まんでしげしげ覗く。『ピンクだからサービス担当ね(はぁと)』なんて御陰桜(eb4757)はのたまってたがこれはもう犯罪だ。急遽再デザインされたものを強制支給したが、それでもかなりギリギリの極みなのだ。
 ある意味夜がもの凄く燃えそうな危険物をガン見する人妻の真莉奥様。そんな彼女をフィオナ・ファルケナーゲ(eb5522)が現実に引き戻した。
「シナリオのことで相談なんだけど、メイド戦隊が苦戦する最中、新たなメイド戦士が覚醒するっていう筋書き。どう、おもしろいでしょ?」
「ラー・ミアさんたちを‥‥‥ですか?」
「ええ。私はメイド戦隊の司令官役で、昔は歴戦のメイド戦士だったけど力の大半を封じられ今の姿になっている、という設定なんてどうかしら」
「そうですね‥‥‥ククク‥‥‥よろしいでしょう‥‥‥」
 ククク笑いが似合いすぎている。
 にやりとほくそえむ花蓮。ククク笑いといい悪事でも考えてるのかこの暗黒メイドさまは。
 そしてそのほぼ同時期。桜のサポートにやってきたゴールド・ストームは激しく後悔していた。





「メイドとキャッキャウフフしたいかね〜!」
『セクハラー!』
「けひゃひゃひゃ。今回は諸君がメイドにセクハラをするのが正式に認められた日。ショーの成功には皆の協力が必要なのだよ〜。だから優秀であった上位5名に、メイドの本場『イギリス』への転移護符をプレゼントだ〜!」」
『セクハラー!』
「キャメロットに行きたいか〜!!」
『オ――!!!!』
 天を貫く咆哮一つになるこの魂。
 それぞれが抱える性癖‥‥‥趣向のもと、メイドさんにセクハラの嵐を繰り返す彼らは基本、自分の思うままにセクハラを仕掛ける。いくらセクハラ同士とはいえフェチズムが違う以上共闘はしない。
 だが、今回。合法にセクハラが許された(本人たちはそう思っている)イベント。より素早くより正確によりセクハラ堪能するため彼らは共闘を決意した。
 男が本気を出す原始的条件。
 それはセクハラ。性的な意味でキャッキャウフフすることさ!
 日々手強くなってきている(セクハラに対抗するため護身術を習得している)メイドさんたちに対し、このままじゃ好きにセクハラできないと踏んだ彼らは今回共闘に踏み入った。
 何故ならだって? そこにメイドさんがいるからさ。
 そんな立場が違えば自分も激しく仲間になったであろう空間に、ゴールドは半ば本気で帰ろっかなーと思っていた。
「めんどくせぇから舞台裏や変身の手伝いしかやらんと言ったんだがな。怪人役をやれってか」
「けひゃひゃひゃ。人手が足らんのだよ。我慢したまえ〜」
 白スーツに髑髏杖。十字架のネックレスをかけ襟の高い表黒裏赤のマントという当日のコスに袖を通したドクター――ショーではプロフェッサー・ウェストらしい――がなだめる。普段の言動からしてちょっとというかかなりアレだが今回の衣装ではそれがとても似合っている。
「女性陣に公然とセクハラできるではないか〜。役得ではないのかね〜」
「ああ? 俺は色気のある同族の女にしか興味はねぇよ」
 とがる長耳。彼はエルフなのだ。
「けひゃひゃひゃ。それは心配ないのだよ〜。女性には花蓮君がいるではないか〜」
「‥‥‥‥‥‥」
 ちょっと考えてみる。
 柳花蓮。銀髪白肌青眼のなかなか可愛らしい女の子(見た目は)だ。身長は外見に似合う程度で、細身の身体からは失礼だが色気にはまだ遠い。
 だが彼女から放たれる独特のオーラ(妖気)にメイド服。将来が楽しみな感じはする。
 暦年齢は人間で換算するとタイヘンなことになるのだが、エルフにはその辺り関係ない。
「まあ、少しは真面目にやってみるかな?」
 男とはとても素直な生き物だ。





「メイドさん大好きだぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
 当日のショーの公演中。しょっぱなから変態の皆さんはトップギアに入っていた。
 桜の『劇の流れだけど小夜叉ちゃん達がアクゴシュジンにセクハラされてるトコロを助けるのよね?』ということでそのセクハラをされている最中。ドクターに危険を感じたら使えと渡された即効性粉末強力痺れ薬は全く意味を成していなかった。
「この程度の痺れ薬など無駄無駄ァ! 我らのセクハラ魂を止められるものかぁ!」
「一にセクハラ二にセクハラ、三四がなくて五にセクハラ! メイド服の薄布一枚に覆われたおっぱいに顔を埋めさせてぐりぐりさせてクダサイ! ふんふん匂いを嗅ぐのも大好きです!」
「セクハラに乗じてあんなことこんなこともしてくれる! いや、いっそ○○○とか△△△とか×××とか! ご主人さまの命令は絶対なのです! 俺を大人にして下さい!」
「ばっきゃろう! メイドさんは性的な存在ではない、聖的な存在だ!」
「何を言ってやがる! メイドさんはサーヴァントで奉仕者。つまりそういうことだろうが!」
「黙れ童貞! そんなことばかり言うからオレたち妄想戦士の風当たりが悪いんだ。何か事件あれば叩かれるし! 節度ある妄想を!」
「うっせぇクソ虫! メイドさんにイヌミミと首輪付けてわんわん♪ なんて言わせたい変態に言われる筋合いはない!」
「イヌミミに首輪はデフォルトだろうが! イヌミミメイドがくぅんくぅんと擦り寄ってきたり! ご主人さま(飼い主に)構って欲しくてだけどメイドさんだから甘えるのも我慢して、だけど本当は甘えたくて! そんなわん娘なメイドさんに俺は人生を捧げても後悔はしない。いや、むしろ俺が甘えるんだぁぁぁぁ!!!」
「メイドにはネコミミだろうがー!」
「‥‥‥シャドゥボム‥‥‥」
「ぐっはぁ!」
 轟く月の精霊魔法。いつもの光景だが収拾がつかなくなってセイ・スイは変態どもの足元を吹っ飛ばした。
「いつものことと言えばいつものことだけど、今回は余計にタチが悪くなってないかしら」
「‥‥‥彼らにしてみれば‥‥‥セクハラが公式に認められたようなものですしね‥‥‥。普段からとどまることを知らないのにどうしろと‥‥‥」
 既に台本が台本の役目を果してない。しかめっ面をしている小夜叉にラー・ミアはどうしたのと尋ねた。
「んと、へんたいのいっていた、○○○とか△△△とか×××ってなにかなーって」
「‥‥‥小夜叉ちゃんはまだ知らなくていいわ」
 幼女が知るような単語じゃない。
 常人なら爆殺必至の精霊魔法。だがありとあらゆる全てのリミッターがはずれ、人として『その先』への扉を開いた変態衆。
 セクハラと妄想は男に新たな力を与える。
 そう、セクハラに特化し進化した変態にこの程度の爆発など効果はない!
「ククク。なるほど。セイ・スイたんはヤンデレ属性と思っていたがツンデレか。イメージと違うがそれもよし!」
「ツンの次はデレだ! 色んなフラグを立てるべきだけどその辺すっとばしてさあカモン!」
「はぁはぁ。本当は嫌だけどどうしてもって言うから首輪付けてあげるんだからねって。大好きな俺のためにはあんなこともこんなこともしてあげたいのは知ってるんだよ? 照れ屋さんだなぁはぁはぁ」
 爆発の直撃をくらったのに全くの無傷。まるで何らかの力で守られているようで‥‥‥変態どもの脳内ではキャッキャウフフなメイドさんがあれこれしているらしい。
 魔物という魔的な存在上彼女らはそういう波長に敏感なのだろうか。
 メイドさん三人思いっきり引いている。
 魔物とはいえ女性だ。直接の単語で言われなくてもそんな気配――変態のは物理現象に干渉できそうな勢いだが――を察すれば引きはする。
 という訳で、
「やるぞーーー!!!」
 轟き唸る暗黒闘気。何をやる気だこの変態。
 だが、
「そこまでです!」
 舞台の天上から花蓮の声が響いた。





「欲望に負け‥‥‥メイドさんにセクハラするご主人さまをメイド神が許しても私たちは許しません‥‥‥奉仕の技を持って正しい道に戻してさしあげましょう‥‥‥」
 とうっと仮面のヒーローみたく跳躍する花蓮。
 しかしだ。変態連中にとってセクハラする相手が増えただけだ。
「花蓮たんキター!」
「巫女さんでネコミミメイドだよ! 俺という炬燵でごろごろして下さい!」
「けものみみだけでポイント高いのに奉仕者たる最高峰、巫女スキルまで苦もなく併せ持つなんて‥‥‥恐ろしい子! きっとそれで他のメイドさんから苛められてるんだね? だけど大丈夫。俺の胸に飛び込んでごらん!」
「‥‥‥ブラックホーリー‥‥‥」
「ぐっはぁ!」
 吹っ飛ぶ変態衆。ネコミミ巫女メイドだけでここまで妄想できるのはある意味凄い。
 しょっぱなから脱線しているが、アクゴシュジンの幹部と怪人が現れた。
「けひゃひゃひゃ。そこまでだね〜」
「すかぁ〜とめくり〜」
「‥‥‥‥‥‥」
 呆れるというか何やってるんだコイツで見つめる桜。ゴールドを見る眼がむちゃくちゃ冷たい。
「あんた何やってるの?」
「ぶっきらぼうですが真面目な方と思ってたのですが」
「だ、黙れ! 今の俺はアクゴシュジンの怪人、メクリスカートだ!」
「――はっ」
 虫けらを見るような女性陣。真莉なんて表情がなくてむちゃくちゃ怖い。
「何とでも言え! ショーの成功のために尽力してるにすぎん! 行くぞお前ら! セクハラー!」
「セクハラー!」
 突っ込む変態群。
 過程は凄く違ってしまったが、ラー・ミアはちょぴり頬を染めて叫んだ。
「皆、変身よ!」
 変身用ホワイトプリムを掲げる六人のメイド戦士たち。動きをあわせて声高らかに、
「チェンジプリムセット! レッツ・サーヴァント!」
 瞬間六人は光に包まれる。
 それぞれを象徴する光は帯となり、身体、腕、脚、最後は頭上のプリムへと専用メイド服へと姿を変える。
 色々突っ込む所はあるのだが、そこはスルーするのがお約束だ!
 ラー・ミア、セイ・スイ、小夜叉、真莉、花蓮、桜の順番に名乗りを上げる。
「愛あるご奉仕は乙女の秘密! メイドローズ!」
「強い愛情は結びつき! メイドアジサイ!」
「あなただけを見つめています。メイドヒマワリ!」
「煌き潜む厳粛の美。メイドオーキッド!」
「呪いと恋は紙一重。メイドクロユリ」
「優美、純潔。精神すらも光輝くこの美貌。メイドサクラ」
「主を正しき道へと導く奉仕の戦士たち!」
 響くローズの文句。
『メイド戦隊ホワイトプリム!』
 爆発が彼女たちの背後で巻き起こる。
「行け変態どもぉ〜!」
「セクハラー!」
「メイドセイバー!」
 メイド戦士たちはメイドウエポンを掲げ迎え撃つ。
「白き蘭の如く、吹き荒れなさい」
 オーキッドの周囲の水分が凍結する。
「メイドブリザード!」
 アイスブリザードが炸裂する。
「メイドイリュージョン、ネコメイド!」
 サクラ得意の部分変身。ネコの力を纏い、肉球パンチが轟き唸る。
 見た目は可愛いのにだ。爪は鉄製、普通に血飛沫っている。
「まだまだよ。メイドイリュージョン! クマメイド!」
 魅惑の関節技で砕き壊す。
「そんな萌えに吊られないクマー!」
 しかしだ! サクラは存在そのものが犯罪のナイスバディ! 本能が身体を突っ込ませるのですよ!
 響く破砕音。
「ぎゃぁぁぁぁ!」
「けひゃひゃひゃ。まだまだ変態はいるのだねぇ〜」
「――力尽きるまで千のメイドにご奉仕されなさい」
 聞こえる声と魔法。
「けひゃ?」
「月と幻想の妖精。メイドルナティック」
 発動するコンヒュージョン。変身したフィオナのメイド技が変態たちを翻弄する。
「トム‥‥‥いえ、ウェスト。こんな形で再会するとは思わなかったわ」
「けひゃひゃひゃ。誰かと思えば君か〜。どうしても我が輩たちの邪魔をするのかね〜」
「当然よ。メイドさんのご奉仕は決して強制されるものじゃない、心の内から自発的に湧き出てくるものなのよ!」
「けひゃー! それなら正しい奉仕の姿を見せるがいい〜!」
「皆、メイドライトニングボムよ!」
 メイド奥義。サクラはミラクルフォームへと姿を変える。
『メイドライトニングボム!』
 メイドさんの戦いは終わらない!

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