武士道とは‥‥‥?
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■ショートシナリオ
担当:橋本昂平
対応レベル:フリーlv
難易度:普通
成功報酬:0 G 65 C
参加人数:8人
サポート参加人数:6人
冒険期間:08月16日〜08月21日
リプレイ公開日:2008年08月31日
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●オープニング
江戸の街は広く大きい。
現在、独眼流の名で知られる伊達政宗が治めるこの地は、戦後の事後処理で何かと忙しいがそれなりにかつての活気を取り戻していた。
立ち寄る旅人や商人は、源徳時代とは勝手が違ったりそもそも伊達家に支配権が移った事も知らない者もいるがそれなりに日々を過ごしていた。
人の縁はどこで繋がるか判らない。ある時通りすがった誰かが、ある時いがみ合った者同士が手を取り合う事もまた縁。
人の世と縁はまさしく青天の霹靂。全く何が起こるか判ったものではない。
――遠い異国の地で、レミングの群れの進路上に町や村があろうと、遠い異国の海でバイキング達が暴れていようと、広い目で見れば案外世の中平和なものである――
葉隠という書がある。『朝毎に懈怠なく死して置くべし』を始め、常に己の生死にかかわらず正しい決断をせよと記された、武士の心得が記されたもののふを目指す者にとっては必読の本である。武士道は死ぬことと見つけたりの一文はあまりにも有名である。
行動の中にも忠義は含まれているべきで、行動している時は死狂い――つまり無我夢中となって動くべきとは、この群雄割拠のジャパンに相応しい。
そのほかにも嫌な上司からの酒の断り方に失敗した部下のフォローの仕方等々、組織での立ち回り方も随分記されている。武士とはいえ組織に属する個人だ。この手の処世術は必須である。
そんな葉隠であるがある変わった――一般からすれば――行為についてもこと細かく書かれてある。
大名家や名家の当主は基本男。聖人君子だろうが豪傑無双の英雄だろうが、男である以上、その、まあ色々クるものがあるわけだ。
彼らにとって跡継ぎは死活問題。故に子は作るべきだが逆に作りすぎてはいけない。愛人や一夜限りの関係で、とかで励まれると後々のお家騒動に繋がるのだ。
これだけが理由ではないのだが、ともかく、主従関係とも融合して武士の間に広まった行為がある。
衆道。
男同士がニャンニャンする行為である。
それに理解があるのかないのか個人によるのだが、葉隠には衆道について事細かく、特定層の女性にとって鼻血モノのイロハが載っている。
きっと新しい世界が広がるに違いない。
だからといって読了後、それが正しい姿と信じるのは幾人ほどいるだろう? そもそも武家の跡継ぎなんて真面目すぎて逆に始末が終えない。
栗田太郎丸は葉隠の書を畳み立ち上がる。
丸一日をかけて読み終え上り始めた太陽はまるでこの悟りを祝福しているよう。
「そうか‥‥‥そうだったのか‥‥‥。真の武士とは、武士道とは‥‥‥!」
その瞳は確信。疲れきった筈の身体には力が漲る。
真の武士を目指すものとして、俺は極めてみせる。
あの太陽に叫ぶ。
「俺は‥‥‥俺は! 衆道を極める!」
彼はおばかのようだ。
その日を境に太郎丸の動向は誰が見ても怪しくなった。伊達軍士官用屋敷に滞在している同僚の皆は何故かケツに妙な視線を感じるようになったという。
そして太郎丸と立川正春が姿を消して‥‥‥太郎丸の相棒、清水玲奈は届けられた文を上官である鈴山美晴に見せ相談。玲奈は、様子がおかしくなった太郎丸が、何か悪事に加担でもしているのか、それとも重い病にかかったのか心配でたまらないのだ。まあある意味病なのかもしれないが、何はともあれ美晴はその文を開いた。それには‥‥‥
『お願い。早く助けて! このままじゃ俺のケツが、アッーーーーー!!!』
頭からぶっ倒れる美晴嬢。基本軍隊は頭が討たれるとその機能を失う。
どうすればいいのかとりあえず‥‥‥事件の解決を冒険者に依頼した。
目標は栗田太郎丸の捕獲と立川正春の保護。
場所は玲奈曰くハッテン場と呼ばれているうらぶれた家屋群のある通り。どうもアヤシイ熱気とか呻き声とか聞こえているらしい。
近隣の住民からごろつき連中がたむろっているんじゃないか、と警邏を頼まれている場所でありついでに冒険者にそれも頼もうかとなかなかしたたかな玲奈嬢である。
ちなみに、彼女は良家の生まれで他人を使うにためらいがない。
●リプレイ本文
遠くから二人を覗く影がある。
『それ』が見るのは、無駄にたくましい男たちだ。
「ククク。マサ、口では嫌々言ってるが、身体は正直だな。もう‥‥‥こんなになってるぞ?」
「やめてくれタロウ。どうしてこんなことを‥‥‥!」
「どうして、だと? こんなところにホイホイ着いてきて、判らないわけはないだろう」
「そ、それは、はうっ!」
「敏感なんだな。キツキツだぜ」
「やめろ。それ以上はッ!」
ターゲット、ロックオン。
「飲み込め、俺のクサナギ‥‥‥!」
「アーッ!」
黒金の大太刀が小ぶりなサイズの鞘を蹂躙した。
「いや〜、久々に見るわこの風景」
甘酒片手に屋根の上。二十代ぐらいだろうか。ハッテン場でハッテンな現場を眺めているフィオナ・ファルケナーゲ(eb5522)はどこか懐かしいものを見たかのように息を漏らした。
葱と変態の国、イギリス。
こんな不名誉極まりない呼ばれ方をしているのはイギリス人にとって不愉快極まりないだろうが、そういう現場を見たことのあるらしいフィオナは懐かしいな、と呟く。
「やっぱりジャパンにもこういう所はあったのね。うーん、なんだかイギリスにいるみたい♪」
他にも見渡せば男が男に襲われたり、男が男に襲われたり、玲奈に聞いた通り物騒なことだ。見ていて見苦しいことこの上ない。
ガタイのいい野郎どもがハッスルしているのを見るのは、これはこれでテンションが上がる。
瀬戸喪(ea0443)は、
「警邏中に寄ってくるのはとりあえずキープということで」
なんてステキな笑顔で言っていた。
喪はそっち方面の人間らしく、こういうシチュエーションはむしろ喜ばしいようだ。
まあそんな事はどうでもいい。フィオナは目の前の光景を伺い、何故か安堵の表情を浮かべると地上の仲間の下へ向かう。
暗い夜道だ。シフールの姿は夜闇に隠れる。
幸いなのか、今のところの観察で正春と太郎丸の姿は見つかっていない。
フォルナリーナ・シャナイア(eb4462)は難しい顔で唸っていた。
「ハッテンバ‥‥‥? 初めて聞くジャパン語だわ」
長い金髪羽衣のごとき白い肌。比べて地味な色の茶の瞳は、前出の二つが眩くばかりの中、親しみの感じる。
蝶よ花よの純粋培養の超箱入りお嬢さまのフォルナリーナ。ウィンプルムといいドレスといいショールといい、こんな場末の路地裏で出歩く恰好としては危険極まりないのだが、場所が場所柄返って安全のようである。
近くの小屋から、妙に情感のこもった声とものが揺れる音を聞こえた。
「うらぶれた家屋群からうめき声が‥‥‥? 破落戸がか弱い市民へ強請やたかりを働いているのかしら‥‥‥酷いわ」
まあ普通にそう思うだろう。
さすがに突っ込むべきだろうな、と春日龍樹(ec3999)が複雑そうに言った。
ジャイアント特有の、巨漢、巨体、ビルドアップの、筋肉というよりゴーレムのような男だ。
「衆道か‥‥‥。あれはなぁ、俺らジャイアントとか同族の女性と出会いなんかがない奴か、一部特殊な趣味の奴がやるもので、書いてあるほどいいものではないんだがなぁ‥‥‥‥」
フィオナのおよそ五倍、フォルナリーナの約五割増の身長の彼は、門前にそそり立ち仁王像のように睨み利かせるのが似合ってそうなのだが、何とも微妙な表情をしている。
「かく言う俺も、六年前の夏に兄上から拝借した葉隠で‥‥‥」
そもそも事の発端は葉隠の書だ。眼を通したことのあるいう龍樹も、まあ、それとなくショックを受けたのだろう。
何とも、面々の会話がかみ合ってない気もするのだがそんな堅い空気を妙に軽やかなバリトンボイスが吹き飛ばす。
ケミカル☆ハッピーな感炸裂の冒険者、大泰司慈海(ec3613)である。
「まあそれはそれとしてー、太郎丸くんを捕獲をしてしまえばと思うんだー♪」
二メートルに近い高身長。長い魔槍を手に、その他諸々の武具を身に纏う割りには外見と台詞がとてつもなくかみ合ってない。言い方だけは無駄に可愛らしいのだ。
「取りあえずはまずは説得ですかね。それでも無理なら少々手荒いですが、力ずくでやっちゃいましょう」
「なんで興味持っちゃったのかは知らんけど、雲隠れしたらこれか」
男として、何となく危機感と正春に対する同情心を抱いているのだろう。ディファレンス・リング(ea1401)と日向大輝(ea3597)は、ケツの穴に力を入れっぱなしだ。背筋が立っている。
「私自身、真の武士道というものを知ってみたかったから依頼に参加したのですが、女装して正解でしたね」
出立前に、サポートのレフィル・ウォーレグから女装を手伝ってもらったのだが、美形顔にパラ特有の小さい身長もあってすっかり美少女になっている。本当にこのままお持ち帰りしたいぐらいだ。
男連中だけが訳知り顔。フォルナリーナはちょっとふくれっ面だ。
蝶よ花よと育てられた純粋培養の超お嬢さま。お嬢さま的にこういうのは気に入らないのだろう。
「ああいうのよ」
フィオナと慈海は手近な小屋を覗かせた。
大・と こ ろ て ん パ ラ ダ イ ス
あまりに見苦しい光景なので冒険者たちのペットが戯れているのをご想像して下さい
盛大に吐血した。フォルナリーナの精神に致命的ダメージ!
「金品を脅し取るのではなく、あの荒い鼻息。か弱い女性を狙わず、敢えて屈強な男性を標的にしているのは疑問に思いましたが、これが武士道!?」
素晴しき薔薇世界。
一通り鑑賞して逃げて来たものの、顔面蒼白で足腰震えて瞳が泳ぎまくっている。ノーマルのお嬢さまにはキツすぎる。
乱暴に口元を拭う。
「龍嗣さんやディアーナさんが可哀想なものを見るような眼の理由はこれだったのですか‥‥‥!」
サポートの面々がムチャシヤガッテ‥‥‥と見送っていた姿が眼に浮かぶ。
その頃、御陰桜(eb4757)は‥‥‥
「ねぇ美晴ちゃん、なんで正春ちゃんが狙われたか分る?」
所変わって伊達軍士官用屋敷。後方支援も必要だということで、屋敷に残り雑用をこなしついでに気絶した美晴――正春や太郎丸たちの情感を看病していた桜は、眼の覚ました美晴へ問うた。
真っ当に仕事をしているようであるが、単に桜は他人の色恋を弄るのが楽しいだけなのだ。現に正春と美晴の関係は、見ていてむずがゆくなるものである。
気絶して眼の覚めたばかりの美晴。ちょっと寝ぼけていて、寝起きだからかいい感じに頭がトップギアに入っていた。
「正春が狙われた理由‥‥‥それは勿論あいつが可愛いからだ!」
普段どんなことがあっても絶対に言わない本音。脳がいい感じに煮だっていたからだろう、桜は悪女よろしく計画通り! とほくそ笑む。
「ええ。あの子可愛いから、男でも襲いたくなるのもしょうがないわよね。でも、それってオトコらしさが足りないんじゃないかしら? 可愛いからって美晴ちゃんが甘やかしてるせいだと思うんだけど?」
「可愛いものは可愛いんだから仕方がないではないか! 着物をふんふんだけじゃ我慢できぬ。むしろお持ち帰りして色々と、そっち方面に激しく詳しそうな桜殿はどうすればいいと思う!」
どうもこうも脳が病んでいる。
桜もある意味いい勝負だった。
「正春ちゃんを自分に自信を持った立派なオトコにシてあげなきゃダメだと思うな」
他人事だからって遊びすぎだ。
「着物を抱きしめてふんふんシてるくらいなら美晴ちゃんがオシエテあげなきゃダメなんじゃないかしらねぇ?」
ごにょごにょごにょ。とても口に出来ないNGワードを耳打ちする。
「判った! つまり、食えばいいのだな!?」
何を食う気だこの色ボケ隊長。
「それじゃあ、正春ちゃんを保護してくるから後はガンバってね♪」
「ガンバリマス!」
だから頑張るな。
少しして素に戻った美晴は、恥かしさのあまり部下が部屋を訪ねに来るまでひたすら転げまわったという。
その一言を聞いた時、玲奈は女の子としてアイデンティティーを無くしかけたらしい。
ジャパン人特有の艶のある長い黒髪。大きな黒い瞳。少女の身なのに身体はすっかり『大人』に育ったアンバランス仕様。
月道から西洋の食べ物が輸入でもされたのだろうか。
最近の若者はカラダだけは年齢以上に豊かに育っている。
男ならたくましく、女性ならば美しく艶やかに‥‥‥その上良家の娘である玲奈は食べているものを始め全てが違うのだろう。元服を控える前だというのに、本当にもうカラダだけは『大人の女性』なのだ。しきたりや家訓、己を厳しく律する武士とはいえ一人の女の子。気になる彼の前ではやっぱり自分を可愛く見せたいものなのだ。
相棒のアイツは、何かといっぱいいっぱいでそういうのに気付いてくれないのだけど‥‥‥
「ええ。相棒の玲奈嬢が側にいても欲情せず、正春を狙うあたり、そっち方面の素質があることは否めないかもしれませんね」
「そ、そんな。太郎丸が衆道派だったなんて‥‥‥!」
敵と出会えば槍で刺して味方には自前の槍で刺すのが侍か。そんなのが治安を守っているのは嫌過ぎる。
侍といえばいつ命を落とすか判らない職業の筆頭に違いないし励みたくもなるだろうが、フリーダムにも程がある。遊郭に行けばいいのにそんなに男が大好きか。
今までのやり取りでそれなりに判った。
玲奈は落ち着いた雰囲気であるが、結構錯乱する性格のようだ。
「こうなったらもう、女性の良さを体で教えるしかないわね」
「いや、それはさすがに」
突っ込む大輝。この手の話題でからかい倒す、系統は違うがフィオナも普通に変態だ。
魅了のピアスがぴっかーんと月明かりを反射する。コンフュージョンの魔法がアタマのネジを吹っ飛ばす。
下ネタでからかうのが大好きなフィオナ。サイッコウに輝いている。
「正春くんが拉致られたのはあなたの管理上の責任ね。相棒なんだから、手取り足取り腰取り面倒みないと」
「つ、つまりまぐわえと!?」
大輝は盛大に吹いた。
「ちょ、まぐわうとか」
「確かに太郎丸は私の相棒。相棒の暴走は私の責任でもある訳で、今後こういう事がない為にも○○○とか×××とか△△△とかすれば抑えられるかもしれません。いえ、むしろ私は襲う方が」
「‥‥‥ヤケニクワシインデスネ」
女の子のこういう話題を聞くのはとてつもなく恥かしい。
「これでも武家の娘です。嫁げばその家の跡継ぎを産まねばなりません。そっち系の知識は書で読みましたし、知識だけならプロ並です!」
声を大に言い切った。
「‥‥‥そうか‥‥‥」
大輝は頭を抱えた。何かもう色々ダメすぎる。
取り敢えず顔なじみの奴に釘を刺してくる。そう言って龍樹は物陰に出向いた。
「ふぅ‥‥‥。やれやれだぜ」
何故か着物が着崩れて、さわやかに汗を拭うミスタージャイアント。二班に分かれた内の一斑の、恰好だけ除けば唯一まともなディファレンスはペットの兎のように何故か怯えながら龍樹に尋ねる。
女装中のディファレンス。この面子の中で彼は狩られる兎なのだ。
「――それで、正春さんの行方は判りましたか?」
「ああ。それらしい奴はこの先にいるらしい。全く、素人さん相手に問題になってるってのによ」
「好きなもの同士でそれをすることは一向に構いませんが、一般人を巻き込むのはどうかと思うんですよね」
困ったものです、と喪。
この人はこういうのに理解があるんだなぁとディファたん。
「そういう一部間違ったのが悪目立ちするから全体が誤解されるんですよ。好きなものが同士がじっくりと、素質がありそうな人を導いて‥‥‥目覚めさせて‥‥‥そして繰り返しでフ腐フ‥‥‥」
理解がありすぎる。ぎらりと瞳が光る喪。ディファは軽く上げて悲鳴をケツの穴に力を入れた。
全力で逆方向を振り向く。渋いバリトンボイスの乙女語仕様。ケミカル☆ハッピー感の慈海。ディファを安心させようと想ったのだろうキラッ☆と決めて仰った。
「俺は男には興味ないからね♪ 女の子のほうがいいもーん!」
怪しい‥‥‥。怪しすぎる‥‥‥。
いざという時を考えなければいけない、そう思っていたら人影を捉えた。
「あら? 偶然ね」
ダウジング中の桜。同じ場所を目指して鉢合わせたのだ。
ペンデュラムがその先を指し示した。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
暗闇から突撃してくる一つの影。可哀想なぐらいに必死な形相の正春だ。
「さあ正春! 共に武士の道を極めよう。ケツを出せっ!」
土煙を立てて追いかけるソッチの皆さんと、その先頭に立つ太郎丸。ステキに眼がイっている。
「ひぃぃぃぃぃ!!!」
逃げようとするがここで見失う訳にはいかない。龍樹は回り込んで押さえ込む。
「ひいっ! 俺のケツは誰にも掘らせん!」
「前門に冒険者、後門に俺たち、もう逃げられん! キャスト・オフ!」
刀を抜く正春に、太郎丸たちはオーラが全開。着物が弾け飛ぶ。
跳躍した彼らは褌一丁で空へ。満月を背に飛び掛る。
その時正春は思った。殺らなければ‥‥‥犯られる!
ぷつっと正春の頭の中で何かが切れて、面倒になった喪は正春もろともソニックブームで太郎丸たちを吹っ飛ばした。
「太郎丸さん、あなたが正春さんを誘拐したの? なぜ同僚を拐うまねなんか‥‥‥」
二人を捕獲というか撃破して、戻った屋敷。冒険者一行は美晴と玲奈を交えて事情徴収を執り行っていた。まあやった事がやった事だ。
「玲奈さんも上官の方も心配しいたわ。部隊内の規律を乱してはいけないわ」
「うんうん。相手の意志を無視して、じゃ武士道にもとる行為だよー。まずは衆道より、出世目指して努力したらどうかな?」
ブリーシンガメンや魅了のネックレス、魅惑の香袋で狭い部屋に二人でいれば理性が軽く飛びそうな誘惑仕様のフォルナリーナであるのだが、一時的に薔薇属性を得た太郎丸にはあまり効果がないようだ。先刻から武士道を極める為、の一点張りである。慈海もお坊さんらしくお説教するも、あまり効果がない。
「しょうがないな。気が済めば納得するだろう。太郎丸、少しついて来い」
そう言って龍樹はは太郎丸を連れていった。
桜とフィオナはズタボロなのをいい事に正春を洗脳している。
「正春ちゃんはスキが有り過ぎだからもっとオトナにならなきゃね♪」
「ひざまくらとか〜、胸に顔をうずめるとか〜」
「オトナのヒミツの訓練で、ひざまくらとかしてもらうとすっごくタメになるの。オトナにしてって頼んでみるといいわ♪」
正春と美晴を残して冒険者たちは部屋を出て行く。
「二人共ガンバってね♪」
親指を立てる桜。
そして眼が渦を巻いている正春。
「ねーちゃん! 俺をオトナにして下さい!」
「大人にだと!?」
突撃する正春に押し倒される美晴。
もの凄い轟音で駆けつけた部下侍が見たのは、真っ赤になり着物を調える美晴と更にズタボロになった正春で、ついでに泣きながら玲奈に突撃する太郎丸だったという。
太郎丸は玲奈に責任を取らさせることになったとか。