総員突撃せよ

■ショートシナリオ


担当:橋本昂平

対応レベル:フリーlv

難易度:やや難

成功報酬:0 G 78 C

参加人数:7人

サポート参加人数:-人

冒険期間:07月21日〜07月26日

リプレイ公開日:2008年08月09日

●オープニング

 江戸の街は広く大きい。
 現在、独眼流の名で知られる伊達政宗が治めるこの地は、戦後の事後処理で何かと忙しいがそれなりにかつての活気を取り戻していた。
 立ち寄る旅人や商人は、源徳時代とは勝手が違ったりそもそも伊達家に支配権が移った事も知らない者もいるがそれなりに日々を過ごしていた。
 人の縁はどこで繋がるか判らない。ある時通りすがった誰かが、ある時いがみ合った者同士が手を取り合う事もまた縁。
 人の世と縁はまさしく青天の霹靂。全く何が起こるか判ったものではない。



――遠い異国の地で、レミングの群れの進路上に町や村があろうと、遠い異国の海でバイキング達が暴れていようと、広い目で見れば案外世の中平和なものである――






 七夕にちなんだイベントが終り、某所の祭りで青空メイド喫茶を開いていた柳亭。
 その最終日を追えメイドさんたちが更衣室で着替えている中、それは起こった。
 更衣室を見下ろせる小高い丘――
「諸君! 目標は目の前だ。突撃の準備は良いか!?」
 職業年齢問わず有象無象の男衆。刀やら包丁やら抱えて息荒く、今にも戦場に突っ込みそうな勢いだ。いや、どちらかというと打ち壊しか。
 まあともかくそんな勢いの、危険集団の一人が一歩進み出た。
「発起人! 質問であります!」
「何だ同志よ!」
「今から女子更衣室に突撃して着替え姿をたっぷりねっとりぬっとりと堪能するのは判りますが、武器は持っていくのはどうかと思います! つーか討ち入りでもする気ですか!?」
「討ち入りだ!」
 発起人は言い切った。
「昨夜、枕元に到萌先生が立たれた。今宵、メイドさんの生着替えを覗きに行けと!」
「と、到萌先生がですか!?」
 妄想を糧とし妄想を力とし、妄想戦士の頂点に立つ伝説の存在、到萌不敗。妄想界の頂点に立ち、次代の妄想戦士を導く彼の者は、妄想戦士にとって神であり畏敬の存在である。
「あの偉大なる到萌先生が仰ったのだ。オレにも幾つか疑問があるが、これにはきっと訳があるに違いない」
「で、ですが武器は持つのはどうかと思います!」
「何を言う! どこからか情報が漏れたか知らないが、手伝いに来ていた冒険者が更衣室の護衛に着いたり近くにトラップを張ったりもしていると斥候から聞いている! こちらも対冒険者用に冒険者を雇ったが‥‥‥こんな軽装では心ともないわ! いっそ完全武装で部隊全て引き連れるべきだ!」
 叫ぶ伊達家のお侍さん。部隊任されているぐらいの人だがこんなのでいいのか伊達侍。
 お侍さんは仰った。
「それにだ! 昔の偉い人はこう言った。全ての犯‥‥‥行動は愛ゆえにだと!」
「そ――それは!」
「隠さなくてもいいんだぞ! お前は普段から女風呂覗いてたり下着ドロを繰り返していると。今更自分に嘘を付くきか!?」
「し、しかし、発起人!」
「そこのお前は夜道歩いている女の子の前に飛び出して自分の着物をがばっと開いたり! お前は女の子になぞなぞを出して淫語を無理矢理言わせようとしていたり! 全ては女の子を愛するがゆえの行動だろうが!」
 ただの犯罪だ。
「だが目的は履き違えるなよ。オレたちの目的はあくまで覗き。メイドさんに手を出して心に消えない深い傷を残すなど言語道断! 勢いあまって部屋に突入する程度なら認めるが‥‥‥復唱しろ同志諸君! 愛ゆえにセクハラを!」
「愛ゆえにセクハラを!」
「立ちはだかるものには死の鉄槌を!」
「立ちはだかるものには死の鉄槌を!」
「到萌先生に栄光あれ!」
「到萌先生に栄光あれ!」
 天を貫く鬨の声。
 目指すは半裸かマッパかもしくはまだ着衣状態でそれはそれで――まあともかく、そんな女の子たちのエルドラド。
 女子更衣室の隣、薄壁一枚隔ててイベントで活動していた、女性には興味のない真実の愛に生きるダンディでマッシブ男衆の更衣室があることも知らずに。
 そして変態どもは命をかける。
 女体という世界の至宝を拝むために。
 男たちの魂は一つになる。
 後にも先にも男が本気になる理由はただ一つ、女の子のため。
 そう、そこに女体があるからさ!
「総員突撃ーーー!!!」
『ウォォォォォォーーーーーーーー!!!!!』
 大気を震わす超音波。それはまさに合戦。
 距離的から全ての会話を聞いていた女子更衣室の女の子たちは震えてたり怒ってたりと様々で、近くの通行人は慌てて役所に走っていったり、変態どもの暗黒闘気にあてられて、女子更衣室を覗こうとするものもいたりと‥‥‥とにもかくにも魔が現れるというかこいつらが魔じゃないかと疑いたくなる夕暮れ時。覗きをかけた聖戦始まる。

●今回の参加者

 ea0443 瀬戸 喪(26歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea7767 虎魔 慶牙(30歳・♂・ナイト・人間・ジャパン)
 ea9191 ステラ・シアフィールド(27歳・♀・ウィザード・ハーフエルフ・フランク王国)
 eb5522 フィオナ・ファルケナーゲ(32歳・♀・バード・シフール・フランク王国)
 eb8856 桜乃屋 周(25歳・♀・志士・人間・ジャパン)
 ec3527 日下部 明穂(32歳・♀・陰陽師・人間・ジャパン)
 ec5127 マルキア・セラン(22歳・♀・ファイター・ハーフエルフ・ビザンチン帝国)

●リプレイ本文

 虎魔慶牙(ea7767)という冒険者がいる。武の技は達人を超え、ある種の極みに辿り着こうとするほどの超越者であり、人ならざる領域に到達しようとするジャパン最強のナイトである。
 孤高の銀狼を思わせる乱れた銀髪。犯罪者そのものなぎらついた三白眼。鋼と化した筋肉は鎧を必要としないほど鍛えぬかれ、刀を振るう際は大地を割り、刀を向けられた際は鉄壁の防壁とならんとばかりにビルドアップされている。
 ジャパンの侍は骨格が変わるほど鍛えていると言うように、慶牙のそれは人間という枠から外れているかのようだ。
 夜闇のように黒く輝き魔を切り裂く長大超重の魔刀、斬魔刀を右腕一本で軽々と振り回す姿は、二つ名の通り正に『無双』の名に相応しいだろう。
 戦場において味方となればこれほど心強いものないだろうが敵に回れば脅威以外の何ものでもない‥‥‥虎魔慶牙とはそういう男である。
 しかしだ。今回の依頼において彼はカモメの被り物で顔を隠し変態側の主力として馳せ参じようとしていた。
 まあいい歳した男が二人の幼女をペットと呼んでいる時点で――エレメンタルフェアリーなので間違ってないが――変態のカテゴリ以外あてはまらないのが世間一般的な認識だろう。
 英雄色を好むと言うように、慶牙も男という訳である。




「吹き荒れろ暴風! ストーム!」
 仕掛けていた数々のトラップを突破し、バリケードも踏み越えられて、最終防衛ラインに立ちはだかる美青年。執事服に引っ掛けた隼のマントが魔風によりはためく。
 魔剣シャスティフォルを左手に、桜乃屋周(eb8856)はストームの魔法を発動させた。
 常人ならば一撃必殺の超暴風。嵐の名の如く、迫り来る有象無象の変態たちを螺旋状に巻き上げるだろう。
 だが、萌えに生き萌えに魂を捧げ、冥府魔道を突き進む妄想戦士たち。
「ふぉぉぉぉ!!! こんなもので俺たちを止められるものかぁぁぁぁ!!!」
 仕掛けられていた無数のトラップを潜り抜け、ついに目と鼻の先の距離にまでやってきた。
 女子更衣室。
 それは全て遠き理想郷。世界中の富と権力を持ってしても自由に出来ない桃源郷であり足を踏み入れることあたわぬ聖域。
 種類によっては薄板のみで出来たあばら家でもあるだろう。
 だが、それでも、男であるという一点だけで入れない。
 金科玉条たる女性の肢体。それを覆う鉄壁の衣類を脱ぐ絶対領域。すなわち、女性が唯一無防備になる場所である。
 男はそこに入ることも近づくことすらも許されない。だがそれでも入りたい。パンドラの箱の最後に残った希望を見たいと願うのは男として魂に刻まれた本能だ。
 歴代の勇者たちは聖域に挑もうと今まで苦渋を舐めてきた。何故無駄だと判っているのに挑むのか? そこに女子更衣室があるからさ。そして付け入る隙は大いにある。
 すなわち覗き。玉のように傷がないと言われる壁でも、ほんの一筋の傷を付ければそこから瓦解が始まるのだ。
 変態――否、勇者たちは虫の子一匹逃さぬほどのトラップを潜り抜けた。そして辿り着いた最終防衛ライン。ここを突破すればもう神秘が待ち受けているだけなのだ。
 そう、ただ女子更衣室へ突撃あるのみ!
「聖域まで後少し! ここが踏ん張り所だぁっ! 到萌先生、我らに力をぉぉぉぉ!!!」
「我らに力をぉぉぉぉ!!!」
 暴風の中、ハミングするバリトンボイス。そんな彼らを頭痛そうに、ステラ・シアフィールド(ea9191)は眺めた。
「‥‥‥特定の女性の装束になぜここまで執着する、分からなくはないのですけど、此処までになると
常軌を逸してますね」
「依頼では愛ゆえの討ち入りを阻む冒険者を排除して欲しいとのことだったけど‥‥‥依頼者さんたちの目の色を見て早々に気付くべきだったわね」
 ため息まじりに相槌を打つ日下部明穂(ec3527)。明穂とステラは、やりすぎている感はあったが愛ゆえに討ち入ろうとする彼らに共感を得て力になろうと思ったのだ。
 まあ、メイドさんに対する愛、というのは間違ってはないのだが‥‥‥
「今更、やりませんとも言えなかったし手伝ってはいるけど、余計な知恵は授けない方が良かったかしら?」
 いざ突撃中、とりあえず依頼料分の仕事をする、という訳で明穂とステラは勇者たちに幾つかアドバイスした。何より同じ女として着替えを覗かせる訳にもいかない。
『兵は拙速を尊ぶという言葉もあるし、ここは数を活かして怯まず突撃するのがいいんじゃないかしら』
 と言おうとしたが既に突撃の最中だしあんまり効果はなさそうだ。メイド喫茶で散々変態たちから妄想されているし突撃されそうになった経験から、『その類の魅力』はあるのだろうと多少は自覚しているし、何よりどういう仕草をすれば暴走するかよく知っている。
 そういう訳で、魔的にビッグなお胸さまを揺らしてかなり躊躇いつつも明穂たんは仰った。
『結果を出す為にひたむきな男性って魅力的に感じるわ。一番槍って戦の花形と思うの‥‥‥そういう人になら、私を好きにして欲しいかも(はぁと)』
 脳内でお胸さまのプレイの数々を連想する勇者たち。
『おっしゃぁぁぁぁぁ!!!』
 天を貫く大咆声。
 この時点で既に目的が摩り替わっているのだが、この瞬間、己の目標のみを達成しようとだけ考えた勇者たちはもの凄く団結した。
 結果、女子更衣室の前まで辿り着いた。
「明穂たんに○○○とか×××とか△△△とかして貰うんだぁぁぁぁ!!!」
 基本、男の原動力はこういうものである。
 煩悩の前に男はあらゆる限界と困難を突破する。
「早まったかしら‥‥‥?」
 激しく身の危険を感じる乳巫女さまであった。





「きゃーっ、覗きよ〜♪」
 大慌ての女子更衣室。周が変態たちを食い止めている内にと着替えまくっている最中に、フィオナ・ファルケナーゲ(eb5522)は妙に楽しげに叫んだ。
 この羽っ娘、男の多い殺伐な環境で育ったせいかこの手の騒動に関してあまり抵抗がない。むしろ楽しんでいる節もある。
「はいは〜い♪ ちょっとだけよ〜、あなたも好きねぇ」
 窓から覗いてウィンクを飛ばす。周がかなりタイヘンなことになっているがどうでもいい。
 はわわわと慌てふためくマルキア・セラン(ec5127)、脱ぎかけていたメイド服を着たり脱いだりとかなり動転していた。
「変態さんがもうすぐそこまで来てますし‥‥‥着替えるかそれともメイド服着なおした方がいいでしょうか!?」
「ん? 別にどっちでもいいんじゃない?」
 フィオナと違ってこっちは普通の乙女のマルキア嬢。他のメイドさんたちと同じく大慌てだ。
「ううっ。準備が出来たら変態さん迎撃ですっ‥‥‥目が血走ってて怖いですよぉ。それに何だかハアハア言ってますしぃ〜!」
 涙眼というか泣いているマルキア嬢。彼女は他の冒険者と違って修羅場と呼べるような経験は少ない――というか女的な危機を迎えれば誰でも腰が引けるだろうが、どうにも腹をくくれてないらしい。
「こうなったら悪即砕で変態さん退治ですっ! 祖国の格闘技パンクラチオンの技の冴え、見せて差し上げます!」
 両手全指ゴキゴキ鳴らせるハーフエルフ。徒手空拳の技が得意のようだが、いくらフリフリなメイド服でも触手のように指を蠢させるのは微妙にキモイ。
 テレパシーの魔法で隣の紳士(?)へ諸事情を伝えているフィオナは、連携し周を翻弄する変態たちの姿を見て軽く口笛を吹いた。
 彼――と思っている――は知る人ぞ知るつわものなのだ。
 それなら覗かれるのを利用して、他のメイドさんたちをセクハラしたりセクハラしたりセクハラしたりで存分に楽しませてもらおうと思って――ソニックブームが炸裂した。





「更衣室では未だに着替えは手間取っているようです。妨害はあの青年一人のみです」
「ならこのまま畳み掛けた方がいいわね。楔形陣形で突撃」
 バイブレーションセンサーの魔法でメイド側の同行を確認、ステラの報告を聞きながら明穂は指示を出した。彼女は教養が深い。兵法の知識にはうといものの、真似事程度は出来る。
「いつも通り最後は柳亭側冒険者に返り討ちにされるとは思うけれど、どうせならあちら側と連携とれたら周囲にも迷惑がかからなかったかもしれないわね」
 同じ女として覗きを加勢するのはごめんこうむりたい。いつものパターンで収拾が付くだろうからと、勇者たちを指揮するが、迎え撃つ方はたまったものではない。
 一本の槍の如く、怒涛に迫る変態の波に周は完全に呑まれていた。
「ふはははは! 俺たちの大義を邪魔するからこうなる。覗きを邪魔するなど同じ男の風上におけん!」
「ケダモノだ! 男ならケダモノになるのだ!」
「男としてキサマも共に覗くのだぁ!」
 魔剣を手に満身創痍。ここが正念場、と周はは叫ぶ。というか貞操の危機が全開だ。
「ええい。どいつもこいつも男々と‥‥‥そう見えるのはしょうがないが私は女だ!」
 大柄でも小柄でもない標準的な体型。短く切り揃えられた黒い髪。碧色の瞳は覇気に満ち、魔剣を、マントを履く姿は威風堂々。志士の鑑を体現しているかのようなその姿は、まさに物語に登場する主人公である。当然男の。
 だが‥‥‥平素では判らないままだったが、激戦を繰り返した後、彼女が纏っていた戦闘仕様の執事服は所々破れほつれていた。
 女と聞いたその瞬間、光る有象無象の瞳群。凝視するは胸部。
 舐めるような視線とはこれを言うのだろう×有象無象。
 色々厚着しまくったり服の色彩や距離的な問題から彼らは僅かな丘具合しか確認できなかった。
「確かに女だ! 限りなくまな板だが!」
「ああまな板だ。つるぺただ!」
「それもそれでよし! きっと、『どうすれば大きくなるのかな‥‥‥』とか悩んでるに違いない! まな板だからつめものを入れて健気に見栄を張ろうとしたり!」
「そんなキミにストライクだよまな板娘さん!」
「やっかましい!」
 唸る魔剣轟く剣風。猛る勇者を唐竹割る。
「イギリスで騎士道精神を学んだ身としては女性に害なすモノは排除したい‥‥‥と思っていたがお前たち全員叩き斬る!」
 実際に貧相かどうか知らないがこうも面罵される謂れはない。というかセクハラされて泣き寝入りするほど周は気弱ではない。
 だが勇者たちは全く聞いてない。
 次の発言は周に驚愕をもたらすものだった。
「よし、今からあの娘に襲うぞ!」
「ちょっと待て。心に深い傷を残さないんじゃなかったのか?」
「発起人の言葉を思い出せ。――メイドさんに手を出したらいけないんだろう?」
「――はっ!」
「相手は執事で、男と偽っている。男同士なら何しようと問題ない。つまり、服を切り刻もうが脱がそうがマッパにしようと何一つ構わないんだよ!」


 服は切り刻まれ両の腕で必死に隠してへたり込み、怒りと羞恥で真っ赤になり怯えながらも、きっと睨みつける姿をご想像下さい。


「という訳で、やるぞー!」
「オォォォォォォーーーーー!!!」
 咆哮が天を貫き暗黒闘気が轟き唸る。
 周は直感した。
 ――殺らなければ、ヤられる!
 女子更衣室で窺っていたマルキアは後にこう語る。『すごいですっ! たった一人であの軍団に立ち向かうなんて、まるで英雄譚のようですっ!』
 基本的にその手の物語は主人公が死んだり悲劇的な結末を迎えることが多いのだがそうはいかなかった。
 瀬戸喪(ea0443)のソニックブームが勇者の軍勢をなぎ払った。





「うわっ。何ですかこの地獄絵図!」
 着替えが終りその他のメイドさんに段取りを伝えたマルキアとフィオナ。赤毛のメイドさんは目の前の惨状に思いっきり瞳を見開いた。
 ちょっとモザイクが必要な死屍累々。軽く死臭が漂うよっているような気がしないでもない。
 執事服が切り刻まれ、両の腕で隠し女の子座りしている周に、まるで女の人みたいだな、と思い強烈な殺気を放つ喪に気付いた。
 眼が据わっている。
「ウフ‥‥‥ウフフフフ‥‥‥。女性の着替えとかそんなことはどうでもいいんですよ」
 返り血に染まった全身と鞭。どう見ても虫の息とか致命傷の群れを前に、まるでモノを見るように視線が冷えている。
「ただ僕の着替えの邪魔をしたということが赦せないんです。変態達は無駄に丈夫でしょうし遠慮せずいきます。これでもかというほど責め抜いて鳴かせてあげましょう‥‥‥!」
 更に追い討つ喪。さすがに見てられないということで、マルキアが止めに入ったのだが‥‥‥
「はぁぁぁぁん!!! メイドさぁぁぁぁん!!!」
 ぎらつく瞳飛びつく変態。
 メイドさんを見るやいなやコメツキバッタのように大跳躍。さっきまでの重傷は? メイドさんを見て直りましたよ。
「心配してくれるんだねメイドさん。つまり俺が大好きと!」
「いや好きなのはこの俺だ! だってメイドさんの愛で復活したから!」
「愛し合っているならば大人の階段‥‥‥」
「いぃぃぃやぁぁぁぁ!!!」
 背後に回り、投げっぱなしジャーマン。
 マルキアも思った。殺らなければ、ヤられる!
「ひ、ひっさぁ〜つ!」
 スープレックスを仕掛けてテイクダウン。グラウンド展開に持ち込んで必殺技が炸裂した。変態にとっては回復とステータス強化のようなものでしかないのだけど!

 説明しよう! 彼女の使う袈裟固めはアレンジが加えられたオリジナル技。具体的には袈裟固めを仕掛けながら、(当人は無意識に)その良く発達した胸部で相手の顔面を圧迫して呼吸を阻害すると言う、特定の層に対しては絶大な威力を発揮する、正に「必殺」技である!

「降参するなら、してくださぁい!」
「ハァハァハァ、もっとしてくれぇぇぇぇ!!!」
「いぃぃぃやぁぁぁぁ!!!」
 ゴキゴキゴキ。間接がかなり凄まじいことになっているのだが、魂が解放された彼らには、むしろ快楽だ!
 そして遂に、やって来ましたよ超人が。
 大地を割り雷鳴共に現れたカモメ頭の変態――
「我が名はコンバットバトラー・シーガル。此度は手を貸そう。正面突破は任せてもらおう!」
 右手に下げた斬魔刀。暗黒闘気が轟き唸る。
「おのれ変態め!」
「邪魔だ!」
 鎧袖一触。迎撃に向かった周を、文字通り一撃で仕留めた。
「う、うぉぉぉぉ‥‥‥?」
 全く何が起きたのか判らなかった。痙攣する周の周りを囲む変態たち。
「怪我をしているな。つまり手当てが必要だ!」
「ああ。そのために服を脱がそう服を!」
 突撃する変態たち。だが高笑いとグラビティーキャノンが吹っ飛ばした。狂化したステラだ。
「オーホッホッホ! 目障りなクソ虫供が、消え失せなさい!」
 女王さまに苛めてもらっている連中とは別に、シーガル率いる変態衆は遂に女子更衣室へ到着した。
 室内に踏み込むと‥‥‥
「待ちかねたぞ同胞たちよ!」
 全裸でポージング決めている、ダンディな男衆。
 彼らは膠着している変態に突撃して‥‥‥
「ぎゃぁぁぁぁぁ!!!」
 翌日、慶牙は燃え尽きていたのだが何があったのだろう。